仮面ライダーオーズ メダルと欲望と不幸?少年   作:風人Ⅱ

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第四章/罪悪と信念と救いの手⑤

 

 

ネコヤミーを撃退した後、戦いを終えた拓斗達はすぐさま病院に連絡して救急車を呼んでいた。そして救急車が到着してすぐ、門太は担架に乗せられ救急隊の手により救急車へ運ばれようとしていた。

 

 

門太「もうドカ食いはしませんっ、ちゃんと自制しますっ……」

 

 

拓斗「――ほら、一度欲望に負けたって、人間はもう一度やり直せる……あんな目に遭ったんだし、今度はもう大丈夫だよ」

 

 

椎名「そうね……もしも私が同じ立場なら、トラウマになって当分食べ物なんか見られないし。もう大食いしようだなんて思わないでしょ」

 

 

ティア「……フンッ」

 

 

担架で運ばれながら反省の色を見せる門太を見て安堵の表情を浮かべる拓斗と椎名の言葉を聞き、ティアはバカバカしそうに鼻を鳴らしてそっぽを向いた。と、三人がそんな会話をしてると門太が突然担架から身を起こし……

 

 

門太「――あのぉ……出来れば病院食が美味いところに♪ハンバーグとか、ピッツァとか出るとこで♪」

 

 

『………………』

 

 

……早くも食欲が再起しつつあるのか、周りの隊員達に向けてそんな要求を言い放ったのであった。あんな酷い目に遭いながらもまだ食べ物の事を考える門太に隊員達も呆れ果て、拓斗と椎名も開いた口が塞がらず、ティアは一人勝ち誇ったように皮肉気な笑みを浮かべた。

 

 

ティア「フフッ、そういうことだ。人間は欲望ひとつコントロール出来ない。私の言った通りだろう?私の勝ちだな」

 

 

椎名「……べ、別に勝ち負けって訳じゃないでしょっ」

 

 

拓斗「そ、そうそうっ……今回はたまたまだよ、たまたま……」

 

 

勝ち誇った笑みを浮かべたまま家に足を向けるティアの後を追い、拓斗と椎名はティアに反論しながら帰路についていく。が……

 

 

ティア「――ああそうだ、そういえばお前に返す物があったんだった」

 

 

拓斗「……え?何を?」

 

 

不意に足を止めて立ち止まったティアの言葉に思わず疑問げに聞き返す拓斗だが、ティアはそれに答えず、ポケットからなにかを取り出しそれを拓斗へと投げ付けた。それは……

 

 

拓斗「うん?……って、これ俺の財布じゃないか?!」

 

 

そう、ティアが拓斗に投げ寄越したものとは、拓斗が何時も持ち歩いている筈の財布だったのだ。一体いつの間に?!と拓斗が財布とティアを交互に見つめ驚愕する中、そこでふとある違和感に気付いた。

 

 

拓斗「あれ?……何か財布が……軽い……?」

 

 

ティア「ああ、お前と離れていた間に少々使わせてもらったよ。おかげで、昨日のアイス屋のアイスが全部買えたからな」

 

 

拓斗「えっ?それって……ま、まさか……?!」

 

 

財布が妙に軽くなっている事に疑問を抱いたが、今のティアの発言で何かに気付き拓斗は慌てて財布の中身を開けた。其処には野口さんも樋口さんも福沢さんも一枚も入っておらず、今度は小銭を調べようと中身を出してみると……

 

 

拓斗「―――三十……二円……?」

 

 

………財布から出て来たのは、十円玉三枚に一円玉が二枚。合わせて三十二円とあまりにも悲惨的な金額であった。拓斗が手の平の上の金額を見て呆然と固まる中、隣でそれを見ていた椎名がティアに詰め寄った。

 

 

椎名「ちょ、アンタッ、どんだけ人の金使ってアイス買ってんのよっ?!しかも残りがたったの三十二円って、少しは遠慮しなさいよ馬鹿じゃないのっ?!」

 

 

ティア「ハッ、遠慮?そいつは私を引き取ると言ったんだぞ?ならソイツが私の面倒を見るのは当然の事だ。ソイツの金をどう使おうが、私の勝手だろう?」

 

 

椎名「程度があるわッ!!アンタのアイス代なんかに金注ぎ込んでたら、拓斗達はどうやって生活してくのよッ?!」

 

 

ティア「知るか。そんなの自分達でどうにかしろ」

 

 

椎名「ア、アンタって奴はあああああああっ……!!」

 

 

拓斗「……い、いいよ椎名ちゃん、俺は大丈夫だからさ。あ、でも今日の晩御飯どうしよう……」

 

 

そっぽを向くティアに椎名は怒鳴り声を上げて食いかかっていき、拓斗はそんな椎名を宥めながら手の平の上の三十二円を見て今日の晩飯をどうするべきかと今になって思い悩んでいく。すると、そんな拓斗の横顔を見た椎名は……

 

 

椎名「――ったく、しょうがない……いいわ。私が何か家から持って来てあげる」

 

 

拓斗「……え?いいの?」

 

 

椎名「アンタは大丈夫だろうけど、美那子さんや紗奈にはちゃんと食べさせないとでしょ?まあ、家もこの間実家から野菜とか送られてきたからまだ余裕があるし。良かったら親に相談して分けてあげるから、それ使って皆で食べなさい」

 

 

拓斗「ほ、本当に?ありがとう椎名ちゃんっ!助かるよっ~!」

 

 

椎名「あ……ま、まあっ、困った時はお互い様って奴よ、うん……///」

 

 

これで母さんと紗奈に食べさせられる!と拓斗は心の底から助かったように安堵しながら、椎名の手を握り上下に振っていく。椎名はいきなり拓斗に手を握られ若干顔が赤みを帯びていき、その様子を隣で見ていたティアは目を細めながら鼻を鳴らした。

 

 

ティア「媚を売って男の気を引くか……やらしい女め」

 

 

椎名「って、誰がよッ?!人聞きの悪いこと言うな!この傍若無人のアホ鳥女ッ!」

 

 

ティア「あ?誰がアホだッ!この乳しか取り柄のない牛女がッ!」

 

 

椎名「このっ……?!また人が気にしてること言ったわねえッ?!」

 

 

拓斗「……あー……うん、何だかんだで仲が良いのかな……あの二人……」

 

 

互いに暴言を叫び出し始めたティアと椎名を見つめ、苦笑いを浮かべながら頬を掻く拓斗。そうしてる間にもティアと椎名はバトルの激しさをヒートアップさせながら帰路についていき、拓斗もそれを見て正気に戻り慌てて二人の後を追いかけていったのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

それから数十分後、三人が神道家に着いた時には既に日が沈み、辺りはすっかり暗くなっていた。そして、拓斗達が家の前にまでやって来ると……

 

 

拓斗「……あれ?なんだありゃ?」

 

 

疑問げな声を漏らす拓斗が見つめる先には、なにやら見慣れない移動販売車が家の前に停まっていた。何故販売車が神道家の前に?と拓斗が椎名と顔を見合わせ首を傾げると、取りあえず家の中に入ってみた。其処には……

 

 

 

 

 

祐輔「はい、これで最後だね……あ、お帰り拓斗君。お邪魔してるよ」

 

 

拓斗「え……ゆ、祐輔さん?!」

 

 

家に入ると、何故か玄関に昼間にケーキを届けてくれた祐輔の姿があったのだ。思いもしなかった人物との再会に拓斗も目をパチクリさせ、椎名は拓斗と祐輔を交互に見て小首を傾げた。

 

 

椎名「何?知り合い?」

 

 

拓斗「え?あ、ええっと、昼間に家にケーキを届けてくれた人で……って、何で祐輔さんがまた家に?」

 

 

祐輔「ああ、実はね?君の妹さんが……」

 

 

と、祐輔が拓斗の疑問に答えようとしたその時、家の奥から先に帰ってきていた紗奈が現れ玄関までやって来た。

 

 

紗奈「お帰り~お兄ちゃん、ティアさん。おや、椎名さんもご一緒でしたか」

 

 

椎名「あ、うん、こんばんは紗奈。暫くぶりね」

 

 

淡々とした口調で挨拶する紗奈に椎名も片手を振って返事を返すが、ティアはそっぽを向いたまま何も答えない。拓斗はそんなティアに苦笑しながらも、すぐに疑問を思い出し紗奈に語りかけた。

 

 

拓斗「ところで紗奈、何で祐輔さんが家に?」

 

 

紗奈「?お兄ちゃん、祐輔さんと知り合いなの?」

 

 

拓斗「あ、うん、ちょっとね……それで、どうして?」

 

 

祐輔「あぁ、それなら僕が説明するよ。紗奈ちゃんとはさっき、其処の商店街で会ったんだ」

 

 

拓斗「えっ?商店街で……ですか?」

 

 

祐輔「そっ。家に戻る前に気まぐれで商店街を散歩してたら、道の真ん中で紗奈ちゃんが買物袋の底が破けて落ちた小麦粉を拾い集めてるのを見掛けてね。僕はそれを手伝って、また此処に戻ってきたってところ」

 

 

拓斗「へえ、そんな事が……って小麦粉?紗奈、今日の晩御飯は小麦粉を使うのか?」

 

 

紗奈「ううん。ただお米が遂に底を着いてしまわれたので、米の代用に小麦粉でも使おうかと思いまして」

 

 

椎名「は?小麦粉でお米の代用……?」

 

 

どゆこと?と拓斗と椎名が首を傾げると、祐輔が苦笑しながら代わりに説明していく。

 

 

祐輔「ほら、TVとかで見たことない?『黄金伝説』っていう番組で、芸人さんが小麦粉をチネって(指で千切る)お米を作るっていう作業があるの」

 

 

拓斗「あ、はい。何時も皆で見てますから……って、もしかして……」

 

 

祐輔「そのもしかしてなの……紗奈ちゃん、実際それやってお米を作ろうとしてたらしくてね。流石に僕もそれはどうかと思ったから、ほら、一旦戻って家からお米を取ってきたんだよ」

 

 

そう言って祐輔は、自分の隣に置かれたズッシリと重みが伝わるお米の入った袋をポンッと叩いていった。良く見れば、奥のキッチンに同じような袋の束が幾つも積み重なって置かれてあるのが見え、紗奈はいつもの無表情のまま淡々と語り出した。

 

 

紗奈「でもちょっと残念だったよ。前からあの小麦粉をチネル作業をやってみたかったから、これを機にいざチャレンジしてみようかと思ったんだけどね」

 

 

椎名「……いや……そんなのやってたら朝になっちゃうでしょ……」

 

 

拓斗「ええっと……す、すみません祐輔さん、なんか色々ご迷惑掛けた上にお米までもらっちゃって……」

 

 

祐輔「気にしなくて良いよ、僕が好きでやっただけし。それに学生がお米も食べれないで小麦粉を食べるしかないなんて余りにも悲惨でしょ……それに、僕も少し拓斗君に用事があったしね」

 

 

拓斗「?俺に、ですか?」

 

 

自分に用事があると告げる祐輔に拓斗は思わず疑問げに聞き返し、祐輔は紗奈と話す椎名を見て口を開いた。

 

 

祐輔「……自分の信念を曲げないっていうのは、確かに立派だと思う。でもさ、椎名ちゃんみたいに身近な人も心配してるんだから、出来れば彼女達の気持ちも考えてあげて欲しいんだ。拓斗君の事を、あんなに気にかけてくれてるんだからさ」

 

 

拓斗「え……」

 

 

祐輔にそう言われ、拓斗は思わず椎名の方へ顔を振り向かせた。其処には紗奈の話しに若干苦笑を浮かべる椎名の姿があり、それを見た拓斗は脳裏にクスクシエで自分の身を心配し、怒りを露わにして叫ぶ椎名の姿を思い出していく。

 

 

祐輔「僕も椎名ちゃんみたいに、大切な誰かの身を案じて心配する人達って沢山見てきたからね。あんまり女の子を泣かせるような事はしない方がいい。これ、先輩からのアドバイスね。じゃ、僕はこれで」

 

 

拓斗「あ……は、はい……お米、本当にありがとうございました」

 

 

祐輔は拓斗に挨拶した後、そのまま神道家を後にして表に停めてある移動販売車へと戻っていった。そして拓斗は玄関から移動販売車が走り去っていくのを見送り、小首を傾げた。

 

 

拓斗「なんだか不思議な人だったな……あれ?そういえば……なんで祐輔さん、椎名ちゃんが俺のこと心配してるって分かったんだろ?」

 

 

ティア「…………」

 

 

はて?と先程の祐輔の発言について不思議そうに首を傾げる拓斗。そんな拓斗の背後では、ティアが移動販売車が走り去った方を見つめながら目を細めていた。

 

 

ティア(あの祐輔とかいう男、明らかに普通じゃないなにかの気配を感じた……何だ?あの身震いすら覚える感覚は……)

 

 

あの祐輔という人間から感じた気配は、明らかに普通の人間が持つソレから逸脱していた。その事に不審を抱き険しげな顔を浮かべるティアだが、拓斗と椎名はそれに気付かず紗奈と会話を続けていた。

 

 

拓斗「取りあえず…紗奈、お願いだからお米を小麦粉で代用しようとするのだけは止めてくれっ、そもそも明らかに女子学生がするような料理じゃないしっ」

 

 

紗奈「心配めさるなお兄ちゃん、私とてちゃんと学生がやっていい事とやってはならない事の境界線は重々承知しておりますゆえ」

 

 

拓斗「実際今その境界線を超えようとしてた気がするけど……ま、分かっているなら良いんだけどさ……」

 

 

紗奈「大丈夫大丈夫。主に私は数人の柄の悪い殿方に縄で縛られ、重りを付けられ湾に沈められそうになってる辺りに境界線を入っておりますから」

 

 

拓斗「手遅れだよね完全に?!しかも沈められる一歩手前だしっ!」

 

 

椎名「寧ろ生と死の境界線の間になってるわね……」

 

 

紗奈「などと言う冗談は、お兄ちゃんが漫画の表紙を被せて襖の奥の古本の束に紛れ込ませて隠してる秘密のエロ本の上に置いといて」

 

 

拓斗「何処に置いてんのさ?!……いやないけどねっ?!エロ本自体持ってないし読んでないからっ?!」

 

 

紗奈「そっか、お兄ちゃんは読む派より使う派だもんね。あと巨乳よりも貧乳、若い子より熟女好きというマニアックな性癖の持ち主なのです」

 

 

拓斗「自分の兄に変な設定付け加えないでっ!!」

 

 

椎名「……………」

 

 

ティア「……なに自分の胸を見下ろしてんだか」

 

 

椎名「ッ?!う、うううううう五月蝿いっ!!////」

 

 

紗奈「心配はいりませぬよ椎名さん。お兄ちゃんは基本、来るもの拒まずオールオーケーカムヒアーな精神の持ち主だから、自分の癖よりも相手の気持ちを一番に考えてくれるよー」

 

 

椎名「ッ!そ、そうなんだ……へえ……」

 

 

拓斗「……あれ?何かさりげなくさっきの性癖が俺の設定に固定されてる……?」

 

 

完全に紗奈のペースに巻き込まれて安堵する椎名と、ありもしない性癖を妹に決め付けられ呆然となる拓斗。紗奈はそんな一同から背を向けて両手を後ろに回し、居間へと歩き出しながら静かに口を開いた。

 

 

紗奈「しかし、この時誰も気付かなかったのです……まさか、彼女があのような汚され方をされようとは……」

 

 

拓斗「そんな俺がナニかをする前フリみたいな言い方は止めて頂けませんかねえ?!!」

 

 

嫌なモノローグを語りながら居間へと去っていく紗奈に突っ込む拓斗だが、紗奈は何も言わずに居間へと戻っていってしまい、拓斗は紗奈に翻弄されクタクタになり両肩をガクリと落としてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――因みに、美那子が仕事から帰ってきて夕飯を食べ終えた後……

 

 

「―――警察の者ですが、こちらのお嬢さんが昼間に起こした暴行事件について、話しを伺ってもよろしいですかな?」

 

 

拓斗「……え"っ?」

 

 

……数人の警察官が神道家に押し入り、ティアが昼間にナンパしてきたチャラ男達を半殺しにした件について、訳も分からず事情聴取を受けるハメになったのであった……

 

 

 

 

第四章/罪悪と信念と救いの手 END

 

 

 

 

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