仮面ライダーオーズ メダルと欲望と不幸?少年   作:風人Ⅱ

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第五章/クビと勇王と悲劇①

 

 

 

 

―星華市・柳屋―

 

 

今日も変わらず大勢の人々や車が行き交う星華市内。他の街とも比べて何の大差もないこの街だが、それでも街名物の観光地や食べ物はそれなりにある。例えば星華市内に存在する店舗のひとつ、美味しいうどんが売りで有名な柳屋と呼ばれるこの店には毎日大勢の客が訪れ、店内は何時も客の笑顔と活気に溢れている。のだが……

 

 

拓斗「――は?クビイィッ?!!」

 

 

笑顔と活気に溢れる店内に、一人の青年の悲痛な叫びが響き渡った。店内で和気あいあいと食事をしていた客達もその突然の叫びに驚いて一斉に振り返っていくが、その悲痛な叫びを上げた本人である青年……拓斗は店長と思われる男性と向き合い唖然とした顔を浮かべていた。

 

 

拓斗「な、何故……?どうしていきなり?!何か仕事に問題とかありましたかっ?!」

 

 

「あーいや、別に仕事とかに問題あったってわけじゃなくてね?寧ろ君はいつも元気に働いてくれるから、うちも仕事がはかどって助かってるんだけど」

 

 

拓斗「だったらどうしてっ?!仕事に問題ないなら、一体何が原因でっ?!」

 

 

自慢じゃないが、この店にアルバイトに入った初日から今日まで問題扱いされるような事をした覚えは一度もない。なのに突然クビにされるなど、全くその要因に思い当たる節がない拓斗は困惑しながら店長に詰め寄って原因を問い質そうとすると、店長はガシガシと頭を掻きながら深い溜め息を吐いて口を開いた。

 

 

「だってよぉ拓斗……お前、まだ17歳未成年の学生さんなんだろ?」

 

 

拓斗「えっ?……ど、どうしてその事をっ……?」

 

 

「この前、お前が学生服を着込んで街ん中を血相変えて走ってんのを偶然見掛けてな。あの制服って確か、和神高校の奴だろ?それで気になって学校に直接連絡して聞いてみりゃあ、お前まだ高二だって言うじゃないか」

 

 

拓斗「うぐっ……」

 

 

店長が見掛けたというのは、恐らくこの間ネコヤミーを追っていた時の拓斗なのだろう。しかも制服を着ていたのをしっかり見られていたとなると、これは最早言い訳のしようがない。

 

 

「うちはアルバイトは18歳以上からって決めてんだ。だから悪いんだが、お前は今日からクビだ。今日までのバイト代はちゃんと払うから、もう二度とこんな真似するんじゃないぞ?」

 

 

そう言いながら店長は拓斗に今日までのアルバイト代を手渡して拓斗の横を通り過ぎ、すれ違い様に拓斗の肩を軽く叩いて仕事に戻っていってしまった。そして残された拓斗は、あちゃー……と額に手を当ててそのままその場にうずくまっていったのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

その後、店長からクビを言い渡された拓斗はバイト代を片手に柳屋から出ると、表に停めておいた自転車に近付いてチェーンを外し、顔を上げて何処までも続く青空を見上げながら後頭部をガシガシと掻いていく。

 

 

拓斗「参ったなぁ……仕事一つなくなったら借金返済のお金と生活費が足りなくなるし、しかもこの間バイト代がなくなったばかりだし……どうしたものかυυ」

 

 

「―――そんなくだらない理由で悩めるとは、人間ってのはやはりお気楽な生き物だな」

 

 

途方に暮れる拓斗の横から不意に少女の呆れるような声が聞こえた。そちらに目を向けてみれば、其処には白のトップスと黒ミニスカという格好をしたティアが腕を組みながら店の壁に寄り掛かって立つ姿があった。

 

 

拓斗「ティアちゃんっ……お気楽って言うけど、こうなったのもティアちゃんにも原因あるでしょう?アイス代にバイト代を全部注ぎ込んだりしなきゃ……」

 

 

ティア「ふん、盗られる方が悪いんだろう?そんなに大事な物なら、次は盗まれないように気をつけるんだな」

 

 

反省の色は無しと言ったように告げながら、ティアはそのまま壁から背を離して何処かへと歩き出していき、拓斗は慌てて自転車を押しその後ろを付いていく。

 

 

拓斗「ちょ、何処行くんだよ?!」

 

 

ティア「決まってるだろ?アイスだ、アイス」

 

 

拓斗「さっきも食べたじゃないか?!これ以上アイスにお金注ぎ込んだら生活出来なくなるから、次のバイトが見付かるまで……!」

 

 

ティア「我慢しろと?無理だな。私はグリードだぞ?欲望のままに生きてなにが悪い?」

 

 

拓斗「時と場合と出来れば程度を考えてくれって言ってるんだって!もうちょっと周りの事を考えて――って、人の話聞いてってばっ!」

 

 

聞く耳持たずにズカズカと先に進んでいくティアの後を追い掛けながら叫ぶ拓斗だが、ティアはそれを無視してアイスを探しに先へと進んでいってしまうのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 

 

―星華市・噴水公園―

 

 

そしてその頃、星華市内に存在する噴水公園。大勢の子供達が公園内でそれぞれ遊び回る中、公園の隅にあるベンチには三人組の男女……ウヴァ達とは別のグリードであるカイハ、クラル、ケシィの姿があった。

 

 

クラル「うーー……やっとまともに動けるまでに回復出来たーー……」

 

 

ケシィ「だねえ……それにしても何者だったんだろ、あの人間?まさか不完全体とはいえ、人間が僕達三人を相手に圧倒するだなんて……」

 

 

カイハ「そうですね……(ですがあの時、彼女から感じられた気配は人間のソレとは何処か違っていた……彼女は本当に人間だったのでしょうか?)」

 

 

思考に深く浸るカイハの頭を過ぎるのは、先日路地裏で自分達を強襲し、生身の身体と二丁銃だけでグリード化した自分達を圧倒したユリカの姿。

 

 

ケシィ「もしかして、あの人も僕達と同じグリードとか?」

 

 

カイハ「その可能性は低いでしょう……もしグリードだとしたら、同じグリードである私達が気付かない筈がない」

 

 

ケシィ「それもそっか……じゃあ、僕達みたいに人間の姿をした別の存在とか?」

 

 

カイハ「その可能性も捨て切れませんが……それだと余計に彼女の正体が掴めませんね……」

 

 

あの時の彼女は何者だったのか?カイハはケシィと話ながら取りあえずユリカの正体について、考えられる可能性を一瞬で129通り思い浮かべていく。だが……

 

 

クラル「……あーーもう!やっぱりダメだっ!!このままじゃ全然収まりが付かない!!」

 

 

カイハの隣でグッタリとベンチに背もたれていたクラルが急に手足をジタバタと動かして暴れ出し、カイハは思考を止めて全く揺るがない無表情のままクラルの方に顔を向けた。

 

 

カイハ「いきなりなんですかクラル?場所も考えずに急に暴れ出して、みっともないですよ?」

 

 

ケシィ「そうだよクラル。ほら、人目とかもあるわけだし、子供にあんまり格好悪いとこ見せるもんじゃないよ?」

 

 

クラル「何で二人はそんな落ち着いてられるのさ?!僕達グリードがたかが人間一人に負かされて、しかもコアメダルまで取られたんだぞ?!悔しくないのかっ?!」

 

 

至って冷静な口調で自分を宥めるカイハとケシィに大声で反論しながら、クラルはベンチの上に立ち上がりビシッ!と二人を指差した。しかし……

 

 

ケシィ「悔しいっていうか……まあ三対一で負けたのは悔しいけど、仕方ないと思うよ?奇襲された時のダメージが大きくてまともに戦えなかったし、それを除いてもあの人の実力は僕達より上だったみたいだし、どっちにしても僕達に勝機はなかったと思う」

 

 

クラル「なに素直に負けを認めてるんだよ?!そーいうんじゃなくて、あの人間からリベンジも含めてコアメダルを取り返すって意気込みはないのかっ?!」

 

 

カイハ「負けた事をいつまでも引きずっていても仕方ありません。それより今は、今現在の状況とこれからの方針について考える方が先です」

 

 

と、ユリカに敗北して悔しがるクラルとは対照にそれぞれドライな返答を返すカイハとケシィ。そんな二人の冷めた態度にクラルも「ぬぐぐっ…」と悔しそうに拳を震わせていき、カイハはそんなクラルを余所に顎に手を添えていく。

 

 

カイハ「ともかく、今はこの現状をどうにかする方法を考える方が先決でしょう。ただでさえ三人で固まって動いてるだけでも目立つのですから、何処か人目を避けられるところに移動して落ち着ける場所を――」

 

 

ケシィ「……ねえカイハ、ちょっといいかな……?」

 

 

これからの方針についてブツブツと語るカイハの言葉を遮る様に、ケシィが恐る恐る片手を上げてカイハに声を掛けた。話の腰を折られたカイハは顔を少し上げ、隣に座るケシィに目を向けていく。

 

 

カイハ「何ですかケシィ?まだ話の途中だと言うのに……」

 

 

ケシィ「いや、邪魔して悪いとは思ってるけど……でも……」

 

 

と、ケシィは苦笑しながら何故かカイハを指差し……

 

 

ケシィ「クラル、何時の間にかいなくなっちゃってるんだけど……ほっといていいの?」

 

 

カイハ「………………」

 

 

困った顔でそう告げたケシィの言葉に、カイハは一瞬何を言われたのか理解出来ず固まってしまう。そして漸く言葉の意味を理解し、自分を差してたと思われるケシィの指先を追って隣を見てみると……其処には、先程まで不満の声を上げていたクラルの姿がなく忽然と消えていたのだった……

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

その頃、市街地に立ち並ぶビル群。その中に存在する一つのビルの屋上では一人の人物……グリードを復活させた張本人であるローブの人物が、ビルの下を見下ろして佇む姿があった。

 

 

『ふぅむ……つまらないですねえ……せっかく物語の始まりのきっかけを作ってあげたというのに、大した事件も起こらないとは……暇過ぎて死にそうですよ……おや?』

 

 

黒いローブを風で靡かせながらつまらなそうに欠伸をしていた人物だが、その時何かに気付いたようにある方向へと目を向けた。人物の視線の先には、此処とは少し離れた場所にある一回り小さなビルの屋上。特に珍しいものなどは見当たらないただのビルにしか見えないが、その時……

 

 

 

 

―……キイィィィィィィィィィィィィィィンッ!―

 

 

 

 

突如、何処からか耳鳴りのような不快な音が響き渡った。更にその直後に屋上の上空に淡い光りが発生し、光りは屋上一帯を一瞬だけ包み込んだ後何事もなかったかのように消えていった。しかし、光が晴れた屋上には……

 

 

『――あれ?』

 

 

『なんだ……此処は?』

 

 

『……?』

 

 

光が消えた屋上には、先程まで其処にはいなかった筈の三人の異形と三人の少女の姿があったのであった。先ず三人の異形の内の一体は、両腕に鋭い刃を装備した人型の機械兵器。そして三人の少女を背にした二人の異形……頭と胸に骸骨のマークが刻まれた灰色のボディの戦士と、全身に緑のラインが走った白いボディの戦士は、自分達の周りを見て何故か困惑していた。

 

 

「あ、あれ?此処って?」

 

 

「さっきまでいた場所と違う?え、どうなってるの?」

 

 

『…………』

 

 

戦士達の背後に立つ二人の少女が疑問げに周りの風景を見渡していると、戦士達と対峙していた機械兵器は突然戦士達から背を向けてビルの屋上から屋上へと飛び移り、何処かへと逃げ出してしまった。

 

 

「あ、逃げた?!」

 

 

『クソッ!レツ!とにかく奴を追うぞ!』

 

 

『はいっ!』

 

 

二人の戦士はすぐに変身を解除して二人の青年へと変わっていき、三人の少女達と共にビルの屋上から屋上へと飛び移って逃げていく機械兵器の後を慌てて追い掛けていったのだった。

 

 

『ほぉう……次元の歪みでこの世界へと飛ばされて来ました来訪者ですか。これはまた面白そうな事になってきましたねえ』

 

 

その様子を別のビルの屋上から眺めていた人物は黒いローブの下で不敵に笑い、青年達の後を追おうと動き出そうとする。その時……

 

 

 

 

 

 

 

 

「――動くな」

 

 

―スチャッ……―

 

 

『……ん?』

 

 

 

 

 

 

 

 

今まさに屋上から飛び降りようとした直前、背後から突然青年の声が聞こえた。それを聞いた人物は動きを止め不思議そうに背後へと振り返ると、其処にはいつの間にか一人の少年が銃を突き付けて佇む姿があった。

 

 

『おや?誰かと思えば、何処ぞの小娘の弟子の小坊主君ではありませんか。名前は確か……ええーっと……何でしたっけ?』

 

 

「―――チェス。チェス・フリッカーだ」

 

 

『ああ……はいはい。確かそんな名前でしたか』

 

 

険しげな表情で"チェス"という名を名乗った少年に、人物はなにかを思い出したように呟きながらチェスと向き合っていく。

 

 

『それで、何故君が此処にいるのですかな?あの小娘の命令で、私を捜すように言われて追ってきたとか?』

 

 

チェス「そうだ……師匠はこの世界のグリードの復活には、必ずアンタが関与してくる筈だと踏んでいた。そして予想通り、その読みは当たった……」

 

 

『なるほど……あの小娘も中々、私の行動パターンを読めるようになってきてるワケですか。ま、それなりに長い付き合いですからね。当然と言えば当然かぁ』

 

 

やれやれと溜め息を吐きながらも、その顔は心底楽しそうに見える。人物はニヤニヤと新しい玩具を見付けたように口元を歪めながら、チェスを見据えた。

 

 

『で、君は一体何をやっているんです?あの小娘に命じられて私を追ってきたのなら、小娘に『私には絶対手を出さずに相手をするな』ぐらいの命令も受けてる筈だと思いますが?』

 

 

チェス「ああ、師匠には何度も忠告されたよ……でも……どうしてアンタには聞きたい事があった」

 

 

『私に?はて、別に改めて聞かれるようなことは何も思い当たらないのですがね。あの小娘の下にいるなら、大抵の私の事は聞いてる筈でしょう?』

 

 

チェス「ああ、確かにある程度は聞いてるよ。アンタは元は人間で、イレイザーに墜ちた存在だってことも全部。けど……直接アンタに聞きたい事が山ほどあるんだ」

 

 

目を鋭くさせてそう言うと、チェスは銃の銃口を人物に突き付けながらゆっくりと重たい口を開いた。

 

 

チェス「先ず一つ……アンタ……黒月零を知っているか……?」

 

 

『零?……ああ……あの出来損ないの失敗作ですか。一応知ってますが、それが何か?』

 

 

チェス「っ……だったらもう一つ……以前零達が起こした『アルテマの乱』で、アンタが零達を陥れた一人だって言うのは本当か?」

 

 

『ああ……アレですか……懐かしいですねえ……ククククッ、アレは本当に心底楽しかった。特に彼のあの最後の悪あがき、あの姿はもう哀みを通り越して笑いが止まりませんでしたからねえ。今思い出しても笑いが堪えられませんよ、アッハハハハハハハハハハッ!』

 

 

その時の事を思い出してるのか、人物は腹を抱えながら可笑しそうに笑い始めてしまう。そんな人物の様子から今の質問の答えも本当なのだと分かり、チェスは銃を持つ手に力を込めながら唇を強く噛み締め、未だに愉快げに笑い続ける人物をキッと睨みつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェス「何でだよ……どうして……どうして!!血を分けた息子にそんな仕打ちが出来るっ?!黒月八雲ッ!!!!」

 

 

『……………………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビルに反響して響き渡る程の怒号と共にその名を言い放った瞬間、人物の笑い声がピタリと止まった。その直後、人物の雰囲気が突然変わり、人物はゆっくりとした動作で顔に被っていたローブを脱ぎ去り、チェスと向き合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八雲「――心外だなぁ……あんな出来損ないの失敗作にしか過ぎない屑を、俺の息子呼ばわりするなんて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒いローブを脱いで露わになったのは、後ろ首まで伸ばした漆黒の髪に零と同じでありながら冷たさしかない真赤の瞳、そして何処か零と面影が似ている一人の男性だった……

 

 

 

 

 

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