――因みにその頃、クスクシエでは……
椎名「――で、また未成年だって事が仕事先にバレてクビになった、って訳?」
拓斗「うん、この間ヤミーを追ってたところを運悪く見られたらしくてねー……υυ」
柳屋を後にしたあと、拓斗とティアはクスクシエでバイトしている椎名と夏目の元に訪れて話をしていた。どうやら本日の店のテーマは江戸らしく、店内もそれに合わせた飾り付けをしている他、椎名や夏目は江戸らしく着物、千世子は忍者と雰囲気に合わせた衣装を身に包んでいる。ちなみに拓斗は珈琲を一杯だけ頼み椎名の向かいに座り、その隣には先程拓斗に買わせたアイスをかじるティアの姿があった。
椎名「しっかし、アンタもホント運がないって言うか、間が悪いって言うか……大丈夫なの?またバイト探さなきゃいけないんでしょ?」
拓斗「まあね、だから今も求人誌とか貰ってきたんだけど……中々良いバイトがなくってさぁ……」
うーーん、と唸る拓斗が見つめる先には、珈琲の横に開かれた求人雑誌がある。しかし雑誌の中の欄は殆ど赤いバツ印で潰されており、どうやら条件に合ったバイトが中々見付からないらしい。
拓斗「参ったな……せめて借金と生活費と紗奈の授業料だけでも払える仕事があれば良いんだけど……」
椎名「いや……食費なら別に大丈夫じゃない?ほら、前に祐輔って人が来てお米を沢山くれてたみたいだし」
拓斗「うん、お米に関しては大丈夫なんだけど、やっぱりお米だけってわけにもいかないしさ。せめて食材も買えるくらいは……」
椎名「それも心配いらなくない?だってほら、そういうのって紗奈が度々懸賞で当ててくれるし」
拓斗「……あー……そういやそうだったねぇ……」
拓斗の妹である神道紗奈は、最高に不運な兄とは対象に最高の強運の持ち主だ。基本彼女は雑誌にある懸賞で食材や家具や洋服やゲームや自転車やらを百発百中で当てまくり、食卓に並ぶ野菜やお肉なども彼女が懸賞で当てた物が多い。同じ母親から生まれてきたとは思えない強運の妹とは対象に、不幸な拓斗はなんとも言えず苦笑いしながら手に持つボールペンの尻で頭を掻いていた。そんな時……
千世子「……あらぁ?なに拓斗君、バイト探してるの?」
椎名「あ、千世子さん」
他の客に料理を運び終えた千世子が拓斗達のテーブルの上に開かれた求人誌に気付き、椎名の背後からひょいっと顔を出した。
拓斗「えぇ……さっき勤め先のバイトをクビになってしまって。それで今新しいバイトを探してるんですけど、中々……υυ」
千世子「あら、そうなの?最近の若い子も大変なのねえ……」
椎名「いや…コイツの苦労は若者っていうより、人間から見ても異常ですから…」
主に毎日車に轢かれたり、不良に追いかけ回されたり、開いたマンホールの穴に落っこちたり、何故か家に荷物に偽装した爆弾が間違って送られてきたりとか。それを日常にしている辺り最早人間として異常だわと、椎名が呆れ気味に拓斗に視線を送ると、拓斗は苦笑したまま乾いた笑い声を漏らしていく。すると、話しを聞いていた千世子は何かを思い付いたように陽気な笑みを浮かべ……
千世子「だったら、もし良ければうちでバイトしてみない?」
『……へ?』
笑顔を浮かべて両手を合わせながらそう告げた千世子の言葉に、拓斗と椎名は声を揃えて思わず疑問の声を漏らし、千世子は拓斗の隣に歩み寄り拓斗の肩を叩いた。
千世子「うちって従業員が女の子しかいないから、力仕事が出来る男の従業員がいなくてねぇ~。拓斗君がいてくれたら、そういう系の仕事が任せられて私達も助かるのよぉ。あっ、もちろんバイト代も弾むけど、どうする?」
拓斗「え……あ……えっと……そう言って頂けるなら、こっちも願ったり叶ったりですけど……」
千世子「ホント?なら明日からお願いね!これで買い出しの時とかも大助かりだわぁ~♪あ、夏目ちゃん!明日から拓斗君もうちで働く事になったから~!」
と、千世子は上機嫌に笑いながら歩き出し厨房にいる夏目の下へ向かっていき、残された拓斗と椎名はそれを呆然と見送るしか出来なかった。
拓斗「な、何か……あっという間に次の仕事が見付かっちゃったな……」
椎名「ま、まあでも、良かったじゃない。これで仕事の心配をする必要もなくなったわけだし」
拓斗「だね、いやぁー本当に助かったよ。千世子さんにも感謝しないとυυ」
ティア「……フンッ。一々そんな事で喜んでいられるなんて、やっぱり人間ってのはくだらんな」
椎名「って、アンタが言うなってのっ!大体コイツがお金に困ってんのも、元々アンタのせいでしょうがっ?!」
ティア「知るか、もう忘れた」
椎名「このっ?!……あーそうですかー……グリードってのは記憶力が大層悪いんですねー。ご愁傷様ですこと」
ティア「ッ!お前っ、突っ掛かってくるのもいい加減にしろよっ!」
椎名「どっちがよっ!最初に喧嘩吹っ掛けてきたのはアンタでしょうっ?!」
拓斗「ちょっ、やめろって二人共っ?!店の人に迷惑だからっ!!」
テーブルに身を乗り出して睨み合うティアと椎名を慌てて横から仲裁しようとする拓斗。二人も睨み合いを止めて席に着いたものの、互いに顔を合わせようとはせずそっぽを向いてしまい、拓斗はそんな二人を交互に見て溜め息を吐きながら席に座り直した。そんな時……
―ドオオオオオォォォォォォォォォォオンッ!!!―
『ッ?!!』
突如、穏やかな空気に溢れていた店内の外からけたたましい轟音が響き渡った。耳が可笑しくなりそうな程の大音量の音に客達も悲鳴を上げながらざわめきだし、拓斗達も思わず辺りを見渡していく。
夏目「な、なに?今の音?」
椎名「地震……?でも遠くから聞こえたような……」
拓斗「っ!ティアちゃん、もしかしてヤミーが?!」
ティア「いや、気配は感じられない……恐らく今のはヤミーの仕業じゃない」
拓斗「?ヤミーじゃない?……とにかく、街に行ってみよう!椎名ちゃん、お代は此処に置いとくから!」
椎名「え?ちょ、拓斗?!」
今の轟音はヤミーが起こした物ではない。それが気になった拓斗は椎名の静止を聞かず珈琲代をテーブルの上に置いてクスクシエを飛び出し、ティアもアイスを一気に食べて拓斗の後を追い掛けていった。
◇◆◆
―ドオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォオンッ!!!―
『うわああああっ!?』
同じ頃、拓斗達が向かった街ではレツ達から逃れた機械兵器が街中で暴れ回っていた。道路の車の上に着地しては目から無数のビームを乱射してビルを破壊していき、無数の瓦礫が辺りに降り注いで逃げ惑う人達に怪我を負わせていく。そしてその場へと拓斗とティアが到着し、暴れ回る機械兵器を見て驚愕した。
拓斗「な……なんだアレ?ロボット?!」
ティア(……やはりヤミーじゃないか……何だアイツは?)
拓斗「えと……ティアちゃん?もしかしてグリードの中にって、ああいうロボットとか作れる奴が――」
ティア「いるかそんなの!―ズビュウゥゥゥゥンッ!―チィッ?!」
機械兵器を見て拓斗とティアが驚愕する中、機械兵器は二人を次の標的と認識し二人に向けてビームを撃ち出し、それに反応した二人は左右へと飛び転がり何とか回避した。
拓斗「くっ!とにかくやるしかない!ティアちゃん、メダル!」
ティア「チッ!ヤミーじゃないのは気になるが、このまま野放しにしておくのは後々面倒になるか…!」
あの機械兵器の危険性を感じ取ったティアはグリード化させた赤い右腕から三枚のコアメダルを出し、それを拓斗目掛けて投げ付けた。それを見た拓斗もメダルをキャッチして腰にオーズドライバーを装着し、ドライバーにメダルを装填してオースキャナーでバックルのメダルをスキャンした。
拓斗「変身ッ!」
『TAKA!TORA!BATTA!TA・TO・BA!TATOBA!TA・TO・BA!』
スキャナーをバックルへとスライドさせると、拓斗は直ぐさまオーズへと変身を完了させて虎のような構えを取り、車から飛び降りた機械兵器へと一気に駆け出し機械兵器のボディになぐりかかった。が……
―ガゴオォンッ!!―
オーズ『イィッ?!かっ、固アァっ?!』
オーズの放った拳は確かに機械兵器のボディに入ったが、その攻撃は機械兵器の強固なボディの前に弾き返されてしまったのだ。拳を弾かれたオーズはジンジン痛む拳を思わず抑え、機械兵器はそんなオーズに両腕に装備した刃で斬り掛かっていき、オーズは慌ててそれを避けながら何処からかメダジャリバーを取り出し機械兵器の装甲を斬り付けた。
―グガアァンッ!ギンッ!ガギイィンッ!―
オーズ『グゥッ!やっぱりダメだ!全然効いてないっ……!』
だがやはり、機械兵器のボディの前にはどうやっても弾かれてしまい、オーズも手段がなく機械兵器の攻撃を回避し続けるしか出来ずにいた。
ティア「なにをやってんだ拓斗!逃げてばかりいないでちゃんと戦えっ!」
オーズ『グッ!そんなこと言ったって、こっちの攻撃が効かないんじゃどうしようもないだろう?!』
ティア「ったくっ……ならこっちに変えてみろ!」
高い場所からオーズの戦いを傍観していたティアは右腕から灰色のメダルを取り出し、再びオーズへと投げ付けた。それを見たオーズは機械兵器の攻撃を退けてメダルをキャッチすると、バックルへとトラメダルと入れ替えるようにメダルをセットしてオースキャナーを手にし、バックルへとスライドさせていった。
『TAKA!GORILLA!BATTA!』
オースキャナーでメダルをスキャンさせるとオーズの周りを無数のメダルの残像が駆け巡り、残像が消えるとオーズのボディが両腕に銀色の重厚なガントレット状の武器・ゴリラバゴーンを装備したオーズ・タカゴリバへと姿を変えていったのだった。
『ッ?!!』
オーズ『ッ!動きが止まった!ソラアァッ!!』
―バゴオォォォォンッ!!―
『ッ?!』
突如姿を変化させたオーズに機械兵器が動きを止めた隙を突き、オーズは機械兵器の懐にまで接近しゴリラバゴーンで機械兵器を思いっきり殴り付けていった。それを受けた機械兵器は体をのけ反りさせながら後方へと吹っ飛び、オーズはゴリラバゴーンの威力と吹っ飛んだ機械兵器を見て感心の声を漏らした。
オーズ『凄いっ、これなら行けるかもっ!』
そう言ってオーズはゴリラバゴーンを構え直しながら機械兵器へと突っ込んでいき、ゴリラバゴーンを機械兵器のボディに連続で叩き込んで後退りさせていく。そして最後に渾身のブローでもう一度機械兵器を吹っ飛ばすと、トドメを刺そうと右腰からオースキャナーを取り出すが…
ティア「待て拓斗!ソイツは倒すな!」
オーズ『!えっ?!』
機械兵器にトドメを刺そうとしたオーズを何故かティアが呼び止め、オーズはスキャナーを持つ手を止めて驚愕しながらティアの方へと振り返った。
ティア「ソイツの正体が何なのか気になる!動けないように生け捕りにしてどっから来たのか吐かせろ!」
オーズ『はぁ?!そんな、無茶言うなって!大体吐かせようにも話が通じる相手じゃな―ガギイィンッ!―アイタァッ?!』
ティアの無理難題に流石にオーズも反論するが、その間に機械兵器が態勢を立て直してオーズの背中を刃で斬り裂いてしまい、オーズは一瞬怯みながらもゴリラバゴーンで機械兵器の攻撃を受け止め徐々に後退していく。其処へ……
「―――どうなってんだ、これは……」
オーズ達が戦う場へと先程機械兵器と共に転移してきたレツ達一行が現れ、一同は機械兵器と戦うオーズを見て頭上に疑問符を並べた。
「あれって、コウヤさん達と同じマスクドウォーリアー?」
「でもなんか……にぃ達と雰囲気が違くない?」
レツの背後に立つ二人の少女はゴリラバゴーンで機械兵器に反撃するオーズを見て疑問げに首を傾げ、その二人の隣に立つ青年……コウヤは険しげに眉を寄せてオーズの戦いを見つめていた。
コウヤ「(あのマスクドウォーリヤー……俺やレツのとは系統が違う……やはり此処は別世界の……とにかく、アルファをこのままにしておくわけにはいかないか)……レツ、俺達も行くぞ。リュナ、お前はフィオとサヤカを守れっ!」
レツ「ッ!はい師匠!」
リュナ「言われなくても分かっています!」
強気にそう言ってリュナと呼ばれた女性は二人の少女……フィオとサヤカを連れ二人から離れていき、それを確認したコウヤは既に剣を手に構えるレツと肩を並べた。そしてコウヤは独特な構えを取っていき、レツは剣の刀身と柄の間にあるパスにカードをセットし、柄に備え付けられた紐を強く引いていった。そして……
『変身ッ!』
『YU-O-!Stand Up!』
高らかな叫びと共に、二人の体が極光に包まれながらその姿を変えていったのであった。コウヤは頭部と胸に骸骨のマークが刻まれた灰色のボディの戦士、レツは緑のラインが走った白いボディの戦士……『リクサリア』と『勇王』へと変身し、二人はそれぞれ構えを取り機械兵器……アルファに向かって突っ込んでいった。
―グガアァンッ!!グガアァンッ!!ガギィンッ!!―
オーズ『こん、のぉっ!!ティアちゃん!何か遠距離から攻撃出来るメダルとかないの?!』
ティア「ない」
オーズ『じゃあカマキリのメダルは?!』
ティア「カザリに取られたからない」
オーズ『ならコイツに強いメダルは?!』
ティア「ハハッ、私が知るか」
オーズ『なんで今ちょっと胸張って言ったァッ?!』
その一方で、ティアにアルファを生け捕りにするように言われたオーズは防戦に徹しながらも、アルファの動きを止めようと足と腕を狙って攻撃していた。だが反撃に移ろうとした瞬間にアルファが次の刃を振りかぶって攻撃してくる為に、中々狙い通りの攻撃が出来ずに苦戦していた。その時……
リクサリア『オォォォッラアァッ!!』
勇王『セエアァッ!!』
―ズバアァッ!!―
『?!!』
オーズ『……へっ?』
不意を突くように、勇王とリクサリアが背後からアルファに斬り掛かっていったのである。不意打ちされたアルファは思わず動きを止めて二人の方へと振り返り、勇王とリクサリアは一旦距離を離し構えを取った。
リクサリア『レツ!奴との戦い方は前回と同じだ!俺が奴の防御力を削り、お前がそこを狙ってダメージを与える!いいな?!』
勇王『はい!うおおおおおおおぉぉぉぉぉッ!!』
リクサリアから聞かされた作戦に頷くと、勇王は先に飛び出したリクサリアの後を追うようにアルファへと突っ込んでいき、アルファもそれを迎え撃つように刃を構えて二人に襲い掛かっていった。そして……
オーズ『…………』
ティア「…………」
残されたオーズとティアはと言うと、突如現れた乱入者である勇王とリクサリアを見て呆然と固まっていた。するとオーズはティアの方へと顔だけ振り向かせ、勇王達を指差しながら一言。
オーズ『誰?』
ティア「知るか」
当然の返答だった。