仮面ライダーオーズ メダルと欲望と不幸?少年   作:風人Ⅱ

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第五章/クビと勇王と悲劇④

 

 

―神道家―

 

 

その日の夕方……

 

 

拓斗「―――痛ったッ?!ちょ、良いって椎名ちゃん!これぐらい別に何ともっ……!」

 

 

椎名「良い訳ないでしょっ?!ほら!いいから大人しくする!」

 

 

リュナ「あ、あの…良ければ私もお手伝いしましょうか?」

 

 

拓斗「あ、いえいえいえ!お気になさらず!皆さんはゆっくり寛いでいてくださアイタァッ?!」

 

 

市街地でのアルファとの戦闘後、アルファを取り逃がしてしまった拓斗とティアは取りあえずレツ達を家に連れてきていた。ちなみに今現在はレツ達を居間に集め、その中で先程ティアが連絡して呼んだ椎名に拓斗の怪我の治療をさせている最中だった。

 

 

ティア「全く、お前の運の悪さにはほとほど呆れ果てたな。こっちはお前に死なれたら困ると前にも言っただろう?」

 

 

拓斗「あ、あれは仕方ないっていうかっ、こうして生きてたんだから大丈夫だって!」

 

 

椎名「何処がよ?!こっちはティアに呼び出されて来てみれば、頭を血で真っ赤に染めたアンタや気絶してウーウーうなされる女の子達を看病する知らない人達がいるし、もう何が何だか分からなかったわ!!」

 

 

先程拓斗の家に訪れた時に始めて見た光景を思い出し、ガー!と拓斗に怒鳴り声を上げる椎名。因みに椎名にはレツたちの事はティアが先程の経緯を大体話した為に事態を何となく理解しており、今は先程よりかは落ち着きを取り戻せている。ついでに言うと、美那子も紗奈も何処かに出掛けているのか帰ってきた時にはいなかった為、今のところレツ達の事は椎名しか知らない。

 

 

ティア「ま、そんなことはどうでもいいとして……そろそろ話してもらおうか?お前達は一体何者で、あのオーズに似た姿は何なのかを」

 

 

コウヤ「…………」

 

 

ティアは口に加えていたアイス棒の先端を部屋の隅に両腕を組んで座るコウヤに向けながらそう問い掛けるが、コウヤは瞳を伏せたまま口を閉ざし何も答えようとはしない。

 

 

ティア「ッ…おい!何黙りこくってる?!さっさとハキハキと答えろっ!」

 

 

拓斗「まっ、ティアちゃん!落ち着けって!あの……無理にとは聞きませんけど、出来れば可能な限り事情を話してもらって良いですか?正直、俺も貴方達の事は気になってるし……」

 

 

コウヤ「…………」

 

 

苛立ちを受かべるティアを宥めながら、丁寧な口調でコウヤに問い掛ける拓斗。するとコウヤは片目だけを開いてレツ達の方を見ると、どうやらレツ達はコウヤに判断を一任するらしく、正座したままジッとコウヤを見つめている。それを見たコウヤは軽く息を吐き、ゆっくりと目を開いた。

 

 

コウヤ「……俺達のことを話すのは構わない。だが、その前に幾つか条件がある」

 

 

拓斗「え……条件?」

 

 

コウヤ「そう。先ず一つ目、俺達はある事情があって詳しい素性を明かせない。俺達の名前やあの機械兵、そして俺達が変身した姿のことは教えられるが、それ以上の事は詮索しないで欲しい」

 

 

ティア「…なにっ?」

 

 

人差し指を向けて拓斗達に条件とやらを提示するコウヤ。それを聞いたティアは険しげに眉を寄せ、コウヤはそれを他所に人差し指にもう一本指を加えた。

 

 

コウヤ「二つ目、暫くの間此処を俺達の拠点にさせて欲しい。俺達はこの国のことを詳しくは知らないし、安全を確保する為にも何処かに身を固める必要がある。しかしこちら側の人間にあまり俺達の事は知られる訳にはいかないから、話しをする代わりに暫く此処に置いてもらいたい」

 

 

そしてと、コウヤは薬指を立たせて指を三本に増やし言葉を紡ぐ。

 

 

コウヤ「三つ目、こちらの身の安全を保証してもらいたい。この三つを守ってもらえるなら出来る限りの事は話す。もし無理なら……このまま此処を立ち去らせてもらう」

 

 

ティア「……ハッ、随分とぶてぶてしい奴だな?こっちはお前等なんかを助ける為に、わざわざあの人形を逃がしたんだぞ?!そんな条件無効に「良いですよ」決まって……あ?」

 

 

コウヤの出した条件を跳ね退けようとしたティアだが、それを遮るように横から少年……治療を終えて頭に何重も包帯を巻いた拓斗がその条件を飲むと微笑しながら告げた。

 

 

拓斗「その条件を飲めば、皆さんの事を話してくれるんですよね?なら良いですよ、俺は」

 

 

椎名「ちょっ?!アンタ、そんな簡単に決めちゃって良いわけっ?!」

 

 

ティア「良い訳あるかっ!おい拓斗っ!何勝手に話を決めてるっ?!」

 

 

自分の意思とは反対に、レツ達を受け入れると勝手に決める拓斗へと詰め寄っていくティア。だが拓斗は特に気にした様子もなく、頬を掻きながら「うーん」と声を漏らし……

 

 

拓斗「でもさ、どっちにしろ話を聞かせてくれるんだから良いんじゃないかな?それにさっき助けてやったなんて言うけど、実際助けられたのは俺の方だしさ。そのあと俺もこの人たちを助けて借りを返した訳だし、もう俺達の間に貸し借りはないでしょ?」

 

 

ティア「お前っ……!」

 

 

そのことを黙ってコウヤ達から話を聞き出そうとしたのにと、拓斗の口からバラされて更に不機嫌顔になるティア。拓斗はそんなティアから目を逸らし、レツ達に視線を移した。

 

 

拓斗「この人達にもきっと、何か人には話せない事情があるんだよ。それを無理矢理聞き出したりするのは、ちょっとどうかと思うし……それに、この人が家に置いて欲しいって言ったのも、多分この人達の為だと思う……事情は分からないけど困ってるみたいだし、そんな人の頼みを無下にするのは、俺も何か嫌だからさ」

 

 

コウヤ「……随分と甘いんだな、お前は」

 

 

拓斗「あ、あはは……良く色んな人に言われますυυ」

 

 

コウヤから手厳しい評価を貰って後頭部を掻きながら苦笑する拓斗。そんな拓斗を見てコウヤは薄く溜め息をこぼすと、含み笑いして拓斗に顔を向けた。

 

 

コウヤ「だが、今はお前のその甘さに感謝するべきか……こちらもちゃんと約束は守ろう。俺は紫堂コウヤ。そしてこっちが……」

 

 

レツ「九条レツです。さっきは危ないところをありがとう、お陰で助かったよ」

 

 

拓斗「あ、じゃあ君があの時の仮面の?こっちこそ、さっきは助けてもらってありがとう」

 

 

軽く頭を下げて礼を告げるレツに、拓斗も微笑しながらレツに向けて頭を下げて礼を告げた。

 

 

フィオ「んで、ボクは九条リュナ。にぃの妹だよ、宜しくね♪」

 

 

サヤカ「あ、わ、私は九条サヤカと言います、宜しくお願いします……」

 

 

リュナ「私はリュナ。普段はレツ様のお世話係を勤めさせて頂いております」

 

 

椎名「?お世話係って……え?もしかして九条君たちって、どっかのお金持ちの息子さんとお嬢さん……とか?」

 

 

コウヤ「……まあそうだな、そう考えてくれれば構わない」

 

 

先程の自分達のことを詮索しないで欲しいという事もあってか、椎名の質問に対し何処か投げやりで答えるコウヤ。

 

 

ティア「チッ……なら次の質問だ。あの時お前たちが変わった姿……アレは一体なんだ?」

 

 

ティアがアレと指しているのは、アルファとの戦闘でレツとコウヤが変身した勇王とリクサリアの事だろう。その質問の意味を悟ったコウヤは真っすぐ拓斗達に顔を向け、口を開いた。

 

 

コウヤ「アレの名はマスクドウォーリアー……通称、仮面を身に付けた戦士だ」

 

 

拓斗「?マスクド……ウォーリアー……?」

 

 

コウヤ「ある【秘宝】の力を使って変身した者の名を示す戦士の事だ。その秘宝の事は詳しく話せないが、持ち主次第では世界を支配する事も可能と言われてる……それを使って変身するのが、マスクドウォーリアーって訳だ」

 

 

椎名「世界を支配出来るって……そんな物騒な秘宝がこんな世の中にあったなんて……」

 

 

ティア(成る程……つまりオーズと似たような存在、って訳か……)

 

 

マスクドウォーリアーの説明をコウヤから聞かされた拓斗と椎名は信じられないといった顔を受かべて唖然となり、ティアはチラッと自分の右手の中のメダルを見つめていた。するとレツは何処からか一本の剣……勇王に変身した時に使ったブレイブソードを取り出しテーブルの上に置いた。

 

 

レツ「そしてこれが、俺がマスクドウォーリアーに変身する時に使う秘宝……ブレイブソードです」

 

 

拓斗「この剣が?これを使えば、そのマスクドウォーリアーになれるって事?」

 

 

コウヤ「まあな。その他にも、生まれつきマスクドウォーリアーの力を持ってる者もいる。それがマスクドウォーリアーリクレシアである俺……そしてブレイブソードを使ってレツが変身する勇王、ってところだ」

 

 

ティア「……成る程……マスクドウォーリアーとやらの事は大体分かった。なら、あの人形は一体なんだ?」

 

 

ティアは先程オーズと勇王とリクレシアが戦ったアルファを思い出しながら再びコウヤに問うと、コウヤは居間の窓の方に目を向けてそれに答える。

 

 

コウヤ「アレの名は機械兵"アルファ"……俺達と敵対するある人物が送り付けた刺客だ」

 

 

拓斗「刺客って……あのロボットがですか?」

 

 

コウヤ「まあな……奴とはお前達と会う前に一度だけ戦ったんだが、思いがけないアクシデントがあってな。そのせいでトドメを刺す前に、まんまと逃げられてしまったんだ」

 

 

ティア「つまり、お前達のドジのせいであんなのが今も街に潜んでるってワケか……はた迷惑な連中め」

 

 

椎名「アンタは少し黙ってなさい!……っていうか、今そのロボットが刺客って言いましたよね?安全を確保したいって、もしかしてソイツに皆さんが狙われてるからとか……?」

 

 

『…………』

 

 

推測から恐る恐るレツ達にそう問い掛ける椎名。だがレツ達はその問いに答えず、代わりにコウヤがそれに答えた。

 

 

コウヤ「すまないが、そのことも話せない。下手に話せばお前達の身も狙われる可能性があるからな……知らない方がいい」

 

 

椎名「あ……は、はい」

 

 

真剣な顔で話すコウヤから余程ただ事ではないのだと悟ったのか、余り深く聞き入らず納得するように頷き返す椎名。そして一通り話を終えたコウヤは軽く息を吐き、拓斗達に視線を戻した。

 

 

コウヤ「一応、俺たちが話せるのは此処までだ。次はそちらの番、お前達とこの街の事を教えてもらえないか?」

 

 

拓斗「あ、はい。俺に話せる事があれば幾らでも」

 

 

コウヤ「助かる。そうだな……先ずは―――」

 

 

と、コウヤは早速拓斗から今知りたい事を聞き出そうと口を開く。が……

 

 

―ガラララッ―

 

 

紗奈「ただいまぁー」

 

 

美那子「ただいまぁ~……あら?拓斗にティアちゃん、椎名ちゃんも?帰ってたの?」

 

 

拓斗「え……って、母さん?!紗奈?!」

 

 

突然居間の扉が開き、其処から家にいなかったハズの美那子と紗奈が買物袋を手に姿を現したのであった。拓斗はいきなり帰ってきた二人を見て慌てて立ち上がりレツ達と美那子達を交互に見つめ、二人はレツ達の存在に気付き首を傾げた。

 

 

美那子「あら?珍しく団体さんがいらしてるわね……お客さん?」

 

 

拓斗「いやっ、その、お客さんと言えばお客さんなんだけど……実は―――」

 

 

ティア「――コイツ等全員、暫く此処に泊めることにするんだとさ……コイツの一任で」

 

 

拓斗「ちょっ?!ティアちゃん?!」

 

 

なんとか事情を上手く説明してレツ達の暫くの滞在を許してもらおうとした拓斗だが、先程のお返しと言うようにティアにアッサリばらされ愕然としてしまう。それを聞いた美那子は……

 

 

美那子「暫く泊めるって、この人達を?」

 

 

拓斗「え、えっと……そう……ちょっといろいろ訳があって……」

 

 

美那子「そうなの――――助かったわ、絶好のベストタイミングね♪」

 

 

拓斗「いや無理なのは分かってるけど!そこを何とか……って、へ?」

 

 

美那子に断られると思って両手を合わせながら必死に頼み込もうとした拓斗だが、美那子の言葉を耳にして唖然とした表情を浮かべた。たが美那子はそんな拓斗の様子に気付かず、片手に持っていた買物袋を拓斗に見せるように上げた。

 

 

美那子「実はさっき紗奈が懸賞で当てた『一家団欒・豪華焼肉セット』と『特盛お野菜セット』が配達で届いたんだけど、量が多すぎてどうしようかと困ってたところなのよぉ~。あっ、これさっきスーパーの特売で買ったタレね♪」

 

 

紗奈「しかもその帰りに、ちょうど家に来ようとしてたお兄ちゃんの友達兼焼肉屋の息子さんがお肉の差し入れをくれたからさあコレどうしようかー?みたいな感じでお母さんと話しながら帰ってきたんだよねえー。で、コレがそのお肉」

 

 

美那子「もし量が多すぎて食べ切れなかったらお隣りさんに差し入れしようかと思ったけど、これだけの人数ならペロッと食べられるわねぇ。助かったわ拓斗♪」

 

 

拓斗「……えっと……ならこの人達の滞在は……?」

 

 

美那子「別に良いわよ?断る理由だってないし♪」

 

 

…………んなアッサリと、とティアの時とは違い詳しい事情も聞かず案外簡単に受け入れられて唖然となる拓斗。美那子と紗奈はそんな拓斗を他所にテーブルの上に買物袋を置くと、レツ達の方に振り返った。

 

 

美那子「さてと、取りあえず自己紹介からするけど、私が拓斗の母の美那子です。で、こっちが娘の紗奈」

 

 

紗奈「初めましてー。まあ私の事は適当に『紗奈』か『スズチャン』か『スズナーン』か『スズニャ~ン』とでも呼んで下され」

 

 

拓斗「なんでさ……」

 

 

美那子「いきなりで悪いんだけど、皆にも夕食の準備を手伝ってもらって良いかしら?あ、椎名ちゃんも良ければ一緒に食べて行ってくれる?」

 

 

椎名「あ、は、はい」

 

 

リュナ「あの、手伝いとは何を……?」

 

 

美那子「ふふ、そんな固くならなくても、ただお野菜を洗ったり切ったりとかしてもらうだけだから。えっと……そちらの三人と椎名ちゃん、あとティアちゃんには台所でお野菜を切るの手伝ってくれる?」

 

 

サヤカ「あ、は、はい。分かりました」

 

 

フィオ「うん、ボクもいいよ♪」

 

 

ティア「……なんで私まで手伝わなきゃならないんだ……勝手にやってろ」

 

 

椎名「良いからアンタも手伝いなさい!ほらっ!」

 

 

ティア「うぉっ?!おま、いきなりなにする?!話せコラッ!!おいっ!!」

 

 

美那子は買物袋を手にリュナとフィオとサヤカの三人を連れて台所へと向かっていき、椎名は手伝う気0のティアの襟首を掴み強引に台所へと連れていった。

 

 

紗奈「それでは、残る男衆には新聞紙とガスコンロのセッティングをお願い致しまする」

 

 

拓斗「はいはい……」

 

 

紗奈「あ……因みに、作業が終わるまで安易に台所に入らない事をオススメするよ。でないと……」

 

 

レツ「?でないと?」

 

 

紗奈「台所に足を踏み入れた瞬間に『ひでぶっ!!』とか『ひらめっ!!』とか『ぱっぴっぷっぺっ、ぽぉっ!!』といった奇声を上げるハメになるからご注意を」

 

 

拓斗「何処のマンガの雑魚キャラの断末魔っ?!」

 

 

コウヤ「というか、入った瞬間にそんな台詞を言ってしまう状況って何が起きてんだよ……」

 

 

淡々とした口調で激しく気になる警告をして台所へと戻っていった紗奈に冷や汗を流す拓斗達。そして台所から聞こえてくる女子達の声を聞きながら互いに顔を見合わせると……

 

 

拓斗「……取りあえず、言われた通りに作業しますか?」

 

 

レツ「そう、だねυυ」

 

 

コウヤ「おい。後でさっきの話の続き、ちゃんと聞かせろよ」

 

 

拓斗「あ、はいυυ」

 

 

取りあえず紗奈に言われた通りに新聞紙とガスコンロを用意しようと、拓斗達もそれぞれ作業に入っていくのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

―星華市・廃工事―

 

 

それから数時間後、星華市内に存在するとある廃工事。其処には今、黒ずくめの格好をした二人組の男達が大量の札束を手にゲラゲラと笑い声を上げていた。

 

 

「いやあぁ~、思ったより簡単にいきましたねえ~。しかもこんな大金!」

 

 

「あったぼうよ!俺が念入りに調べた上で立てた計画だぜ?失敗する要素なんかそれこそねぇってもんさ!」

 

 

札束を片手に信じられないといった様に興奮する細身の男に、豪快な笑みを浮かべながら大量のお札が入ったバッグを見下ろす大柄の男。どうやらこの二人組は銀行強盗らしく、札束を手にしてる辺りどうやら犯行は成功したらしい。

 

 

「さあてと、次は何処の銀行を狙うとすっかなぁ」

 

 

「……え?ま、まだやるんすか?!もう止めてた方がいいんじゃ……」

 

 

「バッカ!こんなのはまだ全然足りねえよっ!もっともっともっと……もっと金を手に入れなきゃ全然足りねえっ……」

 

 

引き止める細身の男の制止も聞かず、大柄の男は欲望でギラついた目でバッグの中の札束をわし掴み力強く握り締めていく。そんな時……

 

 

―チャリッ……チャリッ……チャリッ……―

 

 

『……え?』

 

 

静寂に包まれた工事内に、何処からかコインの音が聞こえてきた。それに気づいた二人は思わず辺りを見渡しその音が聞こえてくる方へと振り返ると、其処には工事の入り口から青白い光りを放ちながら歩み寄ってくる異形……グリードの姿があったのだ。

 

 

『みぃーつけた、丁度いい欲望』

 

 

「な、ななななな?!何だありゃあ?!」

 

 

「ば、化け物ぉ?!」

 

 

突如姿を現したグリードに二人組は顔を青ざめ、金の入ったバッグを抱えながら情けない格好で後退りしていく。そしてグリードは手の中に握っていたセルメダルを構えると、それに呼応するように大柄の男の額にコインの投入口が出現し……

 

 

『その欲望、解放しろ!』

 

 

―ヒュンッ、チャリンッ!―

 

 

「ウガッ?!」

 

 

コインの投入口目掛けて、セルメダルを投げつけ投入していったのだった。その直後に男の腹に出現した穴から白ヤミーが這いずり出て来るが、その姿はウヴァやカザリが生み出すヤミーと大きく違った姿をしていた。先ず全身を纏う包帯がギザギザに鋭く尖っており、目付きもウヴァ達のとは違い鋭い物となっていた。

 

 

『グッ…ウォ……オォォォォッ……!』

 

 

『フフッ、久しぶりで少し心配だったけど、思ったより良いのが出来たな。やっぱり元の欲望が良かったからかな?』

 

 

唸り声を上げる白ヤミーを見て、グリードは恐ろしさのあまり気絶した二人組を見て満足げに笑うと、全身をセルメダルで包み込んで別の姿へと変わっていき、青髪の女性……クラルへと変わっていった。

 

 

クラル「ふん。今に見てろよ、オーズにあの時の人間?絶対にお前達にリベンジして、僕のコアメダルを取り返してやる!」

 

 

表情に暗い笑みを浮かべ、「くっくっくっ」と三下めいた笑みを浮かべるクラル。白ヤミーはそんなクラルの意思に応えるような咆哮を上げ、廃工事を出て夜の街へと飛び出していったのだった。

 

 

 

 

 

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