仮面ライダーオーズ メダルと欲望と不幸?少年   作:風人Ⅱ

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別世界のメダルと解放と水星ヤミー

 

 

――拓斗がレツ達と出会う数日前、星華市内の何処かに存在するとある古屋敷。建物全体がボロボロに朽ち果て、夜になれば霊の類いが出て来ても可笑しくない不気味な雰囲気を漂わせるこの屋敷の中にて、二人の人物の姿があった。

 

 

『―――ふむ。中々強固に封印されてるようですね、この石盤』

 

 

屋敷のエントランス。その中心に置かれたテーブルには黒いローブの男……何かの作業をする黒月八雲と、その八雲を離れた場所から感情のない表情で見つめる青髪の少女の姿があった。そして八雲が座るテーブルの上には、以前グリード達が封印されていた棺と同じ紋様が刻まれた石盤が置かれており、八雲はそれを手に石盤をジッと眺めていた。

 

 

『以前断罪の神が創り出してお蔵入りになり、冥王がこの世界に持ち出したコアメダルの片割れ……流石にそう簡単に解放されないように封印もしっかりされてますねぇ……ならば――』

 

 

ニヤリとローブの下で笑うと、八雲は右手の人差し指の先にバチバチとスパークして輝くエネルギーを生み出し、それを石盤の表面にゆっくりと当てていく。その瞬間、石盤から突然無数の文字のようなビジョンが宙へと浮き上がって次々と消えていき、最後には石盤からスパークが発生し弾けるように四散していった。

 

 

『流石はフィクション。開けられないハズの物を開けれるように書き換えられば簡単に済む……さて……』

 

 

気を取り直してというかのように、ゆっくりと石盤に触れていく八雲。すると、重たい石の音を辺りに響かせながら石盤の表面が徐々に退かされていき、石盤の中身が少しずつ見え始めていく。其処には……

 

 

『……ほぉ……これが"星のコアメダル"、ですか』

 

 

開け放たれた石盤の中に収められていたのは、太陽、月、地球の絵がそれぞれに刻まれた銀色の輝きを放つ十枚のメダル……銀のコアメダルだったのであった。八雲はそれらを眺めながら何処か楽しげに目を細めると、石盤の中心に収められたコアの一枚に指先で触れた。

 

 

『成る程……中々に面白い欲望を秘めていますねぇ。フフッ、これはまた新しい娯楽になってくれそうだ』

 

 

歪な笑みを浮かべて真ん中のコアを指先でなぞると、八雲はコアをなぞっていた人差し指と親指でメダルを一枚挟み、そして……

 

 

『その欲望を満たしたいのでしょう?ならば起こしてさしあげよう……そして、新たな悲劇の火種となるがいいッ!』

 

 

―ビシッ……パリイィンッ!!―

 

 

なんと、コアを挟んでいた親指と人差し指に力を込め、コアは表面に亀裂が入って直ぐ粉々に砕け霧散してしまったのだった。そしてそれと共に、石盤に収められる残った九枚のコアメダルが突如淡い銀色の光を纏いながら独りでに震え出し、八雲はその様子を眺めて口端を吊り上げていた……

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

――それから二日後。拓斗等がネコヤミーを撃退したその翌日、星華市のとある地下駐車場……

 

 

―……ドガァァァァァァァァァァァァァンッ!!!―

 

 

NL『グゥアァッ?!』

 

 

レイディ『クッ……!』

 

 

無数の車が駐車されたこの場所にて、今二人のライダー……楯無が変身する仮面ライダーレイディと、チェスが変身する仮面ライダーNLが壁を突き破りながら外から吹っ飛ばされてきた。NLは瓦礫と共に地面を何度も転がって倒れ込んでしまい、レイディは何とか受け身を取って咄嗟に態勢を立て直すと、自分たちが吹っ飛ばされてきた方向に向けて蒼流旋を構えながらNLの前に立った。

 

 

レイディ『大丈夫かしら、一番弟子君?立てる?』

 

 

NL『グッ…なんとかっ…けど、一体何なんだアイツは?!』

 

 

レイディ『さあ……ヤミーなのは間違いないと思うけど、あんなタイプはユリカさんから聞いた事ないわね。まさか――』

 

 

蒼流旋を構えるレイディが言葉を言い切る前に、二人が突き破った壁の穴の向こうから何かが徐々に姿を現していく。水色のボディに右腕には氷塊で出来た鋭い突起を持ち、身体全体から冷気を放っている異形。レイディはその異形に向けて蒼流旋を構えながら、僅かに目を細めてポツリと口を開いた。

 

 

 

 

レイディ『――まさか……"人間そのものをヤミーにする"だなんてね……一体何処の悪趣味が作ったのか……』

 

 

『ヌウゥゥッ……オオォッ!!』

 

 

 

 

唸り声と共にレイディ達へと歩み寄っていく異形……人間が水星を模したヤミーに変化したマーキュリーヤミーを見据えて予想外だというようにレイディが呟くと、マーキュリーヤミーは右腕の突起を振りかぶってレイディとNLに襲い掛かり、二人は左右に散開してそれを避けながらそれぞれ射撃を繰り出していった。

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガンッ!!―

 

 

『ヌウゥゥゥッ……』

 

 

NL『ッ!やっぱり効いてないッ?!』

 

 

レイディ『これでもダメか……仕方ない、何とかダメージを負わせて戦闘不能にするしかないわ。元に戻す方法はそれからよっ!』

 

 

―チャリンッ!キキキンッ!―

 

 

『ICHIKA!BYAKU SHIKI!』

 

 

二人の同時射撃でもかすり傷すら負わせられない。これでは手加減しながらマーキュリーヤミーになってしまった人間を救う事は不可と判断し、レイディは咄嗟に白式タイプへとチェンジしながら右手に現れた雪片弐型でマーキュリーヤミーに斬り掛かり、それを見たNLも直ぐさまレイディを援護すべくネロアンジェロをマーキュリーヤミーに発砲していく。

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガンッ!!―

 

 

レイディ白式『ハァッ!!』

 

 

―ガギィンッ!ガギィンッ!ドガァッ!ガギィンッ!―

 

 

『ヌウゥッ……』

 

 

ネロアンジェロの銃口から撃ち出される無数の銃弾がマーキュリーヤミーに着弾して火花を散らしていき、レイディはその隙に銃撃を浴びせられて動きを封じられるマーキュリーヤミーに接近して素早く雪片弐型を振りかざし、マーキュリーヤミーをすれ違い様に斬り付けて背中を何度も斬っていく。しかし……

 

 

―……ピキッ……ビキビキビキビキッ……!―

 

 

レイディ白式『ハッ!……ッ?!これはっ……?!』

 

 

突如、マーキュリーヤミーを斬り付けていた雪片弐型の刃が徐々に凍っていき、遂には刃全体にも広がって刀が粉々に砕けてしまったのだ。レイディが凍り付けにされてしまった雪片弍型を見て驚愕する中、対するマーキュリーヤミーは背後に立つレイディを気にする様子もなく、首を動かして骨を鳴らしながら……

 

 

『ヌウゥゥゥォォォォォッ……オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーッ!!!!!』

 

 

―ドグオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッッ!!!!―

 

 

レイディ白式『なっ……』

 

 

NL『な、何だこの力?!うわあァァァァァァァァァァァァァァァァアッ?!!』

 

 

鼓膜を破られるのではないかと錯覚してしまいそうな信じられない大音量で叫び出したマーキュリーヤミー。それと同時に辺りに突然地響きが発生して地面が激しく揺れ、更にマーキュリーヤミーから発生した冷気を纏った衝撃波がレイディとNLを襲って吹っ飛ばしてしまい、衝撃波を受けた二人の身体が所々凍り付けになって動きを封じられてしまったのである。

 

 

NL『う、動けない?身体が?!』

 

 

レイディ白式『……まさかこれほどとはね……うん、流石の私も予想外だったかな?』

 

 

凍り付けにされて動けなくなってしまった身体に慌てふためくNLとは対照に、レイディは特に暴れもせず落ち着いた様子で仮面の下に笑みを浮かべているが、やはり焦りこそ感じるのかその顔には軽く汗が滲んでいる。そしてマーキュリーヤミーは首の骨を何度も鳴らして右腕の突起を構えると、そのまま動けないレイディとNLを何度も殴り飛ばしていってしまい、そのまま二人の首を掴んで持ち上げながら首を締め上げていく。

 

 

―ギギギギギッ!!―

 

 

NL『ガッ……ァ……ク、ソォッ……!』

 

 

レイディ白式(ッ!どうする?このままだと確実にやられる……やっぱり、人間ごとヤミーを討つしか……)

 

 

『ハアァァァァァァッ……!!』

 

 

首を締められて呼吸もままならず、凍り付けにされて両腕しか使えない状態からどうやって脱出するか思考するレイディ。しかしどれだけ考えても、この状態からヤミーになってしまった人間を殺さずに倒す方法が思い浮かばない。そうこう思い悩んでる間にも首を掴まれる腕に力が込められとうとう呼吸が出来なくなり、レイディは仕方がないと覚悟を決めて一枚のメダルを取り出しバックルに装填しようとした、その時……

 

 

 

 

―ババババババババババババババババァンッ!!―

 

 

『ヌオォッ?!!』

 

 

『…ッ?!』

 

 

突然マーキュリーヤミーに向かって無数の銃弾が降り注ぎ、マーキュリーヤミーはそれを防げぬまま全て受け吹っ飛ばされていったのだ。マーキュリーヤミーが吹っ飛んだ事で解放されたレイディとNLは、何度か咳込みながら困惑した表情で銃弾が放たれた先を見ると、其処には……銃口から煙が立つカルテナを構えたユリカが静かに立っていた。

 

 

NL『し、師匠?!』

 

 

レイディ白式『ユリカさん……!』

 

 

ユリカを見てレイディとNLが驚く中、ユリカは横目で二人の無事を確認すると吹っ飛ばされたマーキュリーヤミーに目を向けていき、カルテナを下げて悠然と歩み寄っていく。

 

 

ユリカ「星系のヤミー……どうやら、あのカイハとかいうグリードが作り出したのではなさそうね……だとすると……」

 

 

『グググッ……ガアァァァァァァァッ!!!』

 

 

何か心当たりがあるようにブツブツと呟くユリカだが、その時マーキュリーヤミーがレイディ達からユリカに標的を変えて立ち上がり、獣のような咆哮を上げてユリカに突っ込んでいった。しかし、ユリカはそれを見ても構えを取ろうとはせず……

 

 

 

 

 

ユリカ「ま、今はどうでもいいか……頼んだわよ?」

 

 

 

 

 

―ピシュンッ!―

 

 

祐輔?「ハイハイ…ホントに人使いが荒いんだから…」

 

 

『ッ?!―ドオォンッ!!―グオワァッ?!』

 

 

 

 

 

ユリカが淡々とした口調でポツリと呟いた瞬間、突如前触れもなくマーキュリーヤミーの背後に以前拓斗にケーキを届けてくれた青年……阿南祐輔が現れたのだ。そして祐輔は姿を現したと共にマーキュリーヤミーを背後から勢いよく手の平で押し飛ばすと、なんとマーキュリーヤミーがヤミーとなっていた男性の体から追い出されて地面を何度も転がっていったのだ。

 

 

NL『ヤ、ヤミーを追い出した?!』

 

 

ユリカ「……流石は二代目チートオブチートね、無効化の力でヤミーの力も無効にするなんて」

 

 

祐輔(平)「誉められても素直に喜べないけどねυυまぁ、頼まれた仕事は果たしたから、後は宜しくね?」

 

 

ヤミーから解放された男性を抱えてレイディとNLに目を向けながら少し離れる祐輔。それを見たレイディは左腰のスキャナーを手にしてバックルをスライドさせ、NLはネロアンジェロを顔の横に近づけた。

 

 

『Scanning Charge!』

 

 

NL『Check!』

 

 

『EXCEED CHARGE!』

 

 

―バシュウゥッ!―

 

 

『ヌウゥッ?!』

 

 

二つの電子音声が鳴り響くと共にレイディの体が金色の光に包まれて眩く輝き出し、それにより凍り付けになっていた身体が熱によって徐々に溶かされていく。そしてNLも地面に倒れたままネロアンジェロの銃口をマーキュリーヤミーに向けて引き金を引くと、銃口から撃ち出された弾がマーキュリーヤミーの前でマーカーとなって展開され動きを封じていき、それを見たレイディも咄嗟に光の刃を展開した雪片弍型で居合いの構えを取り、そして……

 

 

レイディ白式『ハアァァァァァァッ……ハアァッ!!』

 

 

―ズバアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!―

 

 

『ウグオォッ?!!ァ……グアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ?!!』

 

 

―チュドオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッ!!!―

 

 

マーカーにより動きを封じられるマーキュリーヤミーに向けて斜め一文字に雪片弍型を振るうと、雪片弍型の刃から金色の斬撃波が放たれマーカーごとマーキュリーヤミーを一刀両断し、マーキュリーヤミーは悲痛な断末魔を上げながら爆発を起こし跡形も残さず散っていった。そして爆発の中から一枚のセルメダルが飛び出すと、それを確認したレイディとNLはベルトを外し変身を解除した。

 

 

チェス「ハァ……ハァ……終わったっ……」

 

 

祐輔(平)「お疲れ、二人とも大丈夫だった?」

 

 

楯無「ええ、ちょっと危なかったですけどね……それより……」

 

 

男性を抱えながら歩み寄り労いの言葉を掛ける祐輔にそう言うと、楯無はメダルを拾うユリカに目を向けて立ち上がり、ユリカに近づいて話し掛けた。

 

 

楯無「ユリカさん、今のヤミーは……」

 

 

ユリカ「……恐らく貴方が想像してる通りよ……あのヤミーは間違いなく、この世界のグリードが生み出したものではない」

 

 

楯無「では、やっぱり違う世界の?」

 

 

ユリカ「そう考えるのが自然でしょうね……何故この世界にはいないハズの別の世界のグリードがこの世界に現れたのか……やっぱり……」

 

 

手の平のセルメダルを握り締めながら、何処か感慨深い表情を浮かべるユリカ。楯無はそんなユリカの顔を見て眉を険しげに寄せると、ユリカは服に付いた汚れを払うチェスに近づいた。

 

 

ユリカ「チェス、一つ頼みがある」

 

 

チェス「…え?頼み、ですか?」

 

 

ユリカ「そう……これからさっきのヤミーを生み出したグリードが誰か、そしてそのグリードを解放したのが何者か調べて欲しい……恐らくそいつは、この世界でのグリード達の復活にも関与してる筈……」

 

 

チェス「ッ!それって……」

 

 

険しい表情を浮かべながらそう告げたユリカの言葉に、チェスは一瞬思い当たる人物を思い出し息を拒んだ。そしてチェスは暫く考え込むように顔を俯かせると、顔を上げて首を縦に振った。

 

 

チェス「分かりました。その件は俺の方で追ってみます」

 

 

ユリカ「お願いね……でも一つだけ言っておくけど、もしも"あの男"だった場合はくれぐれも手を出さないように……絶対によ?」

 

 

チェス「……はい。肝に命じておきます」

 

 

何度も忠告してくるユリカに深く頷き返すと、チェスはそのまま背後に出現した歪みの壁を潜って何処かへと向かっていった。そしてそれを見送ると、ユリカは男性を仰向けに寝かせている祐輔と楯無に歩み寄り、膝を付いて男性の顔を見た。

 

 

ユリカ「取りあえず、彼は一応病院に連れて医者に診せた方が良いかもしれないわね。寄生型と違って本人自体がヤミーになったのだし、何かしらの異常が起きてたら後々面倒だわ……」

 

 

楯無「そうですね……なら私が車を回させます。此処からなら車で行った方が早いだろうし、ユリカさんもまだやることが残ってるでしょう?」

 

 

ユリカ「……そうね。多分既に知ってるだろうけど、私も神上にこの件を知らせないといけないし……貴方に任せるわ」

 

 

この後の事後処理や調査といったユリカの仕事を配慮してか、被害者を病院へ運ぶのを引き受ける楯無に後を任せ、ユリカは祐輔と共にその場を後にするように歩き出していった。

 

 

祐輔(平)「それにしても、まさかいきなり救援に呼び出されるとは思いもしなかったよ」

 

 

ユリカ「今回ばかりは私も後手に回ったせいで、アレに対抗する準備が間に合わなくてね…それにヤミーになってしまった人間を救い出すだけなら、貴方の力を借りた方が手っ取り早いと判断したのよ…」

 

 

祐輔(平)「あー、成る程……でも大丈夫なの?あのヤミー、普通のとは違ってかなりの戦闘力があるみたいだし、しかもただ倒せば良いってだけでもないんでしょう?」

 

 

ユリカ「その辺の対策は既に考えてあるから問題ない……ただ神道拓斗にはアレを倒す手段がないから、先ずは例のアレを見つけ出す必要がある……」

 

 

祐輔(平)「例のアレ……っていうと……」

 

 

例のアレ。ユリカが呟いたそれに祐輔が顎に手を沿え心当たりを探すように思案すると、ユリカは歩みを進めたまま懐からノアノートを取り出し、端末を操作して画面にあるデータを映し出した。

 

 

ユリカ「――恐らくアレは星のコアメダルを持つグリードによって作られたもの……ならば多分、対となる神のコアメダルがこの世界の何処かに存在する筈……それを探し出せば……」

 

 

画面に映し出されたのは、太陽、星、地球の絵が刻まれた三枚のコアメダルと、それと対となるイメージを感じさせる金色の輝きを放つ三枚のコアメダルだったのであった……

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

一方同じ頃、とあるビル街に建つ建物の屋上……

 

 

『――正義の鉄槌は、失敗に終わった……』

 

 

星華市の何処かに存在する建物の屋上にて、ポツリと眼下で行き交う街の人達を見下ろしながらそう呟いた銀色の異形。その手には、何枚もの指名手配書や新聞の記事などが握られており、その中にはマーキュリーヤミーとなった男性が強盗の容疑で指名手配されてる記事もあった。

 

 

『罪ある人間を己の欲望で暴走させて破滅の道を歩ませ、最後には己の欲望を満たさせ消滅させる……その正義の裁きを邪魔する者も、罪ある人間ッ!!』

 

 

グシャッ!!と、異形の手に握られた記事が握り潰されてグシャグシャになってしまうが、異形はそれを気にする様子もなく忌ま忌ましげに街を行き交う人々を見下ろした。

 

 

『許さない……私の審判に抗う者は……私こそが正義、私の行う全てが正義!!私以外は全て悪!!故に私の決定に従わぬ者は、全て存在してはならぬ醜い巨悪なのだッ!!』

 

 

高らかにそう叫ぶと共に、異形は手に持っていた記事を握り締めながら何処からかセルメダルを一枚取り出し、屋上から別の建物へと跳び移って何処かへと向かっていったのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

同時刻……

 

 

「……ん?アイツのヤミーの気配が消えた……誰かが倒したのか、それとも欲望を満たして消えちゃったのかな?」

 

 

市内のとある神社。とても暖かい日差しが差す縁側でゴロリと寝転がって眠っていた一人の金髪の少女が、何かを感じ取ったかのように床に付けていた顔を少し上げて外を見た。すると、少女はゆっくりと体を起こして軽く伸びをし、傍らに置いておいた奇妙なカエルのような帽子をポフッと頭に被った。

 

 

「あーあ……せっかく人が封印から解かれて今の生活を楽しんでたのに、アイツが復活してから安心して眠れやしないよ」

 

 

ふぁ~と、口に手を当てながら大きな欠伸をする少女。そして少女は欠伸をして目尻に浮かんだ涙を手の甲でゴシゴシと拭うと、徐にポケットから三枚のメダル……三人の仮面の戦士の絵が刻まれた金のコアメダルを取り出した。

 

 

「まぁ、どうせこんな日が来るだろうとは思ってたけどさ……どの道この世界のオーズも手段を探しに此処に来るだろうし、私もその時に動けばいいかな?」

 

 

今はまだ一刻を争う事態って訳じゃないみたいだしと、少女は取り出した三枚のメダルを指で弾いて宙へと浮かせると、落下してきた三枚を掴み取ってそのまま大の字に寝転がり、眠そうに欠伸をして眠り始めたのであった。

 

 

 

 

 

銀のコアメダルと金のコアメダル、そしてそれを持つ二人のグリード。

 

 

これが後にオーズこと神道拓斗を振り回す事になろうとは、この時はまだ当人は疎か誰も想像すらしていなかったのだった……

 

 

 

 

 

 

因みに拓斗はというと……

 

 

拓斗「――ヘックシッ!!んん?何だろ今の寒気……こういう時って、必ず後で不幸が起きてたような?」

 

 

『犯人に再度通達する!!店内に捕らえている人質を速やかに解放し、武器を捨てて投降しなさい!!』

 

 

「うるせぇッ!人質を無事に解放してほしけりゃ、今すぐ逃走用の車を用意しろッ!でなきゃこのガキぶっ殺すぞッ!!」

 

 

拓斗(…あーいや、今もうなってたんだっけ?うーん、どうしよ?このまま怪我せずに帰れるかなぁ……って、アーーやばいッ?!!さっき買ったアイスが溶けてるッ?!ちょっ、なんか氷とかない氷ッ?!うわっ、しかも犯人さんの靴に滴ってるしッ?!あーー……これ後で弁償した方がいいかなぁ……)

 

 

……たまたまコンビニに立ち寄った所を突然コンビニ強盗に襲撃され、更に人質にされてこめかみに拳銃を突き付けられているにも関わらず、自分の身より溶け掛けのアイスと犯人の靴を心配していたのだった。

 

 

 

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