―神道家・拓斗の自室―
場所は戻り、レツ達の歓迎も含めた焼肉パーティーが終わったあと、自分の部屋にレツとコウヤを泊める事になった拓斗は二人の布団を用意し、レツとコウヤに先程話し損ねた自分達の事とこの街の事を説明していた。因みにティアは此処にレツ達が泊まる事になったため、本人の否応無しに強制的にリュナ達が寝泊まりする客間で過ごす事になった。
コウヤ「―――成る程……星華市にヤミーにグリード……そしてオーズ……か」
拓斗「一応俺に話せるのはこれぐらい……ですかね。何か参考になれましたか?」
コウヤ「一応はな……取りあえず、此処が俺達の知っている場所ではないことは大体理解した」
何か、心の中で引っ掛かっていた物が漸く取れたように納得して頷くコウヤ。ちなみにレツとコウヤは拓斗が何時も寝間着に使ってる甚平を借りて着込んでおり、元が良い為か中々サマになっている。
拓斗「えっと……それで、皆さんはこれからどうするんですか?」
コウヤ「……一先ず、さっきも言った通り此処を拠点にしながら昼間に逃がしたアルファを追い掛けようと思う。奴を逃がしたのは俺たちの責任だし、なにより奴をこのまま野放しにして帰る事も出来ないからな」
拓斗「成る程……あ、なら俺も手伝いますよ。アイツを逃がした責任なら、俺にだって十分ある訳だし」
コウヤ「いや、これは俺達の問題なんだ。関係のないお前等を巻き込むつもりは――」
拓斗「関係ならありますよ、俺も皆さんの事情やあのロボットのことを知った訳だし。それに……皆さんだけ街を歩かせるのも、何か少し心配って言うか……」
レツ「心配?」
歯切れ悪くそう告げた拓斗にレツは疑問げに首を傾げて聞き返し、拓斗は苦笑いを浮かべながら頬を掻いてゆっくりと口を開く。
拓斗「そのぉ、何て言えばいいのかな……こう言ったら失礼だけど、なんだか皆さんが現代の生活に慣れてない感じがするんですよね。家に上がろうとした時にも靴を履いたまま入ろうとしたり、ガスコンロに火が付いたりテレビを見て驚いたりとか……なんかまるで、大昔の過去からタイムスリップしてきたお侍さんみたいだなぁーと思って……アハハハッ、そんな筈ないですよねぇ?」
我ながら馬鹿馬鹿しい話しをしてるなぁーと、拓斗はテレビで見るようなありえない想像を口にして後頭部を掻きながら苦笑いしていく。しかし……
コウヤ(―――コイツ……一見脳天気な奴かと思ったら、意外と勘が鋭いな……喰えない奴だ)
そんな拓斗とは対照的に、コウヤは拓斗の顔を見つめながらわずかに目を細めて拓斗に対する認識を改めていたのだった。
◇◆◆
それから深夜。明日は拓斗はクスクシエでのバイト、コウヤ達もアルファの捜索がある為に早めに寝床に付いて就寝していた。のだが……
拓斗(……何でだろう……全然眠れないし……)
何故か、拓斗は布団に入っても一向に眠気を感じれず困り果てていた。どれだけ目を瞑ってやはり目がパッチリ覚めて眠れず、ふと隣を覗き見れば自分とレツに挟まれるように部屋の真ん中で眠るコウヤの顔が視界に入った。
拓斗(うーん……もしかして、初対面の人と隣同士で寝るから緊張してるのかな?子供じゃあるまいし……)
我ながら情けないなぁと、拓斗は自分に呆れるように溜め息を吐いてゆっくりと布団を退かしながら上体を起こしていくと、コウヤの向かいに敷かれた布団に目をやって疑問符を浮かべた。
拓斗(あれ?……レツ君がいない……?)
その布団には、確かレツが横になって眠っていたはずだ。しかしそのレツの姿が何時の間にか消えて何処にも見当たらず、疑問に思った拓斗は小首を傾げながら立ち上がり、コウヤを起こさぬようにこっそり部屋を抜け出してレツを探しに向かったのだった。
◆◇◇
拓斗(うーーん……トイレにはいなかったし、居間にも台所にもいなかったしな……何処言ったんだろ?)
コウヤを起こさぬようこっそり自室を抜け出した拓斗は、先ずレツが向かいそうな場所を一つ一つ探してみたものの何処にもレツの姿は見当たらなかった。もしかしてすれ違いで部屋にもう戻ったかな?と、拓斗は一度自室に戻ってみようと居間を通って部屋に戻ろうとすると……
拓斗「……ん?あれは……」
居間を通り掛かった拓斗の視界の片隅に、一瞬何かが動いたのが入った。それに気付いた拓斗が足を止めて居間の窓に目を向けると、其処にはこちらに背中を向けながら空を見上げるレツの姿があった。
拓斗「……レツ君?」
そんなレツの背中を見つけて不意に心の中で何かが気になり、拓斗がゆっくりと窓へ近付いて戸を開けると、その音に気付いてレツが拓斗の方へと振り返った。
レツ「神道さん?」
拓斗「どうしたの?こんな夜更けに一人で?眠れない?」
レツ「あ、うん。何か昼間に色々ありすぎたせいか、ちょっと色々考えちゃって……だから、此処で星を見てたんだ」
拓斗「星?」
レツに言われ、拓斗は顔を上げて空を見た。其処には爛々と輝く無数の星が夜空を埋め尽くしている様子があり、拓斗は思わず感奮の声を漏らした。
拓斗「お~、今日はいつもより星が良く見えるなぁ」
レツ「?いつもよりって、普段はそんなに見えないの?」
拓斗「まあ、ね。星華市は都会だから、普段はそんな星とか見えないんだよ」
レツ「……そうなんだ……俺のいたところじゃ、夜になれば星なんて何時でも見られたんだけど、此処じゃ違うんだね」
何処か、物寂しさが伝わってくる声で呟き再び星空を仰ぐレツ。拓斗はそんなレツの後頭部を黙ってジッと見つめると、自分や家族が洗濯を取り込むときなどに使うサンダルを履いて庭に出ていき、レツの隣に立って同じように夜空の星を見上げた。
拓斗「そういえば、レツ君やコウヤさん達って、前はどういうとこに済んでたの?」
レツ「え?何処って……」
拓斗「ああいや、別に話せないなら良いんだ。ただ、レツ君やフィオちゃん達とか、名前や容姿が日本人っぽくないから海外から来たのかなぁってちょっと気になっただけ」
レツ「…………」
コウヤの提示した条件の件もある為、無理にレツから聞き出そうとはせず苦笑いを浮かべる拓斗。レツはそんな拓斗の横顔を見ると、一度何かを考えるような仕草を見せて口を開いた。
レツ「俺達が済んでたところは、グラシア大陸の北方にあるヤマト国っていう国なんだ」
拓斗「?グラシ……ヤマト国……?」
そんな国が海外にあったっけ?と、初めて聞く大陸と国の名に頭上に疑問符を浮かべて小首を傾げる拓斗。しかしレツはそんな拓斗の反応に気付かず話を続けた。
レツ「ヤマト国は今、ヤマト国を含む様々な国を侵略しようとするディザイアっていう国と戦争をしてるんだ。けどディザイアとの戦力差が開き過ぎて、現状を打破する決定打がない……だから俺や師匠達は、そんな戦況を覆す為に国の預言者が告げた秘宝を探しに旅に出たんだ」
拓斗「……戦争……」
その言葉を口にし、真っ先に脳裏に浮かんだのは血に濡れた沢山の人々の死体。拓斗は鮮明に思い出されたその記憶を振り払うように頭を振ると、いつもの表情に戻りレツを見た。
拓斗「えと、事情は分かったけど……いいの?そんな話を俺にして、後でコウヤさんに怒られたりとか」
レツ「多分大丈夫。それに師匠だって、俺の知らないところで阿南祐輔って人に話した事あるみたいだし」
拓斗「?阿南祐輔って……えっ?コウヤさんって祐輔さんと知り合い?」
レツ「?知ってるの?」
拓斗「あ、うん。知ってるっていうか、恩人かな?前に沢山のお米をうちに届けてくれたことがあってさ、お陰で此処のところお米に困らずに済んでるんだ」
レツ「へえ……何かすごい偶然だね?」
拓斗「ほんと、世の中って結構狭いんだなぁ」
まさか自分達の恩人と師匠が知り合いだとは思わず、互いに神妙そうに頷き合う拓斗とレツ。それから軽く話をしてから、互いの身の上話(家族の性格にすこし難があったりなど)で会話を弾ませ共感し合った二人は名前で呼び合う程に親しくなったとか……。
◇◆◆
因みにその頃、ティア達が就寝する客間では……
椎名「――うにゃむっ……デカ乳言うなぁ~……」
フィオ「あはは……見てよにぃ~……あれとかおもしろそぉ~……」
ティア(……くっ……この二人はぁぁぁぁっ……)
客間に五枚の敷布団を敷いて川の字に眠る女性陣。因みに右側の方からサヤカ、リュナ、フィオ、ティア、椎名の順で寝床についてるのだが、ティアは美那子の提案で今晩だけ泊まることになった椎名とフィオの間に挟まれる形で寝ており、二人の寝相の悪さが邪魔をし中々眠りに付けずにいた。
ティア(クソッ、なんで私がこんな奴らと一緒に寝なきゃならないんだっ……しかもこいつ等の寝相の悪さと来たらっ……!)
椎名「むにゃっ……だ~れが~パイナップル牛姫様かぁ~……」
ティア(誰も言っとらんだろっ?!ってか腕が邪魔っ……って、足を乗せるなっ!!)
椎名が寝ぼけて自分の身体の上に乗せてくる腕や足を鬱陶しげに払い退け、悪態を付きながら今度こそ眠りに付こうと瞼を閉じていくティア。だが……
―……ガブゥッ!!―
ティア「ッ?!!!イッ、イ"デェッ?!!痛てえッ!!!」
フィオ「はむはむ……にぃの血ぃ……いつもよりおいひぃ~……」
フィオの方に伸ばしていた左腕が、寝ぼけたフィオにいきなり噛み付かれてしまったのである。余りの激痛にティアも慌てて飛び起きフィオの口から左腕を抜くと、フィオに噛まれた箇所に歯形が出来て血も滲んでおり、ティアは唸り声を上げて左腕を摩りながら涙目でフィオを睨みつけていた。その時……
―ジャラジャラジャラジャラジャラッ……―
ティア(―――ッ?!この気配……ヤミーか?!)
突如頭の中に無数のメダルが蓄積されていく音が届き、それに気付いたティアは直ぐに布団から起き上がり客間を飛び出すと、二階の拓斗の部屋に向かおうとした途中で庭で会話する拓斗とレツを見付け拓斗に呼び掛けた。
ティア「拓斗っ!!」
拓斗「……え?あ、ティアちゃん?」
ティア「ボケッとしてんな!ヤミーだ!」
『ッ?!』
苛立ちを込めながらティアがそう叫ぶと、拓斗とレツは顔付きを変えて互いに顔を見合わせ、そのまま家を飛び出しヤミーが現れた場所へと向かっていったのであった。
◇◆◆
それから20分後。ティアが感じ取ったヤミーの気配を頼りに三人がやって来たのは、無数の倉庫達が並ぶ倉庫群だった。そして現場に到着すると共に辺りを見渡してヤミーを探していく三人だが、肝心のヤミーの姿が何処にも見当たらない。
拓斗「?ティアちゃん、ほんとに此処にヤミーが?」
ティア「間違いない筈だ。だが……」
肯定はしたものの、何故かヤミーの姿がない事を流石に不審に思い眉を潜めながら辺りを見渡していくティア。その時……
―シュピイィィィィィィィィィィィィィイッ!!!―
『ッ?!なっ?!』
突如、不意を突くかのように三人の真横にあった倉庫の壁が爆発し、その奥からビームが放たれ三人に襲い掛かったのだ。咄嗟にそれに反応した三人はビームを避けて散開すると、ビームが撃たれてきた倉庫の中に視線を向けて身構えていき、爆煙が少しずつ晴れ倉庫の中が徐々に見えてくると、其処には……
『――ピピッ……ギュイィィィィッ』
レツ「なっ、アルファ?!」
なんと、倉庫の中にいたのはヤミーではなく、昼間に一同が取り逃がして行方を眩ませていたアルファだったのだ。予想外の敵の登場に驚きを隠せない拓斗たちだが、アルファはそんな事はお構い無しにと戦闘態勢に入っていく。
拓斗「ど、どうして此処にあのロボットが?!」
ティア「チッ、どうやら奴もこの場所を根城にしてたらしいなっ……とにかく、さっさとソイツ片付けろっ!」
―ビュンッ!―
舌打ちしながらそう言うとティアはグリード化させた右腕からタカ、トラ、バッタのメダルを取り出し拓斗に投げつけ、拓斗もそれをキャッチすると腰にオーズドライバーを装着しメダルを順番に装填していく。そしてレツもブレイブソードの刀身と柄の間にあるパスにカードをセットし、柄に備え付けられた紐を強く引き、拓斗もバックルを傾けて右腰のスキャナーを取り出しバックルへとスライドさせていった。
―キィーンッキィーンッキィーンッ!―
『変身ッ!』
『TAKA!TORA!BATTA!TA・TO・BA!TATOBA!TA・TO・BA!』
『YU-O-!Stand Up!』
二つの電子音声が鳴り響くと共に二人はオーズと勇王へと変身していき、変身の完了と共にオーズと勇王はそれぞれメダジャリバーとブレイブソードを構えアルファへと突進していったのであった。そしてその様子を離れて見つめるティアは……
ティア(にしても、妙だな……どうしてこの場所からヤミーの気配がしたのに、此処にいたのがヤミーじゃなくあの人形なんだ?まるで、アイツと私たちが引き合わされたかのような……)
オーズと勇王が戦闘を開始したアルファを見据えながら不審げに目を細め、この奇妙な偶然に内心不審感を募らせるティア。その近くの建物の屋上では……
『……ヌウゥゥッ』
気配を殺しながらアルファと戦闘を開始したオーズと勇王を覗き見る一体の白い異形……クラルが作り出した白ヤミーの姿が其処にあったのである。白ヤミーは顎を撫でながらアルファと戦うオーズと勇王を静かに見つめると、二人から離れた場所にいるティアを見て何やら動き出そうとした。その時……
「――成る程。お前が神道の言っていたヤミー……が成長する前の白ヤミーとかいう奴か」
『……ッ?!!』
不意に背後から届いた鋭い声。それを耳にした白ヤミーが慌てて後ろに振り返ると、其処には両手をズボンのポケットに突っ込みながら白ヤミーを見据える青年……神道家で寝ている筈のコウヤの姿があった。
コウヤ「やってる事は小物だが、それなりに知能は働くようだな?此処に俺たちから逃げたアルファが身を隠してることを知り、お前はわざとあのグリードの娘に気配を感づかせてアイツ等を此処へとおびき寄せ、アルファをアイツ等にけしかけた。そしてお前はあの二人がアルファと戦ってる間にあのグリードに近付き、『何か』を奪おうとした……その『何か』ってのは、多分他のグリードが欲してるコアメダルって奴か?」
『ヌ、ヌウゥッ……!』
コウヤ「図星か……まぁ、お前の目論みは悪くないさ。このまま行けばメダルの何枚かをあの小娘から奪えただろうよ……俺の存在を失念してなければな」
『ガアァァッ!!』
淡々と白ヤミーが計画していた内容を語るコウヤを敵と判断し、白ヤミーは一気に駆け出しコウヤに片腕を突き出して飛び掛かった。コウヤは身を翻してそれを避けると、白ヤミーと対峙しながら変身の構えを取る。
コウヤ「まぁ、お前の狙いがなんであれ敵ならば倒す、それだけだ……変身ッ!」
高らかに叫ぶと共にコウヤの体が極光に包まれてリクサリアへと変身し、再度飛び掛かってきた白ヤミーの右腕を脇に抱えそのまま肉弾戦に持ち込んでいったのだった。