仮面ライダーオーズ メダルと欲望と不幸?少年   作:風人Ⅱ

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第六章/共闘とクラルとフュージョングリード①(後編)

 

 

 

ティア「ッ!クラル!」

 

 

『またなんか変なのが出て来たな……。まあいいさ、邪魔するならソイツも叩きのめすだけだ。800年前に奪った僕のメダル、返してもらうよ。ティアッ!』

 

 

『ガァアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァッッ!!!!』

 

 

ティア(チッ……。拓斗、どうにかして奴を撒くぞ)

 

 

オーズ(え?撒くって……)

 

 

ティア(相手と持ちメダルが悪過ぎるんだよっ。あの無駄に馬鹿でかいヤミーもそうだが、クラルは不完全体のままでもカザリ以上に厄介な奴だ……。今のままじゃメダルを何枚取られるか分からない)

 

 

オーズ(だけど、撒くってどうやって?!あのヤミー、あの体に似つかない速さで飛ぶし、グリードの方も動きが早過ぎて逃げ切れるかどうか分からない……!)

 

 

それに、オーズや勇王は先の戦闘で体力を消耗してる上に怪我もしてる。そんな状態であの化け物たちから逃げ切れるかどうか……。チラリと視線だけ動かしてティアが勇王達の様子を見れば、リクサリアも同じ事を考えていたのか、向こうも目線をこちらに向け様子を伺っていた。

 

 

ティア(ま、放っておいてもあっちはあっちで勝手に逃げるだろ……。さて、どうする?一瞬でも良いから奴らの気を逸らせれば――って、あ?)

 

 

頭の思考を巡らませてこの場から逃げる作戦を一から立てていたティアだったが、突然目の前に立ち塞がった人物を見て思わず思考を止めた。彼女の目に映るのは、まるで相撲取りの関取を連想させる構えを取って何故か自分達を庇うように背中を向ける怪物……先程いきなり空から落っこちてきたルナドーパントの姿であった。

 

 

ティア「お前?」

 

 

ルナドーパント『なんだか厄介な事になってるみたいじゃない?手ぇ貸すわよ、お二人さん』

 

 

オーズ『はっ?』

 

 

ティア「何言ってんだコイツ?お前みたいなぽっと出なんて信用出来るか!引っ込んでろ!」

 

 

ルナドーパント『ああん、つれないイケジョねえん。じゃあいいわ、私の力を見せてあげるぅ!エェーイッ!!』

 

 

―シュバアァァッ!!!―

 

 

『?!んなっ……?!』

 

 

疑いの眼差しを向けるティアにそう言うや否や、ルナドーパントはクラル目掛けて右腕を伸ばし鞭のように振るって襲い掛かった。腕が伸びるなどという奇怪な光景を目にして驚愕しながらもクラルは咄嗟に右へと跳んで腕をかわし、ルナドーパントはそんなクラルへと両腕をビシバシ振り回しながら軽快なスキップをして近づいていく。

 

 

ルナドーパント『ほらほらどーしたのぉ?掛かってきなさい掛かってきなさい掛かってきなさァーーーいっ!』

 

 

『な、何だコイツ、気持ち悪いっ。邪魔するなッ!!』

 

 

顔を引き攣りながら叫ぶと共に、クラルは右腕を勢いよく突き出し手の平から高出力の雷撃を放った。此処にいるティア以外は知らないが、クラルの放つそれはウヴァの能力の一つである雷撃とは桁外れの威力だ。一撃でも当たればライダーとてただでは済まないその攻撃を、ルナドーパントは正面から受け止めた。

 

 

リクサリア『なっ、直撃っ?!』

 

 

ルナドーパント『あううううぅぅぅぅぅぅぅうううううううんッッッ!!!!!スゴォイッッ!!ビリビリパワーがモロにキ・タァァァァァァーーーーーーーーッッッ!!!!!!』

 

 

ティア「ば、馬鹿かアイツ?!あのままじゃ間違いなく死ぬぞ?!」

 

 

クラルの雷撃を真っ向から受けて全身を震わせながら絶叫するルナドーパント。あの雷の威力を知るティアも流石に驚愕して身を乗り出し、クラルも雷撃の威力を更に強めてこのままルナドーパントを消し炭にしてやろうとする。が……

 

 

 

 

 

ルナドーパント『――なーんて。効かないわッ!!』

 

 

―シュバアァァンッ!!―

 

 

『…んなっ?!』

 

 

なんと、雷の直撃を受けて痺れの余り震えていた筈のルナドーパントが、身体をゆっくりと縮こまらせて大きく伸びをした瞬間、雷が四散して無効化されたのであった。何が起きたのか分からないその光景にその場にいた全員が目を丸くし、クラルも自分の右手とルナドーパントを交互に見て戸惑っていた。

 

 

『う…うそ…僕の攻撃が、弾かれたっ?』

 

 

ルナドーパント『ううん、今のは中々肩に効いたわ♪お礼にお返し、ア・ゲ・ルッ!!』

 

 

体をクネクネ動かしながらそう叫び、ルナドーパントはクラルに向けて勢いよく左腕を伸ばして飛ばした。それを見て唖然としていたクラルも正気に戻り咄嗟に体を捻ってルナドーパントの腕を何とか回避するが、その行動を読んでいたようにルナドーパントは左腕を伸ばしクラルの背中を殴り付けた。

 

 

『あぐぁっ?!な、もう片方?!』

 

 

ルナドーパント『んっふ。太陽に代わって、お仕置きよん♪はい!アン!ドゥ!ドォリャッ!アン!ドゥ!クラァッ!』

 

 

―ビシッ!バシィッ!バチンッ!バシッ!ビシィッ!パァンッ!―

 

 

『イッタッ?!あぐぅっ!うぁっ?!』

 

 

ルナドーパント『この掛け声、嫌いじゃないわ!嫌いじゃないわ!』

 

 

『あぅっ?!ちょ、まっ――?!』

 

 

変幻自在に伸びる腕で執拗に滅多打ちにされ、クラルも堪らずタイムを掛けようとするも殴られるせいで上手く喋れない。そしてルナドーパントはクラルの足を払って転ばせると、両腕を一度引いて今度は最大まで後ろへと伸ばし……

 

 

ルナドーパント『嫌いじゃないわああああああっ!!』

 

 

―ドガアァァァァァァァァァァァァァァァァァンッッ!!!!―

 

 

『にゃあああああああッッ?!!』

 

 

某ゴムゴム人間のバズーカよろしく、最大まで後ろに引いた両腕を一気に前方へと押し出してクラルをぶっ飛ばしていったのだった。クラルはそのままノーバウンドで倉庫の壁に思いっきり叩き付けられ、フリードヤミーはそれを見てクラルに加勢すべく上空からルナドーパントへと奇襲を仕掛けた。だがルナドーパントはそれも読んでたかのように前転してフリードヤミーの突進をやり過ごし、上空に両腕を伸ばしてフリードヤミーの首に巻き付き締め上げていった。

 

 

『キュグァッ?!ガアァッ?!』

 

 

ルナドーパント『頭おっきいのねぇ。ぶっ飛びぃぃぃぃぃぃーーーーーーーッッ!!!』

 

 

―ブオオォンッ!!!―

 

 

『ギュグアアアアアアッッ?!!』

 

 

頓狂な叫びと共に足に力を込めて踏ん張り、ルナドーパントは首に両腕を巻き付けられて動けないフリードヤミーの巨体を向かい側の倉庫に目掛けて思いっきし投げ……

 

 

―ドグオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッッ!!!―

 

 

ルナドーパントに投げられたフリードヤミーは、そのまま背中から倉庫の屋根を突き破って落下し、倉庫はその衝撃に耐えられずガラガラと音を立てて崩壊していたのだった。そして今まで呆然としていたオーズ達もその余波から防御態勢を取って身を守り、改めてその光景を見て唖然とした。

 

 

オーズ『す、凄い……』

 

 

勇王『あ、あの怪人、何者なんだっ?』

 

 

ティア「あのクラルとそのヤミーをたった一人で……奴は一体……?」

 

 

あれほど自分達が苦戦したクラルとフリードヤミーをたった一人で圧倒したルナドーパントにオーズたちは驚きを通り越して唖然としていたが、その時、ルナドーパントにぶっ飛ばされたクラルが胸を押さえながらフラフラと立ち上がった。

 

 

『く、くそ、よくもっ……』

 

 

ルナドーパント『あら?まだやる気ぃ?だったら幾らでも相手になるわよ?』

 

 

『う、うぅ……君はなんか苦手だ……ティア!今日のところは見逃してやる!次は必ず、メダルを取り返してやるからなッ!』

 

 

先程の戦いの一連からルナドーパントに対し苦手意識を持ったのか、クラルはそんな捨て台詞を残すと背後の倉庫の屋根に跳び上がり、そのまま何処かへと逃げ去っていった。

 

 

ルナドーパント『ハンッ!生娘が無駄に胸張っちゃって。アンタなんかよりも私の方が、おっぱい大きいんだからねェッ!!』

 

 

ティア「どうでもいいわ」

 

 

オーズ『ま、まあまあ……。とにかく、今はあの怪人から話を聞かなきゃでしょ』

 

 

ツッコミを入れるティアを宥めつつ、取りあえずルナドーパントと話をしようと提案するオーズ。現段階ではルナドーパントが敵かはまだ分かっていないが、何かしらの理由でこちらを助けてくれたのだから、多分危害は加えて来ないだろう。そう考えてオーズもリクサリアに振り向くと、リクサリアも一応納得して無言で頷き、オーズは変身を解いてルナドーパントに背後から近付いた。

 

 

拓斗「えっと……あのぉ、ちょっと良いですか?」

 

 

ルナドーパント『一昨日来やがりなさぁーーいっ!!……ん?あらヤダ、誰このイケメン?誰このイケメン?』

 

 

拓斗「あ、ど、どうも……ところであの、貴方は一体?さっき俺を見た時も、何か渡さなきゃって慌ててましたよね?あれって……」

 

 

ルナドーパント『ん?ああ、アレね。私のことはまあまだ名乗れないけど、ある人から貴方に渡して欲しい物があるって頼まれたのよ』

 

 

拓斗「?渡して欲しい物?」

 

 

ルナドーパント『そぉっ!ちょっと待って頂戴ねぇ~……あら?何処に仕舞ったかしら?』

 

 

オッカシイわねぇ~?と、懐を漁って頼まれたものとやらを探すルナドーパントだが……

 

 

 

 

 

 

ブオオォンッ!!と、突然目の前で突風が吹き抜けた共に、ルナドーパントの姿が忽然と消えてしまった。

 

 

拓斗「――は?」

 

 

え、何が起きた?と、拓斗も背後にいたティアたちもまったく状況が飲み込めず、戸惑いと驚愕を隠せないまま慌てた様子でルナドーパントの姿を探していく。その時……

 

 

ルナドーパント『あーーーーーれーーーーーーーッッ!!!!』

 

 

『ッ?!』

 

 

彼方から、ルナドーパントの悲鳴が響き渡った。それを聞いて一同がその方へと振り返ると……其処には、先程ルナドーパントに吹っ飛ばされたはずのフリードヤミーが何処かへと飛んでいく姿と、フリードヤミーに啣えられて連れ去れようとしてるルナドーパントの姿があった。

 

 

勇王『え、ええええッ?!ちょ、なんか攫われてるよあの人ッ?!』

 

 

ティア「最後の逆襲か……クラルのヤミーらしいな。やられてばかりは嫌だから、最後に反撃してきたか」

 

 

拓斗「た、大変だ?!早く助けに――!」

 

 

ルナドーパント『ぐぬぅ!心配いらないわイケメン達!助けは無用よ!』

 

 

拓斗「え、いや、でも?!」

 

 

ルナドーパント『この程度、私にはなんともないわ!明日必ず渡し物を届けに来るから、貴方達は心配せずに――ちょ?!お腹に歯ぁ食い込んでるじゃない?!駄目ぇ!これ以上食い込んだら上と下が分かれちゃ……うぼごえええええええええええええええええッッッ?!!!』

 

 

『…………』

 

 

全然大丈夫そうに見えない悲鳴を上げて、フリードヤミーと共に彼方へと消えていくルナドーパント。一同は呆然と佇みながらそれを見送ると、一先ず勇王とリクサリアは変身を解除して元の姿に戻った。

 

 

コウヤ「……まあ、取りあえずは何とかなったようだな。奴の安否は分からないが」

 

 

レツ「ですねっ……でも、何だったんでしょう?あの二人の怪人は」

 

 

ティア「…………」

 

 

レツとコウヤが先程の戦闘について振り返る中、ティアはその様子を横目に無言のまま家に戻ろうとする。が、それに気付いた拓斗が慌てて駆け出し、ティアの手を後ろから掴んだ。

 

 

拓斗「ちょ、ちょっと待って、ティアちゃん!」

 

 

ティア「……なんだ?私は早く帰りたいんだが」

 

 

拓斗の手を軽く払いながらそっぽを向くティア。だが拓斗は、至って真剣な顔でティアの顔を見つめて口を開いた。

 

 

拓斗「その前に、聞かせて欲しいんだ。あのグリード……クラルって奴のこと」

 

 

ティア「…………」

 

 

拓斗「前に話で聞いたけど、グリードって確かティアちゃんも含めて、五人しかいなかっただろう?なのにさっきのクラルっていうグリード、ティアちゃんから聞いた名前にはなかった。アレって……」

 

 

ティア「……そんなに聞きたいなら、明日話してやる。今日はもう疲れて眠いんだ。アイス食って寝る」

 

 

グリード化した右腕を抱えながら何処か不機嫌そうに言うと、ティアは再び歩き出しそのまま家へと戻っていってしまった。拓斗もこれ以上追求しても無駄だと分かっているのか、今度はティアを引き止めず黙ってその背中を見送ると、何かを考えるように訝しげな顔を俯かせた。

 

 

拓斗(……あのクラルってグリードと戦った時、前に戦ったカザリと少し違った感じがした……強さとか力の質とかもそうだけど、何ていうか……人間っぽい?)

 

 

先程クラルと戦っていた時に感じていた疑問。その事を思い出し唸り声を漏らす拓斗の隣へと、レツが歩み寄ってきた。

 

 

レツ「拓斗。取りあえず、今は家に戻った方が良いんじゃないかな?今の騒ぎを聞き付けて人が集まるかもしれないし、俺達が家にいないって知ったらリュナ達も心配するかもしれない」

 

 

拓斗「あ……うん、そうだね。じゃあ一回家に戻った方がいいかな?俺も明日、クスクシエでバイトあるし」

 

 

コウヤ「その方がいいだろう。まあだが、お前達には寝る前に説教を受けてもらうが……構わんな?」

 

 

『……はい……』

 

 

一先ず、先程の戦闘で発生した爆音を聞き付けて人が来る前に戻ろうと、拓斗達は倉庫群を離れ神道家へと戻っていったのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

因みに、フリードヤミーに攫われたルナドーパントはというと……

 

 

ドール「――ちきしょー、あの竜め。人の身体を噛みちぎっておきながら、いきなりマズそうにペッ!しやがりましたよ。そんなに私がマズイと?自慢じゃないけど、私結構美味いって自負してんですよあんにゃろう。つーか、それはそれで美味しく頂かれることになるから私としては願い下げなんですが。っていうか、私の下半身何処行ったよ?おーい!かはんしぃーん!いるなら踵で地面を三回叩きなさぁーいっ!……ま、どうせ叫んでも無駄だけど~♪」

 

 

……フリードヤミーに連れ去れる途中で上半身と下半身を食いちぎられ、変身も解けて上半身だけになった体を引きずり、行方不明になった下半身を人気のない商店街で探し回っていたのだった。

 

 

 

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