―神道家―
それから翌日の朝……
紗奈「……?お兄ちゃん、その包帯どうしたの?」
拓斗「え?あー、えと……実は昨日の夜、トイレに行く途中に階段で転んじゃってさ、あはははっ」
紗奈「……ふーん」
昨夜のクラルとの戦いから日が上り、起床した拓斗達はクスクシエに行く前に美那子とリュナが作った朝食を食べていた。因みに拓斗とレツとコウヤは朝食前に昨夜の戦いで負った怪我について椎名たちに聞かれ、ホントの事を話した際にはかなり心配されたが何とか大丈夫だと言って宥めた。
『今日午前一時二十分頃、星華市星華町内の商店街で上半身のない子供の下半身を発見したという通報がありました。通報によると、六歳から七歳ぐらいと思われる子供の下半身が商店街の路地裏に放置されていたらしく、通報を受けた警察が現場に到着した時には、下半身は現場から消え血痕が残されていた模様。警察はこれを怪奇誘拐殺人事件と見て調査を進めており、行方不明となった下半身の捜索を……』
美那子「まあ、物騒な事件ね……しかもまだ子供だなんて……」
紗奈「世も末だねー、これからは私も夜道には気を付けて歩かなきゃだね。あ、フィオ、其処のお醤油取ってくれる?」
フィオ「ん?あ、これ?はい!」
紗奈「ん、ありがとー」
ティア「…………」
TVのニュースを見ながら朝食を進める拓斗達を尻目に、ティアもジャムとマーガリンを塗った食パン(箸が上手く使えないから基本朝はこれだけ)の最後の一口を食べてコーヒーで流し込み、そのまま席から立ち上がって居間から出て行こうとする。
拓斗「…?ティアちゃん、何処行くのさ?」
ティア「……部屋に戻るだけだ、一々そんなこと聞く為に呼び止めるな」
コウヤ「おい。昨日の話、分かってるだろうな?」
ティア「……フンッ」
険しげに問い掛けるコウヤに鼻であしらうだけで何も言わず、ティアはそのまま居間を出て部屋へと戻っていってしまった。その様子を見た椎名はティアが出ていった入口と黙々と朝食に戻るコウヤを交互に見て、隣に座る拓斗に耳打ちした。
椎名(……ちょっと拓斗、コウヤさんとティアの奴、どうしたの?何かあった訳?)
拓斗(あー……いや、別にそんな大した事じゃないんだ。ただ、昨日俺達が戦ったグリードについて、ちょっとね……)
椎名(?グリードって、前にアンタが戦った猫みたいな奴のこと?)
拓斗(うん。それとは別の、ね……何ていうか、あの時のカザリって奴とは微妙に違うっていうか……)
あのとき、自分がクラルに対して抱いた妙な違和感。その事をポツリと呟くも、椎名はそれがどういう意味なのか分からず疑問符を浮かべており、拓斗もそんな椎名を見て苦笑いしながら味噌汁の器を手に取り口に運んでいく。
拓斗(……だけど、あのクラルってグリードの話しを聞こうとしたときのティアちゃん……なんか、微妙に話したくなさそうな顔してたような……気のせいか?)
昨夜、クラルについて話しを聞き出そうとしたときに見せたティアの顔。それが何処か複雑げだったことを思い出して考え込み掛けた拓斗だが、ふと視界の端に映ったTV画面の時間を見て「ヤバいッ?!」と慌て出し、飯を口の中に掻き込んでいくのだった。
◇◆◇
―高層ビル屋上―
一方その頃。市街地に建ち並ぶ一つの高層ビルの屋上では、一人の子供が柵の上に腰掛けて両足をブラブラさせながら上着をめくり上げ、何故か腹部に何重にもガムテープを巻き付ける姿があった。そして子供……ドールはガムテープを伸ばして腹に巻き付けながら、爛々とした様子で口を開く。
ドール「いやー、ヤバァイヤバァイ。まさかこの世界の一般人に下半身を見付けられてしまうとはねぇ~。まあ、ゴートさんが駆け付けてくれたお陰で下半身も無事に回収出来たので、私としてはラッキー☆で済みましたが、発見した一般人には恐らく一生モノのトラウマになるでしょうなぁ。ご愁傷様です、うい」
チーン、なんていう効果音が聞こえてきそうな調子で片手で礼拝すると、ドールは呑気に鼻歌を歌いながらガムテープを巻く作業を再開していく。
ドール「にゃー、それにしてもガムテープとボンドはやはり最強ですなぁ。もうしっかりピッタリくっつけてくれてますよ。これ、昔の電化製品みたく三大神器とか作っちゃってもいいと思うんだ。ガムテープさいこー、ボンドさいこー、私これだけで千年ぐらいは長生き出来ちゃいそうですよ」
まあ私の場合は長生きとか関係ねーんですけどねー、などと言ってる内にテープを巻く作業が終わったのか、ドールは足元に置いてある自前の鞄を指パッチンで開いてテープを投げ入れ、鞄はそのまま独りでに閉まり何処かへと消えていったのだった。
ドール「ふひぃ~……はてさて、修復も終わったことですし、次の問題はこれからどうするかですよねぇ」
体の修復を終えて一息吐きながらそう言うと、ドールは懐を漁って昨夜拓斗に渡しそびれたメダルを取り出した。
ドール「昨夜は渡しに行くと言ってしまいましたが、肝心のこの世界のオーズ達の居場所がてんで分かんないんですよね~。うーん、どーしよかなぁ」
適当な調子で言いながら親指でメダルを宙に弾き、甲高いメダルの音を屋上に響かせながらキャッチする。そんな手遊びを何度か繰り返していると、突然懐から携帯の着信音が鳴り響き、ドールはポケットから携帯を取り出してディスプレイに表示された番号がユリカからだと確かめると、携帯の通話ボタンをプッシュし耳に当てた。
ドール「ハイハイもすもぉーす?どうしましたぁー?遂にお腹周りが大変なことになり始めたと縋り付いてきましたか?馬鹿だなー、肉ばっか食ってるからそうなるんですよ、ブフゥーッ」
ユリカ『……………』
ドール「オウオウオウオウ、電話越しに無言の威圧感放たんでくださいよ。マジで怖いです、挨拶代わりの冗談ですから」
ユリカ『……そんな冗談は願い下げよ。それよりも、メダルはちゃんと届けたの……?』
ドール「いやぁ、それはまだ。昨日はちょいと邪魔が入って渡しそびれましてね?一応今日中には届けたいと思ってるのですが、肝心の彼等の居場所が分からなくてですね」
ユリカ『そんな事だろうと思ったわ……そうなるだろうと思って、貴方の携帯にメールを送っておいたから、それ見てさっさと届けてきて』
ドール「おおう!マジですか?それは助かりますよ、感謝感激です、では~」
電話越しに軽く頭を下げて礼を告げると、通話を切り暫くメールを待つ。すると携帯の受信ボックスに一通のメールが届き、ドールはそのメールを開いて内容を確かめていく。
ドール「ほむ、成る程……これならなんとか居場所を突き止められそうですね。ではっと……」
居場所も分かった事だし、早速メダルを届けに動きますかとフェンスから腰を上げ、屋上を後にしようとした、その時……
―バシュウゥッ!!―
ドール「……およ?―ドグォオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!―にょおおおおおおおおッッ?!」
突如、上空から一発のエネルギー弾が放たれ、ドールがいたフェンスに直撃して爆破を起こし吹っ飛ばしてしまった。その爆発に巻き込まれコミカルにぶっ飛ばされるドールだが、空中で咄嗟に回転して屋上になんとか着地し、深く一息吐いた後に吹き飛ばされたフェンスを見た。
ドール「ヲイヲイ、今度は一体なんです?―ザッ……―……うむ?」
ウヒョーと、黒煙が立ち込める爆破地点を見てドールがそう呟いていると、背後から足音のようなものが聞こえた。その音にドールが思わず振り向くと、其処にはいつの間にか銀色に光り輝く体を持った一体の異形がドールの背後に佇む姿があり、ドールはその異形を見て首を傾げた。
ドール(うむ?何ですか?このウルトラマンコスモスをS.I.C.みたいなデザインにした感じの怪人さんは?……ん?)
いきなり現れた謎の異形を見て首を唸らせていると、ドールはふと謎の異形の腰を見てあるものを発見した。謎の異形の腰には、金色のバックルに黄色い宝石状のパーツを埋め込んだベルトが巻かれており、それに見覚えのあるドールは更に首を傾げた。
ドール(アレって確か……グリードが腰に巻いていたベルトじゃありませんでしたっけ?じゃあこの怪人さんもグリード?……うむ?そういえばこの怪人さん、どっかで見たような気が……?)
『……貴様……"匂うな"』
ドール「――え?何?私、臭いすか?スンスンッ……ううん?自分じゃ良く分かんですねぇ?具体的にどう臭い―バシュウゥッ!!―にょおおおおおおっ!!」
不可解な発言をする異形の言葉を真に受けて体の臭いを嗅いでいた中、突如異形がドールに右腕を突き出し至近距離からエネルギー弾を放った。ドールは咄嗟に身を捻ってエネルギー弾を回避するが、エネルギー弾はそのまま屋上の一角へと直撃し爆発を起こし、異形……銀色のグリードは忌ま忌ましげにドールを見据えながらドールに近付いていく。
『匂う、匂うぞ……貴様は他の悪と比べて、とてつもない悪の匂いがする……。悪は存在してはならない、悪は正義に罰せられるべき。そう、絶対の正義たる私によって!私こそが正義!私こそが、世界で一番正しいのだ!』
ドール「……え、何これ?つまり私、クセーって理由だけで消されようとしてる?これなんて理不尽?」
右腕を掲げて正義が何たらと豪語する銀色のグリードを見て困惑しまくるドールだが、取り敢えず目の前の銀色のグリードが敵であることだけは大体理解し、懐から一丁の青い銃……ディエンドライバーを取り出した。
ドール「まったく、初対面でありながらいきなりクセーってだけで襲い掛かってくるとは、なんて失礼な奴でしょう。そんな失礼な奴には、キッッツーイお灸を据えてやりますよ」
プクーと両頬を膨らませながら怒ってる様子をわざと表現すると、ドールは更に一枚のカードを取り出してディエンドライバーに装填し、スライドさせていった。
『KAMENRIDE:OOO!』
ドール「Let's GO!行ってらっしゃーいっ!」
―バシュウゥッ!―
電子音声と共にドライバーの引き金を引くと、ドールの目の前を幾つもの残像が駆け巡っていき、それぞれ一カ所に集まってひとりの戦士が姿を現した。それは、拓斗が変身するのと同じオーズ……
……みたいな格好をした、"少女"だった。
『………………あ?』
広い屋上に、グリードの声だけが虚しく響き渡った。それもそのハズ、ドールが呼び出したのはライダーのオーズではなく、オーズの鎧みたいな格好をした少女だったのだから。
バッタレッグと思われる幾つもの緑色のリボンを飾りにした黒ニーソと黒ミニスカに、腰には二枚の薄緑のマント。
胸中央には、オーズの証であるオーラングサークルが装備されているが、その下からは女らしい滑らかなお腹が露出している上に下乳がはみ出ており、背中には二枚の薄赤い鳥のような翼、頭にはタカヘッドと思われる複眼と髪をポニーテールに纏める赤いリボンがある。そんな予想外の戦士?の登場に銀色のグリードも唖然となるが、ドールは構わずディエンドライバーの銃口を銀色のグリードに突き出して笑みを浮かべた。
ドール「フッフッフッー、覚悟なさい?この子は結構強い上に、揺れますよー、ぷるるんとなァあああああああああああああああああああっっ!!」
オーズたん「ハアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
ドールのディエンドライバーの銃口が火を噴くと共に、オーズの格好をした少女……『ライダー少女オーズたん』は何処からか取り出したメダジャリバーを構え、ふたつのコブを大きく揺らしながら銀色のグリード目掛けて勢いよく斬り掛かっていったのだった。