―研究所一室―
「頼む!!頼むから待ってくれ!!」
その一方、ユリカ達が強襲しようとしている研究所の一室。無数の生体ポットが並ぶその部屋では、白衣を着たひとりの男性が何かを庇うように、同じ白衣を着た男性や女性達と対峙していた。良く見ると、その男性の背後には水色のショートヘアに虚ろな真紅の瞳の少女が佇む姿があり、おそらく男性はその少女を守ろうと男達と対峙してるのだろう。
「いい加減にしてくれませんかね、ゼノン博士?何時までその失敗作を庇うおつもりですか?」
何処かウンザリした様子で男性の一人が少女を庇う男性……ゼノンにそう告げるが、ゼノンは一向に少女を庇うのを止めず怒鳴り声を上げた。
ゼノン「このD号は失敗作なんかじゃない!この子には、他のレギオンが持っていない物……『心』がある!我々人間と変わらない、心が!なのに、それを能力不足というだけで殺処分など!」
「当然でしょう?我々が求めているのは心ではなく、ただ戦う事だけに特化したレギオンだ。だというのに、貴方は何時までもそんな失敗作の試験体を生かして、いったい何になるというのです?」
「三日後、我々のスポンサーがこの施設へ視察しにいらっしゃるんですよ。なのにそんな失敗作を造ってまだ処分してないと知られれば、私達の顔に泥を塗られる事になるんです。だから早く処分しなければならないので、退いてくれますか?」
ゼノン「ッ!なら、この子が失敗作ではないと分かれば良いんだろ?!あと二日!いや一日でいい!時間をくれ!それだけあれば、この子が失敗作でないと証明し――!」
―バァンッ!!―
ゼノン「――な……ぁ……?」
「口説いですよ、博士」
室内に鳴り響いた、一発の銃声。それは、男達の一人がいつの間にか取り出していた銃でゼノンに発砲した音であり、ゼノンの腹部にも夥しい量の血が浮かび上がって白衣を赤く染め上げていた。
ゼノン「ぅ……あ……貴、様らぁ……」
「正直私達みんな、貴方にもウンザリしてたんですよ博士。研究が進むにつれてそんな試験体に情を移すようになって、何時も何時も、まるで自分の子供みたいに話し掛けて。正直目障りでした」
「だから私達で話し合った結果、貴方にもついでに消えてもらう事にしたんです。本当に残念ですよ、貴方のその腕『だけ』は本物でしたのに」
ゼノン「ぐっ……ぁ……」
口々に残念そうな言葉を口にしながらも、男達のその顔は醜く歪み笑っている。激痛で視界が歪んでいく中で、ゼノンはどうにか少女……D号だけは逃がそうとするも、やがて力尽きてしまい、そのまま膝から崩れ落ち倒れてしまった。
「さて、と。目障りな博士も死んだことですし、早いとこその試験体も処分しましょう」
「そうね……博士の遺体はどうする?」
「そうですね……試験体の遺体を片付ける時に、一緒に焼却炉で燃やせば良いでしょう。あれだけに大事にしていた試験体と一緒に灰になれるなら、博士も本望でしょうからねぇ」
ケタケタと薄気味悪く笑いながら床に倒れるゼノンの足を蹴りながらそう言うと、男性はゆっくりとD号に銃を向けた。しかしD号はそれに見向きもせず、ただ幽霊のように佇みながら倒れるゼノンを虚ろな瞳でジッと見下ろしており、男性もそんなD号を見て口元を歪めながら引き金を引こうとした、その時……
―ドグオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォンッ!!!ビィー!!ビィー!!―
『ッ?!!』
「?!な、なんだ?!」
突如、研究所全体を振動させるような揺れと爆発音が響き、直後にけたたましい警報が施設全体に鳴り響いた。男性達はその爆発音と警報に驚いて辺りを見渡し、近くのコンピューターを操作し警備員に連絡した。
「何だ?!何が起きた?!」
『わ、分かりませんっ!!突然謎の三人組が、研究所の入り口をトロッコでぶちやぶって中に侵入――う、うわああああああああああああああッッ?!!!』
―ドゴオォォンッッ!!―
「お、おい?!どうしたっ?!」
通信に応答した警備員の顔が映った画面が突然グルリと回転し、画面に砂嵐が走った。だがそれも一瞬の事だったらしく、画面は直ぐ回復して映像が映し出された。其処には……
チェス『うわああああああああああああああァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッッ?!!!ちょ、速い?!!速いって?!!ってかなんで突撃にトロッコなんか使うんだよそして何故それがドールの鞄から出てくるんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ?!!!!!!!』
大輝『なんでも有りの人形だからね、これ。今更驚くのもアレだけど』
ドール『HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!ファック、ファック、ファック、ファック、ファック、ファァァァァックッ!!まったくクソッタレな重力だな!!物体とくれば誰彼かまわず見境なしに引っ張りこみやがってこのビッチが!!重力の雌豚痴女め、とんだ淫乱グラビティだぜファッキンシット!!ハッ、物欲しそうにしやがってこの地球オブザビッチが、すっかりメス犬の顔になってやがる!!万有引力のビチグソ野郎、ニュートン力学のド腐れ売女が!!サノバビッチのアイザック坊やが淫乱アップル腐汁滴るオ●ンコにファックしてこびりついた精液の残りカスがオマエだ!特殊相対性理論の包茎インポ野郎、アインシュタインのへなチンマ●コジジイめ!どうした悔しいか?!悔しいならもっとその貧相なイチモツをしごくスピードを上げろ!光速を越えて射精しろ!時空を跳べない豚はただのイカくさ早漏夢精野郎だァ!!!ファッキンッファッキンッファッキンッファッキンッファッキンッファッキンッファッキンッファッキンッユニバアアアアアアアアアアアアアアアアアアスッッ!!!!!!!』
チェス『うわああああしかも何かドールが壊れたァァァァァァァァァァーーーーーーーーー?!!!』
大輝『ああ……確か彼は大の絶叫マシン好きらしいから、興奮すると何故かそうなるらしい』
映し出された映像には、カメラが引っ掛かってるのか。何故かトロッコのような物に乗って研究所内を激走する二人の青年と、外見に似合わずファッキンな罵詈雑言を口走る子供の姿が映し出されていた。
「な、何なんだコイツ等は?!直ぐに防衛プログラムを作動させろ!!レギオンを受け取りにきたノーマ・レギオにも連絡して向かわせるんだ!!此処を知られた以上、一人も生きて帰すな!!」
突然の侵入者に驚きながらも、直ぐさま男性達は防衛プログラムを作動するよう周りに呼びかけ慌てて部屋から出ていく。そして暫くもしない内に、其処には血だまりの上に倒れるゼノンと、そのゼノンを見下ろしゆっくりとゼノンの目の前に座り込むD号だけが残されたのだった。