―研究所・管制室―
ドール、チェス、大輝達がドール手製の改造トロッコで研究所内を信じられないスピードで激走しまくって陽動を起こしてる、その頃……
―バキィッ!!―
「ぐはぁっ?!」
―バタッ!―
ユリカ「――暫く眠ってなさい」
施設内で耳障りな警報が喧しく鳴り響く中、研究所内にある管制室ではユリカが室内に殴り込み、その場にいた局員達全員を気絶させていた。そしてユリカは、管制室の監視モニターに映し出されている映像を一瞥して防衛ロボット達が動き出してるのを確認した後、懐から出したノアノートを素早く管制室のシステムに繋ぎ、慣れた手つきでキーボードを叩いていく。
ユリカ(侵入には成功……後は此処の電力とシステム、予備電源を全て落としてしまえば、研究所内の防衛システムも停止しロボット達も自動的に動かなくなる……後は作戦通りに研究所に配備・開発されてるセンチュリオとマシンチャイルドを破壊すれば……)
頭の中でこの後どう動くかシュミレーションしながらキーボードを打つ手を止めないユリカ。そして数分もしない内に入力を完了し、研究所の電力やシステムが全て落とされ、管制室内が停電の時に自動的に切り替わる赤い電光で照らされた。
ユリカ(……一先ずこれで防衛システムは作動しなくなる……後はセンチュリオとマシンチャイルドを捜索して……)
―……ドドドドドドドドッバシュウバシュウッ!!!―
ユリカ「!」
―ドグオォォォォォォォォォォンッッ!!!!―
システムダウンを完了して一息吐いたその直後、突如不意を突くようにユリカの真横からビーム弾と実弾の混合射撃が撃ち出された。いち早くそれに反応したユリカは咄嗟に身を翻してそれらを避けると、ビーム弾と実弾はそのままユリカの背後の壁に着弾して爆発を起こし、爆風が室内で吹き荒れた。だがユリカはそれに見向きもせず、今の混合射撃が放たれてきた入り口の方に視線を向ける。其処には……
『………………………』
――Angel(天使)……。
一言で現すなら、そう表現するしか出来ないライダーが入り口の前に立っていた。紫のラインが所々に走る白いボディに、緑色のモノアイを特徴とした天使をモチーフにしたような純白の仮面、身体を取り巻くように付けている金色のリングと、そのリングに装備されてる二枚の羽のような物体。その手には二つの銃口を持つ巨大な白いランチャーが握られており、銃口はユリカに向けて狙い定められている。
ユリカ「――二枚の羽……センチュリオシリーズの中でも、一番最下位クラスのセンチュリオ・アウジリスか。そっちから来てくれるなんて、捜す手間が省けたわ……」
センチュリオ『…………』
淡々とした口調でユリカがそう呟くと、天使のような姿をした純白の仮面ライダー……『センチュリオ』は右手に構えたランチャー・ジェミナスの引き金を躊躇無く引いてビームと実弾の混合射撃を再び放ち、ユリカもそれら全てを回避しながら腰に白と金のバックルを当てると、バックルはベルトとなって腰に巻かれていった。
ユリカ「成る程、武装もオリジナルのセンチュリオと同じみたいね……。なら、他の部分は私直々にテストしてあげる……変身」
静かにそう呟くとともに、ユリカの腰に巻かれたベルト……セイレスドライバーから無数の光の粒子が放出されユリカの全身を覆うと、黒色のラインが走る純白の装甲とナイトに近い騎士のような仮面を身に纏い、最後に黒と金のマントが腰に出現し違う姿へと変身していった。そしてすべての変身を完了させたライダー……『セイレス』は右腰に納めた金色に輝く剣、アルディオスを手に取りその切っ先をセンチュリオに向けた。
セイレス『来なさい……あの男が造らせた傀儡、どんなものか試してあげる』
センチュリオ『……!』
目を細めてセイレスがそう告げると、センチュリオは直ぐさまランチャー・ジェミナスを構成しているナノマシンを剣の形に形成し、純白の剣……一見実体剣のように見えるが、更にナノマシンが噴き出しビーム状の刃を形成してるブレード・ルミナリウムを両手に構え、背面のバーニアを噴射しセイレスへと斬り掛かっていった。
◇◆◇
―研究所内・通路―
ユリカが研究所内の電力を全て落とす、少し前。作戦通りに陽動を起こし施設内をトロッコで激走していたドールたちだったのだが、何故か三人は通路の一角で防衛ロボット達に四方から挟まれ攻撃を受けており、その端にはひっくり返ったトロッコが転がっていた。何故こんな状況になってるのかというと、簡潔に言えば、ドールが調子に乗ってトロッコのスピードをグングン上げ続けた為に、通路の曲がり角を曲がり切れずに壁に激突してしまったというしょうもない理由だった。そしてあっという間に防衛ロボット達が追い付いてしまった為にやむなく応戦するハメになり、大輝とチェスはそれぞれライダーに変身し防衛ロボット達を迎え撃っていた。そして、ドールは……
ドール「ぅおげぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!ぅおっ、おげええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!」
……四方から容赦なく銃撃が降り注いでる中、横転したトロッコの陰で四つん這いになりながらゲボを吐いてたのだった。(ゲボとは言っても、内臓がない為に今まで食べたり飲んだりしてきたモノをシェイクした液体を吐き出してるだけで異臭はしないのだが)
NL『お前なぁぁぁぁ!!敵陣の中に突っ込んで攻撃受けてるのを他所にゲボ吐くとかどんだけだよ?!』
ドール「ぅぁああぁっ……ぎもぢわりぃーでずぅ……うぇっぷっ……」
ディエンド『まあ無理ないけどね。馬鹿みたいな速さで走るトロッコの上でずっとあんな罵詈雑言を大声で叫び続けてたら、そりゃ気持ち悪くもなるだろうさ』
ドール「あ"ー……?なんずがばりぞうごんっで……づーが、あだじドロッゴにのっでるあいだなにじでまじっだっげ?ぞのべんのぎおぐがあいまいなんでずが……うぉげぇぇ」
NL『しかも覚えてねえのかよッ?!ファッキンだのファックだのスゲーこと言ってたのにッ!!』
ドール「何を言いますか!私がそんなお下品なことを言う訳がなぅおげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ」
ディエンド『あーハイハイ、無理せずにさっさと出すもん出し切ってくれたまえ……それにしても、ユリカさんはまだなのか』
ディエンドライバーで防衛ロボットを二体撃ち抜きながら、ディエンドは天井を見上げてそう呟いた。今はまだ防衛ロボット達が相手だからこうやって何でもないように会話出来てるが、もし此処でセンチュリオに出て来られたらそんな余裕もなくなる。早く電源が落ちるのを願いながら、ディエンドが次の標的に狙いを定めた。その時……
―……ガタンッ!!ギュイイイィィィィィィィッ……―
『ッ!』
突如、通路全体の明かりが消えて辺りが暗くなった。最初は突然の事態に驚いて辺りを見渡したディエンドとNLだが、直ぐに辺りが赤い電光によって照らされていき、先程まで自分達を攻撃していた防衛ロボット達が停止音と共に動きを止めていく光景を見てすぐに状況を把握した。
NL『どうやら、師匠が予定通りに施設の電源を落としたみたいだな』
ディエンド『らしいね……取りあえずこれで、邪魔な防衛システムも作動しなくなった。後はセンチュリオとマシンチャイルドを潰しながら、研究員達を片っ端から捕まえれば……』
ドール「あーぎもぢわりぃ……んお?その研究員って、アレじゃないですか?」
『……え?』
ゲボを吐いてやっと調子が戻ってきたドールがそう言いながら左の通路を指差すと、ディエンドとNLもその指先を追って左の通路を見た。其処には……
「ひ、ひいぃぃぃ?!」
其処には、十字路から三人の様子を伺っていたと思われる一人の研究員が、三人に気付かれて資料を抱えながら何処かへと逃げていく姿があった。
ディエンド『おっと、早くも一人目発見か』
ドール「ぬぅーん。あんな声を上げながら逃げられると、何だか無性に取っ捕まえたい衝動に駆られちゃいますよねぇ……てなわけで、逃がしゃしねえぜファッキンシィィィィィィィッットッ!!!」
NL『オマエやっぱトロッコのこと覚えてんだろうッ?!』
ヒィィィハァァァァ!!!とハイテンションな奇声を上げて両手をニギニギしながら研究員を捕獲しに走り出したドールの後を追ってツッコムNLだが、ドールはそれを無視して研究員の姿が消えた曲がり角を曲がろうとした。その時……
―ブオォォンッ!!!―
ドール「――ん?ってにょおおおおおッ?!」
曲がり角を曲がった瞬間、突然目の前から純白の剣が横薙ぎに振るわれドールに襲い掛かったのであった。それを見たドールは咄嗟に身体を思いっきり反らせて刃をやり過ごし、そのまま後ろへとバク転して純白の剣を振りかざしたソレから距離を離すと、ソレの姿を確かめるべく目の前を見た。其処にいたのは……
『…………』
『…………』
『…………』
ドール「――センチュリオですか……しかもいきなり六体とは」
ドールが見据えた先にいたのは、純白の剣……ブレード・ルミナリウムを片手にドールを見つめるセンチュリオと、ソレを先頭に後方に控える同じ姿をした五体のセンチュリオたちの姿があったのだった。ドールがセンチュリオ達と対峙して数を確認する中、ドールを追い掛けてきたディエンドとNLがセンチュリオ達を目にして驚愕した。
NL『コイツ等は……?!』
ドール「例の量産型っぽいですね。こっちが捜すより先に、あちらさんからわざわざ出向いてくれたみたいですよ」
ディエンド『ふむ、それは捜す手間が省けて助かるね……ところで、さっき逃げた研究員は?』
ドール「多分、この人等にこの場を任せて先に逃げたんじゃねえですか?まあ、研究所の周辺に結界張っておいたので、研究所から出ても逃げられるとは思えませんが」
NL『いつの間にそんなもん張ったんだよ……でもまあ、そういう事ならそっちを気にする事なく戦えるな』
ドール「うい。まあでも、私がそんな事する必要はなかった気がしますがね~。何か一人、ユリカさんとは別に動いている怪人さんがいるようですし」
ディエンド『……何?』
背中を掻きながら呑気な口調でそう告げたドールに、ディエンドとNLは思わずドールの顔を見た。しかしその瞬間、センチュリオ達がそれぞれ羽の形状をしたナノマシンをブレード・ルミナリウムに形成しながらバーニアを噴射し、三人に突っ込みながらブレード・ルミナリウムを振りかざした。それを見た三人は直ぐさま散開してそれぞれ回避行動を取ると、ドールが腰にバックルのような機械を巻き、右腰のカードホルダーから一枚のカードを取り出した。
ドール「まあ私達は私達で、お仕事をこなすとしますかね……外装」
『LOAD UP!TYPE MOON!』
そう呟くと共に取り出したカードをバックルにスラッシュすると、ドールの全身が光に包まれながら背丈がNLとディエンドの二人と同じ身長にまで伸びていく。そして、ドールの周りに青いラインが走る白い鎧が出現しドールの身体に次々と装着されていき、最後に両手に紅く捻れた特徴的な剣と風を纏った視えない剣が握られていった。
全ての鎧を纏ったその姿は、全体的に白いが赤と青のラインが所々に見られる甲冑姿、二人の殺人貴の力を宿した蒼い瞳に、両腕には赤い聖骸布を巻き付けており、右手にはかの騎士王が戦で振るった黄金の剣を風で隠した不可視の剣、左手にはかの暴君が用いた天国と地獄の意味の文を刻んだ紅い長剣を手にした姿……型月の世界の人々と結んだ『絆』を鎧として具現化した月の鎧『ルーノ』を身に纏い、両手に握る騎士王と皇帝の剣を構えた。