仮面ライダーオーズ メダルと欲望と不幸?少年   作:風人Ⅱ

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第一章/不幸とメダルと謎の少女④

 

 

―星華市・広場―

 

 

そしてその頃、拓斗は謎の少女に追われて人々が行き交う近くの広場へと逃げてきていた。因みに拓斗の額からは赤い血が流れており、これは此処へ来る前にダンプカーに跳ねられてしまったからだ……まぁ、本人は至ってピンピンしてるのだが。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、ああもうっ!いい加減しつこいよ君っ?!」

 

 

「私だって好きでお前なんて追いかけてるんじゃない!お前が大人しく渡さないからだろ!」

 

 

少女は息切れすらしてない様子で拓斗に怒号を飛ばすが、未だ自分の財布目当てで少女が掴み掛かってきたと勘違いしている拓斗は、足を止めようともしない。少女はいつまでも続くこんな状態にいい加減に業を煮やしたらしく、なんといきなり数十メートル以上跳躍して拓斗の頭上を飛び越えてしまい、拓斗の目の前に先回りしていった。

 

 

「おわっ?!ちょ、なに今の?!そんなのアリッ?!」

 

 

「知るか!さぁ、早くお前の持ってるメダルを渡せ!それは私のだ!」

 

 

「……は?メダル?」

 

 

もう此処までか、ごめんよ母さん妹よー……とちょっぴり諦めムードに陥ていた拓斗だったが、メダルを渡せと言ってきた少女の言葉に一瞬キョトンとなった。それから暫く呆然と固まると、何かを思い出したようにズボンのポケットから鷹の絵が描かれた赤いメダルを取り出していく。

 

 

「あ、もしかしてこれ……君の?」

 

 

「そうだ、私が落とした」

 

 

「えっと……じゃあ、さっきから渡せって言ってのは……ああなんだ、カツアゲじゃなかったのかぁ!」

 

 

「……は?」

 

 

いやぁーごめんごめんと、片手で謝りながら恥ずかしそうに頭を掻き、メダルを少女に差し出す拓斗。少女もいきなりメダルを差し出してきた拓斗を見て呆気に取られた顔を浮かべるが、すぐに「まあいいか……」と疲れたように溜め息を吐きながら拓斗が差し出すメダルに手を伸ばした。だが……

 

 

 

 

 

 

 

 

『――コアメダル……渡せ……』

 

 

―シュウゥ……バシュウゥッ!!―

 

 

 

 

「……?!避けろっ!」

 

 

「……へ?―ドンッ!―うわッ?!」

 

 

少女はメダルを受け取ろうとした瞬間、突然険しい顔付きに変わって拓斗に飛び込みそのまま押し倒したのだ。それと共に、拓斗が立っていた場所に何処からか飛んできた無数の風の刃が突き刺さり、押し倒された拓斗や周りの一般人達はそれを見て驚愕した。

 

 

「な、なんだ……これ……」

 

 

「ちっ!奴らめ、もう動き出したのか……!」

 

 

「……え?」

 

 

地面に突き刺さる刃を見て拓斗が唖然となる中、少女は拓斗とは別の方向を睨みつけながら何やら舌打ちし、拓斗はそんな少女を見て同じ方へと視線を向けた。すると其処には、両手に持った鎌のような武器を振り下ろすカマキリの様な異形……先程ウヴァが生み出した怪人が立っていたのだ。

 

 

「お、おわっ?!何か変なのがいる?!」

 

 

「変なのじゃない。あれはヤミー……お前達の欲望から生まれた物だ」

 

 

「……?ヤミー?」

 

 

聞き慣れない単語を口にした少女に拓斗は思わず聞き返してしまうが、少女は何も答えずヤミーと呼ばれた異形を睨みつけている。そしてヤミーは拓斗へと歩み寄ろうとするが、拓斗の隣にいる少女を見て何かに気付いたように立ち止まった。

 

 

『?お前、ティアか?』

 

 

「っ……手を出さないでもらおうか?これは私のコアメダルだ!」

 

 

『関係ない……コアメダル、寄越せっ!』

 

 

そう言ってヤミーは両手の鎌を振りかざしながら少女と拓斗に斬り掛かっていくが、少女はすぐさまヤミーの懐に飛び込んで体当たりをかましヤミーを吹っ飛ばすと、そのままヤミーへと突っ込んでいった。

 

 

(ちょ、何?何なんだ一体……こんな不幸は前代未聞なんですけど?!)

 

 

いきなり非現実的な展開を目の当たりにして戸惑いを隠せない拓斗。周りにいた一般人達は、ヤミーを見て悲鳴を上げながら何処かに逃げて誰もおらず、この場にいるのは自分とヤミーと戦う少女だけ。しかもその少女は勇敢にヤミーに立ち向かってるが全然敵わず、ヤミーに投げ飛ばされ壁やテーブルに叩き付けられていた。

 

 

「おいおいっ、一方的過ぎるだろっ……ちょっと待てっ!」

 

 

容赦なく痛め付けられていく少女を見て居ても立ってもいられなくなり、拓斗は直ぐに起き上がってヤミーに突っ込み羽交い締めにして少女から引き離していく。

がしかし、ヤミーはそんな拓斗を鬱陶しそうに払って簡単に吹っ飛ばし、拓斗はそのまま近くのオープンカフェのテーブルに叩き付けられてしまった。

 

 

「ガハッ!ぐぁっ……うっ……」

 

 

『小僧、邪魔をするな』

 

 

拓斗がテーブルに叩き付けられて苦しむ中、ヤミーは鎌を振りかざしながら拓斗に近づいてトドメを刺そうとする。がその時、騒ぎを聞き付けてやってきた交番の警察官達がその場に駆け付け、拓斗に襲い掛かろうとするヤミーを見て拳銃を向け発砲していった。

 

 

―ドシュウンッ!ドシュウンッ!―

 

 

『……雑魚め……フンッ!』

 

 

―シュウゥンッ……シュバアァッ!!―

 

 

『?!―ガキイィィィィィィィィィィィインッ!!―ウアァァァァァァァァァァァァアッ?!!』

 

 

「……ッ?!お巡りさんッ!」

 

 

ヤミーは警察官達に向けて再び鎌を振るって無数の風の刃を放ち、警察官達はそれを受けて吹っ飛ばされてしまった。その光景を目にした拓斗は血相を変えるとすぐに立ち上がって警察官達の元に駆け寄り、警察官達の体を必死に揺さ振っていく。

 

 

「お巡りさん?!しっかりして下さいお巡りさん!お巡りさんッ!!」

 

 

額から大量に流血して気絶する警察官達の身体を必死に揺さ振って呼び掛けるが、警察官達からの返事はない。それを見た拓斗は眉を潜めて奥歯を噛み締めながら思わず手の平を握り締めると、その時警察官の手に握られた拳銃を見つけた。

 

 

―ギギギギッ……!―

 

 

「あっ……はっ……!」

 

 

『さぁ、トドメだ……』

 

 

その一方で、ヤミーは少女の首を締め上げ持ち上げていた。首を締められて息が出来ない少女は身体を持ち上げられたまま必死にヤミーを蹴り続けるが、ヤミーはそんな少女の抵抗に鼻で笑いながら鎌を振り上げていく。その時……

 

 

 

 

 

 

―ドシュウンッ!ドシュウンッ!―

 

 

『……ん?』

 

 

突然ヤミーの背中に無数の鉛弾が撃ち込まれていき、ヤミーは少女を持ち上げたまま背後へと振り返った。すると其処には、警察官の持っていた拳銃を構えてヤミーに銃口を向ける拓斗の姿があった。

 

 

「止めろっ……!何だか知らないけどもう止めてくれっ!」

 

 

『邪魔するな。お前に関係ない』

 

 

そう言ってヤミーは興味なさげに拓斗から目を逸らし、再び少女へと目を向けていく。だが……

 

 

「……ある。関係ならあるよ……」

 

 

『……何?』

 

 

自分は少女と関係がある。そう告げた拓斗にヤミーは背後へと振り返って疑問げに聞き返し、拓斗はヤミーを見据えたまま強気な口調で語り出す。

 

 

「その子は俺の知り合いだ……名前も知らないけど、俺はその子と話をしたし、さっきからの長い付き合いなんだ……だからこれ以上、俺の知り合いに手を出すなっ!!」

 

 

「っ……あいつ……」

 

 

『……フン』

 

 

ヤミーは拓斗の言葉を馬鹿馬鹿しいと鼻で笑い、右手に持つ鎌を少女の首に押し当てていく。

 

 

「ッ!!止めろおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーっっ!!!!」

 

 

―ガバァッ!!―

 

 

『ッ?!コイツッ!』

 

 

拓斗は少女の首に鎌を押し当てたヤミーを見て拳銃を投げ捨てながら走り出し、ヤミーの背中にしがみ付いた。それによって少女から手を離してしまったヤミーは背中にしがみに付く拓斗の首を掴んでそのまま遠くへと投げ飛ばし、拓斗へと近づいていく。

 

 

『さっきから邪魔ばかりを……そんなに死に急ぎたいなら、お前から消してやる!』

 

 

「ぐっ……」

 

 

先ずは邪魔物の拓斗から消そうと考えたヤミーは拓斗へと迫り、拓斗は尻餅を着いたままヤミーから後退りしていく。その様子を見た少女は……

 

 

「……アイツ、ただの馬鹿か……だが使える……いいや、今はこの手しかないっ!」

 

 

最早これしかないと、少女は何かを決意したかのように起き上がり拓斗の元へと走り出した。だがそれよりも早くヤミーが拓斗の胸倉を掴んで跳び上がり拓斗を近くの建物に叩き付けてしまい、拓斗はそのまま頭からコンクリートの地面へと落下していく。

 

 

(ま――ずっ――?!)

 

 

空中では態勢を変える事が出来ない。このままでは頭から地面に激突してしまうと悟った拓斗は死が迫る様な錯覚を覚え、思わず死を覚悟して瞳を強くつむった。が……

 

 

 

 

 

 

―ガバッ!―

 

 

「…………え?」

 

 

 

 

 

 

その時、不意に何かが自分の身体を横から持っていくような感覚が襲った。その感覚に疑問を覚えた拓斗がゆっくりと目を開けて辺りを見渡してみると、いつの間にか少女が拓斗を脇に抱えてヤミーを見据えていた。

 

 

「っ!君……?」

 

 

『ティア?!人間を助ける気か?!』

 

 

「…………」

 

 

拓斗の危機を救出した少女の行動にヤミーは戸惑いを隠せずにいるが、少女は何も答えないまま拓斗を下ろし拓斗と向き合った。

 

 

「……お前、名前は?」

 

 

「へ?……あ、えっと……神道拓斗だけど……」

 

 

「拓斗、か……なら拓斗、お前には幾つか借りが出来た……助かる方法を教えてやろう」

 

 

そう言いながら少女は懐に手を伸ばし、其処から石で出来た何か……石の棺に取り付けられていた石板を取り出した。

 

 

『?!それは……封印のっ?!』

 

 

少女が取り出した石板を見たヤミーは動揺を浮かべて驚愕し、少女はそれを他所に取り出した石板を拓斗の腹部に押し当てた。すると石板は淡い光を放ちながら全体を覆っていた石を飛び散らせていき、石板は左腰にケースのような物、右腰にスキャナーのような物を取り付けたベルトとなって拓斗の腰に装着されたのであった。

 

 

「お、おわっ?!なにこれっ?!」

 

 

「フン、私が握っていたのはコアメダルだけじゃないんでな……」

 

 

いきなりベルトに変わった石板を見て拓斗が驚愕してるのを他所に、少女はヤミーに挑発するように笑いながらそう言って拓斗の隣に立った。

 

 

「……拓斗、助かるには奴を倒すしか方法はない」

 

 

「奴を……?」

 

 

助かるには、先程まで自分や少女を圧倒していたあの怪人を倒すしかない。そう言われた拓斗は思わずヤミーを見つめて内心不安が過ぎるが、少女は懐から拓斗が持ってるのと同じ色違いの金色のメダルを二枚取り出し、拓斗の腰に巻かれたベルトのバックルを指差した。

 

 

「メダルを三枚、ベルトの此処に嵌めろ……力が手に入る」

 

 

そう言って少女は虎とバッタの絵が描かれた緑と黄のメダルを拓斗に差し出し、拓斗は戸惑いがちに少女の手からメダルを受けとっていく。だが……

 

 

『乗せられるなティアに!使えば、ただでは済まない……!』

 

 

「っ!え?」

 

 

「ちっ……おい拓斗!多少のリスクが何だ?!此処で二人一緒に死ぬよりはマシだろう?!」

 

 

少女はヤミーの言葉で戸惑う拓斗の顔を掴んでそう告げると、拓斗の顔を見上げながら目を細めた。

 

 

「やるんだ拓斗……変身しろっ!」

 

 

『止せっ!』

 

 

「…………」

 

 

早く変身しろと促す少女と、変身するなと呼び掛けるヤミー。拓斗は二つの意見の間に立たされながら少女の顔を見ると、僅かに笑みを漏らしながら少女の前に出てズボンのポケットから鷹のメダルを取り出した。

 

 

「全く……朝は水溜まりを掛けられてびしょ濡れになって、不良さん達には追いかけ回されて、マンホールに落っこちて、放課後になれば変な女の子に追いかけ回されて、ダンプカーに轢かれて、変な怪物に襲われて、そして今度は生死の瀬戸際に立たされて……ホント、今日は最高の不幸日和だなっ!」

 

 

―ピィーーーンッ!―

 

 

鷹のメダルを親指で弾き、コインが弾ける音が辺りに響き渡る。拓斗は落下してきたメダルをキャッチすると、まず始めに鷹とバッタのメダルをバックル部分の左右スロットへとそれぞれ装填し、最後に虎のメダルをバックル中央のスロットに装填してバックルを斜めに傾けていく。

そして少女は全ての準備を終えた拓斗を見ると、拓斗の右腰に装着された円盤状のスキャナーを取り外して拓斗へと差し出した。

 

 

「これを使え」

 

 

「…………」

 

 

拓斗は黙って少女が差し出してくるスキャナーを手に取ると、スキャナーを物珍しそうに見回し、使い方は大して分からないままなるようになれと、スキャナーをバックルに翳すように斜めへとスライドさせていった。

 

 

 

 

 

 

「……変身ッ!」

 

 

『TAKA!TORA!BATTA!TA・TO・BA!TATOBA!TA・TA・BA!』

 

 

 

 

 

 

まるで歌のように響き渡る奇妙な電子音声と同時に、無数のメダルのビジョンが拓斗の周りに出現し、拓斗の前にバックルのメダルと同じ赤と黄と緑のメダルが縦三列に揃うと拓斗の身体を光が包み込み、その姿を変化させていった。

 

 

鷹の翼を模した赤い仮面と緑の複眼、両腕には黄色いアームを身につけた黄色と黒の丸みを帯びたボディ、緑のラインが走るバッタの力を秘めた脚部、そして胸の中心に鷹・虎・バッタの絵を合わせ持った紋章が刻まれた戦士へと……

 

 

『バカがっ……!』

 

 

「あぁ、期待通りのな」

 

 

『?何だ?鷹、虎、バッタって……これが?!』

 

 

二人の反応を他所に、仮面の戦士へと変身した拓斗は先程の歌のような電子音声を思い出し、戸惑いがちに自分の身体に触れている。少女はそんな拓斗の傍へと近付き、背中を押して拓斗を前に押し出した。

 

 

「歌は気にするな!それはオーズ。どれほどの物かは……戦ってみれば分かる」

 

 

『……へ?』

 

 

そう言って少女がある方を指差すと、変身した拓斗……『オーズ』は間抜けな声を上げながら呆然とその指先を見た。其処には……

 

 

『キエェェェェーーーーーっっ!!!』

 

 

先手必勝と言わんばかりに、ヤミーが両手の鎌を振りかざしながら飛び掛かってきていたのだった。

 

 

 

 

 

 

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