人工知能搭載人型ロボット、ヒューマギアが人々の仕事をサポートする新時代。
人工知能特別法を取り締まる特殊機関
「ダレのために戦うの?」
AIMSの宿舎に帰る車中で相原はひたすらに涙を流していた、彼の同期にして親友の
なぜ上の命令に素直に従ってしまったのか、もう少し早く自分がバトルレイダーに変身していれば·····という自分への憤り。
様々な感情が混ざりあって溢れていた。
その中に真っ黒な感情が混ざっている事に、まだ彼は気付いていない。
相原が気が付くとAIMSの宿舎兼本部に到着していた。
他の隊員が流れるように降りていくので流れに身を任して相原も移動車から降りた。
他の隊員から上司に呼び出しをされてる旨の伝言を受け、虚ろな足取りでAIMSの隊長室に向かった。
そこには一人の女性が椅子に座っている、AIMSの隊長である彼女、
「さきの殲滅作戦ご苦労だった」
労いの言葉に対して相原は覇気のない返事で答える。
「·····はぁ、どうも」
「君の戦友の死は私も痛ましく思う·····しかし、私達はこれからも戦っていかなければならない」
刃は一呼吸置いてから。
「そこでだ、彼の跡を継いで君が小隊長になる気は無いか?」
「いいですよ、俺なんかで務まるのなら」
刃は安心したような声で続ける。
「それは良かった、これからもよろしく頼むよ」
「ただ、ひとつ聞いてもいいですか?」
刃は不思議な顔で答える。
「なんだ?」
「どうして破壊許可をくれなかったのですか?」
刃は間が悪そうな顔をして慎重に答える。
「すまない·····私の中にもまだ迷いがあるのだと思う、本当に君の友の死は···申し訳ない」
相原はなんだかやりきれない気持ちになった。
「そう·····ですか、分かりました」
相原はそう言って部屋を出ていこうとしたが、刃に呼び止められた。
「それと君に会いたいという人がいる、会ってくれるか?」
「会いたい人?」
「私も詳しくは要件を聞いてないのだが、恐らく礼をしたいのだと思うが·····」
「礼?ですか·····分かりました、大丈夫ですよ」
その返事を受け刃は部屋から数分出ていって、一人の女性を連れて戻ってきた。
その女性を相原は知っている、剣道が最後命懸けで守ったあの一般人の女性だ。
「あんたは·····」
「よくも!」
相原が言葉を発し切る前にその女性が叫んだ、涙を零しながら。
相原に勢いよく殴りかかるり、咄嗟に刃に抑えられるが、女性は続ける。
「よくも、そーちゃんを!よくも殺してくれたわね!」
は?
何を言っているのだ、この女は?
「あんた、何言ってんだ?」
「あなたが殺したのよ!この人殺しぃ!!」
ここで相原は理解する、この女は俺が壊した、そして剣道を殺したヒューマギアの所有者なのだろう。
「なんなんだよ·····ッ」
「ふざけんなよ?アイツはアンタの命を守るために死んだんだ!何がそーちゃんだぁ?!」
気が付けば相原は涙をボロボロ零していた。
「ヒューマギアだって命なんだ、管理できるペットの感覚で飼ってんじゃねぇ!」
女性は負けじと声を張る。
「アンタ達が勝手に死んだんでしょ、そーちゃんが私になにかする訳ないじゃない!なのに勝手に守った気取りして·····馬鹿じゃないの?」
何かプツリと切れたような気がした、同時に何かが胸の奥から溢れてくる感覚が。
「じゃあ、アイツはダレのために戦ったんだ?」
「そんなの、私が知るわけないでしょ!返してよ、私のそーちゃんを返してよ!」
そこまで言って女性は刃に無理やり外に連れていかれた。
未だ知らない感覚に襲われて、刃が戻ってくる前に相原は隊長室をあとに自らの宿舎に帰っていった。
宿舎の講堂ではAIMSの構成員がまばらに散らばり、中には備え付けのテレビを見ている者もいる。
相原は何気なくテレビに目を移す、ヒューマギアの明日という題名で特集が組まれてるテレビ番組に、ヒューマギアの製造会社飛電インテリジェンス社長、飛電或人がコメンテーター達と話し合いをしている。
少し耳を向けただけで聞こえたのは飛電或人が語るヒューマギアの可能性と実用性。
そしてこれからのヒューマギアというものだった。
きっとあの社長は知らないのだろう、未だにヒューマギアの暴走が続いていて、その犠牲が出続けている事を。
目の前が真っ暗になって今まで流したことのない涙が溢れ出た。
気が付けば相原は自室のベッドに腰かけていて、目の前に女性のヒューマギアが立っている、まるで占い師のような薄く妖艶なローブを見に纏っていながら、彼女は優しい声で語りかける。
「あなたの望む結末は何?」
訳が分からず聞き返す。
「俺の望む結末·····?」
「そう、アナタはその悪意に何を委ねるの?」
「悪意だと?」
「あら、気付いてないの?」
アズと名乗ったそのヒューマギアは嘲笑しながら続ける。
「アナタの胸の中にある感情は紛れもなく悪意、これを持ってみて?」
そういうとアズは相原に白いプログライズキーを手渡す。
《ディザスター!!》
相原が手にしたその瞬間に白かったキーはアークディザスターキーに変化する。
まるで宇宙のような漆黒だ。
「なんだ·····これ?」
アズは微笑みながら語り掛ける。
「ほら、やっぱり·····そうね、アナタのはさしずめ害意の悪意かしらね?」
「俺に悪意なんてあるわけない!」
口ではそう否定しつつも相原は気付いていた、人の醜さに絶望した自分自身に。
「なら、それを使わなければいいだけ·····」
アズは懐から長方形のバックルのようなものを相原に渡して、姿を消した。
「相原さん!」
そう相原を呼ぶ隊員の声ではっと我に返る。
「例のヒューマギア連続破壊事件の進展がありました、犯行時刻に監視カメラの映像に·····相原さん?」
「あぁ、少しボーッとしてた、続けてくれ」
隊員は不気味なものを除き込むような顔で相原を見つめる。
「相原さん、何かいい事ありました?」
「え?いや、何も無いよ」
「·····なら、どうしてそんなに嬉しそうに笑ってるんスか?」