人工知能搭載人型ロボット、ヒューマギアが様々な仕事をサポートする新時代。
各地で巻き起こったヒューマギアの暴走事件の裏で名もなき被害者がいた、彼はその瞳に悪意を宿してしまうのか·····
「アクイは心に芽吹いてく」
壁に備え付けられた時計が17時を指してバラバラと周りの社員が帰り出して、勤続6年目になる
仕事のやり残しがないかを確認して、PCの電源を切る。
「お疲れ様」
他の社員からの労いの言葉にそう返して、15分程電車に揺られ家に帰り、妻や3歳になる娘と今日あった事を話す、それが羽生の日々だった。
しかし今日は少しばかり違った、同じ孤児院で育った友人から飲みの誘いがあった。
半年ぶりに友人に会うということで彼は少し早足になって帰路を急いだ、約束していた居酒屋では羽生より先に
「久しぶりだな、幸樹」
「あぁ、お疲れ様」
1時間ほど後だろうか、お互い仕事の愚痴や相原にとても気の合う友人が職場で出来た話など、酒と一緒に相手の言葉を飲み込んでいた時だった。
不意に相原が脈絡のない話をしだした。
「そういえば、お前の職場ってヒューマギア採用してるか?」
いきなりの質問に疑問を抱きながら、羽生は答える。
「いや?うちの会社では採用してないな·····そもそもヒューマギア自体あまり関わったことないしな」
相原が少し安心したような顔をする。
「いきなりどうした?」
「あぁ、もしかしたら近いうちにヒューマギアとの戦争が始まるかもしれん」
「戦争?」
まれにニュースなどでヒューマギアが人に危害を加えた話は聞いたことがあるが·····
「いやいや、大袈裟だろ?戦争なんて·····」
羽生は冗談交じりにそう返す。
「あぁ俺も冗談だと助かる、こんな冗談笑えないが」
深刻な顔をする相原に羽生は不安を覚える、確か相原は対ヒューマギアの特別な組織AIMSに所属しているはずだから、そういった事案に詳しくても納得出来る。
数秒の沈黙が訪れ相原が口を開く。
「す、すまん冗談だよ、マジにするな·····少しキツかったな」
相原はそう言ってぐしゃりと笑う、これは相原が嘘をつくときの癖で長い付き合いがある羽生には見抜けたはずだった。
「驚かせるなよ、一瞬本気にしたぞ?」
羽生は笑いながらそう言う、相原の嘘のサインを見逃したのだ、いや見ないふりをしたのだ。
4日後、この時に旧友から目を背けたことを彼は酷く後悔することになる。
相原との飲み会の4日後「それ」はいきなり起こった。
ヒューマギア製造会社の社長、飛電或人が悪意に飲まれた姿になり、同じく悪意にまみれたテロリストヒューマギアとの決闘が生放送され、その戦いに感化されたヒューマギアが多数暴走した。
ビルの外から聞こえる人とヒューマギアの怒号、鳴き声、悲痛な叫び·····まさに地獄と言える光景を羽生は目の当たりにして愕然としていた。
それからまもなくして羽生の携帯に1本の電話が入る、その内容は羽生がこれまで生きてきた中でおよそ最悪の知らせであった。
「羽生幸俊さんですね·····?」
恐らく警官であろう人物が語る、この空気を羽生はよく知っている。
高圧的な態度はそのままに妙に畏まった口調·····これは羽生の両親が亡くなった時のそれと同じだ。
「·····はい、そうです」
「誠に残念なのですが、奥さんの
人は本当に悲しい時は涙さえも出ないと言うが、羽生にとってそれは嘘だったらしい。
彼は自分の中の全ての感情を吐き出すように大粒の涙を流しながら、静かに携帯の向こうの声に問う。
「嫁と娘になにがあったんです?」
「娘さんは幼稚園で、奥さんはスーパーで暴走したヒューマギアに·····」
あぁ、幸樹が言っていたのはこの事だったのかと羽生は遅れながら理解した。
それからわずか3日後に2人の愛するものたちの葬式を呆気なく済ませ、羽生は自宅にて淡々と自殺の準備を進めていた。
一説によると自殺衝動というものは5、10分で収まるという、しかし自殺しようとする意思自体は収まることの無い。
たとえ誰に止められても·····
だから、それは羽生にとってある意味救いの手だったのかもしれない。
「あなたの望む結末は何?」
その言葉の先に妖艶な、まるで占い師のような服装の女性型ヒューマギアが立っていた。
「結末だと·····?」
アズと名乗るヒューマギアは羽生に白いプログライズキーを手渡す、そのキーは羽生が手にした瞬間に真っ赤に染った。
《ヘイドレット!!》
少し戸惑いながら羽生は己の心の感情を吐き出した。
「俺の望む結末は·····ヒューマギアの絶滅だッ!!」
アズは不敵に微笑む、たとえその眼がアズ自身を憎むものだとしても。
懐から取り出した、バックルほどの大きさの長方形の箱を羽生に手渡しながら、面白そうに告げる。
「あなたのは·····そのまんま、憎悪の悪意ね」
その後仮面ライダーヘイドレットに変身した羽生に真っ先にアズが破壊されたのは言うまでもない。