仮面ライダーゼロワン外伝 名も無きアクイ   作:タコわさび

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6話「アクイの世界で」

人工知能搭載人型ロボット、ヒューマギアが様々な仕事をサポートする新時代。

 

悪意に呑まれた相原 幸樹(あいばらゆうき)は同じく悪意持ちの旧友羽生 幸俊(はにゅうゆきとし)と惹かれ合い、衝突する。

 

 

 

6話「アクイの世界で」

 

 

 

慕っていた先輩が悪意に飲まれ、絶望し座り込んでしまった宇佐美明(うさみあきら)に対して、相原はエコーがかかった声で語りかける。

「なぁ、宇佐美」

「お前は他の人より少しだけ頭が悪いかもしれない、人との距離感を図れないやつかもしれない、容量も悪いかもしれない」

宇佐美が大粒の涙を零しながら相原を見上げる。

「でも、それでいいんだ。他の奴が出来ることを無理にやろうとするな、お前にしか出来ない事を無理に探そうとするな。ただ、こんな生きづらい世界でも真っ直ぐに自分の信じる正義を全うしろ」

「例えそれを何も知らない他人が否定しても、石を投げられ蔑まれても、お前の事を見てくれて応援してくれてる奴が、お前の事を馬鹿みたいに信じてくれるやつが·····絶対いるから」

相原は途切れ途切れに言葉を紡ぐ、今の自分が持ちうる全てを宇佐美に伝えるために。

「だから、その馬鹿の為に·····名前も知らない誰かの為にも、お前の為にも悪意にだけは呑まれるな!!」

 

相原のその声は泣いているようにも聞こえたが、その涙もその真意も仮面に隠された。

 

言いたい事を全て伝えきると、相原は後ろを振り向かずに真っ直ぐと歩き出した。

 

 

その次の日、相原の言っていた通り宇佐美が次の小隊長に決まり、それと同時に数日ぶりの休日がAIMS戦闘員らに与えられていた。

と言っても昨日の今日でゆっくり休めるはずもなく、宇佐美は1人で街を目的もなく放浪していた。用心のためにバッグにレイドライザーとキーを入れておいて。

 

 

一方羽生はと言うと、人知れずヒューマギアを壊して回り、一方相原は羽生を探して。

3人がそれぞれ別の方向に向かっていた。

昨日から降り続ける雨音はまるで彼等を急かし立てるように曇天に響く。

 

 

普段人が見向きもしないビルとビルの間で、一体のヒューマギアが仮面ライダーヘイドレッドに追い詰められている。

助けを呼ぶその声は雨音にかき消され誰にも届かずに、無情にも頭部を叩き壊され静かになった。

そんな彼を少し離れた所から真っ直ぐと見つめている男がいる、相原幸樹だ。

「·····何か用か?」

先に口を開いたのは羽生の方だった。

「あぁ話がある、少し場所を変えないか?」

そう言って相原が羽生を引連れてきたのは、海沿いにある広場のような場所だ、この雨の中で人はあまり多くなく、数少ない通行人も傘もささず向き合っている2人を異形視している。

「それで話って?」

「·····なぁ羽生、もう辞めないか?」

「辞める?ヒューマギアに復讐するのをか?」

「あぁ、そうだ」

羽生が呆れたように相原を見る。

「なぜ?復讐をしても誰も喜ばないからか?何も生まないからか?·····お前の口からそんな綺麗事は聞きたくないぞ」

「もちろん、そんな綺麗事を言いに来たんだじゃない。実の所俺も、もう手遅れなんだ、人を殺した」

人を殺した。およそ日常生活で聞くはずのないその申告に羽生は押し黙ってしまう。

すかさず相原が続ける。

「だから、そのなんだ……お前を止めるとか偉そうな事は言わない」

降りしきる雨粒がまるで涙のように、相原の頬に流れる。

「頼むから俺を……俺を止めてくれ」

羽生は察する、目前の友が悪意に対してギリギリで踏ん張ってる事に、まるでそれ以外に手段が無いと言わんばかりに自分に泣きついてきていることに。

そして、相原を止めるという事は、己自身を止めるという事を意味するのだろう。

いつの間にか相原の手にはディザスターキーが握られていて、まるで理性でそれを抑えるように震えていた。

「·····そうか、あぁもうそうなんだな」

羽生は上着のポケットからヘイドレッドキーを取りだし、相原を真っ直ぐと見つめ直す。

《ディザスター!!!》

エンドライズ!!

The worst disasterLast loneliness(最悪の災厄!それは最後の孤独)

「あぐ·····うぅ、ウグァアァぁああ!」

相原が苦しそうに、紫の液体に包まれ仮面ライダーディザスターに変身してしまう。

弱々しい声で相原が零すように口にする。

「ごめん·····ごめんなさい」

羽生はキーを起動させながら。

「謝るな、家族の悪意くらい受け止めてやる」

《ヘイドレッド!!》

イービィライズ!!

Envelop the world Deep and sad malice(世界を覆うほどの深く、悲しい悪意と絶望)

急に現れた2体の異形に、周りの人々は散り散りに逃げていった。

この騒ぎを宇佐美が知るのは、あと数分後の話。

 

かくして、同じ場所で育ち別々の道に進み、真逆の悪意を持った2人は対峙する。

あらかじめ理っておくが、この2人にハッピーエンドは存在しない。

飛電或人(ひでんあると)と滅のようなハッピーエンドなど、主人公以外は手に出来ないのだから、脇役でさえない彼等に現実はただ非情なだけなのだ。

もしもこの物語を見てくれている君が、バッドエンドは嫌いだと言うならこれ以上見ることはオススメできない。

それでももし、彼等を見届けてくれるならどうか祈って欲しい、悪意に飲まれた哀れな彼らの結末を·····




お久しぶりです、タコわさびと申します。
という事で相原さん達の物語も、あと数話で完結となります。

初めからこの物語はバッドエンドで閉めるつもりでしたが、もしもハッピーエンドを望む方がいらっしゃいましたら、ある程度の善処はしようかな·····と言った所です。

ここまで読んでくれた悪意に呑まれてない、優しい方·····コメントしてくださってもいいんですよ·····|ω・)チラ

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タコわさび(躁鬱)
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