ヴァイオレットの道行きークリム・アンデルセンの課題論文ー   作:あじたまんぼー

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手紙と恋路を巡るドタバタ珍道中スタートです。ここから、正直内容というよりもジャンル的に書くのが不得手な所になるため、温かい目で見てください。


恋文見学Ⅰ

 ノエルでの散策を終えた夜、屋敷の庭園に四人の人影がいた。

 

「クリム、デイブは?」

「ぐっすり。そっちは?」

「こっちもよ。余程疲れたんでしょうね。」

 

 クリム、ベルベットがそれぞれの相棒の様子を見た後に来たため、その様子を報告していた。先に待っていたロムとジュドーは、それを黙って聞いていた。

 

「悪いな、事情も話さずに協力させて…」

「大丈夫だ。何となく察していたし、大体の事はロムから聞いた。」

 

 クリムの共犯者達は、主犯に目線を向ける。主犯のクリムは、庭園の椅子に座りながら、

 

「よし、これで君達も共犯者だ。夏休み後に、教授を驚かせてやろうぜ」

「「「そっちかよ」」」

 

 真面目な顔でそう言った後に、三人から一斉にツッコミをされた。

 

 

 翌日、クリム達一行は鉄道に乗ってノエルから離れた。目的地は旧フリューゲル首都に位置する大都市「ブリュン」。フリューゲル王家の宮殿のあるお膝元である。

 

「いいのか?俺の研究に付き合う形になっちゃって。」

「気にするな、俺らも予め行きたいところだったしな。」

 

 クリムは、他の五人に少し申し訳ないと思いつつも、他の五人もまた宮殿に行きたかったために笑顔で返した。ブリュンにあるフリューゲル王家の宮殿に向かうべく、一行は宮殿への道を歩いていた。

 公開恋文。ヴァイオレットが代筆屋として仕事を始めて数か月後に請け負った大仕事であり、物語としては序盤である。その仕事の内容は、当時のドロッセル王国の王女、シャルロッテ・エーベルフレイヤ・ドロッセル王女の公開恋文の代筆。その相手は、フリューゲル王国の王子、ダミアン・バルドゥール・フリューゲル王子。後に、フリューゲルの国王になった後に、二重王国になった時には初代国王になった男である。そんな二人の距離を縮めるように始めた公開恋文は、文字通り公式で公開しており、当時普及しつつあった新聞によって瞬く間にその熱は伝播するようになる。もはや国民の大半の話題をさらったこの公開恋文を更に歴史的にも有名にしたのは、途中から代筆屋を使わずに、それぞれ直筆で恋文を交わしていたこと。それを勧めたのは、他でもなくヴァイオレットであるのはとても有名である。

 直筆で書かれた恋文は、当時の国民たちを大いに興奮させて、酒の肴にその新聞を読む者もいたそうで、実際にそのような絵画も散見されている。

 そんな件の恋文を見学をすべく、宮殿に向かっているのだが、その宮殿には公開恋文の半分しか展示されていない。これから向かう宮殿には、シャルロッテ王女からダミアン王子に向けての恋文しか展示されていない。

 

「だから、目的地はもう一つあるんだよな…マジでお前ら観光気分じゃん。」

「そりゃあ、アンタ以外は半分以上は出来ているわけだし、当然よね。」

「やめろベルベット。その言葉は俺に響く…」

 

 合宿とは名ばかりの観光気分の一行をみて苦笑いをするクリムに、ベルベットが茶々を入れる。クリムのその後苦い顔をしたところでみんなに笑われることとなった。

 

 宮殿への道のりを歩いた末に、ようやく宮殿にたどり着いた。行楽シーズンということもあり、多くの観光客もいる。クリムは、目線だけをベルベットとロム、ジュドーに向ける。三人はそれぞれ小さくうなずく。

 

「さて、そろそろ始めますか…」

「なんだ?」

「課題が進んでいる奴には関係ない事ですよー。デイブ。…それよりも」

「お、おう…本当に大丈夫なんだよな?」

「知るか。ちょくちょく二人で遊んでるんだろ?そのノリでやれよ。色々考えたが結局お前がどうにかするのが最善だろ。俺達がやるのは、あくまでもセッティングだけだ。」

「いや、セッティングだけでもありがたいが…お前らが無策で大丈夫かって話だ」

「問題ない。勝利の鍵は、お前だ。頑張れ」

 

 クリムは、そう言ってデイビットから離れた。

 

「お前ら、一度散策するだろ?俺はとっとと課題終わらせてくるわ。」

 

 そう言って、クリムは宮殿の入り口へ足を向けた。

 

 

 一行から離れたクリムは絢爛な宮殿内の廊下を歩く。途中展示される、王家の歴史の品物を見物しつつ、目的の部屋にたどり着いた。

 

「ここまでの多さになると、壮観だな…」

 

 クリムは、そこに並ぶ公開恋文を眺める。送られた恋文を時系列順に並べており、それを順番に見る。この部屋の恋文は、聖地巡礼としてもかなり人気な所であるが、運よくクリムが一人。それに少し安心しながら、恋文のないようを読み進めていた。

 

「確かに、最初の方はドールが書いたのが分かるくらいには綺麗すぎる文章だな…こりゃ、王女様も不満になるわけだ。」

 

 クリムは、姉が主演をしていた物語を思い出しながら序盤の手紙を読み進める。それは奇麗に纏められた文章は、憲章や法典に収められるほどのものでありながらも、情熱的な部分も殺さないような内容であったが。

 

「文章が綺麗すぎると、ここまで人柄が分からなくなるものなんだな…お、ここからか。」

 

 そう、読み進めていく内に、おそらくこの国の運命すらも変えた手紙が出てくる。

 

「私の泣き顔を見て笑いましたね…、ねぇ?しかし、目的の一通はあっち側か…まぁ、当然だよなー。あの手紙は、ダミアン王子からの手紙だし。」

 

 そう呟きながら、そこからの手紙を読み進める。何よりもどかしいのは、ここに両家の手紙が無い事だが、

 

「まぁ…。同じ国家だけど、王家は別だもんなー。よく二重共和国で成り立ったよなー。本当なら、市民革命が起きてもおかしくないのに…それ程親密かつ平等な関係性だったんだな。」

 

 手紙の総数の半分であるが、この宮殿で大事に管理されているものは、シャルロッテ王女からのもの。そして、もう半分。つまり、ダミアン王子から贈られた手紙は、ドロッセル王家の宮殿で展示されている。両国の平和と親愛の象徴であると共に、両家共に新たな歴史の礎となった歴史的な側面があるため、それぞれの宮殿で丁重に管理を行うことになったらしい。それ以前に、宝石にも勝る宝物であるため手放したくないのが本音である。一時期は、首都ノエルの博物館に両家の手紙が並んだことがあるが、それも一時的なものである。いずれにせよ、クリムの目的を果たすためにはドロッセル王家の宮殿に向かう必要がある。

 

「まぁ、そもそも明日か明後日行く予定だったしそこは問題ないんだけどな。」

 

 その後、手紙に関するメモを取ってから部屋を後にした。そして、こちらに向かっているであろう一行と合流するために展示品を眺めながら来た道を戻っている所で、デバイスから軽快な音が鳴る。表示を見ると、そこにはベルベットの名前があった。

 

「どした?そっちはうまくいっている?」

 

 おそらく、進展したことを報告する連絡であると思っているクリムは、少しテンションを上げて話す。そこから、数瞬の間を置いた後に、電話越しから小さなため息が聞こえた。

 

『こっちも、奈緒に色々アドバイスしたから大丈夫だとは思ったけど…』

「…あー、まさか?」

 

 何となく察してしまったクリムが、聞くところで、ベルベットが続ける。

 

『…大喧嘩』

 

 その言葉を聞いたクリムは、自分の考えの甘さを呪いつつも、とはいえ降って湧いてしまった問題に頭を抱えるのであった。




次回、友人の恋路のアクシデントに頭を抱える回です
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