ヴァイオレットの道行きークリム・アンデルセンの課題論文ー   作:あじたまんぼー

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ブーゲンビリア編は一端終了です。ここからは、公開恋文まで飛ぶか、少し牛歩するかを悩んでおります。


悲劇の教会

 ヴィリア教会跡。100年前の戦争の末期における最前線の一つ。北方の連合にとっては屈辱の地、そして南方の連合にとっては革命的な勝利を得た場所。嘗ては美しい建築様式と装飾で信者たちの心の拠り所だったが、現在では過去の戦争の傷を残す戦争遺産の一つ。心の拠り所ではなくなったものの、数多くの兵士を弔う霊地として、そして戦争の悲惨さを今に伝える観光地としての側面を持っている。

 そんな場所に、クリムは手帳とカメラを持ちながら散策していた。ブーゲンビリアの屋敷を訪ねた後日。エレンの助言を受けて、二人が離別する実際の場所。戦争の爪痕を残している過去の遺物だが、今日におけるそこは、また別の側面を持ち始めている。それは、

 

「…若い女性多くね?」

「そりゃあ、少し前の作品とはいえ熱心なファンが多いんだからなー。所謂聖地巡礼ってやつ?」

「扶桑国特有の文化だと思っていたが、オタク文化は世界共通化なのな。」

「お前それ絶対大声で言うなよ?」

 

 ヴァイオレット・エヴァ―ガーデンの聖地巡礼。最近の若者達のブームであり。女性のみならず、男性の巡礼者も多いそうだ。クリムは、そんな様相に若干複雑な気持ちになるものの、それをすぐに飲み込んだ。

 

「…戦争遺跡を回って、その傷跡を辿ってレポートを取るんだろ?これじゃあ不都合じゃないか?」

「そのまま返すわ。俺に関しては写真に収めればいいんだから正直問題ない。まさかライデンの辺境までブームが及んでいるとは思わなかったけど。」

 

 今回は、クリムだけではなく連れもいる。彼の同期のこの男の名前はデイビッド・クリスティ。クリムと同じ、バーリー=キャロルの門弟であり教授と同じ戦争社会学と映像社会学を志す男である。彼の課題論文は戦争遺跡を巡り、そして戦争の記憶を集めること。やっていることはクリムと似ているが、彼よりは進捗は良いそうである。

 

「確かドラマの第一話の終わりが、この教会での離別だよな。」

「あぁ。その時姉さんは14歳で、俺が12。ダガールからライデンに移って8年経った頃さ。」

 

 クリムはそう言いながら、取材ファイルと照らし合わせるように教会跡の入り口まで歩く。デイビッドも、写真を撮りながら付いて行く。観光客の間を縫って教会の入り口の方に向かう。ライデンを襲った二度の戦争によって、この教会も基盤を残した無残な廃墟となっている。一度目は、最初の大戦。ギルベルトとヴァイオレットが離れ離れになる狙撃と強襲部隊の擲弾筒による爆撃。二度目は、ベルン帝国の大規模空襲。ガルダリクがベルン帝国に応戦した結果、多くの犠牲者を出した場所。しかし、ライデンシャフトリヒは無関係ではなく、多くの義勇兵も殉職した。そんな廃墟の、元々の入り口だったところでは、この教会で死んでしまった者達の名前が刻まれている石碑が存在する。

 ヴァイオレット・エヴァ―ガーデンが大ヒットして聖地巡礼が大流行する前までは、この地は確かに世界大戦の悲惨さを世に残す貴重な遺構であるが。現在は更にその前の戦争の傷跡も残す場所となっている。

 数年前までは、ライデンシャフトリヒと、ガルダリクを構成していたミクローシュ、ヴィシー、パリスの三国との緊張状態になっていたが、「エウロペ協定」と呼ばれる包括的な連合協定を締結したことでパスポート無しでの行き来が可能となっている。つまるところちょっとした海外であるが、大陸全土を網羅する鉄道網によって観光がしやすい状況となっている。現在ではライデン市から高速鉄道を乗り継いで三時間で到着できる場所になる。そんな戦争の遺構で、観光客が来るはずがない忘れ去られた場所であるが。前述のの通り、条件が揃って今や一大観光名所の一つになっている。

 

「ふむ…流石は原爆ドームに並ぶ戦争の遺構ねー。こっちは焼夷弾による捕虜諸共の爆撃だけど。」

「そもそも、二度の大戦でショッキングな事件が多いからな。ライデンシャフトリヒとパリス、ヴィシーが世界遺産にでもしようと動いているが…」

「まぁ…好きにしてくれ…」

 

 その石碑の前で、いるかもしれない地縛霊に報告するよう真顔で会話を交わす二人。心霊スポットとしても名前が知られているこの場所ではすこし罰当たりなことかもしれないが。そんな会話をしながら、クリムはそこから見れる範囲で廃墟の様子を見てみる。二度の戦争で標的にされた教会には、未だに火薬が爆ぜて灼けた跡が残っている。そして空襲によって灼けた人たちの跡が、未だにそこに存在するかのように横たわっている。

 

「ギルベルト少佐は、どんな気持ちで彼女に愛を教えたんだろうな。」

「どうしたクリム。」

「いや、少佐が全てだった少女に、自由になれと言った上で「愛してる」なんて言ってみろ。俺がヴァイオレットでも生涯それを引きずる。」

「…お前の言い方なら、それこそ彼女にとっては呪詛だろうな。そこらへんはナオの方が詳しいんじゃないか?その概念は(エイジア)由来だろ。」

「西側にもあるぞ。オカルトの類だけどな。」

 

 凡そ、多くの観光客が考えないようなことを話しながら二人はそれぞれやるべきことをやる。デイビッドは廃墟の焦げ跡を写真に収め、クリムも廃墟の全貌を撮っていた。

 ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン。クリムの姉のエドナが14歳という若さで抜擢されたこの作品はひとつの長編ドラマと二つの映画で構成されている。そしてこのドラマにおいて最初の盛り上がりが、このヴィリエ教会での二人の離別。片や頭を狙撃され、片やグレネードの爆風で両腕と自分にとってすべての人物を失った。そうして第零章が終わり、第一章。愛を教えてくれた大事な人を失ったまま、教えてもらった「あいしている」という意味を知っていく。そんなドラマチックなことがあったからこそ、聖地巡礼が大流行した口火になった。

 そんな場所を眺めながら、幼き日に見てきた懐かしき故郷が焼かれる様を思い出し。そして姉を守るように榴弾をその身に受けた事を思い出す。そうして、もし自分が死んでいたら姉も感情が抜け落ちていたんじゃないか。そう思いながらも100年前の戦争と、そして自らが身に置いていた地獄のような戦場に思いをはせていた。

 教会の入り口だったところでのやることが終わり、二人がそれぞれの目的を果たすために辺りを散策した後に二人の現地調査はお開きとなった。

 

「うーん…久しぶりに電車乗ったなー。やっぱバイクの方が楽だわなー」

 

 ヴィリエ教会を後にして、いくつもの電車を乗り継いだ末にようやくたどり着いた最寄り駅から出てから、凝りを解すために背中を伸ばした。丁度帰宅ラッシュに捕まったために二時間ほどたち続けることを強いられてしまい、彼自身はかなり萎えていた。そんな彼の胸ポケットのデバイスから軽快な音が鳴る。

 

「…もしもし?お前から連絡って珍しいなナオ。」

『そうね。今空いてる?』

「帰宅途中。まぁ、メモしなくていいなら話せるぞ。」

『それは良かった。』

 

 珍しい客人に、クリムは一端の興味を持ちながら、同じバーリーの門徒である(いずみ) 奈緒(なお)に話を促す。そんな彼に応えるように、扶桑国からやってきた留学生の奈緒が口を開く。

 

『ベルベットとさっき話していてね。もう夏休みじゃない?』

「まぁ、そうだな。」

『夏だから遊びたいじゃない?』

「うん。俺の状況見ていってる?」

『それでね…』

「おいコラ余裕のスルーか…!」

 

 おそらく遊びの誘いをしようとする奈緒に、レポートで切迫しているクリムが断ろうとした時に、

 

『ジュドーの家が、フリューゲル=ドロッセル共和国に別荘を持っているってね。で、そのジュドーがゼミナールの皆でその別荘でレポート合宿しないかって誘われたんだけど。…アンタ、丁度用がある場所よね?』

 

 奈緒のその言葉を聞いて、却下の言葉を慌てて飲み込む。クリムにとっても、その場所に行くことに非常に大事な意味を持つ。しかしネックとなるのが、旅費の高さだった。必要ならば、養父(フューリー)(エドナ)が出しそうなものだが、それは最後どうしようもなくなった時の切り札として残したいクリムは別の方法を考えていたのだが、思いつかずに少し途方に暮れていたところでもある。

 

「…往復の料金は安いんだろうな?」

 

 守銭奴を化したクリムは、そう代わりの言葉を奈緒に投げかけていた。




読んでいただきありがとうございます。にしてもヴァイオレット・エヴァ―ガーデンの劇場版凄いっすね。テネットや浅田家には負けてますけど、未だに上位をキープが出来ているという。鬼滅が今週金曜日に公開なので更にカオスな映画ランキングになりますね。ちなみに、テネットと浅田家も観ましたが。どうも、実写の方はアクションが無いと耐えられないようです。アニメはそうでもないのですが。テネットいいぞー…SAN値が削られそうになるけどアクションが爽快で大好物です。皆様も是非劇場で・・・!もちろんヴァイオレット・エヴァ―ガーデンも四週当たり前ですよね?(狂信者)

次回はまだ決めていませんが。とりあえずまだフリューゲルには飛ばないので安心してください。では
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