デジタルモンスター&東方Project   作:疾風のナイト

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1人の少女が行方不明になった。一体どこに消えてしまったのか。
一方、デジタルワールドでは太古の眠りから目覚めたデジモンがいた。そのデジモンの名前はオロチモン。
行方不明になった少女を救うため、デジタルワールドを守るため、選ばれし子供達が立ち上がる。


~電脳世界の大蛇に囚われし巫女~

 選ばれし子供達の1人、八神太一は家族と一緒に朝食を食べていた。そうした中、朝のニュース番組にチャンネルが設定されたテレビから新しいニュースが報道される。

「続いて新しいニュースです。昨日、某県在住の女の子が行方不明となりました」

 淡々とした口調で新しいニュースを報道するアナウンサー。さらにアナウンサーは視聴者に事件の詳細を報告する。

「行方不明になった少女の名前は東風谷早苗、年齢は14歳。家族からの証言によれば、彼女は昨夜から行方が分からないとのことです」

 アナウンサーの報道にさらに耳を傾ける太一。普段であれば、この手の報道は特に珍しくとも何ともないため、聞き流しているのだが、今回ばかりはいつもと違っていた。

「(何か嫌な予感がする……)」

 どうしてかは分からない。ただ、何かとてつもなく大きな事件の前触れのように嫌な予感がする。太一はそう感じていたのだ。

「お兄ちゃん、そろそろ急がないと朝練に間に合わなくなるよ」

 思考に耽っていた太一であったが、一緒に食事をしていた妹のヒカリの言葉で現実に戻る。ヒカリの言うとおり、そろそろ朝食を終えて家から出なければ、学校のクラブ活動の朝練習に間に合わなくなる可能性がある。

「ああ、そうだな」

 それだけ言うと急いで朝食を食べ終える太一。そして、太一は学校に登校する準備のために自分の部屋に向かった。

 

 身支度を終えて自宅のマンションを出た太一。太一はアスファルトで舗装された道を駆け抜け、自身の通っているお台場小学校に急ぐ。その時であった。

「太一……八神太一よ……」

 どこからか声が聞こえてくる。耳からというよりはむしろ頭の中に直接語りかけてきていると言っても過言ではない。

 次の瞬間、太一の視界は眩い閃光に包まれる。そのあまりの光量に思わず、目を瞑ってしまう太一。

 やがて、太一の目の前から光が消失する。視界が戻った太一の目の前に広がっていたもの、それは威圧感を漂わせる巨大な神社の社であった。格式のある神社なのだろうか、神社に使用されている木材は随分と年季が入っている。

「この神社……」

 そんな言葉と共に独り呟く太一。太一はこの神社に見覚えがあった。確か今朝のニュースで行方不明になった少女が暮らしていると言う神社だ。

「確か……この神社の名前は……」

「太一!」

「太一さん!」

 太一がそう言いかけた時であった。どこからか太一の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。同時に太一は自分を読んだ声の主のことをよく知っていた。

 声が聞こえてきた方向に顔を向ける太一。すると、そこには太一の方に駆け寄ってくる2人の少年の姿があった。

 1人は太一と同じぐらいの年齢で金髪と碧眼が特徴的な少年であり、もう1人は太一よりも背が低い小柄な少年であった。

「ヤマト!光子郎!」

 2人の少年の名を呼ぶ太一。金髪の少年の方は名前を石田ヤマトと言い、小柄の少年の方は名前を泉光子郎と言った。ヤマトと光子郎、彼等もまた太一と同じく選ばれし子供達の一員であった。

「ヤマト、光子郎、どうして、お前達がここにいるんだ?」

「それが俺にもさっぱり分からないんだ」

「急に声が聞こえたと思ったら、気がつけばここにいました」

 太一の質問にそう答えるヤマトと光子郎。太一と同様、ヤマトと光子郎もまた、それぞれの場所で謎の声が聞こえたかと思うと、いつの間にか神社の前に立っていたのだ。

 まるで狐に包まれた感覚の太一、ヤマト、光子郎。そんな彼等の疑問に答えるように何者かが話しかけてくる。

「どうやら、全員揃ったようだな」

 どこからか聞こえてくる女性の声。声そのものは若々しいものの、その背後には言い様のない威圧感と貫録を感じさせた。同時に太一達は今の声に聞き覚えがあった。

「(今の声は……)」

「(ああ、間違いない)」

「(僕達に語りかけた声)」

 それぞれの心の中でそう思う太一、ヤマト、光子郎。今、太一達を呼んだ声と先程の声、全く同じ声であったのだ。

 そして、太一とヤマトと光子郎の3人の前には、いつの間にか1人の女性が雄々しく立っていた。

 太一達の前に立っていた女性、年齢は18歳~21歳くらいであろうか、美しさの中に武人を思わせる雄々しい雰囲気を漂わせており、背中にはとぐろを巻いた蛇のような縄と大筒を思わせる何本かの金属の柱を背負っていた。

 目の前に出現した女性を前に表情を固くする太一、ヤマト、光子郎。女性の異形な格好は勿論のこと、周囲に漂わせている気配、人間のものでないことを太一達は感じ取っていた。

「ああ、君達、そんなに固くならなくても良いぞ」

 厳かな外見とは裏腹に気さくな態度で語りかけてくる女性。だが、正体が分からない以上、警戒を解くわけにはいかない。まず、手始めにヤマトが女性に挨拶をすることにした。

「俺は石田ヤマトと言います。貴方は?」

「私かい?私は八坂神奈子、この神社に祀られている神様さ」

 神奈子から告げられた言葉に質問をしたヤマト本人を始め、太一と光子郎は大きな衝撃を受ける。デジタルワールドで冒険を経験したことのある彼等であるが、まさか自分達の世界において神様と対面するとは思わなかったからだ。

「それで神様が僕達に何の御用件ですか?」

「実は身内が行方不明になっていてね。早苗って女の子なんだけど」

 光子郎の質問を聞いた途端、それまでの朗らかな表情から一転、険しい表情で神奈子は話を始める。

「まさか……東風谷早苗……」

 呟くように言う太一。確か今日の朝のニュースで行方不明になっていた女の子の名前も同じ早苗だったはずだ。

「太一、あんたが思っているとおりだよ。早苗は私に仕える巫女でね。こともあろうか、早苗を誘拐した不届き者がいるんだ。そこで君達に誘拐された早苗を助け出して欲しいんだ」

 太一達に事情を説明する神奈子。ニュースでは行方不明と報道されていたが、まさか誘拐事件とは思ってもみなかった。

「でも、何故、僕達に早苗さんの救出をお願いするんですか?」

 神奈子に自身が抱いている疑問を投げかける光子郎。神様である神奈子であれば、わざわざ自分達の手を借りずとも誘拐された早苗を救出することも可能だ。それなのに何故、自分達の力を必要としていのか。

「それがそうもいかないんだ。早苗がどこに連れ去られたかは既に分かっている。だけど、連れ去られた場所がちょっと特殊でね。デジタルワールドとか言う異世界にいるんだ」

 神奈子から告げられた一言に絶句する太一、ヤマト、光子郎。今回の誘拐事件にデジタルワールドが関わっているとは思わなかったからだ。

 さらに神奈子の話によれば、神奈子は人間の信仰を力の源としているため、全てが電子情報で構築されたデジタルワールドでは、その絶大な力を思うように出すことができないと言う。

「そこでデジタルワールドの救世主、選ばれし子供達のメンバーであるあんた達の力を借りたいというわけなのさ」

 何もかもお見通しの神奈子の言葉を黙って聞いている太一、ヤマト、光子郎。同時に彼等の中で覚悟が決まる。今回の誘拐事件にデジモンとデジタルワールドが関わっている。デジタルワールドの救世主・選ばれし子供達の一員として、彼等は今回の事件を黙って見過ごすわけにはいかなかった。

「僕達にできることであれば喜んで協力します」

「ああ、そうだとも」

「神様!今回のことは俺達に任せてくれ!」

 それぞれの形で返事をする光子郎、ヤマト、太一。太一達が快く承諾してくれたこともそうだが、何よりも選ばれし子供達の頼もしい姿に神奈子は思わず笑みを浮かべる。

「よく言った。それでこそ、選ばれし子供達じゃ」

 不意に後方から年老いた男性の声が聞こえてくる。太一達が視線を向けると、そこには小柄の糸目の老人が立っていた。そして、太一達は目の前の老人のことをよく知っていた。

 この男の名前はゲンナイ。一見すると、ただの老人にしか見えないが、デジタルワールドを維持するために活動している存在であった。

「今回の誘拐事件、この事件はデジモン、オロチモンの仕業によるものじゃ」

 選ばれし子供達に今回の誘拐事件の事実を告げるゲンナイ。東風谷早苗が誘拐されたのは1体のデジモンの仕業によるものであった。

「何だって?」

「それは本当か?」

「オロチモン?」

「ああ、そうじゃ」

 驚いている太一達に事情を説明するゲンナイ。ゲンナイの説明によれば、長い間、オロチモンと呼ばれる強大な力を持ったデジモンが地の底で眠っていた。そのオロチモンが最近、眠りから覚めて自身の力を蓄えるために現実世界の人間の少女を誘拐し、さらには生贄にしようとしているのだと言う。

「そうだったのか……」

 ゲンナイの説明を受けて納得がいった様子のヤマト。デジタルワールドのデジモンが悪さをしている以上、選ばれし子供達としては事態を放置しておくわけにはいかない。

「まるで伝説の怪物の八岐大蛇ですね」

 ゲンナイからの話を聞いて呟くように言う光子郎。そんなオロチモンの行為は日本の神話に登場する八岐大蛇を彷彿とさせた。

「だけど、どんな理由があろうと、女の子を誘拐するなんて許せるもんか!」

 怒りの感情を露わにしている太一。人一倍正義感の強い太一にとって、オロチモンの行為はとても許せるものではなかった。

「頼んだぞ、選ばれし子供達」

 太一、ヤマト、光子郎に後のことを託すゲンナイ。それと同時にゲンナイは選ばれし子供達の彼等ならば、オロチモンのことを鎮めてくれると信じていた。

「悪いけど早苗を頼んだよ」

 大切な早苗のことを選ばれし子供達に託す神奈子。その姿は我が子を心配する母親のようでもあった。

「おう!任せてくれ!」

「必ず助け出してみせるさ」

「ゲンナイさん、神奈子さん、行ってきます」

 それぞれ返事をする太一、ヤマト、光子郎。こうして、太一達はゲンナイと神奈子の協力の下、オロチモンに捕まっている早苗のいる場所に向かった。

 

 デジタルワールドに存在する某所。草木が好き放題に伸びている野原の中、小規模の古墳が無数に設置されている。ここは遥か昔、デジタルワールドの安定と調和のためにその身を捧げた眠る場所であった。古墳はそんな者達の墓でもあった。

 今、この場所に1人の人間の少女が連れ込まれていた。年に見合わず大人びた雰囲気、艶のある美しい翡翠色の長い髪、そして蛇と蛙の髪飾りが特徴的な少女。

 少女の名前は東風谷早苗。普通の女の子としての生活を営む一方、実家の神社で神に仕える者としての修行に励む少女であった。

 そんな早苗の前に聳え立つように鎮座しているデジモンがいる。それは8本の首を持った蛇のようなデジモンであり、日本神話に登場する怪物・八岐大蛇を彷彿とさせた。

 このデジモンの名前はオロチモン、完全体の魔竜型デジモンである。長い眠りから目が覚めて間がないオロチモン、オロチモンは自身の力を回復させるために早苗を現実世界から誘拐してきたのだ。

「あの……」

「ん?何だい?」

「これから私をどうするつもりなのですか?」

「あんたもよくよく馬鹿だね。決まっているだろう。あんたはこれから私の餌になるのさ」

 おどおどとした口調で質問する早苗に対して、さも、当然のように答えるオロチモン。太古からデジタルワールドの各地を荒らし回ってきたオロチモンにしてみれば、現実世界で神に仕える早苗の存在など都合の良い生贄に過ぎなかったのだ。

「(助けて……神奈子様、どうか私を助けて)」

 両手を合わせて祈る早苗。これまで巫女として仕えてきた神奈子。神奈子ならばきっと救いの手を差し伸べてくれるに違いない。早苗はそう確信していた。

「一体何をやってるんだい?こんなことをしても無駄だよ」

 真摯な早苗の祈りを嘲笑するオロチモン。所詮、儚い人間の祈りなど圧倒的な力の前には無力なのだ。

「それはどうかな?」

 その時、オロチモンの言葉に異を唱える者がいた。力強さと凛々しさに満ちた少年の声。

 すると、そこには太一とヤマトと光子郎が立っていた。そして、彼等の傍にはそれぞれのパートナーと思わるデジモンが立っていた。

「あんた達は誰だい?」

 選ばれし子供達とそのデジモン達に質問をするオロチモン。突然の闖入者に自分の企みを邪魔されてオロチモンは苛立ちを隠せないでいた。

「これ以上、お前の好きにはさせない!」

 そんな言葉と共に吠える太一。選ばれし子供達の一員として、太一はオロチモンの暴走を止めようとしていた。

「そうだ!これ以上、お前の好き勝手にはさせないぞ」

 太一の傍らにいるデジモンが言う。黄色の体色とは虫類のような外見が印象的なデジモン、このデジモンの名前はアグモンと言い、成長期のは虫類型デジモンである。

「大人しくその子を解放するんだ」

 オロチモンに勧告するヤマト。一見、冷徹に見えるヤマトの表情であるが、その闘志は太一達に負けないものがあった。

「そうだよ、早くこの女の子を解放するんだ」

 ヤマトの傍らにいるデジモンが言う。頭から伸びた1本の角と全身に被った毛皮が特徴的なデジモン、このデジモンの名前はガブモンと言い、成長期のは虫類型デジモンである。

「いい加減、大人しくして下さい」

 オロチモンを呼びかける光子郎。オロチモンがしようとしている行為は馬鹿げている。光子郎はそう考えていた。

「光子郎はんの言うとおりや。早くやめなはれ」

 光子郎の傍らにいるデジモンが言う。昆虫のテントウムシを彷彿とさせる姿をしたデジモン、このデジモンの名前はテントモンと言い、成長期の昆虫型デジモンである。

「ふん、若造が何を言ってるんだい!」

 選ばれし子供達とそのデジモン達を前にしても全く怯む様子のないオロチモン。その昔、各地で暴れ回ったオロチモンにしてみれば、選ばれし子供達とそのデジモン達など取るに足らない若輩であった。

「いくぜ、アグモン!」

「うん!」

「ガブモン!」

「分かってる!」

「行きますよ、テントモン」

「はいな」

 それぞれお互いに顔を見合わせて戦いへの覚悟を決める太一とアグモン、ヤマトとガブモン、光子郎とテントモン。そんな選ばれし子供達とデジモン達の覚悟に感応して、太一・ヤマト・光子郎のそれぞれが所有するデジヴァイスが光を発する。

「アグモン進化!グレイモン!!」

 太一のデジヴァイスからの神聖なる光を浴びて、成長期のアグモンはオレンジ色の大きな身体と固い角を持った恐竜型のデジモンに進化を遂げる。このデジモンの名前はグレイモン、成熟期の恐竜型デジモンである。

「ガブモン進化……ガルルモン!」

 ヤマトのデジヴァイスからの神聖なる光を浴びて、成長期のガブモンはシルバーブルーの毛皮を纏った狼のような獣型のデジモンに進化を遂げる。このデジモンの名前はガルルモン、成熟期の獣型デジモンである。

「テントモン進化、カブテリモン!!」

 光子郎のデジヴァイスからの神聖なる光を浴びて、成長期のテントモンは頭部が金属化した巨大なカブトムシを彷彿とさせるデジモンに進化を遂げる。このデジモンの名前はカブテリモン、成熟期の昆虫型デジモンである。

 オロチモンの前に立ち塞がるグレイモン、ガルルモン、カブテリモン。選ばれし子供達のデジモン達と太古より目を覚ました魔竜との戦闘が幕を開ける。

 先に動いたのはガルルモンであった。狼の特性を受け継いでいるガルルモンは自慢の機動力を活かしてオロチモンに突進する。

「フォックスファイヤー!」

 敵に可能な限り接近した後、口から青白い炎を吐き出すガルルモン。ガルルモンの炎は確実にオロチモンの首の1つを捉えていた。

「ふん、何だい。今の攻撃は?」

 首の1つを焼かれながらも平然としているオロチモン。ガルルモンの攻撃を受けた首、よくよく見ると火傷どころか煤さえも被ってはいなかった。

「な、何やて!?」

 思わず驚きの声を上げるカブテリモン。全身を蛇の鱗で覆われたオロチモン、その防御力はカブテリモン達が考えているよりも頑丈だったのだ。

「今度はこっちの番だよ」

 攻撃を防ぎ切った後、反撃に転じるオロチモン。オロチモンは巨大な尾を振うことにより、目の前にいるガルルモンを容赦なく打ちつける。

「うわあっ!」

 殴られた衝撃で後方に吹き飛ばされるガルルモン。そのままガルルモンは後方にいるグレイモンと激突してしまう。

「ぐわあっ!」

「うわあっ!」

 悲鳴と共にグレイモンとガルルモンは激しく衝突する。思いもしなかった形でお互いに傷つけ合ってしまうグレイモンとガルルモン。

「グレイモン!」

「ガルルモン!」

 それぞれのパートナーの名前を呼ぶ太一とヤマト。傷そのものは深くないものの、オロチモンの持っている力は相当なものであった。

「まだまだ、これからだよ!」

 そう言った後、カブテリモンに向けて噴霧状のブレスを吐き出すオロチモン。この攻撃は酒ブレスと呼ばれており、ブレスの中には高濃度のアルコールが多量に含まれている。

「ぐうううう!」

 オロチモンの酒ブレスに苦しめられるカブテリモン。ブレスの中に含まれた高濃度のアルコールにより、カブテリモンは自身の感覚を狂わされてしまう。

「カブテリモン、しっかりして下さい」

 パートナーの安否を気遣う光子郎。幸い生命に別条はないが、カブテリモンが正常な感覚を取り戻すまでには少し時間がかかるようだ。

「何て奴なんだ」

「攻撃力に防御力……想像以上だ」

「これが……太古のデジモンの力……」

 徐々に押されている戦況、そしてオロチモンの圧倒的な実力、それらを眼前にして呆然としている太一、ヤマト、光子郎。そんな時であった。

「諦めないで下さい」

 選ばれし子供達とそのデジモン達を応援する激励の声。太一達が声の聞こえた方に視線を向けると、そこには早苗の姿があった。

「貴方達は私を助けにきてくれました。これはきっと神奈子様がおかげだと思っています。ですから、皆さん、最後まで諦めないで!諦めなければ奇跡はきっと!」

 捕らわれの身でありながらも、懸命に太一・ヤマト・光子郎を諭す早苗。心の底から信じれば、行動すれば、奇跡は必ず起こる。早苗はそう信じていた。

「早苗の言うとおりだな」

「そうだ。俺達は」

「僕達の力で奇跡を起こすんです」

 早苗の激励で戦意を取り戻す太一、ヤマト、光子郎。それと同時に彼等の中で闘志の炎が今までにないほどに激しく燃え盛ってくる。そんなパートナー達に触発され、デジモン達の闘志もまた激しく燃え上がる。

「ふん、何を言っているんだかね」

 選ばれし子供達と早苗の主張を世迷言だと切り捨てるオロチモン。屈強な戦闘能力を持ったオロチモンにしてみれば、彼等の言っていることは弱い犬の遠吠えにしか聞こえなかったのだ。

「そんなものやってみなけりゃ分からないだろう!?」

「そうだ勝負はこれからだ!」

「……僕達は負けるわけにはいきません」

 今までにない強い口調で言い放つ太一、ヤマト、光子郎。それは同時にオロチモンに対する選ばれし子供達の勝利宣言でもあった。

「グレイモン!」

「太一!」

 太一の呼びかけに勇ましく応じるグレイモン。太一とグレイモン、彼等は自身の中に秘められた勇気の心を全開にする。そんな彼等の勇気の心に感応して太一のデジヴァイスがオレンジ色の煌めきを発する。

「グレイモン超進化!メタルグレイモン!!」

 デジヴァイスから発せられる太一の勇気の光を浴び、成熟期のグレイモンはさらなる姿に進化する。背中から羽根が伸びている上、身体の半分以上が機械化されたグレイモン。その名前はメタルグレイモン、グレイモンがサイボーグ化されることでパワーアップした完全体のサイボーグ型デジモンである。

「ガルルモン……」

「うん」

 ヤマトの呼びかけに落ち着いた様子で返事をするガルルモン。ヤマトとガルルモン、彼等は2人の間にある友情の心を解放する。そんな彼等の友情の心に感応してヤマトのデジヴァイスが青色の煌めきを発する。

「ガルルモン超進化……ワーガルルモン!」

 デジヴァイスから発せられるヤマトの勇気の光を浴び、成熟期のガルルモンはさらなる姿に進化する。二足歩行が可能となり、獣と人間の特性を併せ持ったガルルモン。その名前はワーガルルモン、ガルルモンが数多くの戦闘を重ねることでパワーアップした完全体の獣人型デジモンである。

「いきますよ」

「勿論でんがな」

 光子郎の呼びかけにいつもの調子で答えるカブテリモン。光子郎とカブテリモン、彼等は2人の間にある英知を1つに結集させる。そんな彼等の探究心に感応して光子郎のデジヴァイスが紫色の煌めきを発する。

「カブテリモン超進化!アトラーカブテリモン!」

 デジヴァイスから発せられる光子郎の知識の光を浴び、成熟期のカブテリモンはさらなる姿に進化する。全身をさらに重厚なる外殻で包み込んだカブテリモン。その名前はアトラーカブテリモン、カブテリモンが過酷な自然環境に適合することでパワーアップした完全体の昆虫型デジモンである。

 さらなる力を手にしてオロチモンの前に立ちはだかるメタルグレイモン、ワーガルルモン、アトラーカブテリモン。それは戦いの第2ラウンドの幕開けでもあった。

「ほう、少しはまともな格好になったじゃないか」

 自信満々な様子のオロチモン。遥か昔、デジタルワールドで大暴れしたことのあるオロチモン、若造のデジモン達に遅れを取るわけがないという自負があった。

「それじゃあ、覚悟は良いかい?」

 そう言った後、自身の尾を鋭い剣のような形状に変えるオロチモン。この技はアメノムラクモと呼ばれており、幾多の屈強のデジモンを葬ってきた得意技である。そして、オロチモンは選ばれし子供達に斬撃を浴びせようとする。

 次の瞬間、オロチモンの攻撃を察知して散開するメタルグレイモン、ワーガルルモン、アトラーカブテリモン。より高次のデジモンに進化したことにより、彼等の反射神経や機動力は今までと比較にならないほどに向上していた。

「何!?」

 自慢の攻撃を避けられて驚愕するオロチモン。オロチモンはメタルグレイモン達を若輩のデジモンだと思い込んで油断していた。だが、その油断が命取りとなった。

「皆、一斉攻撃だ」

「ああ!」

「はいな!」

 メタルグレイモンの呼びかけに力強く返事をするワーガルルモンとアトラーカブテリモン。最大火力による一転集中の攻撃、頑丈な外皮と老獪な戦闘経験を持ったオロチモンを倒すためにはそれしかない。

「ギガデストロイヤー!!」

 次の瞬間、メタルグレイモンの胸部ハッチが展開し、2門の発射口が姿を現したかと思うと、そこから有機体ミサイルが発射される。

「カイザーネイル!」

 両手の爪に自身のエネルギーを集中させるワーガルルモン。そして、ワーガルルモンはエネルギーが集まった両手の爪から強烈な斬撃を浴びせる。

「ホーンバスター!!」

 身体中のエネルギーを頭部の巨大な角に集中させるアトラーカブテリモン。そして、アトラーカブテリモンは角からエネルギー破を発射する。

 メタルグレイモンの有機体ミサイル、ワーガルルモンの斬撃、アトラーカブテリモンのエネルギー破、彼等の攻撃がオロチモンに向かって一斉に襲い掛かってくる。

「ふん、若造の攻撃なんか……」

 3体の完全体デジモンの攻撃を前にしても余裕の表情を崩さないオロチモン。確かにあれだけの攻撃を無傷で凌ぎ切ることは難しいが、この程度の攻撃を防ぐことぐらいわけなかった。

 その時、オロチモンは自身の身体に違和感を覚える。先程から防御の構えを取ろうとしているが、どういうわけか、まるで金縛りにでもあったように身体が動かないのだ。

「……」

 微かに声が聞こえてくる。身体が動かないため、オロチモンは目を向ける。すると、そこには早苗の姿があった。両手を合わせた上、瞳を閉じて何かの呪文を詠唱し続けている早苗。

「(まさか、あの小娘が私の動きを封じているとでもいうのかい?)」

 現状を理解するオロチモン。オロチモンの身体が動かない理由、それは早苗が巫女としての秘術を用いてオロチモンの動きを封じていたのだ。

 成す術もないまま選ばれし子供達のデジモン達の攻撃を正面から受けるオロチモン。その攻撃力は凄まじく、一瞬のうちにオロチモンは戦闘不能に追い込まれてしまう。

「うわああああああ」

 選ばれし子供達のデジモンの攻撃を正面から受けるオロチモン。幸い消滅こそ免れたものの、既にオロチモンには戦闘を継続するだけの力は残っていなかった。

 ゆっくりと歩みを進めるメタルグレイモン、ワーガルルモン、アトラーカブテリモン。ここで確実に倒しておかなければ、オロチモンはまた悪事を働くだろう。

「いけません!!」

 突然、戦場内に響いた叫び声。気がつけば、選ばれし子供達のデジモン達とオロチモンの間には早苗が立っていた。

「これ以上はいけません」

 身体を張ってメタルグレイモン、ワーガルルモン、アトラーカブテリモンを制止する早苗。そんな早苗の姿はオロチモンのことを庇っているようにも見えた。

「どうして止めるんだ?」

 早苗に質問するメタルグレイモン。何故、自分を誘拐した揚句、生贄にしようとした相手を庇うのか。質問をしたメタルグレイモンは勿論、その場にいる誰もがそう思わずにいられなかった。

「確かにオロチモンは私を生贄にするために誘拐しました。ですが、どんな理由があっても生命を奪って良いわけがありません。……それに私はこうして無事でいます。それだけで十分です」

 凛とした表情で自分自身の意見を主張する早苗。その姿はまるで気高い女神か姫君のようでもあり、威厳さえ感じられた。

「……」

 早苗の話を黙って聞いているオロチモン。本当に強い者とは早苗のように決して諦めず、誰かのために困難に立ち向かうことのできる者を言うのだろう。

そんな早苗に比べて自分はどうだろう。自身の欲望のままに力を振い、選ばれし子供達や早苗のことを嘲笑してきた。挙句の果てにはこのザマである。

「やれやれ負けたよ」

 呟くように言うオロチモン。当然、オロチモンの方にその場にいる全員の視線が注がれる。

「選ばれし子供達、東風谷早苗……私の完敗だよ……。そして、お前達に誓おう。もう金輪際、デジタルワールドで悪事を行わない」

 選ばれし子供達、パートナーデジモン達、そして早苗に対して宣言するオロチモン。思いもしなかったオロチモンの一言、その場にいる誰もが驚きを隠せなかった。

「信じて良いのですね?」

 オロチモンに対してそう尋ねる早苗。オロチモンに向けられた真っ直ぐな視線、早苗の表情は真剣そのものであった。

「ああ、信じて良いとも」

 早苗の問いにそう返答するオロチモン。同時にオロチモンは早苗をじっと見据える。そんなオロチモンの視線は真摯なものであった。

「分かりました」

 オロチモンの誓いを素直に受け入れる早苗。彼等の姿を選ばれし子供達とそのデジモン達は黙って見守っていた。

「それじゃ、さらばじゃ」

 そんな言葉と共にオロチモンは地面を掘っていくと同時にその中へと潜っていった。恐らくは今一度、地中の奥深くで長い眠りに就くのだろう。

 今、再び眠りに就いたオロチモン。その様子を選ばれし子供達、そのデジモン達、早苗は黙ったまま見守っていた。

 

 全てが終わり、早苗と対面する選ばれし子供達とそのデジモン達。選ばれし子供達の前には、自分達とそう年齢の変わらない少女が立っていた。

「私を助けに来てくれて本当に有り難うございました」

 そう言った後、お辞儀をして感謝の言葉を述べる早苗。その姿は慎ましくまさに神に仕える巫女と呼ぶに相応しい立ち振る舞いであった。

「まっ、無事で良かったな」

「ホントだね」

 そう言った後、にっこりと笑ってみせる太一とアグモン。早苗を無事に助け出すことができて太一とアグモンは満足していた。

「別に大したことじゃないさ」

「そうそう」

 普段と変わらない調子で返事をするヤマトとガブモン。だが、そんなヤマトとガブモンはどこか照れ臭そうにしていた。

「どういたしまして」

「これぐらいお安御用でっせ」

 それぞれ対照的な返事をする光子郎とテントモン。礼儀正しい早苗の姿に光子郎とテントモンは好感を抱いていた。

 このようにして、太古の荒ぶるデジモンから早苗を救出することに成功した選ばれし子供達とそのデジモン達。これもまた、選ばれし子供達とそのデジモン達の活躍の記録であった。

 

                                  了




補足

名前:アグモン
種族:は虫類型デジモン
属性:ワクチン
進化レベル:成長期
必殺技:ベビーフレイム
黄色い体色が特徴的な成長期のは虫類型デジモン。両手両足が発達しており、二足歩行が可能となっている。元気があり、さらに強いデジモンに進化する素質を持っている。必殺技は口から火の玉を吐き出す「ベビーフレイム」

名前:グレイモン
種族:恐竜型デジモン
属性:ワクチン
進化レベル:成熟期
必殺技:メガフレイム
黄色い恐竜のような姿をした成熟期の恐竜型デジモン。頭の部分が固い殻で覆われており、高い攻撃力と防御力を持っている。その他にも鋭い爪と牙を持っている。また知性も高いため集団戦を行うことも可能である。必殺技は口から高熱の火炎を吐き出して攻撃する「メガフレイム」

名前:メタルグレイモン
種族:サイボーグ型デジモン
属性:ワクチン
進化レベル:完全体
必殺技:ギガデストロイヤー
グレイモンがサイボーグ化された完全体のサイボーグ型デジモン。身体の半分以上が機械化されているため、強大な戦闘力を獲得しており、核弾頭に匹敵するとまで言われている。またグレイモンにはなかった飛翔能力も持っている。必殺技は胸のハッチから有機体系ミサイルを発射する「ギガデストロイヤー」

名前:ガブモン
種族:は虫類型デジモン
属性:データ
進化レベル:成長期
必殺技:プチファイヤー
頭から伸びた角が印象的なは虫類型デジモン。とても恥ずかしがり屋な性格であるらしく、青と白の縞模様の毛皮を全身に被っている。そのため、毛皮を剥ぎ取られそうになると抵抗する一面を見せる。必殺技は口から青白い火を吐き出す「プチファイヤー」

名前:ガルルモン
種族:獣型デジモン
属性:ワクチン
進化レベル: 成熟期
必殺技:フォックスファイヤー
狼のような姿とシルバーブルーの毛皮が特徴的な成熟期の獣型デジモン。青と白銀模様の毛皮はとても頑丈であり、その硬さは伝説の金属であるミスリルと同等であると言われている。また、両肩から伸びている突起物は刃物のように鋭利である。必殺技は高熱の青い炎で敵を焼き尽くす「フォックスファイヤー」

名前:ワーガルルモン
種族:型デジモン
属性:ワクチン
進化レベル: 獣人型デジモン
必殺技:カイザーネイル
ガルルモンの進化形である完全体の獣人型デジモン。四足歩行であったガルルモンに対して、獣人型デジモンであるために二足歩行が可能となっており、今まで以上に高い攻撃力と防御力を獲得した。同時に戦術性も習得している。必殺技は両手の鋭い爪から放たれる斬撃で敵を引き裂く「カイザーネイル」

名前:テントモン
種族:昆虫型デジモン
属性:ワクチン
進化レベル: 成長期
必殺技:プチサンダー
テントウムシのような姿をした成長期の昆虫型デジモン。他の昆虫型デジモンと異なり、のんびり屋で気が優しく、花の匂いを嗅ぐことや木陰で昼寝をすることが好きである。必殺技は背中の羽根で静電気を増幅させて敵に攻撃する「プチサンダー」

名前:カブテリモン
種族:昆虫型デジモン
属性:ワクチン
進化レベル: 成熟期
必殺技:メガブラスター
カブトムシを彷彿とさせる姿をした成熟期の昆虫型デジモン。身体全体が固い外殻で覆われており、特に頭部は金属化しているために高い防御力を持っている。同時に全身には強いパワーが秘められており、成熟期のデジモンの中でも強大な力を持っている。必殺技はエネルギー弾を生成して発射する「メガブラスター」

名前:アトラーカブテリモン
種族:型デジモン
属性:ワクチン
進化レベル: 完全体
必殺技:ホーンバスター
カブテリモンの進化形に当たる完全体の昆虫型デジモン。全身がさらに固い外殻に覆われることにより、防御能力が格段に向上している。同時に四肢の付け根に筋肉状の部分が出現したことにより、格闘能力も大幅に上昇している。必殺技は頭部の大きな角を構えた上で敵に突撃をする「ホーンバスター」

名前:オロチモン
種族:魔竜型デジモン
属性:ウイルス
進化レベル:完全体
必殺技:アメノムラクモ
日本神話に登場する八岐大蛇を思わせる姿をした完全体の魔竜型デジモン。8本の頭部が存在するが、そのうち7本はカモフラージュであり、中央の黒い頭部が本体である。誕生は古く、古代に封印された存在である。必殺技は尻尾の先を鋭い剣に転化させて攻撃する「アメノムラクモ」

お世話になります。疾風のナイトです。
今回はデジタルワールドを舞台にして、デジモンと東方を本格コラボさせてみました。
東方からは東風谷早苗に出演してもらいました。一応、時系列的には幻想入りする前を想定しています。
一方、デジモンからは太一とアグモン、ヤマトとガブモン、光子郎とテントモンに出演してもらいました。
囚われたヒロインを救うため、活躍する熱血系、クール系、頭脳系のキャラといった感じにしました。
今回は東映アニメ祭りのイメージしています。話のまとまりを良くするため、登場キャラはあえて絞っています。出演させることができなくてごめんなさい。

最後に皆様に楽しんでいただけるよう、これからも頑張っていきたいと思います!
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