この作品は『バトルスピリッツ』の世界観や設定を原作としたストーリーメインの小説です。その為、タグにもありますように他の作品に見られるような『バトルスピリッツというカードゲームを用いての対戦』はありませんのであらかじめご了承ください。
それでもOKという方はお読み頂けるとありがたいです。
「クソっ……ここにもねぇのか……!」
悔しそうな声を上げる一つの影。その人物がいるのは遺跡。
薄暗い闇が遺跡を覆い、入る者を拒んでいるかのようだ。
それでも足を止める訳にはいかない。
「俺は絶対見つけなくちゃいけないんだ……」
焦る思い。自分の生命はいつ果てるのだろうか。
もしかすると明日にでも消えてしまうかもしれない。
時間はそう長くない。
『目的を達成するまでは』
そう思っても、自分の生命は待ってはくれない。
「
バトルスピリッツのあらゆる戦いの歴史から数千年。
かつて人間や魔族と呼ばれた者達は、自らが使役していたバトルスピリッツのスピリットへと近い生命体『オーヴァー』へと進化していた。
進化し、スピリットの姿に近くなった者もいれば、本来の姿であった人間や魔族に近いものもいる。
その身体能力や知能は過去の彼等をはるかに超えていた。
だが、力を手に入れれば、その代償を払わなくてはならなかった。
彼らのスピリットに限りなく近づいた故の代償。それは生命力維持機構『コア』だった。
驚異的な能力を使用する際の力の供給源でもあるこの機構だが、コアは日が経つにつれ、無くなる。
そしてその数が0になれば存在そのものが完全に消滅してしまう。
力を得た故の代償。これが彼らの定めなのだ。
「しょうがねぇ。移動するか……」
少しの落胆と共にその遺跡を立ち去る。
暗い闇から離れ、太陽の光が眩しく光る。
その光が先程までの闇を祓って、
紫色の綺麗な髪を纏めたポニーテール。
青いジャケットと黒のホットパンツが彼女の活発さを体現していた。
彼女の名前はトシュ・ハマー。
ハマー海賊団を纏めあげるリーダー、いわゆる船長であった。
「トシュ様、お疲れ様です」
「おう、ご苦労な」
トシュの傍に近づくのは組織の側近であるノード。
竜人のような姿をした彼は浮遊する小型ボートに乗り、彼女を迎えに来ていた。
「あのカードの手がかりはどうですか」
「ダメだ。何の手がかりもねぇよ」
「そうでしたか……。やっぱり伝説は伝説でしかないんですかね?」
このスピリット・シャングリラには伝説がある。
生命維持に必要なコア。本来ならば
だが、ノヴァと呼ばれるカードは持ち主に永遠のコアをもたらすという伝説があった。無限のコア。それはかつて人間達が求めた不老不死を意味するものだった。
トシュはそれを探し求めている。
この荒廃した世界に求められる僅かな希望はノヴァ伝説ぐらいだ。
人々が
それでも彼女はとある人の言葉を胸に信じつづける。
「俺は諦めない。この命だって長くないかもしれないんだ。なら、残された命をノヴァに賭けてみたいんだよ」
「トシュ様……」
「……しんみりさせちまって悪いな。さっ、次のトコ行くぞ」
「分かりました」
ボートのエンジンを加速させ、彼女達は突き進んでゆく。
次の目的地は情報収集も兼ねて辺りの街へ向かうことにした。
-時を同じくして。
トシュがいる場所から遠く離れた砂漠地帯。
この広大な砂漠を一人の少年が歩いていた。
ローブをまとい、砂に自身の持つ杖を突き刺しながら進んでゆく。
「はぁ、はぁ……」
太陽が照りつけ、水分を奪う。
尋常でない暑さ。普通の少年ならば数時間も経たないうちに倒れてしまうであるはずなのに、彼はもう何日も砂漠を歩いていた。
「……!!」
強烈な痛みが彼の頭に走る。少年を襲う耳鳴りは次第に強くなり、声へと変わってゆく。
《頼む!!この世界を、オレたちを救ってくれ!!》
「……っ!!」
彼の中に声と記憶が流れ込んでくる。砂漠を歩き続けて数日。最初は暑さから来る幻聴かと思っていた少年もこの声を何十、何百回と聞いていた。今やその声は、砂漠の暑さ以上に彼を苦しめる負担となっている。
「もう……ボクの中に入らないで……!!」
苦しい。逃げたい。拒絶したい。彼の心の中にはその感情で埋め尽くされていた。
(あの人がボクにこのカードを渡したから……どうして、ボクなの?)
少年は思い出そうとする。このカードを自分に渡した人物を。
『そのカードが必要な時が来る。だから、それまでキミが持っていてくれないか?』
彼の言葉。姿を思い浮かべようとするが、その姿にはモヤがかかったように歪んでハッキリとは思い出せない。覚えていることはさっきの言葉と身長は少年と同じくらいだった。
目が覚めた少年は単なる夢だろうと思っていた。
手にあのカードが握られているまでは。
「ハァ、ハァ、ハァ……。おかしくなりそうだよ……」
自分に流れ込む声に意識が遠のきそうになりながら、少年はそれでも砂漠を歩き続ける。
地図を見ると次の街はもうすぐ。
あの街に辿り着いて休みたい。その一心が彼を体を動かす動力源となっていた。
(動いて……動いてよ……)
彼の願いを拒否するかのように足は次第に重くなる。
それでも彼は必死に一歩ずつ歩いてゆく。
街まであと数十歩という所まで来た。その時。
-プツンと、彼の何かが切れる音がした。
(あっ……)
彼が出そうとした声は口から漏れることなかった。意識が途切れ、目の前の砂漠は暗闇へと変わってゆく。そして、彼はその場に倒れた。
-少女と少年はノヴァという存在によって交わり、世界を運命を変える事になる。
次回予告
荒廃した世界。
一筋の希望を求めて、ノヴァを探す者。
その名はトシュ・ハマー。
彼女を突き動かすものは何だろうか。
彼女の過去。手に入れたい未来。そして、それに向かう今。
邂逅の時は近づく。
次回
バトルスピリッツ シャングリラ・ナラティブ
『トシュ、その過去』
……君はそこにいるかな。