製薬会社へと侵入した美琴。
「これと言って怪しい点はないな……」
ツナは上空から製薬会社の周囲を調べる。しかし美琴がなぜ製薬会社の中に入ったのかはわからなかった。
(どうして美琴はこんな夜中に製薬会社に行く必要があるんだ? 何か理由があるんだろうが……)
ツナは昼間ではなく誰もいない夜に美琴がわざわざ製薬会社に侵入した理由を考えるが、思い当たるフシはなかった。
その時だった
ドォオオオオン!
「爆発!?」
建物内にて爆発が発生する。爆発音を聞いてツナは驚きの声を上げる。爆発音は1回だけでなく2回、3回とさらに続いて行く。
(ま、まさか……)
ツナは爆発音を聞いた途端、あることを思い出した。
時は遡って昼。
「不審火?」
「ええ。ここ数日、研究施設で不審火が確認されてるの」
「それは物騒ですね」
「全く……人騒がせですわね……」
固法から最近、研究施設にて不審火が確認されていることをツナ、初春、黒子に伝えていた。
製薬会社
(信じたくはないが……まさか美琴が……でも何の為に……? 様子がおかしいことに関係があるのか……?)
ツナは固法が言っていた不審火が美琴の手によって行われているものではないかと予想する。仮に不審火の犯人がだったとしてもなぜこんなことをするのかがわからなかった。
(ここで考えても意味がない……直接、確認するしかない……)
ツナが考えている間にも爆発音は続いていた。ここで考えても意味がないと判断したツナは直接、乗り込んで確認することを決める。
製薬会社建物内部
「爆発音はあっちの方か……」
ツナは爆発音のする方へと走って向かって行く。建物内は狭い為、飛ぶとぶつかる可能性がある。その為ツナは走っていた。
(何だ? 人形?)
爆発音のする方へ向かって行く最中、ところどこに人形が置かれていることに気づいた。なぜ製薬会社にこんなにも多くの人形が置かれていることにツナは疑問を抱いた。
(テープか……?)
それと建物内の床や壁、天井に白いテープのようなものが貼られていた。これに関してはそこまで不自然ではないのだがツナには不自然に感じていた。超直感は対人にしか働かない。しかし今までの戦って来た経験からあのテープに違和感を感じたのである。
(気になるところだが、今は美琴が優先だ)
人形と白いテープのことを調べたかったが、今は美琴のことが気になる為、美琴の元へ急ぐことを決める。
一方で美琴は。
「あんたみたいなのが他にいるの? 能力者ならその能力?」
(はっ……そんなの教える訳が……)
美琴は金髪の少女に尋問していた。少女は答える気などない様子だった。すると美琴は恐ろしい形相で金髪の少女の側に電撃を放った。
「黒焦げになりたくなかったら3秒以内に答えなさい」
「ひぃ!」
美琴はそう言うとカウントダウンを始めた。金髪の少女は美琴に脅されて恐怖していた。そしてこのままでは殺されると思ったのか喋ることを決意する。
(し、舌が……痺れて声が出せない……)
少女は美琴の尋問に答えようとするも美琴の電撃によって舌が痺れてしまってしまい答えを出すことができないでいた。そうしている間に美琴のカウントダウンが終了してしまう。
「そう。仲間は売れないって訳ね」
(違うの! 電撃で体の自由が……!?)
美琴は少女が喋れないことに気づかず、仲間を売らない為に喋らなかったのだと判断した。
「そういうのを嫌いじゃないけどね」
美琴がそう言った。その時だった。美琴の真横の壁から緑色の光線が放たれた。その威力は凄まじく、鉄筋の壁を余裕で貫通する程の威力だった。
「あんまり静かだったから殺られちゃったのかと思ったけど、危機一髪だったみたいねフレンダ」
(麦野ぉー!)
貫かれた壁から茶髪のロングヘアーの女性と、黒髪のショートヘアーの女が現れた。この2人を見た途端、フレンダはパァっと明るくしていた。
「私らが合流するまでは足止めに徹しろって言っておいたのに。深追いした挙げ句返り討ちにあって捕まっちゃうなんて。撃破ボーナスに眩んだからって何やってんだか。ギャラの配分を考えないとね」
「……」
「大丈夫だよ。私はそんなフレンダを応援してる」
麦野の言葉を聞いてフレンダは反論することができず意気消沈してしまっていた。そんなフレンダを黒髪の女が励ましていた。麦野たちは雑談しているのに美琴は磁力で近くにあったタンクを操りおもいっきりを飛ばした。
「で? あれが噂のインベーダーね」
タンクは麦野に直撃されたと思われたが、タンクは消し飛ばされ麦野にダメージはなかった。すると麦野が右手を前に出すと緑色の光球が現れる。そして緑色の光球は形を変えて一直線に美琴の方へ伸びていく。美琴は光線を避けようとした。
その時
「え……!?」
「は……!?」
ツナが美琴とレーザーの間に割って入り麦野の光線を右手で弾き飛ばした。美琴はツナがここにいることに驚き、麦野は自分の攻撃が弾き飛ばされたことに驚きを隠せないでいた。
「む、麦野の
「
フレンダと黒髪の少女も麦野のレーザーを弾き飛ばしたツナに驚きを隠せないでいた。
「あ、あんた何でここに……!?」
「その話は後だ。ここから逃げるぞ」
「待って! 私はやらないといけないことがあるの!」
「……」
逃げるといってもなお美琴は引き下がらなかった。ツナは美琴の
その時だった
「「っ!?」」
ツナと美琴の体に悪寒が走った。その原因は黒髪の女の雰囲気が先程と変わったからである。美琴は即座に床に電撃を放って煙幕を発生させた。煙幕が晴れるとそこに2人の姿はなかった。
通路
「お前も気づいたか」
「ええ。何をしたのかわからいけど黒髪の女の雰囲気が変わったわ」
通路を走りながら先程の黒髪の少女の変化に美琴が気づいたことにツナは気づいていた。相手がどんな能力を使ってくるかわからない以上、無策に戦うのはリスキーである。だから2人はあの場から離れた。
その時だった
「「なっ!?」」
突如、通路から麦野のレーザーが貫通する。自分たちがどこにいるかわからないにも関わらず、光線が自分たちの所までやって来たことに2人は驚きを隠せないでいた。そこからさらに次々に光線が放たれていく。さらに光線だけでなくあちこちに仕掛けていた人形までもが爆発した。
「くっ!?」
「美琴!」
「大丈夫!」
美琴はギリギリのところで躱したが爆風で吹き飛んでしまう。ツナは心配するが美琴は壁に磁力で壁に貼り付いていた。
(あの人形は爆弾……そしてあの白いテープみたいなものは導火線という訳か……)
ツナはあちこちに仕掛けられた人形と白いテープの役割を理解する。
(おかしい……)
ツナは違和感に気づく。先程から狙われているのが美琴でだけで自分には当たらないことに。爆弾は広範囲攻撃である為、ツナにも被害が及ぶ。しかし光線に関しては一点集中型の攻撃。絶対に当たらない訳ではないがツナだけは美琴と違って直接狙われていない。
(まさか!)
ここでツナは自分だけ狙われない理由を理解した。するとツナは美琴の前に出る。そして両手を前に出して炎の壁を展開すると再び光線が襲って来た。しかし光線はツナの炎の壁によって霧散してしまう。
「わかったぞ。これがあの黒髪の女の能力だ」
「どういうこと?」
「さっきからお前は光線で直接狙われている。だが俺は狙われていない。つまり無能力者である俺には能力が働いていない」
「そ、それって……まさか!」
ツナの言葉を聞いて美琴も黒髪の女の能力が何であるか理解する。
「ああ。おそらく黒髪の女の能力はAIM拡散力場を追跡する能力だ」
AIM拡散力場。能力者が無自覚に周囲に放っている力である。ツナと美琴の違いは無能力者と超能力者。その違いにツナは気づいたからこそ、黒髪の女の能力を何なのか判明したのである。
「今から俺が戻ってあいつらを足止めする。その間にお前の目的を果たせ」
「な、何言ってんのよ!? こんなことに巻き込んでおいてそんなことできる訳ないでしょ!」
「巻き込んだんじゃない。俺が勝手に首を突っ込んだだけだ」
「けど……」
美琴はここでツナを置いて1人で行けない為、迷ってしまっていた。
「俺がここに来た理由は黒子が悲しんでいたからだ。最近、お前が帰って来ないことを心配していたからな。黒子はお前が何かを抱え込んでることは気づいてた。けどそれを調べようとすればお前の信頼を裏切ってしまうって嘆いていた」
「黒子が……」
「黒子を悲しませたくないならさっさと目的を果たせ。お前が本当に黒子のことを思うならな」
「……」
ツナは黒子の名前を出すことで美琴の迷いを立ち切ろうとした。美琴はどうするべきか必死に考えていた。
「お願いしてもいい……?」
「任せろ」
ツナの目論見は成功し美琴はツナに足止めしてもらうことを決意した。それでも美琴はこの選択を後悔していたが、ツナなら大丈夫だと信じていた。
「あいつらの所に向かうまでには時間がかかる。それまでなんとか逃げ切ってくれ」
「わかった……」
「目的が終わったら落ち合うぞ。場所は俺とナッツがお前と最初に会った公園だ」
「わかったわ……」
そう言うと2人は同時にそれぞれ反対方向へ飛び出して行った。
次回はツナvs麦野。お楽しみ!
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