夜が明け8月20日。再び日常が戻る。
「ふわぁ……」
ツナはあくびをしながらパトロールしていた。夜中に活動して夜中に帰ったのでツナは若干、睡眠不足であった。ツナは自分の家には帰っていない。事前に佐天とリボーンには
「色々とあったけど……美琴が元気になってくれてたし本当によかったよ……」
色々とあったが美琴が元気になってくれたことがツナにとって何より嬉しかったのである。
「あれ? おっかしーなー?」
「あれ? 当麻?」
しばらく歩いているとツナの視界に自動販売機の前で何かしている当麻が写った。
「何してるの当麻?」
「おう沢田か。実はちょっと困っててさ」
「え? 何かあったの?」
「実はこの自動販売機でジュースを買おうと思ってお金を入れたんだけどよ。ジュースが買えないんだよ。しかもお金も返って来なくってさ」
「それって機械の故障だよね? 業者に電話した方がいいと思うよ」
「そうだな」
当麻から事情を聞いてツナは業者に電話することを提案する。ツナの提案を聞いて当麻は携帯を取り出すと、業者に今回の事件を連絡しようとする。
「何やってんのよあんたたち?」
「げっ! ビリビリ!」
「御坂美琴って言ってんでしょうが!」
そんな時、美琴がやって来る。当麻は美琴を見た途端、嫌そうな顔をする。美琴は相変わらず名前で呼ばない当麻に苛立ちを覚えていた。
「お、俺は今それどころじゃねぇ! お前と戦う気はねぇぞ!」
「戦わないわよ」
「え?」
「悔しいけど決めたのよ。もう相手の意思を無視して戦うことはしないってね」
いつもならすぐに勝負を挑んで来るはずの美琴が戦わないと言ったことが当麻には信じられないでいた。美琴の言葉を聞いてツナは少しだけ微笑んでいた。
「な、何かあったのか……? ビリビリが戦いを止めるとか、まさか天変地異の前触れか……?」
「人がせっかく改心したっていうのに……素直に受け止めなさいよ!」
だが当麻は美琴が勝負を挑むのを止めたということが逆に恐怖してしまっていた。せっかく改心したのにも関わらずこんな反応をされてしまった為、再び怒りを露にした。ツナは苦笑いしてしまっていた。
「それで? 何してたのあんたら?」
「あー。実は当麻がこの自動販売機でジュースを買おうとしたんだけどお金が返って来なくってさ。だから業者に電話しようとしてたんだよ」
「何だそんなこと。そんなまどろっこしい真似しなくても大丈夫よ。私に任せなさい」
「「?」」
ツナが経緯を説明すると美琴は自動販売機の前へ移動する。美琴は任せろと言ったがツナと当麻は美琴が何をするのかわからず疑問符を浮かべていた。
「ちぇいさー!」
「「なっ!?」」
美琴は右足でおもいっきり自動販売機の横を蹴った。蹴った瞬間、警報が鳴り響き、中から大量のジュースが出て来た。あまりの美琴の破天荒な行動にツナと当麻は驚きの声を上げた。
「思ったよりいっぱい出たわね。とりあえず3人で分けましょう」
「逃げるぞ沢田!」
「ええ!?」
「ちょっ!? 何で逃げんのよ!?」
当麻は右手でツナの左手首を握るとそのままツナを連れて逃げる。美琴はせっかく損したのを取り返して上げたのにも関わらず、逃げる2人を見て美琴はジュースを全て拾い上げた後、2人を追いかける。
「ほい。あんたらの分」
「これもう犯罪だろ……」
「一応、俺も
美琴は何の悪気もなくジュースを投げて渡す。結局、2人とも美琴から逃げ切ることはできなかった。当麻とツナは複雑な気持ちになりながらジュースを受け取ることになってしまっていた。
「ねぇ美琴……いっつもこんなことやってるの?」
「あ、あの自動販売機は前に私の1万円札を飲み込んだのよ! 別にいいでしょ!」
「え……? そもそも自動販売機って1万円札って使えないんじゃない……? 使えるのって普通1000円札までじゃない……?」
「「え……?」」
ツナは美琴の言っていることに違和感を覚える。ツナの言葉を聞いて美琴となぜか当麻まで驚きを隠せないでいた。
「いや……自動販売機のおつりって普通、小銭でしか返って来ないし……」
「……」
(やべぇ……何で2千円札、入れたんだろう……俺……)
ツナの言葉を聞いて美琴は自分のしでかした過ちに気づく。同じく当麻も美琴と同じようになってしまっていた。先程、当麻は2千円札を中に入れたのである。ツナは学園都市の自動販売機の事情を把握している訳ではない。だが大抵の自動販売機であれば1000円札以外のお札を自動販売機に入れると受けつけず戻って来るのが普通である。
「お姉様?」
「「え?」」
すると知らない女性の声がする。ツナと当麻が振り返るとそこには常盤台の制服に身を纏い、美琴と瓜二つの顔をした少女が立っていた。唯一の違いは額にゴーグルを装着しているという部分だけである。
「同じ顔……」
「遺伝子レベルで同質ですから。とミサカは答えます」
「ああ……双子なのね……」
(美琴って妹いたんだ……じゃあ、あの時見たのは美琴の妹だったんだ……)
御坂妹と当麻の会話を聞いてツナは昨日、パトロールの時に見たのは妹の方だったということを理解する。
「先程、ミサカと同質の力を確認してたので見て来たのですが現場には壊れた自販機。大量のジュースを持つあなたたち。まさか窃盗の片棒を担ぐとは……」
「おい! 主犯はお前の姉ちゃん! 俺は傍観者だぞ!」
「電子で自販機表面を計測した結果、最も新しい指紋はあなたものですが」
「嘘!? そんなことまで分かんの!?」
「嘘です」
(か、顔に似合わず結構お茶目……)
御坂妹の言葉を聞いて当麻は動揺するが、すぐに冗談と言われて安堵する。一方で凄く無表情な御坂妹が意外な一面を見せた為、少し驚いてしまっていた。
「どうして……あんたがこんな所でブラブラしてんのよ!!」
「美琴……?」
突如、美琴が御坂妹に向かっておもいっきり叫んだ。急に美琴が大きな声を出した為、ツナは困惑してしまっていた。すると美琴は妹を連れてどこかへ行ってしまった。
「美琴……」
「止めとこうぜ。家族の問題に他人の俺たちが安易に介入するべきじゃねぇよ」
ツナはただならぬ美琴の雰囲気が気になったのかツナは美琴たちを追いかけようとするも当麻がそれを止める。当麻の意見も最もなのでツナは追いかけることを止めることにする。
(どうしたんだろう……美琴……)
せっかく美琴が元気になったのにも関わらず、また様子がおかしくなってしまった為、ツナは心配になってしまうのであった。
黒子の登場シーンは省きました。昨日の話で一旦、美琴が元気になったので必要なくなったので。本編でも書きましたが美琴はなぜ1万円札を当麻は2千円札を入れたのかわからないんですよねー。学園都市の自動販売機は普通のと違うという可能性もあるのでなんとも言えないんですが…
それと今回は当麻もちゃんと物語に登場させます。といっても凄い活躍をする訳ではないのでご了承下さい。
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