大空属性の炎の特徴である調和の力によって海原は矛盾綻びのない状態。つまり本来の海原が姿を現した。
「どうやら幻覚でもなければただの変装という訳でもなさそうだな。それもお前の力か?」
「本当にあなたは勘がいいですね……そうですよ。これも私の力……いや
「魔術……」
海原の使う力の正式名称が魔術だということを知ったツナであったがピンときてはいなかった。
「運がありませんね自分は……海原を殺して成り代わろうと思えば
海原はこれまでのことを振り返る。とても不運な目に遭ったにも関わらず海原はなぜか笑っていた。
「どうして美琴を狙った?」
「我々の組織から命令ですよ……とある勢力を瓦解する為に自分はこの学園都市に送り込まれたんですよ……その為に御坂さんに近づく必要があった……」
「違う。それも聞きたかったことだが、今聞いているのはそういう意味じゃない」
「?」
「
「っ!?」
ツナは超直感で海原の心を見透かしていた。海原の心に迷いがあることを。
「最初にお前に会った時、美琴は俺の近くにいなかった。その時に俺を殺して成り代わって美琴を狙うことだってできたはず。それをしなかったのはお前の心に罪悪感……迷いがあるからだ」
「……」
ツナは超直感で導き出した答えを伝える。しかし海原は何も答えることはなかった。
「本当は海原のことだって傷つけたくなかったんだろ? いくら殺せなくなったといっても能力をずっと使い続けることはできない。能力の効果が切れるのを待って殺すか、出て行くフリをして能力を解いたところを殺すこともできたはずだ」
「……」
「仮に本当に海原が殺せないのなら他の人間を殺して成り済すことだってできたはずだ。そうすれば成り済ました人物を殺せて完全に成り代われる上に海原にも自分の正体がバレないはずだからな」
「……」
「本当は最初から誰も傷つけたくなかったんだろお前は」
「……っ!?」
無表情のまま沈黙を貫いていた海原であったが、ツナに心の内を見透かされていき動揺を隠せなくなってきてしまっていた。
「それだけじゃない。姿を偽っていてもお前の美琴への想いは間違いなく本物だった。お前は護りたかったんだろ? 美琴を……美琴のいる世界を」
「一体、何ですかあなたは……? どうしてそこまでわかるんですか……?」
ずっと沈黙を貫いていた海原であっが、観念したのかようやく口を開いた。
「そうですよ……僕だってこんなことしたくなかった……誰も傷つけたくなかった……だってそうでしょ? 誰も傷つかないのが一番いいに決まってるじゃないですか……」
「……」
そして海原は悲しそうな表情で本音を語った。ツナは黙って海原のことを見ていた。
「自分はこの街が好きだったんです。ここに来た時からずっと。たとえここの住人になれなくたって、御坂さんがいるこの世界が大好きでした。でもね
「あの男……?」
海原の言うあの男が誰なのかわからずツナは疑問符を浮かべる。
「これで自分はあなたたちの敵になってしまった……これではもう御坂さんと話すことすらできない……御坂さんに自分の正体が知られれば自分は大好きな御坂さんが嫌われるのですから……終わりです……もう何もかも……」
「その程度で諦めるのか? お前の美琴への想いはそんなものなのか?」
「じゃあどうしろと言うんですか?」
「簡単だ。今度は自分の姿を偽らずに美琴へ自分の想いを伝え続ければいい。死ぬ気でな」
「ふざけているんですか……!?」
ツナに知られた以上、美琴にこのことが伝わるのは必然。それなのに関わらず想いを伝え続けろという残酷な提案をするツナに海原は怒りを覚える。
「お前の美琴の想いに免じて今回の件はなかったことにしてやる」
「な、何を言って……!?」
怒りを露にしていた海原であったが、ツナの言葉を聞いて怒りが驚きへと変わっていった。
「嬉しかったんだ」
「嬉しかった?」
「お前のような優しい人間が美琴のこんなにも想ってるってくれてると知ってな」
ツナは海原が美琴のことを好きだと公言した時、衝撃を隠せないでいた。しかし同時にとても嬉しい気持ちにもなっていたのである。
「美琴は前に心に深い傷を負った。お前のような奴が美琴の隣にいて、美琴の心の傷を埋めてくれたら美琴は幸せになれると思ったんだ」
ツナは思い出す。
「なぜ自分なのです……? あなたが御坂さんの隣にいてあげればいいじゃないですか……?」
「俺には無理だ」
「なぜです?」
「さっきお前と別れた後、美琴と喧嘩してな」
「喧嘩?」
「正直、何で美琴が怒ったのかは今でもわかっていない。俺のせいだってことはわかるんだが……ただ美琴は泣いてた。美琴を泣かせるような奴が美琴を幸せにすることなんてできないからな。だから俺には無理だ」
ツナの脳裏には怒りを露にしながら涙目になっていた美琴のことが浮かんでいた。
「それでも約束はした。みんなが笑い合える未来を作るってな。美琴を泣かせた俺に言う資格はないが、それでも俺は美琴のことを護る。そう決めた」
ツナは思い出す。橋の上で美琴と約束した時のことを。
「でも俺はいつか美琴と別れなきゃいけない」
今、ここにいるのはリボーンの気まぐれによるもの。いつかは元の世界に戻らないけない。そうなってしまえばツナは傍にいられず美琴を護れなくなる。
「お前にも事情があるのはわかっている。でもお前が美琴の味方でいてくれれば、俺がいなくなった後も美琴は笑っていられる。もしお前の組織のせいで美琴の笑顔が奪われるようなことになるなら、俺がお前の組織をぶっ壊してやる」
(なんて方だ……)
今回の件を水に流しただけでなく、自分の為に美琴を護れるような環境を整えようとしていることに海原は驚きを隠せないでいた。
「だから美琴の味方でいてくれ。頼む」
そしてツナは海原に頭を下げて、美琴のことを護ってくれるよう懇願した。
「ここまでお膳立てされては仕方がありませんね……あなたの願い……聞き入れましょう……」
ツナの覚悟が本気だということを悟った海原は、微笑みながらツナの頼みを了承した。
「お前の名前は?」
「名前?」
「海原光貴じゃない。本当の名前があるだろ」
「自分の名は……エツァリ……」
「そうか」
本当の名前を知ったツナはエツァリに近づいていく。そしてエツァリの手を取るとエツァリの手を自分の肩へ乗せた。
「しっかりと捕まっていろ。病院に連れていってやる」
「お人好しにも程がありますね……あなたこそまさしくヒーローのような方ですね」
「俺はヒーローなんかじゃない」
「謙遜する必要はありませんよ」
「謙遜でも何でもない。かつて言われたんだ。俺の
(
ツナは未来での修行の時にリボーンに言われた言葉を思い出す。ここでなぜ
「それに俺には護れなかった者たちがいる。ヒーローっていうのはいつでもどこでも現れて、何もかも救っていく存在だ。俺がなれるような存在じゃない」
ツナの脳裏にはユニとγ、そしてミサたちのことが浮かんでいた。自分がヒーローと呼ばれる存在であるならば救えていた命である。
「だから美琴のことを幸せにしてやってくれ」
「幸せにって……自分の想いは御坂さんに届いていませんが……」
「届くさ。今は無理でも。いつかきっと」
そう言うと左手の炎を逆噴射させてゆっくりと飛んでいく。
「成る程……炎を逆噴射させていたのですか……」
宙に浮いてエツァリは理解する。ツナが一瞬にして自分の背後を取った理由を。
「それにしても信じられませんね。あなたが御坂さんと喧嘩しただなんて。何があったんですか?」
「美琴にお前とちゃんと向き合ってくれと言ったんだ。そしたら何であいつばかり肩を持つのか、何で自分が悪いみたいになってるんだ、何で自分のことを見てくれないんだって言ってな」
「なっ!?」
ツナは喧嘩した時のことを語る。ツナの話を聞いた海原は驚きの声を上げると同時に理解してしまう。美琴がツナのことを好きなのだということを理解する。
「色々と考えたんだが……正直、どうすればいいのかわからないんだ……」
(なぜわからないのでしょうか……?)
あれだけ自分の心を見透かしていながら、乙女心を全く理解できないことにエツァリは衝撃を隠せないでいた。
「やれやれ……自分の恋はとっくに終わっていたのですね……」
「何か言ったか?」
「いえ。何でもないですよ……」
こうしてツナとエツァリとの戦いは幕を閉じた。
そしてツナとエツァリが戦っていた建設現場へ戻る。
(バカだ私……)
そこには鉄骨の柱を隠れ蓑にして顔を赤らめている美琴がいた。美琴はツナと喧嘩した後、海原から全ての事情を聞いた。そしてもしかしたらツナが危険な目に遭うかもしれないと思いここまでやって来たのである。美琴がこの場所に到着した時、戦いはすでに終わっていた。そして聞いてしまったのである。ツナとエツァリの会話を。
(あいつは私のことをこんなに考えて……見ていてくれた……)
ツナは自分の幸せにする為に色々と考えている一方で自分は何も知らずただ自分のことばかり考えているだけだった。
(どうしよう……私……)
そしていつもより心臓の鼓動が早く、頬の温度がいつもより熱くなってしまっていることに美琴は気づいてしまう。
(こんなことしてる場合じゃない! 謝らなきゃ!)
ツナに謝ることを決意した美琴は、その場から駆け出した。
第7学区。カエル医者の病院前。
「もうここまででいいですよ」
「え……でも……」
「もう後は診察を受けるだけですから。それに何から何までしてもらっては格好がつきませんからね」
そう言うとエツァリはツナの肩に乗せていた左腕を降ろして、1人で病院の中へと入っていた。
「沢田」
「え!?」
エツァリが病院の中へと入った後、後ろから声がした。後ろを振り向くとそこには申し訳なさそうな
「さっきはごめん……」
「え……!?」
てっきりツナは自分が美琴に謝る立場であると思っていた。しかし美琴の方から謝ってきた為、ツナは何がどうなっているのかわからないでいた。
「私ってば自分のことばっかり考えてた……あんたのことも海原のことも考えずに」
美琴はここに来る途中で気づいた。自分の身勝手さでツナと海原に迷惑をかけていたということを。
「私、ちゃんと海原と向き合うわ」
「そっか」
美琴が海原と向き合うと知ってツナは少しだけ微笑んでいた。
「い、言いたかったのはそれだけ! 海原のことは傷が治ってからちゃんと返答するわ!」
「え? 何で美琴がそのことを知ってるの?」
「っ!?」
ツナはエツァリが怪我したことは美琴に知られていないと思っている。故になぜそのことを美琴が知っているにかわからないでいた。美琴は自分が墓穴を掘ってしまったことに気づき顔を赤くしてしまう。
「もしかして美琴……」
「そ、そんな訳ないでしょ!! 用は済んだから私は帰るわ!!」
「ええ!?」
美琴があの場にいたのだと推測したツナであったが、美琴は顔を真っ赤にしながら強引な誤魔化しそのまま帰ってしまったのだった。
次回から日常篇に入ります。
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