黒子の絶対絶命のピンチに現れたツナ。
(こいつ!? 一体どこから!?)
結標はどこからともなく現れたツナの存在に驚きを隠せないでいた。なぜなら結標は動揺していたとはいえツナの存在を全く感知できていなかった。
(ダメージを負ってない……!?)
結標は気づく。黒子が全くダメージを負っていないことに。つまりテレポートによる落下した物が黒子に落下する前に黒子を助けたということを。
(そんなことが本当にありえるの……!?
テレポートしたものが落ちるまでの時間はほんのわずか。空間移動系の能力者ではないツナがテレポート並の速さで移動したことに結標は驚きを隠せないでいた。
(いや……それよりも!!)
結標が一番、気になったのは瓦礫の山が石化したことである。正確には石化する前に聞こえたナッツの雄叫びである。
(本当に人間以外にも能力が……!?)
瓦礫越しで直接、見えていた訳ではなかったがナッツの雄叫びが聞こえたとほぼ同時に瓦礫が石化した。つまりナッツの力によって瓦礫が石化したかもしれないと結標は推測する。
(もしかしてこの男は知っているの……!?)
結標は人間以外の生物が能力を使えるのかどうかを知りたがっていた。そしてその求めていた答えの1つが目の前にあるかもしれない。そう思った瞬間、結標の口角が上がる。つまりツナとナッツに興味を抱いたのである。
本来であれば倒すか逃げるかのどちらかを選ぶべきなのだが結標の知りたいという欲求がこの2つの選択肢を無くしてしまったのである。
超直感で結標が自分たちに興味を抱いていることを見透かしたツナは、黒子を抱えたままゆっくりと後ろへと移動していく。
「遅れてすまない。よく持ち堪えてくれた黒子。お陰で助かった」
「沢田さん……? どうして……?」
「初春からお前を助けてくれって頼まれたんだ」
「そうじゃありませんの……私は……あなたに……」
『全部あなたのせいですの!!』
『あなたは何も知らず人の大切なものを奪う!! 奪われた者の気持ちを知らずに!!』
『あなたのせいで私はもう何もかも滅茶苦茶なのですの!! あなたのせいでお姉様はあんな言葉を!!』
『あなたは疫病神ですの!! もう私の前に現れないで下さいまし!!』
黒子は思い出す。ツナに向かって吐いた暴言の数々を。
「お前が俺を敵視してるのは知っている。けどお前を護りたい気持ちは変わらない。それが俺の誇りだからな」
そう言うとツナは黒子を壁にもたれかけるような体勢でゆっくり降ろす。
「ナッツ。
ツナがそう呟くとナッツがマントへと変化する。マントはツナに装備されるがツナは纏っていたマントを取ると、黒子にマントを纏わせた。
「ここで待っててくれ。すぐに終らせる」
そう言うとツナは向きを変えて、結標の方に向かってゆっくりと歩いていく。
(わかっていたはずですの……)
結標の方に向かってゆっくりと歩くツナの背中を見守ることしかできなかった。
(私はただ沢田さんに嫉妬してた……お姉様が私には見せたことのない顔を沢田さんに見せたことが気に入らなくて沢田さんに怒りをぶつけることで現実から目を背けてようとした……)
本当はわかっていた。自分の力では変えることのできなかった美琴がツナによって変わり始めたことが嫌で仕方がなかったことを。美琴が自分ではなくツナに夢中になっていたことが。
(それだけじゃない……沢田さんに嫉妬するあまり私は初春にも……)
ツナに怒りを覚えるあまり冷静な判断を失い、初春には怒りをぶつけてしまった。さらに初春の言葉にも耳を貸さず独断専行し、挙げ句の果てに結標に返り討ちに遭う始末。
(何がお姉様の世界を護るですの……何が学園都市の治安を護る
自分の弱さと自分のしでかしたこと。そして何よりも自分の愚かさに気づいた黒子は涙が止まらないでいた。
(沢田さん……)
一方で結標の前に移動したツナは。
「お前が結標淡希だな」
「そうよ」
「大人しく投降しろ。お前が
「っ!?」
結標は初対面で何も知らないはずのツナが自分の目的とキャリーケースの中にある残骸のことを知っていることに驚きを隠せないでいた。
「お前の目的は
(っ!?)
(レベル6シフト計画……?」)
結標はツナが
「驚きね。あの計画を知ってるなんてね。けど私はあの計画に興味ないの。ただ知りたいのよ」
「知りたい?」
「私がどうして能力を宿ったのか? 私がなぜこんな怪物になってしまったか。その為に私は
「その為に仲間にキャリーケースを強奪させたのか?」
「少し違うわね。あいつらは私の仲間じゃない。私の本当仲間は別にいるわ。私と同じ痛みを知る仲間がね」
「痛み?」
「能力がなじめず人生を歪められた哀れな被害者。学園都市にはそういう人がたくさんいるのよ」
「……」
結標の言葉は嘘を言っていないことを感じると、ツナは考え込んでしまう。学園都市には能力が開花せず周囲となじめない人がいることを
「そういうあなたも思ったことあるんじゃない? 望んだ訳じゃないのに人を傷つけたこと。こんな力がなかったらよかったって思ったこと」
「……」
結標の言葉にツナは反論できずにいた。今まで自分の力で多くの人間を傷つけてきた。なんなら人の命を奪ったことすらある。ツナ自身望んで得た力ではない。力を得て戦わなければ仲間を失うから、戦ってきたのである。
(まさか……沢田さんを……)
黒子は結標の思惑を理解する。おそらく人間ではないナッツが能力を持っているのではないということを気づき、仲間に引き入れようとしているのだと。
「その様子じゃ図星のようね。どうかしら? 私の仲間にならないかしら?」
「何だと?」
「さっきも言った通り私は何で能力が宿ったのか、なぜ何で自分がこんな怪物になったのか知りたいの。そしてさらに言えば人間以外の個体に能力が宿るのかとかね」
「成る程。あの石化がナッツのものだと気づいた訳か」
「その発言。やはりあの猫の仕業だったのね」
結標は自分の推測通り、ナッツが瓦礫を石化させたと知って笑みを浮かべる。
「どうかしら? 私と手を組まない? あなたにとっても悪い話じゃないと思うわよ。あなたも私と同じで能力によって人生を歪められた者同士。きっと最高のパートナーになれるはずよ」
結標はツナを言葉巧みに騙し、ツナを引き込もうとする。
(もう少しよ……もう少しで……!!)
結標は後少しで自分が求めていた情報が手に入る。結標は必死で理性を保っていた。
「最後に1つ聞きたい」
「何かしら?」
「お前は木原幻生と繋がっているのか?」
前に操折から木原幻生がミサカネットワークを使って暗躍しようとしていることをツナは知った。しかし詳細は不明な上に推測に過ぎない。そこでツナはあの計画を知っている結標なら、あの計画の立案者である木原幻生のことを知っているかもしれないと考えた。
さらに前木原幻生は目的の為なら手段を選らばないマッサイエンティスト。結標の計画に興味を持ち、協力しているかもしれないとも思ったのである。
もし結標が木原幻生と繋がっているなら木原幻生の計画の詳しい詳細を知っているかもしれないとツナは思ったのである。
「木原幻生? あんな危険な極まりない存在と手なんて組む訳ないでしょ。デメリットしかないわ」
「そうか」
「そろそろいいかしら? あなたの返答を聞かせてもらいたいんだけど?」
これ以上、待つことができない結標はツナに自分の仲間になるかどうかの答えを求める。
「わかった」
するとツナは炎を逆噴射させて一瞬でその場から消える。そして落ちていたキャリーケースに向かって拳を叩き込む。ツナの拳によってキャリーケースと中身の残骸は粉々に砕け散る。
「これが俺の答えだ」
「なっ!?」
確実に自分の仲間に引き入れられると思っていた結標。故にツナの予想外の行動に衝撃を隠せないでいた。
「な、何を!?」
「お前の言葉なんて信じちゃいない。俺が知りたかったのはお前と木原幻生に繋がりがあるかどうか知りたかっただけだ」
「まさか!? 私を利用したの!?」
「お前が俺たちに興味を持っているのはわかっていた。だから俺が黒子を運んでる間に残骸を持って逃げなかったんだろう。まぁそのお陰で容易に残骸を破壊できたがたな」
(こいつ!? 最初から!?)
結標は自分の心の内を見透かされたことに驚くと同時に、自分の心理を利用されたことに怒りを覚える。
「そもそも他人を傷つける理由を能力のせいにするような弱い奴の言葉なんて信じる気もないがな」
「貴様ぁああああああああ!!」
ツナは結標の心理すでに見透かしていた。黒子と同じく核心を突かれた結標は激昂する。
「どいつもこいつも私をコケにしてんじゃないわよ!! 許さない!! 絶対に許さないわ!!」
「許さない……?」
許さないという単語を聞いた瞬間、ツナの周囲に竜巻が発生し大量の死ぬ気の炎が溢れ出す。結標は暴風によって吹き飛ばされ壁に激突する。
「許さないのは俺も同じだ!! お前の自分勝手な目的のせいで黒子は!! 黒子は!! 黒子は傷ついたんだ!!」
(な、なんて突風!? こいつまさか
ツナの怒りが頂点に達する。あまりの力を結標は恐怖する。ツナは今の今まで怒りを抑えていたのである。結標から木原幻生の情報を聞き出す為に。
(あの沢田さんが……怒ってる……)
黒子はツナが本気で怒っている初めてところを目撃した為、驚きを隠せないでいた。
「結標淡希!! 俺はお前を許さない!」
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