とある科学の大空と超電磁砲(レールガン)   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)267 恐怖と調和

 

 

 

 

 

 

 

 逃亡した結標。しかしその行く手を阻んだのはなんと一方通行(アクセラレータ)であった。

 

『その時は戦うよ。たとえ学園都市を敵に回すことになっても。約束したんだ。妹達シスターズが……みんなが笑える未来を作るって。だからもう覚悟はできてる』

 

(何がみンなが笑い会える未来を作るだ。こんなんじゃ前途多難もいいところじャねェか。クソッタレが)

 

 一方通行(アクセラレータ)の脳裏には実験が終わった後、ツナが言っていた言葉を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡り。ツナがミサの病室を訪れていた頃。

 

(ッたく……ガキ(・・)のお守りは面倒くさいッたらありャしねぇ……)

 

 一方通行(アクセラレータ)は自動販売機で買ったコーヒーを飲みながら病院の廊下を歩いていた。

 

「あァ?」

 

 廊下を歩いていた一方通行(アクセラレータ)であったが、ミサのいる病室の扉が少しだけ開いていることに気づいた。そして中から話し声が聞こえてくる。

 一方通行(アクセラレータ)はミサが誰と話しているのか気になった為、扉の隙間から覗き込む。

 

「あいつは……!?」

 

 ミサが話している人物を見て一方通行(アクセラレータ)は目を見開く。そこにいたのは今まで負けたことがなかった自分を負かしたツナだったのだから。

 何の話をしているのか気になったのか一方通行(アクセラレータ)は2人の会話を盗み聞く。

 

(あの実験が再開する可能性があるだと)

 

 一方通行(アクセラレータ)は知ってしまう。今回の事件の概要。そしてツナの推測を。

 

(あの野郎……本当に止められンのかァ?)

 

 病室の窓からツナが飛び立ったのを確認した一方通行(アクセラレータ)。しかし一方通行(アクセラレータ)は懸念があった。それはツナの甘さである。

 一方通行(アクセラレータ)は世界を滅ぼせるだけの力を持っている。だがそんな自分をツナは倒すだけでなく、戦わずして戦意を喪失させるだけの力を持っている。しかしツナは自分を殺そうとしないどころか助けようとまでした。1万人以上の人間を殺した自分を。

 そしてその甘さを利用されて実験の再開を阻止できなくなるのではないかと。

 

(何で俺があいつの心配しなくちャならねェンだ……クソッタレが……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして場面は戻る。

 

「俺も堕ちたもんだなァ……いや……元々、堕ちたンだからこの言い方は違ェな……じャあこの場合、なンて言えばいいンだァ……?」

 

「何、1人でブツブツ言ってんのよ!!」

 

 自分の存在にすら眼中なく1人で喋って、自己完結する一方通行(アクセラレータ)に苛立ちを露にする結標。

 

「ハハッ……ハハハハ……!!」

 

 苛立ちを見せていた結標であったが、何かに気づいたのか結標が笑みを浮かべる。

 

「私は知ってるわ!! あの人の近くにいたから知ってるわよ一方通行(アクセラレータ)!! あなたは8月31日に能力(ちから)を失っているはずよ!!」

 

 窓のないビルの案内人だった結標は普通の人なら知らない情報を知っている。故に絶対能力進化(レベル6シフト)計画の要である一方通行(アクセラレータ)のその後についても知っていた。

 

「今の貴方にかつての演算能力はない!! 最強の能力者でも何でもないのよ!! そうでしょう!? 何故さっきから立ったままなの!? 何もできないからでしょ!? ハッタリで私を追い詰める気だったのかしら!?」

 

 絶対に勝てないと思っていた相手が弱体化し勝てるかもしれないと思ったのか結標は気が大きくなり饒舌になり始める。

 

「哀れだなァ……お前……本気で言ってンなら抱きしめたくなッちまう程、哀れだァ」

 

 結標の言葉を聞いても一方通行(アクセラレータ)は動揺するどころか、呆れた表情を浮かべていた。

 

「確かになァ。俺はあの日、脳にダメージを追った。今は電極を失って外部に演算を任せてる身だ」

 

 一方通行(アクセラレータ)は思い出す。8月31日。ある人物を能力で救助する際に能力に集中し過ぎて反射の力が働かなくなり、敵の放った銃弾を頭に受けてしまった時のことを。

 

「こいつのバッテリーもフル戦闘で使えば15分も持たねェよ」

 

 一方通行(アクセラレータ)は親指でチョーカーを指を指しながら答える。

 

「だがよ……俺が弱くなくなッたところで別にお前が強くなッた訳じャねェだろうが!! あァ!?」

 

 一方通行(アクセラレータ)は歪な笑みを浮かべる。すると地面に大穴が発生し、周囲にあったビルのガラスだけが割れ、ガラスが雨のように降り注ぐ。

 

「っ!?」

 

 結標は躱しきれないと判断したのか即座に自分をガラスより上にテレポートする。

 

「うっ!?」

 

 ガラスの雨を躱したのは良かったが体が拒絶反応を起こし吐き気を催し、右手で口元を押さえる。

 

(翼!?)

 

 結標の前には歪な笑みを浮かべ、気流でできた4つの翼を纏った一方通行(アクセラレータ)がいた。ガラスの雨を降らすことで結標を空中にテレポートで逃げるように仕組み、脚力の向き(ベクトル)の操作に加えて気流を操作してテレポートした結標の所まで一瞬で移動したのである。

 

「悪ィがこッからは一方通行だ!! 大人しく尻尾ォ巻いて元の場所へ引き返しやがれ!!」

 

「ゴハッ!?」

 

 一方通行(アクセラレータ)の拳が容赦なく結標の顔面に容赦なく叩き込まれる。結標は容赦なく地面に叩き込まれる。

 

「これは……!?」

 

 結標が落ちたのは一方通行(アクセラレータ)が発生させた大穴だった。そして結標の下には大量の土の上だった。

 

(土がクッション代わりになって……とにかく助かった……)

 

 もう終わりだと思っていた結標だったが、運良く助かってホッとする。

 が、

 

「さァて。楽しい楽しい拷問の時間だァ。残骸の在りかを話してもらうぜェ」

 

(あああああ……!?)

 

 結標の目の前に一方通行(アクセラレータ)が降り立つ。一方通行(アクセラレータ)を目の前にした結標は体は恐怖のあまり体の震えが止まらず、声を出したくとも出せないでいた。そして結標は理解する。土がクッションになったのは偶然ではなく、一方通行(アクセラレータ)が敢えてそうしたのだと。今、生きてるのは残骸の在りかを聞き出す為に生かされただけなのだと。

 結標の考えは正しかった。一方通行(アクセラレータ)は最初に大穴を発生させると同時にコンクリートの下にある土を向き(ベクトル)操作で土のクッションを形成したのである。そして加減した拳で土のクッションへと落としたのである。

 

「残骸をどこに隠しやがった? 正直に言え」

 

(い、言わなきゃ!! 言わきゃ殺される!!)

 

 一方通行(アクセラレータ)の質問に答えたい結標であったが、恐怖のあまり声が出ず一方通行(アクセラレータ)に質問に答えられないでいた。

 

「何だァ? 答えられねェのかァ?」

 

 結標の表情から恐怖のあまり喋ることすらできないことを察する一方通行(アクセラレータ)。しかし嬉々とした表情を浮かべていた。

 

「だッたら答えられるようにしてやる」

 

(こ、殺される!! 殺される!! 殺される!! 殺される!! 殺される!! 殺される!!)

 

 一方通行(アクセラレータ)は両手を結標に手を伸ばし、肉体的苦痛を与えて無理やり結標の口を割らそうとする。

 結標は生命の危機を感じ、必死で口を開いて答えようとするも口は開いてくれることはなく大量の涙が溢れ出ていた。

 

「安心しろ。殺しはしねェ。死ぬ程痛ェだけだァ」

 

(も、もうダメ……!?)

 

 一方通行(アクセラレータ)の手が迫る。結標にはもう目を閉じ、拷問を受ける覚悟を決めることしかできなかった。

 

(みんな……ごめんね……)

 

 結標の脳裏には自分の仲間の姿が浮かんでいた。この場にはいなかったが結標は心の中で仲間に向けて謝罪した。

 

(?)

 

 肉体的苦痛を覚悟した結標であったが、結標の体に痛みはおろか一方通行(アクセラレータ)に触られた感触すらなかった。

 

「え……?」

 

 結標がおそるおそる目を開ける。そこには炎を纏った右手で一方通行(アクセラレータ)の右手を掴んでいるツナがいた。

 

「そこまでだ」

 

「て、てめェは!?」

 

 ツナが現れたことに驚いた一方通行(アクセラレータ)は視線をツナの方へ向けツナのことを睨んでいた。

 

(こ、こいつ……まさか……!?)

 

 ツナの性格上、黒子を見捨てられる人格ではないことは結標はわかっていた。なのにツナがここにいるということは黒子を見捨てず、ビルの崩壊からも逃れたのだと結標は理解する。

 

(いやそれよりも!! 何で一方通行(アクセラレータ)に触れられるの!?)

 

 ツナが生きていることにも驚いたが、結標はそれよりもツナが一方通行(アクセラレータ)に触れられていることに驚いていた。

 一方通行(アクセラレータ)は触れたものを全て反射する学園都市最強の能力者。にも関わらずツナは当たり前のように一方通行(アクセラレータ)は触れていた。ツナの炎の特性を知らない結標からすれば驚愕でしかなかった。

 

「手を引け。一方通行(アクセラレータ)。これ以上やるなら俺はお前と戦うことになる」

 

 ツナは今、大空の炎の特徴である調和の炎だけに絞った、殺傷能力が一切ない炎を纏った状態で一方通行(アクセラレータ)の右手を掴んでいる。これ以上、結標に手を出すなら殺傷能力のある炎に変えて戦うという意味がこの言葉に込められていた。

 

「ちッ! わーッたよ」

 

 舌打ちしながらも一方通行(アクセラレータ)は掴まれていた右手を無理やり離した。

 

「変わったな。一方通行(アクセラレータ)

 

「俺はお前にボコボコにされて負けたンだぞ。あんだけの力を見せられたら、嫌でも学習するに決まッてンだろうが。馬鹿かてめェは」

 

(一方通行(アクセラレータ)が負けた……!? まさかこいつがあの実験を終らせたっていうの……!?)

 

 絶対能力進化(レベル6シフト)計画を潰した人物がツナなのではないかと結標は推測する。

 

(でも実験を止めたのは無能力者(レベル0)って話じゃ……!?)

 

 自分が聞いていた話とは違うことに違和感を覚えた結標だったが、一方通行(アクセラレータ)が素直に引いたことや、嘘を言っているように見えなかったこと、ツナが妹達(シスターズ)を護ると言っていたことから、結標はツナが本当にあの実験を潰した人物なのではないかと思うようになった。

 

「残骸は俺が破壊した。後のことは任せろ」

 

「何、意味のわからねェこと言ッてやがる。俺は散歩してる途中に喧嘩を売られてそれを買ッただけだ」

 

 ツナは一方通行(アクセラレータ)がこの場にいるのが偶然ではなく、自分と同じ目的の為に動いていたことを理解していた。

 一方通行(アクセラレータ)はツナの言葉を聞いても本心を言うことはなかった。

 

「俺ァ帰るぜ。もう眠ィんでな」

 

一方通行(アクセラレータ)

 

「あァ?」

 

「ありがとう」

 

「てめェ。誰相手に言ッてんのかわかってンのか?」

 

 一方通行(アクセラレータ)は自分の能力向上の為に1万の人間を殺した男。結標などとは桁違いの罪人である。そんな相手にお礼の言葉を述べるツナの神経が一方通行(アクセラレータ)にはわからなかった。

 

(ちッ! 相変わらず何考えてるかわからねェ野郎だぜ)

 

 自分の言葉に対しても何も反応せず黙って自分のことを見るツナを見て一方通行(アクセラレータ)は心の中で舌打ちした。

 

「じャあな」

 

 そう一言だけ告げると一方通行(アクセラレータ)は自分の帰るべき場所へと帰っていた。

 

「結標。お前を……」

 

 ツナは結標の方を向く。しかし元々精神の均衡を喪失していた上に、助かったとはいえ一方通行(アクセラレータ)の恐怖に植え付けられたことに放心状態になりまともに話すことすらできなくなっていた。

 そんな結標を見かねたツナは右手の人差し指に炎を灯すと結標の額に炎を当てる。放心状態の結標は避ける素振りすら見せなかった。

 

(温かい……)

 

 結標はツナの炎の温もりを感じていた。そしてツナの大空の炎の特性である調和が結標の壊れた精神と、一方通行(アクセラレータ)に植え付けられた恐怖が消えていく。

 

「あ……」

 

 恐怖のあまり声が出なかった結標であったが、ツナの炎によってようやく声を出すことができるようになった。

 

「大丈夫か? 結標?」

 

「私は……」

 

 精神の平衡を取り戻した結標は今まで自分の身にあったことを思い出す。

 

「私は……負けたのね……」

 

「そうだ」

 

「まさかあなたに助けられるなんてね……」

 

 殺そうとしたツナがいなければ一方通行(アクセラレータ)に痛みつけられ、最悪死んでいた。結標からすれば皮肉以外の何でもなかった。

 

「それよりもどうやって崩落から逃れたのかしら……? あなたのことだから白井さんも無事なんでしょ……?」

 

「ビルを消滅させた」

 

「は……!?」

 

 何か上手い方法で逃げ出したのかと思っていた結標だったが、ビルを消滅させるというぶっ飛んだ方法で難を逃れたと知って結標は衝撃を受ける。しかし先程、ツナが絶対能力進化(レベル6シフト)計画を潰した人物だと知ったので結標はツナの言葉が本当なのだと理解する。

 すると街に警備員(アンチスキル)の警報が響き始める。

 

「どうやらお迎えが来たようね……」

 

「随分と素直だな」

 

「誰かさんのせいで目的も失ったしね……これ以上、逃げても無駄な上に、罪が重くなるだけだしね……」

 

「そうか」

 

 精神は元に戻っても結標の闘争心はすでに折られていた。ツナと美琴、一方通行(アクセラレータ)に目を付けられた上に警備員(アンチスキル)に自分の悪行を知られた以上、逃亡するよりも捕まった方がまだマシだと判断したのである。それは自分だけが助かりたいからではない。今回、自分に協力してくれた同じ境遇の仲間をこれ以上、危険に遭わせない為でもあった。

 

「ねぇ最後に聞かせて。あなたは自分の力を手にしたことに対してどう思ってるの?」

 

「怖いさ。この力で多くの人を傷つけ、何なら人の命だって奪ったことすらあるからな」

 

「え……!?」

 

「この力を使わずに生きていけたらなんて何度も考えたさ。それでも大切なものを失うことはもっと怖い。だから力を使うしかなかった。だから力を使うことを選択して戦う道を選んだんだ。俺だけじゃない。他のみんなだってきっと」

 

 ツナは今までの自分が戦ってきた姿を、そして他のみんなが戦っている姿を。

 

「力は使う者によって変わる」

 

 ツナは知っていた。予知能力を正しく使ったユニと平行世界(パラレルワールド)の知識を共有する力を悪用した白蘭。どちらも力を持った者の人格によって善にも悪になると。

 

「能力を知る前にまず自分自身と向き合え。まずはそれからだ」

 

「自分自身……」

 

 ツナの言葉を聞いて結標は俯いた状態で何かを考え始めた。

 

 

 

その後。警備員(アンチスキル)によって結標は捕らえられた。

 

 

 




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ツナとアックアの戦い。どんな形がいい?

  • 1対1の一騎討ち
  • ツナと天草十字正教が協力して戦う
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