結標が
時刻はお昼前。第7学区。カエル医者の病院。
「……」
事件が終わって黒子は病院に運ばれ治療を受けた。幸いにも命に別状はなく現在、黒子はベッドの上にいた。そして病室の窓から学園都市を眺めていた。
すると病室の扉がノックされる。
「どうぞですの」
黒子が入室を許可すると扉が開く。入室して来たのはフルーツの入ったバスケットと紫色の花の束を持ったツナであった。
「黒子。大丈夫?」
「沢田さん……」
やって来たのがツナだったので、黒子はツナと顔を合わせるのが気まずいようであった。
「ええ。明日には退院できるそうですの。退院しても車椅子生活になるそうですけど」
「そっか」
自分が思っていたよりも早く黒子が退院できると知ってツナは安堵する。ツナはベッドの近くにある棚にバスケットを置き、花瓶に持ってきた花を花瓶に入れる。
「沢田さん」
「何? 黒子?」
「えっと……その……すみませんでしたの……色々とご迷惑をおかけしまして……」
「気にしないでいいよ。もう終わったことだし」
「そうじゃありませんの……私が……その……沢田さんに酷く当ったのは……その……」
黒子は言い辛そうな
「大丈夫だよ。もうわかってるから」
「沢田さん……」
「佐天に聞いたんだ。黒子は子供扱いされたから俺が怒ってるんじゃないかって」
「へ……?」
ツナの言葉を聞いて拍子抜けしてしまう黒子。やはりツナは佐天の嘘に気づいていなかった。
「それに乙女心は複雑だって言ってたし。俺、そういうのよくわからないしさ」
「い、いや……その……」
「とにかく黒子も色々あったようだし。まぁとにかく黒子が無事でよかったよ」
「っ!?」
ツナは花瓶に花を移し終えると黒子の方を向いて笑顔でそう言った。そんなツナの顔を見た瞬間、黒子は顔が赤くなる。
(か、顔が……!? 心臓の鼓動が……!? 沢田さんの顔をまともに見られませんの……!?)
黒子は自分の顔が熱くなり、心臓の鼓動が早くなっていることを自覚する。
(こ、これは……!? まさか……!?)
黒子は理解してしまう。自分がツナに対して恋心を抱いていることに。
(そ、そんな訳ありませんの!! 私はお姉様一筋!! お姉様以外の方に惚れるなどありませんの!!)
黒子は首をブンブンと横に振りながら自分の気持ちを否定する。
「痛っ!?」
首を振ったことによって黒子の全身に痛みが走ってしまう。
「だ、大丈夫!? 黒子!?」
「っ!?」
痛がる黒子を見てツナが慌てて駆け寄る。黒子は自分の視界に入った瞬間、黒子の顔が真っ赤になる。
「だ、大丈夫ですの……!! ちょっと痛みが走っただけですの!!」
顔を真っ赤にした黒子はツナを直視できず俯いた状態で消え入りそうな声で答えた。
(ど、どうして……!? どうして沢田さんの顔を直視できないんですの!?)
今までは普通に顔を見て話すことができていたのに今はそれができない。黒子は自分がおかしくなってしまったのではないかと思い始める。
すると病室の扉が開いた。
「白井さん。食事の時間を持ってきました」
昼前ということもあり、看護婦がお盆に乗った料理をワゴンに乗せて病室へと入って来た。看護婦はワゴンに乗ったお盆をベッドテーブルの上に乗せると、ワゴンを押して病室から出ていく。
「ちょ、丁度お腹が空いていたので頂きますの!!」
食事が届けられたことを利用し、黒子はそこまでお腹が空いてないのに慌てて食事にありつこうとする。
「っ!?」
しかし急に体を動かした為、黒子の全身に再び痛みが走ってしまう。
「ダメだよ黒子!! いくらお腹空いてるからってそんなに急に体を動かしちゃ!!」
(な、何て有り様ですの……!!)
誤魔化そうとした余り自滅してしまった自分を黒子は恥じてしまった。
「あっ! そうだ! 俺が食べさせてあげればいいんだ!」
「た、食べ……!?」
まさかここでツナが食べさせてくれるというイベントが発生するとは思ってもみなかった為、黒子は顔を真っ赤にしてしまう。
「うん。これなら黒子が動かなくてもいいし、痛みが走ることもないから大丈夫でしょ」
(大丈夫な訳ないですの!! 何を考えているんですのあなたは!?)
ツナは何の違和感もなくそう言うのに対して、黒子は顔を真っ赤にし動揺してしまっていた。
「じゃあ口を開けて黒子」
「え……!?」
黒子の返答も聞かずツナはお粥の入った皿を持つと、お粥をスプーンで掬った。黒子は本当にツナが食べさせようとしていると知って驚く。
「お腹空いてるんでしょ? ほら早く」
(ま、まさかこんなことになるなんて!!)
咄嗟についた嘘のせいでこんな風に自分が追い込まれてしまうとは思ってもみなかった為、黒子は何であんな発言をしてしまったことを後悔してしまっていた。
(もうどうにでもなれですの!!)
黒子は腹を括ったのか口を開けてツナに食べさせてもらうことを決める。黒子が口を開けたのを見計らってツナはスプーンを黒子に口に入れる。
「どう? 美味しい?」
「は、はい……!!」
ツナに味の感想を聞かれてそう答えるが、実際には味を感じるどころではなかった。
「じゃあ次いくね」
「さ、沢田さん!? 何を!?」
ツナは2口目を用意をし始める。ツナの行動を見て黒子は驚いてしまっていた。
「何って……流石にこれだけじゃ足りないでしょ」
(ま、まさか食事を食べ終えるまでこれが続くんですの!?)
1口目ですら相当の勇気を振り絞ったというのに、また食べさせてもらう勇気など黒子にはなかった。
「それにちゃんと食べないと治るものも治らないよ。ほら口開けて」
(こ、こんなのがこれ以上、続いたらおかしくなってしまいますの!!)
純粋な目で口を開けるよう言ってくるツナ。これ以上、食べさせてもらえば自分の精神がどうにかなってしまうと黒子は感じていた。
(こ、こうなったら!!)
黒子は料理に直接手を伸ばすと料理を口の中にテレポートさせて一気に飲み込んでいく。常盤台生にも関わらずこんなマナー違反なことをしていることは自覚していたが、自分の身を優先することにした。
「ええ!? どうしたの黒子!?」
「こ、こうすれば体に負担をかけないで済む上にすぐにお腹いっぱいになりますの!!」
「そ、そうだね……」
黒子の行動に唖然としてしまったツナであったが、黒子の言い分は間違っていない為、納得せざる終えなかった。
「い、一気に食べたら眠くなってしまいましたの!! 少し横になりたい気分ですの!!」
「そっか。じゃあ帰るね。学校が終わったら佐天たちも来るらしいから」
黒子の嘘に気づかず帰ることを決めたツナは、伝えるべきことだけ伝えて病室を出て行った。
ツナが出て行ったのを確認すると黒子はベッドの上で横になる。
「はぁ……どうしてこんな風になってしまったんですの……」
黒子はいつものように普通にツナと会話できないことに困惑してしまっていた。
(どうして……)
黒子はツナに食べさせてもらった時のことを思い出す。味は感じられなかったがもの凄く胸が高まったことを。そしてなぜあんなにも高まってしまったのか黒子はわからなかった。
「これなら一気に食べなければよかったですの……」
黒子は後悔していた。テレポートで一気に料理を食べてしまったことに。
(って!! 何を考えていますの!! これじゃ沢田さんに食べさせて欲しいと思っているみたいじゃないですか!?)
黒子は先程呟いた発言を思い出して真っ赤になった顔を両手で覆っていた。
「あれは桔梗の花……?」
両手で顔を覆っていた黒子。すると指の隙間から花瓶に入った紫色の花が視界に入り、それが桔梗の花だということを理解する。
「あああああああ!!」
桔梗の花を見てから数秒後、黒子は顔を真っ赤にし狼狽する。
全ての花には花言葉が存在する。勿論、桔梗の花にも。ただ同じ花でも色が変われば花言葉は変わってくる。紫色の桔梗には4つの花言葉がある。1つ目は気品。2つ目は誠実。3つ目は変わらぬ愛。そして4つ目は永遠の愛である。
(ま、まさか私に告白してるつもりですの!? い、いやそんな訳ないですの!!)
黒子は桔梗の花言葉を思い出して動揺する、しかし買って来た花がたまたま桔梗だっただけだと自分にそう言い聞かせた。
『馬鹿を言うな。俺にはお前より大切なものなんてない』
『さっきも言ったがお前は俺の誇り。絶対に譲れないものなんだ。お前のいない世界なんて俺には考えられない』
(ま、まさかあれが告白の言葉!?)
黒子は昨日の時点でツナに告白されていたのではないかと思ってしまっていた。
(あ、甘過ぎですわよ沢田さん!! 私がこの程度で揺らぐ訳ありませんの!! 第一、私にはお姉様という心に決めた方が……)
すると黒子の脳内にタキシードを着たツナとウエディングドレスを着た自分が結婚式場で歩いている姿が映し出された。
(な、何を考えていますの私は!? これじゃ私が沢田さんとの結婚を望んでいるみたいじゃないですか!?)
美琴とのイチャイチャをする姿を想像するつもりだったのに、なぜかツナとのイチャイチャする姿を想像してしまったことに黒子は動揺する。
(これは絶対に恋じゃありませんの……!! そう……絶対に……!!)
ようやく黒子にフラグを建てられた!! ここまでくるのに2年以上かかるとは……
次回で
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