当麻が姫神に助けられ九死に一生を得た頃。
「ただいまー」
「「さ、沢田さん……!?」」
ツナは初春と黒子の元へと戻って来る。ツナの顔を見た途端、2人は顔を赤くする。
「どうしたの?」
「い、いえ……さっきの競技……!?」
「あー……」
恥ずかしくて詳しいことは言えなかった初春。ツナは初春の態度から死ぬ気モードのことだと理解する。
「だ、大丈夫ですよ……!! 佐天さんからあの状態の沢田さんのことは聞いていますから……!!」
「う、うん……」
一緒に観戦していた佐天から死ぬ気弾のことは聞いてはいたが、それでも恥ずかしかったのか初春ははっきりと本音が言えないようであった。
初春の心情を察したのかツナは何も言わずにいた。
(ダ、ダメですわ……!! 沢田さんの……沢田さんのあられのない姿が!!)
画面越しにいたツナが帰って来たことで黒子の脳裏に、
(落ち着きなさい白井黒子!! 私は名門常盤台生の生徒にしてお姉様の露払いなのですよ!!)
黒子は自分にそう言い聞かせる。しかし黒子の脳裏からツナの姿が離れることはなかった。
『黒子』
『沢田さん……』
(何ですかこのシーン!! これでは私が沢田さんとこうなりたいと望んでいるみたいじゃないですか!!)
黒子は脳裏にはセクシーな下着姿の自分がベッドの上で仰向けの状態になり、自分の上には四つん這いの状態で今にも襲おうとしているツナと見つめ合っている光景が浮かんでいた。
現実で起こっていない上に卑猥な妄想をしてしまった黒子は顔を真っ赤にし動揺してしまっていた。
「黒子? どうしたの?」
「な、ななな何でもありませんわ!! 決して!! 絶対に!! 問題ありません!!」
「そ、そう……」
様子がおかしい黒子を見て心配するツナであったが、黒子の高圧的な返答に気圧されてツナは何も言えずにいた。
「それより美琴と佐天は?」
「2人なら競技に出るので競技の会場にいますよ」
「あっ。もうそんな時間か。というか美琴も出るの」
「はい。学校対抗5kmマラソンに出るんです」
『後5分で学校対抗5kmマラソンを開始します』
初春が佐天と美琴が出場する競技について説明すると競技が開始する時間を伝えるアナウンスが流れる。
「どうやら競技には間に合ったようだな」
競技が始まる直前がタイミングでリボーンがツナたちの元にやって来る。
「リボーン。佐天の競技、見に来たの?」
「当たり前だろ。生徒の活躍する場面を見に来んのは当然のことだろうが。つってもぶっちぎりで1位だろうがな」
「ぶっちぎりって……いくら何でも舐め過ぎじゃありませんの? 第一、この競技にはお姉様もいるんですのよ」
この競技に多くの生徒が参加している。もちろん優秀な能力者も。佐天が強くなっていることは黒子も聞いてはいるが、ぶっち切りで1位になれるとは思えなかった。
「そうなのか。ま。それでも結果は変わらないだろうがな」
美琴が参加すると聞いてもなおリボーンの自信が揺らぐことは微塵もなく、不敵な笑みを浮かべていた。
学校対抗マラソン。スタートライン。そこには多くの生徒たちが集まっていた。
『それでは学校対抗のマラソン大会を始めます』
ついに競技開始の時間となり、アナウンスを聞いた生徒たちは競技はスタートダッシュの体勢に入る。
「位置についてよーい……」
パァン!
ヘッドフォンをつけた運営委員がスターターピストルを上に向けると、ピストルの引き金を引いた。発砲音が聞こえた瞬間、生徒たちは一斉に走り出す。
この対抗マラソンも他の競技と同じく能力の使用が認められている。ただし能力で全く走らずに移動することは禁止。例えばテレポートや宙を浮いての移動などである。つまりちゃんと自分自身で走った上で自分自身を能力で加速させることは違反にはならない。
風の流れを操り追い風を作って加速する者。自分を軽して加速する者。
「くっ!!」
「流石に一筋縄じゃいかねぇか……!?」
しかし能力者たちは余裕ではなかった。なぜなら自分たちの前にはトップに踊り出る美琴がいたのだから。
(これならあんまり体に負担をかけずに移動できる)
美琴の前方には砂鉄の球体があり、その球体は美琴と共に移動していた。美琴は砂鉄に自分を引っ張らせて加速していた。美琴は素の身体能力も優れている。それと能力が組み合わさったことで誰よりも速く移動できていた。
(けど……)
しかし美琴の顔は余裕そうではなかった。むしろ険しい表情を浮かべていた。
街中。
「流石はお姉様ですわ。常盤台のエースは伊達じゃありませんわね」
「ちょっと!! あれ見て下さい!!」
初春が画面に向かって指を指した。その先には今だに
スタートラインから一歩も動かずにいた佐天がいたのだから。
「な、何をしていますの……? もうとっくに競技は始まっていますのに……」
「もしかして佐天……」
「ああ」
黒子はなぜ佐天がスタート地点から動かないにかわからず困惑していた。一方でツナとリボーンは佐天が何をしようとしているのか理解していた。
スタート地点。
(落ち着いて……)
周囲の観客たちがスタート地点から動かない佐天に対して困惑している中、佐天は目を閉じて集中していた。
(思い出せ……あの時の感覚を……)
佐天は学芸都市にて捕まったことがあり、手錠をかけられた。その際に特殊弾を使うことなく自力で
(一度できたんだ……絶対にできるはず……自分を信じるんだ)
佐天はさらに集中する。誰もいなくなったことへの不安も周囲の視線が気にならない程に。全ては自身の力を自力で目覚めるさせる為に。
そして
「っ!?」
佐天の額と両手に晴の炎が灯り、佐天は自力で
街中
「あ、あれは!? 沢田さんと同じ!?」
黒子は今まで佐天の力を見たことがなかった。まさか佐天がツナと同じ力に目覚めているとは思ってもいなかった。
「そうか。黒子は佐天の力を使うところは初めてみるんだったな」
「え、ええ……」
「こっからだぞ佐天は。なんせ佐天は逆境にこそ力を発揮するからな」
リボーンは知っていた。シェンツとの戦いの決着を決めた炎の複数同時使用。美琴の
「暴れてこい。佐天」
再びスタート地点。
「時間がかかっちゃったわね……」
(でもこれで感覚は覚えた……)
佐天はこれからは特殊弾なしで
「死炎速」
佐天は両手を後方に移動させると炎を細く絞った状態で逆噴射させる。その瞬間、佐天の姿が一瞬にして消える。
マラソンコース
「え……!?」
「な、何!?」
無能力者及び能力者であるものの能力を競技に活かすことのできず自力で走っていた生徒たち。だが突然、何かが自分たちの横切ったことに困惑していた。
(使いどころを考えないと……)
佐天の死炎速は炎を細く絞ることでジェット噴射を実現し、炎を絞らない時よりも数倍加速することができる。しかしあまりの加速である為、真っ直ぐにしか移動できないので方向転換ができない。故に人が密集してる場所で使えば人に激突し大怪我を負わせてしまう。佐天は他の生徒たちを抜かす時や曲がり角では炎を絞らない状態で逆噴射させて生徒たちを抜かしていた。
しかし通常の炎でも人に激突する危険性がある。それでもなお激突しないのは炎の精密なコントロールができる佐天だからこそである。
ここから佐天はさらに追い上げていく。
「はぁ……はぁ……」
「クソッ……」
佐天の前方には美琴になんとか追い付こうと能力を駆使していた生徒たちがいた。しかし前方に美琴の姿はなく生徒たちはへばっていた。
このマラソンはシンプルではあるが能力者が必ずしも有利という訳ではない。能力を使って加速できても、それを継続させる為の体力がなければ意味がない。現在、美琴に勝とうと必死に抗った生徒たちは能力を使った反動で、体力が減り演算への集中力が落ち能力が充分に使えていない状態だった。故に能力者よりも無能力者にも好成績を残せる可能性がある競技なのである。
「「「っ!?」」」
へばっていた生徒たちであったが突如として自分たちの横を何かが疾風のごとく抜かしたことに驚きを隠せないでいた。誰かに抜かされたのだと即座に理解し、前方に視線を向けたのだがそこには誰もいなかった。
街中
「さ、佐天さんの姿がほとんど見えないんですけど……」
「速すぎてカメラに映らねぇんだろ」
「いくら何でも凄すぎですの……」
競技のカメラが佐天のスピードに追い付いていけていないのか佐天の姿が映像で映っていないことに初春は困惑していた。リボーンはこれくらい当然だと言わんばかりの表情で語る一方で黒子は佐天の成長速度に驚きを隠せないでいた。
「ま。一番凄ぇのは佐天をあそこまで成長させたこの俺が凄いんだけどな」
「結局、自分の自慢かよ!!」
マラソンコース
(後1人……)
能力を活かしていい順位をキープしていた能力者たちを追い抜いた佐天だったが、まだ美琴を抜かしていないことを理解していた。
「見つけた」
走り続けること5分。ついに佐天は美琴の背中を目撃する。
「死炎速」
もうこの先美琴以外の人間はいない。なので人が密集して死炎速が使えないことはない。佐天は遠慮なく炎を絞って逆噴射させ加速していく。
「先に行くわよ」
「っ!?」
急に声をかけられて心臓がドキッとした美琴。すぐにそれが佐天のものだと理解する。
「やっぱり無理だったわね……」
美琴は攻撃力や広範囲攻撃は佐天より優れているは機動力では劣る。前と佐天に戦った時に美琴はそのことを競技が始まる前から理解していた。佐天が
「でも!!」
佐天との実力差を知ってもなお、美琴は悲観することなく競技に最後まで全力で挑むことを決める。
ゴール地点
「「え……!?」」
ゴール地点にはゴールテープを持っていた運営委員の生徒が2人いた。だが誰かがゴールの前からやって来たことを確認した訳でもないのにゴールテープが切れた。2人は何が起きたかわからず呆然としていた。
「あ、あのー……」
「「っ!?」」
何が起きたかわからず呆然としていた生徒2人に
「今、ゴールしたんですけどー……私が1位ってことでいいんですよね……?」
「「え……?」」
佐天が事情を説明するが、2人は驚きのあまり佐天を言っている意味を理解できずにいた。
佐天があまりにも速すぎた為、競技学園都市製のハイスピードカメラでルール違反をしていないかが確認された。スローの映像の公開と大会運営の判断によって佐天がルール違反していないことがわかり佐天は1位となったのだった。
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