犯人を追いつめた美琴。
「な、何のことだが僕にはさっぱり……」
しかし少年は自分が犯人ではないとシラを切る。
「まぁそれもそうね。肝心な時に不発しちゃうようなダメダメなあんたが犯人なわけないわよね」
「黙れ! ちゃんと成功していればあいつら全員、皆殺しにしてやれたんだ!」
「ほう」
「はっ!」
美琴の挑発に乗せられてしまい、少年はカッとなり反論してしまう。しかし自分が挑発に乗せられたことに気づき慌てて両手で口を防ぐが時すでに遅しであった。
「い、いや……それより誰も怪我なくてよかったなー……」
少年は美琴の方を向いたまま、自分の後ろにあるバッグの中にあるスプーンを取り出し反撃しようとする。だが美琴は反撃される前に
「と、常盤台の
撃ち抜かれたスプーンを見て少年は恐怖しながら美琴の正体を知る。美琴は少年を地面に押さえつける。
「暴れてもいいけど今の私に手加減できる保証はないわよ」
「ハッ! 今度は常盤台のエース様か」
「いつもこうだ。何をやっても僕は地面にねじ伏せられる……」
美琴に押さえられているのにも関わらず、少年は不気味な笑みを浮かべながら呟く。
「殺してやる! お前みたいなのが悪いんだよ!
少年の脳裏には不良たちに殴られ、カツアゲされる自分の姿が浮かんでいた。
「?」
少年の言葉を聞いた途端、美琴は少年から手を離して少年を解放した。だが美琴は少年の前に電撃を放つ。少年は無傷であった。
「ゲッホ! ゲッホ!」
「知ってる? 常盤台の
「……」
美琴の言葉に少年は驚いたまま固まってしまう。
「そっちにはそっちの事情があるんでしょうけど。相談に乗る前に一発、殴らせてもらうわよ!」
そう言うと美琴は右手を上げ、少年に向かって振り下ろす。少年は腕をクロスさせてその場で目を瞑るしかなかった。
「え……!?」
だが少年に痛みはなかった。なぜかと思い目を開けるとそこには美琴の右手首を左手で握っているツナがいたからである。
「拳を引け。そいつを殴ったって傷ついた人や建物が元に戻るわけじゃないだろ」
「何、言ってんのよ!? こいつは犯人なのよ!」
「拳を引け」
「こいつが何したかわかってんのあんた!?」
「拳を引け」
「初春さんやあの子まで死んでたかもしれないのよ! 何も思わないわけ!?」
「思わないわけないだろ!!」
「っ!?」
突如、ツナは声を荒らげる。いつも温厚なツナがこんなにも怒りを露にした為、美琴は驚きを隠せないでいた。
「許せるわけないだろ!! 何の罪のない人を……俺の友達をあんな危ない目に遭わせた奴に対して何も思わないわけないだろ!!」
「沢田……あんた……」
美琴の視界には怒りを露にしつつも、歯を食いしばり、右手を強く握り閉めて、今にも襲いかかりそうな自分を必死に押さえているツナが映っていた。そんなツナを見て流石の美琴も拳を引いた。
「何の罪もないだと……!?
「何が被害者だ!! お前は立派な加害者だ!! 初春が一体、何をしたっていうんだ!! みゆが一体、何をしたっていうんだ!! お前は自分の勝手な都合で人を傷つけたんだぞ!! 人の命を奪おうとしたんだんだぞ!! わかっているのかお前は!!」
少年の叫び声よりもさらに大きな声でツナは叫んだ。ツナの怒りに押されたのか少年は何も言い返すことができずにいた。
「俺はお前を許せない!! 許すことなんてできない!!」
ツナはさらにヒートアップする。だがツナの怒りに満ちていた顔が悲しみに変わっていく。
「でも……でも何でだろうな……お前の気持ちがわかる自分がいるんだ……」
「え……!?」
突如、悲しそうな顔でそう告げるツナを見て少年は驚きを隠せないでいた。
「中学の時。俺は勉強も運動も何やってもダメで、ずっとダメツナって言われてて苛められてた。正直、この世を恨んだ。何か悪いことしたわけでもないのに何でこんな目に遭わないといけないのかって……何で誰も俺のことを助けてくれないのかって……」
ツナの脳裏には苛められていた中学時代の自分の姿が映っていた。
「俺は自分が傷つくのが怖くて。俺は人との繋がりを断ち切った。どうせ俺はダメツナだって自分に言い聞かせて。でもある奴が気づかせてくれたんだ。俺は今まで逃げてただけなんだって。死ぬ気でやろうとしなかっただけなんだって」
ツナの脳裏には自分の
「人は何もしようとしない奴を助けてはくれない。俺もお前と同じだった。どうせ誰も助けてくれないって決めつけて、何もしようとしなかった。けど今は違う。今の俺には一緒に笑ってくれる仲間が、いざとなったら助けてくれる仲間がいる」
ツナの脳裏には元の世界にいた仲間たちの姿が浮かんでいた。
「だからこれ以上を罪を重ねるのは止めてくれ……それでも憎いというなら俺を攻撃しろ。俺は抵抗しない。殴るなり蹴るなり能力を使うなり好きにしろ」
「な、何言ってんのよあんた!?」
ツナは少年の前に立って、両手を広げて何も抵抗せずいたぶられ続けることを宣言した。ツナの常軌を逸脱した行動に驚きを隠せずにいた。
「俺は
「何、考えてるのよあんた!? 死にたいの!? こいつの能力を知らないわけではないでしょ!」
「こいつを止めるにはこの方法しかない。だからお前はここから逃げろ」
「置いていけるわけないでしょ! 何、言ってるのよ!」
美琴はツナの無謀な行動を止めさせようとする。しかしツナの意思は固く、止める気はなかった。
「さぁどうした? 早くやれ」
(そ、そうだ! やれって言ってるんだ! だったらこいつの期待通り……)
少年はバッグからスプーンを取り出す。そしてツナの方へスプーンを向ける。
が
『でも……でも何でだろうな……お前の気持ちがわかる自分がいるんだ……』
『中学の時。俺は勉強も運動も何やってもダメで、ずっとダメツナって言われてて苛められてた。正直、この世を恨んだ。何か悪いことしたわけでもないのに何でこんな目に遭わないといけないのかって……何で誰も俺のことを助けてくれないのかって……』
『俺は自分が傷つくのが怖くて。俺は人との繋がりを断ち切った。どうせ俺はダメツナだって自分に言い聞かせて。でもある奴が気づかせてくれたんだ。俺は今まで逃げてただけなんだって。死ぬ気でやろうとしなかっただけなんだって』
『人は何もしようとしない奴を助けてはくれない。俺もお前と同じだった。どうせ誰も助けてくれないって決めつけて、何もしようとしなかった。けど今は違う。今の俺には一緒に笑ってくれる仲間が、いざとなったら助けてくれる仲間がいる』
『俺は
『だからこれ以上を罪を重ねるのは止めてくれ……それでも憎いというなら俺を攻撃しろ。俺は抵抗しない。殴るなり蹴るなり能力を使うなり好きにしろ』
(な、何だよ! 何で動かないんだよ! 目の前にいるのは俺の憎むべき敵だ!)
少年の脳裏には先程のツナの言葉が浮かんでいた。そのせいか少年はスプーンを持ったまま何もすることができなかった。
「ううっ……ううっ……」
路地に音が鳴り響く。だが鳴り響いたのは爆発音ではなく、スプーンが落ちる金属音と少年の泣き声だった。少年は四つん這いになっていた。
「ありがとう。思い留まってくれて」
ツナは四つん這いになっている少年に向かって優しい言葉をかける。
「お前は弱い者の気持ちがわかる人間だ。だから今度は自分と同じく虐げられた人たちの為にその力を使って欲しい」
ツナは少年にそう言うが、少年からの返事はなかった。だがツナの言葉は少年に届いているだろう。
こうして連続
わかってがいるとは思いますが、今のツナは
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