いつの間にかいなくなった佐天を追いかけるツナ。
「どこに行ったんだろう佐天……?」
ツナは佐天を捜して街中を走る。しかし佐天の姿はどこにも見当たらなかった。
「もう帰ったのかな……?」
佐天がいそうな場所は調べつくした為、ツナは佐天が家にもう帰っているのではないかと思い一度、家に帰ることにした。
一方、佐天は。
(勝手に飛び出してきちゃった……私ってば何してるんだろう……)
佐天は自分の部屋のベッドの上で体育座りをしながら、自分が勝手に飛び出して来たことを後悔していた。
「ツナさんたち心配してるだろうな……」
佐天は黙って何も言わずに勝手に出て行ったことを悔やむ。そして少し落ち着いたのか心配させてはいけないと思って、ツナたちに連絡しようと携帯を手に取る。
「佐天! いる!?」
連絡しようと矢先、家のドアが強引に開ける音とツナの声が家に響く。
「ツナさん……」
ツナの声のトーンから自分のことを心配していたということがわかり、佐天は
玄関
「佐天! よかった! 急にいなくなったから心配したんだよ!」
「ツナさん……」
佐天が家にいたとわかってツナは安堵する。佐天はツナに迷惑をかけてしまった為、ばつの悪い顔をしていた。
「ごめんなさい……心配かけちゃって……」
「ううん。佐天が無事でよかったよ。それよりどうしたの? 何かあったの?」
「それは……」
ツナに急にいなくなったことを尋ねられて、佐天はここで正直に
「実は明日までに提出しないといけない課題を学校に忘れちゃってて。それで慌てて取りに帰ってたんです。ツナさんたちには連絡しようと思ったんですけど携帯の充電が切れちゃったんです」
(同じだ……あの時のハルと……)
佐天は後頭部に右手を置き、嘘をついた。だがツナは佐天が言っていることが嘘だとわかっていた。未来の世界に行った時に、友達である三浦ハルに自分の正体と自分たちの周りで起きていることを素直に話した。その時のハルは今の佐天と同じく笑顔で笑っていた。本当は悲しいのにも関わらず。
「そっか。それならよかったよ。でも佐天がいなくなってみんな心配してたから、ちゃんと後で連絡しておいてね」
ツナは佐天が嘘をついているということをわかりつつも笑顔で言った。ツナはここで無理に聞いても佐天に悪いと思いそう言ったのである。
「はい。後で連絡しておきます」
「それとさ。もし本当に悩みがあったら遠慮なく言ってね。俺でよければ相談に乗るからさ」
「ありがとうございます」
佐天はツナの言葉を聞いて、笑顔でお礼を言った。
「とりあえず上がって下さい。ご飯にしましょう」
そう言うと佐天は後ろを振り返り、台所へと向かって行く。
(ツナさんにはさっきのが嘘だってバレてる……私の為に無理やり聞こうとしないでくれてるんだ……)
さっきのツナの言葉から佐天は自分のついた嘘がツナにバレているということを理解した。
(でもごめんなさいツナさん……私は力が欲しいんです……どうしても……)
佐天の心の中は罪悪感でいっぱいだった。それでも
次の日
「え? 音楽プレイヤー?」
「ええ。情報提供者によればこれが
現在、支部のパソコンで初春が音楽サイトから音楽プレイヤーにダウンロードしていた。黒子が昨日、行った調査によると
「そんなんで本当に能力が開花されるの?」
「能力を開発するには年単位で時間をかけて脳を開発しますの。音楽プレイヤーも脳に直接、作用しますので嘘ではないかもしれませんわね」
「の、脳を開発!?」
「沢田さんが想像してるものとは違いますわよ……第一、それだと色々と問題になっていますの」
「だ、だよねー……」
脳を開発すると聞いてツナはえぐい想像をしてしまう。黒子はツナの反応からえぐいことを考えていると察し、安全なのものだということを伝える。安全だとわかってツナは安堵する。
「ダウンロード完了しました」
ツナと黒子が話している内に
「ちなみに業者に連絡してここを閉鎖するまでのダウンロード数は5000件を超えてますね」
「5000!? そ、そんなに!?」
「全員が全員、使用したわけではないとは思いますがダウンロードできなくなってからは金銭で売買する人が増えてるみたいです」
「広まるのを完全に止めることは無理か……」
初春から
「その取り引きの場所はわかりますの?」
「ちょっと待って下さい」
黒子が尋ねると初春はパソコンを操作し始める。少しするとコピー機から次々と用紙が出てくる。
「はい。時間と場所です」
「って、こんなに!?」
「多いね……」
初春から渡された分厚い用紙の束を見て、黒子とツナは驚いてしまう。
「仕方ありませんわね。とりあえず私と沢田さんで分担した方がいいですわね」
「大丈夫? 一人で?」
「沢田さんに比べれば弱いですが、偽物の力に負ける程、私は弱くはありませんわ」
「べ、別にそんなつもりじゃ!」
「わかっていますわ。沢田さんがそういう意味で言ったことでないぐらい」
そう言うと黒子は分厚い用紙の束の半分をツナに渡した。
「あっ! 初春」
「何ですか沢田さん?」
「佐天の様子どうだった?」
「佐天さんですか?」
ツナは佐天と同じクラスの初春に佐天の様子がどうだったのか尋ねる。
「やっぱり元気がなかったですね。話しかけても生返事で……」
「そっか……」
「あれからどうでしたの?」
「佐天、何か悩んでるみたいなんだけど誤魔化されちゃったんだ。あんまり無理に聞いちゃいけないと思ったから、何か悩みがあったら言ってくれとは言っておいたんだけど」
「そうですか……」
ツナは昨日の出来事について話す。ツナの話を聞いて黒子は仕方ないと判断した。
「佐天さんのことも心配ですが今は私たちがやれることをやりましょう」
「うん」
「じゃあ行きましょう」
ツナと黒子は支部を出て、取り引き現場へと向かって行く。
だがツナたちは知らなかった。佐天があんなことになろうとは……
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