「やっぱりだ。お前は悪い人じゃない」
「何を言っているんだ君は?」
なんとか平然を装う木山であったが完全に動揺を隠すことができていなかった。
「過去にお前と同じような男と戦ったことがある。本当は優しい人なのに自分の本音を偽って戦っていた」
ツナの脳裏には北イタリア最強と謳われた男、ランチアの姿が浮かんでいた。
「初春を拐ったのにも関わらず、初春を人質にして
「あの子を人質にせずとも私の能力があれば突破できる。そう踏んだだけだ」
「じゃあ何で
「どういう意味だ?」
ツナの言いたいことの意味がわからず疑問符を浮かべる。
「自分の能力を無闇に使えば道路が壊れて逃走できなくなる可能性が充分にあるのにも関わらず能力を使った。バリアを展開したまま自分を軽くしてスピードを上げて直接攻撃で戦って制圧した方が道路が壊れて逃げられなくなるという最悪の事態は回避できる」
「た、確かに……」
ツナの言葉を聞いて美琴も納得する。木山は黙ったままであった。
「それをしなかったのはお前自身が自らの手で人を傷つけることにトラウマがあるからだ」
「トラウマ?」
これ程の事態を起こした木山になぜトラウマがあるのか美琴はわからず疑問符を浮かべる。
「おそらく教師をしていた頃にあった何らかのトラウマ」
ツナがそう言った途端、黙ったまま木山は両手の拳を強く握る。
「前に会った時にお前は俺の
ツナ能力は前に木山に会った時に言った台詞と木山の表情が浮かんでいた。
「
ツナの脳裏にはその台詞を吐いていた時の木山の表情が浮かんでいた。普通の人が見れば何も違和感がないがツナは違和感を感じていた。
「このことから導き出される答えは一つ」
ツナは今まで木山の台詞や言動、表情からある一つの答えを導き出していた。
「それはおそらく過去にお前が何らかの形で自分の教え子を傷つけてしまった。そのせいで自らの手で直接、人を傷つけることができなくなった。今回の事件はその教え子たちと関係している。違うか?」
「黙れ!」
木山は声を荒らげる。今まで必死に自分を押さえていた感情を押さえることができなかったのである。
「お前は初春を人質にしなかったんじゃない。できなかったんだ。初春が教え子たちと同じ学生だったから」
「黙れ!」
「
「黙れと言っているんだ!」
(木山が取り乱した……沢田の言っていることは本当……でも何でそんなことがわかるの……? 私には木山が辛い顔をしているようには全然、見えなかったのに……)
ツナは超直感で木山の心を完璧に見透かしていた。一方で美琴は自分には全くわからなかった木山の本心がなぜツナにはわかるのかがわからなかった。
「もういい!」
ツナの言葉をこれ以上、聞きたくなかったのか木山は大量の缶が入ったゴミ箱を
「
「ナッツ」
「ガウ!」
自分たちに向かって大量に降って缶を見て、美琴はこの能力が
「GURURURU……GAOOOOO!」
ナッツの咆哮が辺り一帯に響き渡ると空中にばら撒かれた缶が石化する。大空属性の特徴、調和によって缶を地面に落ちていた瓦礫と同じコンクリートにしたのである。
「せ、石化だと……!? それに何だその猫は何だ……!? どうなっている……!?」
(これ……あの時と同じ……)
どこからともなく現れたナッツが石化させたことに木山は驚きを隠せないでいた。美琴は以前にセブンスミストでナッツがカエルの人形を石化させたことを思い出していた。
「ナッツは俺の炎と同じ特徴を持っている相棒だ」
「特徴だと?」
「俺の炎の特徴は調和。ナッツの咆哮でアルミ缶を瓦礫と同じコンクリートにしたんだ」
「調和による石化だと……!? なぜ猫が能力を……!?」
「ナッツは猫じゃない。ライオンだ」
「「ラ、ライオン!?」」
ナッツがライオンだと知って、木山と美琴は驚きの声を上げる。
「ちょっと待ちなさいよ! ナッツがライオンって本当なわけ!?」
「本当だ」
「というか何でライオンなんて飼ってるのよあんた! おかしいでしょ!」
今までナッツが猫だと思っていたら実はライオンだったということと、ライオンを相棒にしている事に美琴は驚きを隠せないでいた。
「ナッツ。
「ガウ!」
ツナはナッツを
「決着をつけるぞ木山」
超直感が有能過ぎた気がする…
高評価を下さった北欧狐さん、アベンジさん。ありがとうございます!
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