とある科学の大空と超電磁砲(レールガン)   作:薔薇餓鬼

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標的(ターゲット)92 圧倒

 ついに力に目覚めた佐天。

 

(これが私の力……死ぬ気モードの時よりもさらに力が沸いてくる……)

 

 佐天はX(イクス)グローブを見ながら、自分の力が漲ってくるのを体で感じていた。

 

『死ぬ気の炎は覚悟が強ければ強い程、純度が増していく。つまり純度が増す程、死ぬ気の炎は強くなる。故に死ぬ気の炎は覚悟の炎と呼ばれる』

 

『死ぬ気とは迷わないことだ。己の魂に刻んだ絶対に譲れないもの……自分の誇りの為に戦え。それさえあれば恐怖に打ち勝てるはずだぞ』

 

 佐天は前に兄弟子(ディーノ)家庭教師(リボーン)が教えてくれた言葉を思い出す。

 

(今ならわかる。私の誇り。いや……ずっと前からわかってた……)

 

 佐天は目を閉じてこれまでにあった自分の出来事について思い出していく。

 

(私はツナのことが好き。そして憧れてた。ただ強いだけじゃなくて、優しくて、友達を護る為に戦うツナが……)

 

 佐天の脳裏には先程、恋慕弾を撃たれ時に見た映像が浮かんでいた。

 

(ツナのようになりたい。ツナと一緒にいたい。ツナの笑顔を護りたい。ツナへの想い。それこそが私の誇り」

 

 佐天が両目をカッと見開くと、X(イクス)グローブと、リングにこれまでとは比べものにならないくらいの程の純度の高い炎が灯る。

 

「待たせたわねクイエーテ。ようやくできたわ。お前を倒す準備が」

 

「確かに純度は上がった。だが戦闘経験の乏しい貴様ごときに……私の法則は破れはしない!」

 

 クイエーテは佐天に向かって走って行く。佐天は動揺することなく、その場で佇んでいた。

 

「狂嵐殺人術。()の刑。()(らん)狂幽(きょうゆう)

 

 クイエーテは回転した錫杖の先端を佐天に向かって連続で繰り出す。

 

「なっ!?」

 

 佐天はその場から一歩も動くことなく、クイエーテの突きを全て躱していた。

 

「遅いわ」

 

「ゴハッ!」

 

 佐天はクイエーテの突きをしばらく躱すと、左手で錫杖の持ち手の部分を掴み、右手でクイエーテの顔面に拳を叩き込んだ。

 

(何だ……!? 急に力が……!? これが特殊弾の効果か……!?)

 

 クイエーテは顔面を押さえながら佐天の力の増大に驚いていた。

 

「恋慕弾の効果だぞ。佐天の静なる闘志が引き出されたんだぞ」

 

「静なる……闘志……?」

 

「さっきまでの死ぬ気モードは死ぬ気弾を撃たれた時と同じで外部からリミッターを解除された状態だ。それに対して、恋慕弾は佐天自身の秘めたる意志を気づかせることで内面から全身のリミッターを外す弾だからだな」

 

「くっ!」

 

 リボーンの恋慕弾の説明を聞いて、クイエーテは再び表情(かお)を歪ませていた。

 

「1発、当てたぐらいで調子に乗るな!」

 

 クイエーテは佐天に向かって錫杖の先端を向ける。

 

「狂嵐殺人術。(よん)の刑。()(らん)凶悠(きょうゆう)!」

 

 錫杖の先端が持ち手の部分が分離し、炎を纏った錫杖の先端が佐天に向かって行く。

 

「はぁ!」

 

「なっ!?」

 

 佐天は両手を前に出して炎の壁を展開する。佐天の炎によって錫杖の先端は上空に弾け飛んでいく。

 

「なんてな」

 

 クイエーテは釣竿を振り下ろすかのように、錫杖の持ち手を両手でおもいっきり振り下ろした。

 

「狂嵐殺人術。(しち)の刑。御嵐(ぎょらん)怒砲(どほう)

 

「くっ!」

 

 佐天は急降下した錫杖の先端を紙一重でなんとか躱すことに成功する。

 

「狂嵐殺人術。(はち)の刑。超神赤嵐(ちょうかんせきらん)

 

 クイエーテはハンマー投げをする時と同じように、自分自身を回転させる。それに比例して錫杖の先端がもの凄い勢いで回転する。

 

「ぐっ!」

 

 佐天は炎の壁を展開する時間はなく、咄嗟に両手を縦にし、グローブの甲でクイエーテの攻撃を防御する。だが勢いまでは防ぎ切ることができず、そのまま吹き飛ばされ崖に激突し、その余波で崖が崩れ佐天は瓦礫に埋もれてしまう。

 

「K=1/2mv²。物体は速くなればなる程、パワーを増すという法則だ。つまり回転によってスピード強化された私の攻撃を防ぐことなどできはしないのさ」

 

 そう言うとクイエーテは飛ばした錫杖の先端を元に戻した。

 

「強化されてこの程度?」

 

「っ!?」

 

 佐天の声がすると佐天を覆っていた瓦礫が勢いよく吹き飛んで行く。瓦礫が吹き飛ぶとそこには何事もなかったかのように佇んでいる佐天がいた。

 

「お前の実力がこんなものなら拍子抜けだわ」

 

「私の攻撃を防ぐこともできなかった奴の台詞とは到底、思えないな」

 

 そう言うと再びクイエーテは錫杖の先端を分離させると、その場で回転し始める。

 

「そんなに言うのであれば破ってみろ!」

 

 回転が加わることで凶器と化した錫杖の先端が再び佐天に迫っていく。

 

『恐怖することは悪いことじゃねぇ。むしろ恐怖を感じないのは無謀だ。全く勝ち目のない相手に対して何も感じなければ殺されるだけだからな。恐怖に従い、戦いから逃げることも立派な戦いだ』

 

『だが恐怖してばかりじゃ意味はねぇ。時には無理だと思っても戦わなきゃいけねぇ時だってある。勝たなきゃいけねぇ時だってある。そんな時にビビってばかりじゃ成長しねぇ。極限の命のやり取りの中でこそ人は大きく成長するからな』

 

『死ぬ気とは迷わないことだ。己の魂に刻んだ絶対に譲れないもの……自分の誇りの為に戦え。それさえあれば恐怖に打ち勝てるはずだぞ』

 

 錫杖の先端が近づいて行く中、佐天はリボーンが教えてくれた言葉を思い出していた。そして佐天はクイエーテの攻撃の中へと突っ込んで行く。

 

「何!?」

 

 錫杖の先端が佐天に顔へ近づく。佐天はしゃがんでギリギリの所で躱し、錫杖の先端に繋がれていたワイヤーを両手で掴む。

 

「お返しよ」

 

 佐天はそのままワイヤーごとクイエーテを引っ張って手繰り寄せる。

 

「はぁ!」

 

「ゴハッ!?」

 

 自分の間合いに引き寄せたクイエーテの腹部にに佐天は拳を叩き込んだ。

 

嵐伝掌玉(らんでんしょうぎょく)!」

 

 クイエーテは炎を纏った掌底を佐天に繰り出す。だが掌底が佐天に叩き込まれる前に、佐天はジャンプして躱すと同時に後方に移動する。

 

「遅いわ」

 

「グフッ!?」

 

 そして佐天はクイエーテの背中に拳を叩き込んだ。背中拳を叩き込まれたクイエーテはそのまま吹っ飛び、崖に激突する。

 

(一旦、上空に……)

 

 クイエーテはなんとか立ち上がると、両足に炎を噴射して上空へと逃げる。

 

(遠距離攻撃で隙を作り、攻撃してくる範囲を絞る)

 

 クイエーテは上昇しながら次の手を考える作戦に移る為に、錫杖を構える。

 

「なっ……!?」

 

 攻撃しようとした矢先、クイエーテは驚いていた。なぜなら佐天が自分と同じ速度で移動していたからである。

 

「ゴハッ!」

 

 佐天は空中でバク宙しクイエーテの顎に蹴りを喰らわせる。佐天はさらに上昇し、クイエーテの上を取る。

 

「終わりよ」

 

「ガハッ!?」

 

 クイエーテは顔面に佐天の拳をモロに喰らい、そのまま一気に急降下し地面に叩きつけられた。

 

(なぜだ……なぜ……!?)

 

 クイエーテはわからなかった。ロクに戦闘に立ったことのない佐天にこうも自分が圧倒されているのかということに。

 

「お前の動きが遅くなってんだぞ。クイエーテ」

 

「遅く……まさか!」

 

 クイエーテは気づく。先程、佐天が自分に追い付くことができたのは佐天の副属性である雨属性の炎の力であるということに。

 

「いや! 私は雨属性の炎を受けた覚えはない! 受けたとしてもどういう法則で……まさか!」

 

 クイエーテは気づく。佐天がワイヤーで自分を引っ張った時に、ワイヤーをつたって雨属性の炎を流し込んでいたということに。

 

「がっ……!?」

 

 突如、クイエーテは両手で首を押さえ、地面をのたうちまわりながら苦しみ始める。

 

 クイエーテの身に何が!? 

 

 

 

 

 




わかっている人はいると思いますが手袋の310は3(さ)10(てん)という意味です。


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ツナとアックアの戦い。どんな形がいい?

  • 1対1の一騎討ち
  • ツナと天草十字正教が協力して戦う

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