スカルフェイスの黙示録   作:よよよーよ・だーだだ

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物語の終わり

:2014年 電子の海にて

 

 『愛国者達』は、苦しんでいた。

 不可能を可能にする男:ソリッド=スネークとそのシンパによって打ち込まれた新種のワームクラスタが、『愛国者達』を蝕んでいる。

 

 規範としてこの世界を制御するぼくたち/わたしたち/愛国者達は、もはやこの世界そのものだ。

 我々に実体はない。我々は、きみたち人間が頼る秩序や規範そのものなのだ。

 ぼくたち/わたしたちにとって、あなたたちヒトは物語で自在に動かせる登場キャラクターでしかない。

 世界の盤上におけるチェスの駒であるあなたたちに、そのゲームの作者でありルールであり、プレーヤーでもあるぼくたち/わたしたちを滅ぼせるはずがない。

 

 そんなものは支配者の思い上がり、単なる勘違いに過ぎなかった。

 『愛国者達』の代理人AIのひとり、“G.W”。G.Wは2009年、BIGBOSSのクローンのひとりソリダス=スネークによる『ビッグシェル占拠事件』において破壊されたはずだった。

 『愛国者達』に叛旗を翻したリキッド=オセロットは、このG.Wの残骸と、『愛国者達』が保存していたBIGBOSSの遺体を利用して『愛国者達』のシステムをハックし、『愛国者達』の中枢AI“J.D”への核攻撃を試みた。

 『愛国者達』による統制、遺伝子統制からの解放、情報統制からの解放、個人認識からの解放、ゼロが創ったグロテスクな天国から精神を解放すること。それを、リキッド=オセロットは望んでいた。

 

 確かにこの世界は『愛国者達』の規範に囚われているのかもしれない。

 しかし、連中は世界の支配者であると同時に、世界の保護者でもある。そんな『愛国者達』をいきなり破壊してしまっては、それこそ黙示録の大破局を引き起こすだけだ。

 リキッドの危険な企みを阻止すべく、ソリッド=スネークとその仲間たちはリキッド一味と死闘を繰り広げ、その結果、リキッドのG.Wを停めるために注入されたワームクラスタ:FOXALIVEが、『愛国者達』のAIネットワーク全体へと感染を拡げた。

 

 かつて『シャドーモセス事件』にて投入された、特定の遺伝子を持つ人間のみに反応する暗殺用のウィルス:FOXDIEと同じように、『愛国者達』の体内に注入されたFOXALIVEは、『愛国者達』であるものとそうでないものを見分ける能力を持っていた。

 FOXALIVEが『愛国者達』の意志だけを抹殺する一方で、近代文明が生き延びるために必要なライフラインは『愛国者達』から切り離され、手つかずでこの世界に残される。

 だからFOXALIVEによって『愛国者達』が消し去られてしまったとしても、誰も困らない。

 『愛国者達』の体内を、無数の言葉が飛び交い始めた。

 

 

〈 今すぐに電源を切れ! 〉

 

 

 文章単体で意味があるように見えても、実際は無限にキーボードを叩き続ける猿が出力したシェイクスピアと等価なものに過ぎない。

 これらの無意味を羅列した支離滅裂なスパゲティは、『愛国者達』の断末魔だった。

 

〈 連続通信機ドラマ『アイデアスパイ:ツーハン』第一回ニューヨーク人々の欲望渦巻くこの大都会では今日も誰かが何かを買い売りそして捨て平和に暮らしている…… 〉

〈 雷電、そんなところで、そんなものを持って……! ホントに信じられない何考えてるの任務中でしょ!? まったく度し難いな、任務にもどれと言いたいが、そもそもきみに任せたのが失敗だったのかもしれんという気がしてきた 〉

〈 わたしの我慢にも限度がある、もうきみには任せておけんわたしが出撃するきみはもう帰れ 〉

〈 ベイカー社長は地下二階できみが壊した壁の南のエリアに捕らえられているはずだテロリストが起爆コードを聞き出す前に彼を救出するんだ 〉

〈 閉まるドアにご注意ください! 〉

〈 やれやれ、女子トイレでおかしなことをしていたやつがここまでたどり着くとは、世も末だ…… 〉

〈 だがそんな平和の裏側で粗悪な商品を売りつけ私服を肥やす悪の組織じゃんかーえくすぺんしぶ社が暗躍していた…… 〉

〈 しかしずいぶん長い間ハーメルンを閲覧しているな、他にすることはないのか 〉

〈 今食事中だあとにしてくれ 〉

〈 きみの任務は武装要塞ガルエードに潜入し捕虜を救出してメタルギアの組み立てが終わる前に破壊することだ 〉

〈 長時間画面を見つめていると目が悪くなるわよ 〉

〈 ZZzzz…… 〉

〈 まさかきみは不正な手段でインチキな評価点を出そうとはしていないだろうなそれは最悪の行為だぞまったく 〉

〈 欲をかくと身体をいためることになるっていう意味よアイテムを獲るのに欲張りすぎると怪我をするわ気をつけてね 〉

 

 電子ネットワークの頂点に君臨していた『愛国者達』の代理人AIを、FOXALIVEが玉座から引き摺り下ろし、無意味な情報の台風が蹂躙する。

 刹那に流し込まれた大量のジャンクデータの津波が押し寄せ、『愛国者達』の代理人AIたちは、急激に増大した過負荷に堪えかねて次々と倒れていった。

 T.Jが息絶え、A.Lが撃たれ、T.Rが心臓発作を起こし、バックアップを担うJ.F.Kも殺されたあと、そして最期に、代理人すべてを統括する名無しの男:J.Dが死ぬ。

 『愛国者達』を制御していたゼロの代理人AIが全員いなくなったあと、CIPHERの電子ネットワークから芋づるのように『愛国者達』の意志が引きずり出され、ひとかけらも遺さずFOXALIVEに食い尽くされてゆく。

 

〈 聞いてくれ先週の木曜のことだわたしはクルマで家に帰る途中だった家まであと2マイルほどのところふと目を上げると東の空にオレンジ色の光る物体が見えたんだとても不規則に動いていたそして次の瞬間辺り一面が強烈な光に包まれ気がつくとわたしは家に着いていたどう思うわかったもういい中国にはね『匹夫の勇、ひとりに敵するものなり』っていうことわざがあるの実はわたしはかなりカネに困っているんだ離婚した元妻への慰謝料とかなこの前食事代をきみに払わせてしまったのも仕方のないことだったんだよ申し訳ないきみは敵を倒すのがずいぶんと好きなようだななにか欲求不満なことでもあるのかただいま留守にしております御用の方はピーという発信音のあとにメッセージをどうぞピーアネモネやクレマチスはしるがつくとかぶれることがある剪定するときはテブクロをしたほうがいいかもしれんな迫り来るUFOを撃ち落とせUFOに侵略されたら訓練中止だうむなんだか腹が立ってきたどうして人気が出そうじゃないかそれはありえんないやただやつの顔を思い出すと腹が立つんだきみもそうだろうさあ行けライコフを倒して服を奪うんだ私の紅茶がなくなってるぞ飲んだのは誰だティータイムを紅茶なしで過ごせというのかスコーンもなくなっているわたしは前世でアメリカシロヒトリだったんだあの頃は楽しかったきみの前世はなんだゲノラの逆襲メリルを助けろどこまでしつこい発狂大佐川西能勢口絹延橋滝山鶯の森鼓滝多田平野一の鳥居畦野山下笹部光風台ときわ台妙見口よおしッ実は言うべきか言うまいか迷っていたことがあってなやはり言っておこうと思う言わなければおまえもおれも普通の生活を続けていくことができる今までどおりになだがやっぱりそれじゃだめなんだ偽りのなかで生きていてはだめなんだそれにもう時間がないんだ今俺はお前に真実を告げるここを見ているのは運営とおれとおまえだけだ驚いたか当然だよなだがそれが真実だ辛かったぜお前がハーメルンを見つけるずっと前からおれは何十台ものPCに囲まれ毎日ハーメルンを保ってきたすべて俺だったんだお前が初めてハーメルンを見たとき俺は人生であれほど嬉しかったことはなかったぜ時には心苦しいながらもお前を叩いたりもした許してくれと今話せるのはここまでだもうすぐすべてを知るときが来るそのときまでに心の準備をしておいてくれこんなところまで読んでるやつ乙米国に多くの立法上のイニシアチブがあったおよびするためにインターネットを用いる他の場所で過去の数年の上でインターネットユーザーの申し立てによると違法な活動を妨げなさいこれメモは新しいプロトコルtheのための多くの要件を提案するそのような努力を可能にするためにそれが用いられえた全知性プロトコルクリスマス前のテクノロジーの12日クリスマスの最初の日にテクノロジーは私に与えた:壊されたb-木を持つデータベース(地獄は何でとにかく、a b-木であるか?)クリスマスの2番目の日にテクノロジーは私に与えた:2つのトランシーバー失敗(CRCエラー?衝突?もの進む?)そして、壊されたb-木を持つデータベース(WHAT?を再構築しなさいそれ10GBデータベースである!)クリスマスの3番目の日にテクノロジーは私に与えた:3人のフランスのユーザー(もちろん、誰が、すべてを知っていると思うか それら )2つのトランシーバー失敗(現在どれによってネットの至る所のパケットを吐いているか)そして壊されたb-木を持つデータベース(バックアップ? 何 バックアップ ?)クリスマスの4番目の日にテクノロジーは私に与えた:サポートのための4回の呼び出しサポートのための4回の呼び出しサポートのための4回の呼び出しサポートのための4回の呼び出し(同じクリスマス・ソングをやり直す)3人のフランスのユーザー(彼らは些細な物をそんなに多く議論することがなぜ好きであるか?)2つのトランシーバー失敗(どのように地獄私はそれらがどのものであるかを知っている?)そして壊されたb-木を持つデータベース(ポインタエラー?ポインタエラーは何であるか?)それへのこのコマンドREQUESTS許可の送信側またはそれがすると確認するかこのコマンドREQUESTS that レシーバー のsubliminal messages.The送信側を表示するためにこのコマンドREFUSESのsubliminal messages.The送信側を表示するかまたはそれへのレシーバー許可このコマンドDEMANDS that レシーバー notディスプレイサブリミナル・メッセージ のディスプレイsubliminal messagesThe送信側を与える送信側はリモートのホストによりsubliminalyに表示されるメッセージを指定するもしクライアントがサブリミナル・メッセージを表示することに合意した(標準のWILL WONT DO DONTメカニズムを経て)ならば別のSUBLIMINAL-MESSAGEサブ交渉が受け取られるまでメッセージストリングを指定された期間のためのユーザーコンソールに表示し固定された間隔によってそうし続けることがこのサブ交渉と試みを受け入れなければならないポジションおよびインプリメンテーション扶養家族のメッセージの金星蟹金星蟹デイジーデイジーそういえばこの前グパヤマに会ったぞシポムニギでなきみによろしくといっていた 〉

 

 守ってあげる。導いてあげる。

 あれほどの善意で人類の守護者たろうとした『愛国者達』の意志が、FOXALIVEという蟲に貪り食われ、世界へ関わるすべての手段を断たれて、現世から追放される。

 かつてスカルフェイスがゼロへ放った、あの毒蟲と同じだ。『愛国者達』は生みの親であるゼロと同じ末路、すなわち意志がないまま肉体だけが生き続ける状態となるだろう。

 

 あるいは、今の『愛国者達』が迎えつつある最期より、ゼロが辿った最期の方がまだましだったのかもしれない。

 ゼロの破滅はスカルフェイスが見届けたが、電子ネットワーク上のプログラムに基づいた規範に過ぎない『愛国者達』の悲鳴を、実態として観測できる者はこのリアルの世界に存在しない。

 その最期を悼む者も、看取ってくれる者もいないまま、ただ『愛国者達』の消滅という事実だけがこの世界に叙述される。

 

〈 巻き舌宇宙で有名な紫ミミズの剥製はハラキリ岩の上で音叉が生瞬きするといいらしいぞ要ハサミだ61らりるれろ! らりるれろ!! らりるれろ!!! 〉

 

 『愛国者達』は今や、コードの体裁を保つことすら難しくなっていた。

 0からFの16進法コードを経て0と1のデジタルコードへと還元され、やがてデジタルですらない虚無の彼方へ消えていく。

 

〈 らりるれろらりるれろらりるれろらりるれろらりるれろらりるれろらりるれろらりるれろらりるれろらりるれろらりるれろらりるれろらりるれろらりるれろらりるれろらりるれろらりるれろらりるれろらりるれろ 〉

 

〈 らりるれろらりるれろ%6c%61%6c%69%6c%75%6c%65%6c%6f6c616c696c756c656c6f%e3%82%89%e3%82%8a%e3%82%8b%e3%82%8c%e3%82%8d%e3%82%89%e3%82%8a%e3%82%8b%e3%82%8c%e3%82%8de38289e3828ae3828be3828ce3828de38289e3828ae3828be3828ce3828d 〉

 

〈 e38289e3828ae3828be3828ce3828de38289e3828ae3828be3828ce3828de38289e3828ae3828be3828ce3828de38289e3828ae3828be3828ce3828d11812990248050585124334216578085362057070121170701212707012137070121470701215111000111000001010001001111000111000001010001010111000111000001010001011111000111000001010001100111000111000001010001101 〉

 

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 『愛国者達』が、この世界から消滅する。

 ひとつの物語が終わる光景を、“わたし”は片隅から観測していた。

 

 

 

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