スカルフェイスの黙示録   作:よよよーよ・だーだだ

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アバドンの苗

:1984年某日、アフリカにて

 

「すまないな、予定が変わった。優雅に過ごせるほどの時間がなくなった」

 

 顔をそらすナヴァホの尊老コードトーカーを見据えながら、スカルフェイスは言う。

 

「残念な態度だな。誰を寄越しても口を利かない。では、よほど わたしに会いたいのか思っていたが、こうして目もあわせない」

 

 まるで動物園の動物が寝ていて退屈している子供のように、コードトーカーの周りを歩き回るスカルフェイスに、コードトーカーが口を開く。

 

「よせ、わたしに拷問など効かん。白い男(ビラガアナ)よ、おまえならわかっているはずだ」

 

 CIPHERに囚われ、望まない研究を強いられてきた老科学者コードトーカーは、スカルフェイスを拒絶する。

 拒むことさえままならない苦しい現状だが、それでもスカルフェイスの為にこれ以上手を汚したくはなかった。

 

「もちろん あなたに手荒な真似をするつもりはない。よほどの痛みを感じたとしても あなたがそれに耐えられないとも思わない」

 

 わかりきっていることだ、とばかりにスカルフェイスは大仰に肩をすくめつつ、懐から小さなハンドベルを取り出し、「兵士をひとり外に立たせてある」と言った。

 

「特別な人間じゃあないが わたしには従順だ。伝えてあることはひとつ。わたしがこのベルを鳴らしたら、あるところに連絡を入れる。『GO』。それだけだ」

 

「よせ」

 

「だが、その先は複雑だ。連絡はある部屋へ届く。ここより少し広い程度、大した広さじゃない。そこにはあなたの一族、ナヴァホの民がいる。わたしの兵士に囲まれて……」

 

「よせ!」

 

「無作為に選んだ。年齢、性別もかまわず……こちらはあなたとは違い、あなたほど分別を知らない者たちだ。ひとりずつ、動けないようにして目隠しを。秩序のためだ、許してくれ」

 

「きさま……っ」

 

 怒りと屈辱に身体を震わせるコードトーカーを見て、スカルフェイスは双眸をにやりと細めた。

 

「『GO』。その連絡を聞いたら わたしの兵は、この中からひとりを選んで感染させる。あなたが造った『声帯虫』をな」

 

 Vocal cord Parasite:声帯虫。動物の喉に寄生する寄生虫の一種で、宿主の声に反応して繁殖を行う。

 生まれた幼生はその肺を喰い尽くして宿主を殺し、さらに唾液や体液を介した飛沫感染でその範囲を拡大してゆく。

 かつて太古の昔に絶滅したはずの種だったが、『賢者達』とCIPHERがそれぞれの目的のために蘇らせていた。

 

 宿主が人間であれば、声帯虫が反応する声とはすなわち ことばだ。

 コードトーカーが育て上げた声帯虫は、喋る ことばに反応して宿主を殺し、さらに感染を拡げる寄生虫兵器として完成されていた。

 愛する蟲たちで、人を殺すための研究を。

 

「わたしの一族に声帯虫は効かん」

 

 苦し紛れに反論するコードトーカーだが、スカルフェイスは動じない。

 

「もちろん、あなたがたナヴァホの言語に声帯虫が感応しないのは知っている。だが“英語”ならどうだ」

 

 スカルフェイスの発言に、コードトーカーは戦慄した。

 

「『声帯虫の英語株』……まさかっ、存在するのか」

 

 交配と選別を繰り返せば、特定の言語にだけ反応する声帯虫を作り出すことは可能だ。

 実際、コードトーカーがCIPHERに強いられていた研究は、その品種改良ノウハウを確立する為の研究であった。

 たとえば、日本語株であれば日本語を話す者だけを選んで殺し、感染を拡げる。一方で、反応しない言語の話者は、喉にとりつかれたとしても日本語を喋らない限り死ぬことはないし、感染が拡がることもない。

 

 言語の破壊は、その言語が使用される歴史、文化、国家、そしてコロニーの破壊も伴う。

 品種改良した声帯虫を密かに外界へ放てば、狙った特定の言語の話者だけを根絶やしにする民族浄化さえも可能になる。

 これが、かつて『賢者達』が夢想した、『浄化虫計画』だ。

 

 しかし、それが英語株となれば話は違ってくる。

 西洋文明とその植民地を筆頭に、全世界へ深々と根を下ろした覇権言語こと英語は、世界というシステムの成立にもはや必要不可欠な共通言語:リングワフランカとなっている。

 その英語の話者を殺す英語株が蔓延すれば、過去に起きたどの戦乱や虐殺でさえ比較に及ばない、大量殺戮と混沌が世界中を覆う。

 

 コードトーカー自身もかつて空想したが、実現することだけは固く戒めた、禁断の声帯虫。それがこの世に存在する、とスカルフェイスは言っているのだ。

 

「ベルの音が一度聞こえるごとに、ひとりずつ蟲に感染させる。その者がナヴァホ語を捨てて英語を話せば、英語株が発症するのだ」

 

 英語が共通語なのはナヴァホも例外ではない。

 長年続いたアメリカの教育政策もあって、ナヴァホの一族には英語しか話せない者さえ出てきている。

 世界中の少数言語と同様、ナヴァホもいずれ英語の勢力圏に飲み込まれてしまうだろう。

 

 つまり、結果は簡単だ。

 スカルフェイスが手に持っているこのベルを鳴らせば、ナヴァホの一族は歴史的パンデミックを引き起こした爆心地として、人類史へ永久の汚点を残すことになる。

 人類史上最大の虐殺を引き起こしたという汚名を、スカルフェイスに協力したコードトーカー個人が背負うか、でなければナヴァホの一族全員で背負うか。それがスカルフェイスが掲示した条件なのだ。

 コードトーカーは憎悪に顔を歪め、あらん限りの罵倒を投げつけた。

 

「このひとでなしめ」

 

「わたしの本意ではない。わたしは、あなたとナヴァホの一族に敬意を払っている。できればこのベルを鳴らしたくはない。だから あなたが話してくれることを望んでいる」

 

「用件はなんだ、ビラガアナよ」

 

 スカルフェイスが、コードトーカーに強いたのは、声帯虫の研究だけではない。

 ナヴァホの故郷は、アメリカが開発した核兵器の残り滓である、核廃棄物の棄場として利用され、今は重い放射能汚染に苦しめられている。

 

 CIPHERはそこに付け込んで来たのだ。

 汚されてしまったあなたの故郷を、よみがえらせる為の研究をしてみないか。我々は、あなたの故郷を救いたいのだ。

 スカルフェイスはそう言って、コードトーカーに近づいてきた。

 

 当初は“金属を代謝する極限環境微生物:メタリックアーキア”の培養研究だけだったが、ほどなくして真の研究目的が故郷再生などではなく軍事利用であることにコードトーカーは気づいた。

 しかしそれがわかった頃には時すでに遅く、挙句の果てにはメタリックアーキアを使った新型装甲服や核兵器の開発にまで従事させられた。

 

 先日訪れた際のスカルフェイスの話では、段階は終局に差し掛かっているという。

 ならば一体、これ以上何を求めるというのだろう。

 

「コードトーカーよ、教えてくれ。あの蟲に感染し、喉へ寄生したあとのことだ。それを取り除き、発症を止める方法はあるのか。あなたは、あの蟲を発症させない方法を知っているはずだ」

 

 声帯虫とヒトの縁は深いもので遡れば太古の昔、ヒトがヒトとなる前にまで至る。

 ヒトが言語を手に入れたのには様々な要因や仮説が存在するが、その歯車のひとつを担ったのが、直立歩行を成し遂げた原人の喉へ巣食った声帯虫であったという。

 ヒトの喉に巣食った声帯虫は、宿主の声帯をより言語を操るのに適した形へと変えてしまったのである。

 

 その由縁ゆえに、ヒトの免疫系は親和性の高い声帯虫を拒絶せず、それどころか身体の一部にまで取り込んでしまう。

 外科的に除去するとすれば、それこそ患者の声帯を抉るしかないが、どちらにせよ患者が声を失うことは避けられない。

 発症や感染を抑制する方法もあるにはあるが、根治できるわけではないし、それには大きな代償を払う。

 どのような方法にせよ、とても実用的ではない。これが、現時点におけるコードトーカーの結論だった。

 

「あれはおまえの思い通りになどならん。忘れるのだ」

 

「忘れる。まさか」

 

「わたしは、貴様などに」

 

 そのとき、ちりん、とベルの音が鳴った。コードトーカーの中で時が止まる。

 

「今、何をした……」

 

 目線を移すと、スカルフェイスの手元でベルが揺れていた。愕然とするコードトーカーを、スカルフェイスは冷笑する。

 

「わたしが鳴らしたのではない。あなたが わたしに鳴らさせたんだ」

 

「貴様ァ!」

 

 我を忘れて飛び掛ろうとするコードトーカーを、軽くいなすスカルフェイス。

 

「よしなさい、コードトーカーよ。あなたは わたしの役に立つために生きている。だがそれを望んではいないだろう」

 

 コードトーカーの耳元で、スカルフェイスは囁き続ける。

 

「では何故 死を選ばない。生きている望みはなんだ。かの大陸、アメリカにいるナヴァホという部族を、わたしから守ることだ」

 

 ぐ、とコードトーカーが唸る。

 スカルフェイスがナヴァホの一族に手を出さないのは、まだコードトーカーに利用価値があるからだ。でなければ、この冷血漢は容赦なく一族を殺すだろう。

 だからこそコードトーカーは屈辱と悔恨に耐え、大罪の片棒を担いででも生き延びてきた。

 

「そうだ。目的を見失うな。協力を拒まないでくれ。そんなことがあれば……」

 

「やめろ!」

 

 手元のベルを傾けようとするスカルフェイスを、コードトーカーは制止する。その反応にスカルフェイスは満足げそうに微笑む。

 

「もう、それを使うな」

 

「ええ、あなたにそう願うとしよう。さあ、教えてくれるだけでいい。声帯虫の発症を止める方法を」

 

 何の為に。なぜ必要なのだ。コードトーカーの問いに、スカルフェイスが語り始める。

 

「マサ村落で、大人の兵士たちが死滅した。川の上流にある研究所から蟲が漏れたらしい。おかげで『声帯虫のキコンゴ株』が村に繁殖した」

 

 だから言ったのだ、とコードトーカーが顔を覆う。

 スカルフェイスがマサ村落の上流でコンゴ語、すなわちキコンゴ話者を実験台とした声帯虫の感染実験を行なうと言い出したとき、コードトーカーは強く反対したが、スカルフェイスはそれを無視した。

 

 賢者達から回収した浄化虫計画の研究データには、いくつか欠落があった。

 民族浄化虫を夢想し、それを可能とし得る権力を持っていたはずの賢者達が、結局民族浄化虫を実現できなかったのは、流石の彼らも実証実験を行なうことは憚られたからだろう。

 その狂気を継ぐスカルフェイスの計画を実現するには、実際の声帯虫がどれくらいの速度で、そしてどれほどの規模の感染を拡げるのか、実際にこの目で確かめておく必要があった。

 

 勿論、無制限に拡げてゆくわけにはいかないから、感染源の水源に向けて、近くのンフィンダ油田から原油を流出させることで、声帯虫の拡散を封じ込める算段だった。

 だが、あるプライベートフォースにンフィンダ油田が破壊されたことで、その封じ込めが中断。

 結果、抑え込まれていた蟲が解き放たれ、生活用水として使われていた川の水を通じて大人たちへと感染。

 キコンゴを話していたマサ村落の村人たちを皆殺しにしてしまった。

 スカルフェイスはこれを、「不幸な事故だった」という一言で済ませた。

 

「だが、この件でわたしは悟ったのだ。あなたの言うとおり、わたしは謙虚になるべきだった。『あの蟲は思い通りにならない』……ならば止める方法もまた必要だ」

 

「そんな方法など、ない」

 

 コードトーカーがなおも否定すると、ほう、とスカルフェイスがベルを構える。

 

「ま、待て、それを鳴らすな」

 

「あなたが決めることだ。さあ、はやく!」

 

 そのとき、コードトーカーはあることに思いあたった。

 

「そうか……それだけではあるまい」

 

「……なに」

 

「おまえは、この土地の各所で、“あの仔ら”を繁殖させた。いや、ここだけではあるまい。民族浄化虫などとぬかし、様々な言語の株を選り分け、人に宿し、これを殖やした」

 

 考えてみれば簡単なことで、この執拗さは必要性の裏返しだ。

 かつて、声帯虫の予防になどまるで興味を持たなかったこの冷酷な男が、ここまで迫る理由があるとすればそれはひとつしかない。

 

「やがておまえは感染したのだ、おまえ自身が無数の言語株に! おそらくはおまえの母語、北トランシルヴァニアも……」

 

 スカルフェイスの表情から薄笑いが剥げ落ちた。

 スカルフェイスは、自らの母語に反応する言語株だけを選り分けて、根絶しようとしたのだろう。

 しかしその過程で、よりにもよって自分自身がその言語株に感染してしまった。

 ことば に誰よりも執着してきたこの男にとって、母語を話せないことがどれほどの苦痛なのか、想像するまでもなかった。

 アフリカとアフガニスタンで様々な言語株の声帯虫を養殖し、多くの人命を弄んできた報いをスカルフェイス自身が受けたのだ。

 

「だまれっ!」

 

 スカルフェイスが激昂する。数年間の付き合いでしかないが、コードトーカーにとっては初めて見る表情だった。あのビラガアナが動揺し、弱みを晒している。

 

「ビラガアナよ、貴様こそ、報いるのだ。わたしの一族を解放しろ、二度と手を出すな。さあ、どうなのだ」

 

 スカルフェイスにコードトーカーは詰め寄った。

 今度はコードトーカーがスカルフェイスを脅す番だった。邪悪なビラガアナめ、わたしに命乞いをしてみせるがいい。故郷への想いはおまえも同じはずだ。

 コードトーカーからの思わぬ逆襲に、スカルフェイスは遂に折れるかに見えた。

 

 

 だが、スカルフェイスは、笑っていた。

 

 

「ふふふ、はははは……」

 

 ちりん、ちりん、とベルの音が続く。

 

「よせ、なにをする」

 

「ははははは……わたしは、ことばを喪うことを畏れていない。あらゆる『言語株』がわたしの中にいるだろう。すなわちわたしは、既に世界中のことばを喪っているのだ」

 

 だがそれでいい、いざとなればわたし自身が言語株の苗床となるのだ、スカルフェイスは虚ろに笑った。そして地球から全ての言語を消し去り、世界を終わらせる。

 

「いいのか。母語を話せば死が、ともすれば残された同胞をも滅ぼすことになるぞ」

 

「多少の声では発症には至らない。いずれにしろ、故郷にまだ“この顔”は向けられない。わたしの報復が終わるまではな」

 

 もう時間がない。そろそろ別れのときだ。ベルを鳴らしながらスカルフェイスはコードトーカーに迫った。

 コードトーカーは、スカルフェイスの瞳の奥に、揺らめく狂気の炎を見た。この男はもう止まらない。交渉など成立しないだろう。

 コードトーカーはスカルフェイスの手元のベルを見た。これで何人のナヴァホが犠牲になっただろう。

 ついに、コードトーカーは口を割った。

 

「……放射線だ」

 

 放射線で生殖細胞を焼き、寄生虫の子種を絶つ。

 コードトーカーのアイデアは、生殖細胞が体細胞よりも放射線の感受性が高いことを利用するものだった。

 さしもの声帯虫も、繁殖できなければ幼虫が肺を食い尽くすことはないし感染が拡がることもない。

 

「放射線、そうか。やはり放射線か」

 

 スカルフェイスも合点がいった様子だった。

 “放射線で生殖細胞を焼く”というアイデア自体は、決して斬新なものではない。

 今から30年以上も前にその方法論が発案され、そして1955年には、害虫を駆除する為の不妊虫放飼として実用化されている。

 しかし、それはとてつもなく危険な賭けでもあった。

 

「検証はしていない。突然変異の行方ははかりしれん。宿主への影響も、ましてや感染後に行なうなど何が起きるか……!」

 

 放射線によって捻じ曲げられた生物の形質や変化が、果たしてどのような方向性に進むのか、今の科学ではまったくもって未知の領域だった。

 上述の不妊虫放飼も、無数の検証実験と研究によって、やっと編み出された手法だ。

 ましてや、既に人間の体内に入り込む術を覚えている声帯虫を、予測不可能な手段で改造しようとするなど危険すぎる。

 たしかに、ハリウッドのモンスター映画のような変化はないかもしれない。しかし、新たな疫病を創り出してしまう可能性は充分に有り得る。

 

 コードトーカーは警告するが、聞きたいことを聞きだすことが出来たスカルフェイスは、もはや用済みとばかりにコードトーカーに背を向けて歩き出していた。

 使うべきなのは放射線、それだけわかれば検証はあとからいくらでも出来る。

 

「コードトーカー、あなたはわたしの命の恩人でもある。幾度となく焼かれたわたしの身体が保たれているのは、あなたの長年の研究がもたらした“こどもら”のおかげ。だからこそ、わたしはあなたを信じている」

 

 そう答えたスカルフェイスに、コードトーカーは言った。

 

「ならば、わたしの過ちを継ぐな」

 

「過ち?」

 

 部屋を出ようとしたスカルフェイスが立ち止まり、ちらとコードトーカーを見やる。

 

「西洋では ことばは 肉となり我々の間へと宿った。東洋では血肉たるヒトが、ことばに霊力をもたらす」

 

 かつてはヒトも、この声帯虫が、福音をもたらすことを知っていたのだ。

 そして、ことばを弄ぶ行為がどのような災厄をもたらすかということも。

 声帯虫を蘇らせてしまったコードトーカーや賢者達の過ちを、スカルフェイスが継ごうとしている。

 世界に降りかかる災厄を止めなければならない。

 

「ヒトが触れてよいものではない、触れてはならんのだ!」

 

「ふむ、ありがとう。憶えておこう」

 

 コードトーカーの警告を聞き流しながら、スカルフェイスが扉を開けた。

 外光が差し込み、薄暗い屋内が一気に明るくなる。

 明るい光に慣れてきて、外の光景を見たコードトーカーは目を見開いた。

 

「……おらん、兵士などおらん!?」

 

 スカルフェイスの言っていた『外の兵士』など、扉の外のどこにも見当たらなかった。ならば、スカルフェイスは一体誰にベルの音を聞かせていたのか。

 

「おやあ。どこかへ行ってしまったか。わたしが思っていたほど、従順ではなかったな」

 

 驚愕するコードトーカーの反応に、とぼけるかのようにスカルフェイスは周囲を見回した。

 もちろん、CIPHERの命令に逆らえる兵士などいるわけがない。

 それに冷静になって考えれば、声帯虫の英語株などという危険な代物をこんなに都合よく大量に用意できるはずもなかった。

 コードトーカーはまたしても、スカルフェイスに弄ばれたのだ。

 

「コードトーカーよ。これで本当の別れだ。では」

 

「貴様……貴様ぁぁぁ!!」

 

 屈辱と怒りで絶叫するコードトーカーを、スカルフェイスは振り返りもしなかった。

 

 

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