海東さんに先導されて王都に入ること数分。僕は王都の街並みに感動していた。
中世ヨーロッパのような、けれど美しさと機能性が両立したかのような街並み、石畳の道路、賑わう屋台と行き交う人々。チェコだのプラハだのと例に挙げられる様に、小説やアニメで見たことある...!と再び異世界に来た事実を感動として実感し、受け止める。
一人でに感動していたら、海東さんが裏道に入っていって、ついてこいと言っている。家と家の間の暗い裏道を抜け、入り組んだ道を海東さんについて行く。
門から王都の中心、王家達が住む城まで続くメインストリートから裏道を抜けて再び別の大通りに案内された先には、多くの人の通りが見られた。
その人混みの中には、
なんと、なんと!エルフやドワーフ、猫耳までいるのだ!まぁ僕自身もそのエルフらしきものになってしまったようだが。後なんだろう、ちょいちょい全身真っ白な僕が珍しいのか、所々から視線を感じるが、まぁ気にしなくて良いだろう。
「ここは王都で一番賑わっている露店通りだ。質の良いものから、タチの悪いものまで売っている。時たまお宝に巡り合えたりするね。」
独自の言語で描かれているのに読める文字と、それの名を指しているのだろう、並んでいる商品を見る。どうやら商品の名前もある程度前世と変わりは無いようだ。
特に食べ物や道具などは、転生者の影響をモロに受けているのだろうことが分かった。
リンゴやオレンジなど、ぱっと見馴染み深い果物から、赤い外皮と薄い緑色の果肉を持った甘い果実(聞いてみた所、ルイーズという果実らしい)、など違う世界であることを実感させてくれるものまであった。
他にも露店で、魔石と呼ばれる宝石のような物も売られているのを見た。
地面にひかれているいるシートの上に、綺麗な宝石みたいな色とりどりの魔石が並んでいるのを、しゃがみ込んで覗き込む。
「ああ、魔石が気になるのかい?先ほどの車も熱心に見ていたし。良いだろう、試しに一つ買ってあげよう。」
海東さんがしゃがみ込み、青色に光る魔石を一つ選ぶ。店員さんにお金を払って魔石を購入した海東さんは、僕に魔石とは何かを説明してくれた。
「良いかい?マーリン君。この世界にある魔石とは、つまるところ様々なエネルギーに変換できる電池のようなものだ。」
海東さんは、僕に魔石を見せながら、(そして露店から離れながら)こうも続ける。
このように色の付いている魔石は、それぞれ別々のエネルギーへと変換出来るのだと。物を冷やしたり、火力発電のように燃やしたり、風を起こす事が出来るのだと。
「なんともまぁ、リーズナブルで都合が良くて、環境にも優しいモノなんだろうね。これも神様が人と近い故かな。」
と、海東さんは冗談めかして言う。
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先ほどから人混みに紛れて露店を海東さんと観光していて気付いたことがある。
——自分が美人すぎる。
エルフや獣人達にも美人が沢山いた。色白で、鼻が高くて目鼻が整ってて、煽情的な衣装を着ている人もいたが。もう一度言う、
——自分が美人すぎる。
一眼見ただけだが、自分が人知を超えた美しさを持っているのが分かる。前世の自分も、もし会っていたら一生忘れられないであろう。
門から王都に入った時点で、海東さんに言われて服に付いていた被り?をしていて良かったと思う。よくよく思い出してみれば、受付に入る前も視線がガンガン来ていたような....?こんなに賑わう人混みだ、もっと騒ぎになっていたことだろう。海東さん様々だ。
まさか自分の容姿が理由で悩む事になろうとは。美人なのも考えものだなぁ。.....性別の事もあるし、悩み事が増えてしまった。
でもまあ、今はこの露店を楽しもう。
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普通の宝石店や屋台のラーメン屋?や、武器屋などを海東さんと見て回って数時間。海東さんがこんなことを言い出した。
「マーリン君、君もそろそろ歩き疲れただろう?オススメのカフェを教えてあげよう。ついてきたまえ。」
そう言った海東さんにつれられて、またまた裏路地を抜けて僕らは小綺麗なカフェに入った。
僕達が今いるのはカフェ「ナシタ」、海東さん一推しの喫茶店らしい。マスターの作るコーヒーが美味しくて気に入ってるんだとか。
落ち着いた雰囲気の店内、明るい太陽の光が差し込み、ゆっくりと寛げる感じがする。お客さんは僕達だけってわけじゃなくて、中々繁盛しているようだ。洋風な装飾の店内と、渋くてカッコいいマスターが良い雰囲気を作っている。あっ、投げキッスしてきた。
少々店内は騒がしいが、声が届かないってほどでも無い。ひとまず僕は、マスターに入れてもらったコーヒーを口にする。あっ、美味しい。
僕がコーヒーのカップを置くのを見てから、海東さんが話を切り出す。
「まあひとまず、必要なものが買えるところは紹介したつもりだよ。あとは泊まれる所や、働く場所だね。まぁ、無理にとは言わないが、しごとは紹介するだけタダだろう。君はこの世界で知らない事が多過ぎるからね。」
「はい、本当にありがとうございます。何から何まで。本当に」
「いや、良いんだ。先輩転生者として後進にアドバイスするのは当然のことさ。君は少々特殊だからね。」
「性別の事ですか?」
「それもあるがね。転生者と現地人で色々あって、一時期転生者が送り込まれる事が無くなった。いざ再開した、っていう時の初めての転生者が君さ。気にかけるのも無理は無いってものだね。」
そう言って海東さんはコーヒーを一口、口に含んで再び話す。
「僕らはこの世界で第二の生を得て生き返った。前世で何があっただろうと、ここでは関係は無いさ。姿形だって以前とは全く違う者もいる、君のようにね。」
「兎にも角にも、皆ここが心地良いってことさ。それを壊されたく無いんだ。」
その言葉には実感が篭っていて、心からそう思っているんだろう、と感じた。
「ま、君は性別が変っちゃってるし。悩んでるんだろう?そのことでさ。」
....気づかれちゃってたか。
「君はその容姿や性別でこれから苦労していくだろうけど、焦る事はない。まだ先は長いんだ、ゆっくり前へ進んでいけば良いさ。」
色々と海東さんの話を聞いて、心が軽くなった気がする。自覚してなかったけど、僕が思っていたより、性転換は僕にこたえたのかもしれない。
「ここには先輩転生者もいる、頼りになる人もいる。どんどん頼ってくれ。」
「自分探しの旅とかもオススメだね、僕としては。通りすがりの某って名乗ってさ。」
プーリンちゃんは適性があったので性転換したわけですが、それをはいそうですかとすんなり受け止められるものでも無い。作者としては早いとこデレデレして欲しいのですが、性転換してメス堕ちした経験がないのでどうやって書いたものかと悩んでいます。
小説家は体験したことしか書けないってそれ一番言われてるからな。