「ウッ....ココァ....」
海東が身を捻ろうとし、しかし身体が縛られているため出来ない様子を見ながら、プーリンが問いかける
「貴方は、誰ですか....?」
「僕....?僕は、海東さ.....。やぁ、プーリン君....いてて...頭が痛いし、記憶が曖昧なんだが、何がどうなっているんだ、これは....」
そう答える海東は、プーリンに銃を向けていた時の刺々しい雰囲気は無く、まるで別人のようであった。
「人格が、戻っている....?性格が変わったと言うべきか?それとも本当に....?」
照井が海東の様子を見ながら考え巡らす。今の海東は、自分達が対峙したその時とは違い、穏やかなのである。頭に強い衝撃が加えられた事による回復なのか、一度倒されると元に戻るのか、それともそれ以外の要因が.....
「海東さん、貴方は街中で突如として暴れ出し、負傷者を生み出しました。貴方の身に何があったのかは置いておいて、ひとまず警備本部までの御同行を願います。」
アリーゼが海東へ、これからの処遇などの話をしていた
ここで一つ余談ではあるが、転生者には優遇措置がなされている。街中での買い物のの割引や、優待券、優先的予約などもあるが、中には法律の罰則緩和なども含まれており、これは異世界の人々から不満の声が挙げられている。
「すまない...何も覚えていないけれど、何かしてしまったのなら、その罪を償おう。」
「それに、貴女。貴女にも被害者の1人として、御同行願えますか?」
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プーリン達は、照井達に連れられて警備本部と呼ばれる場所まで運ばれた。白いレンガで作られた、一見無機質に見えるが古めかしくも威厳を感じさせる建物であった。その建物は王都において中心部である王城、その側に位置している。付近には物々しい雰囲気が蔓延しており、黒い軍服のようなものを着た人々が忙しそうに出入りしていた。
その建物の中に案内されたプーリンは、一通りの事情説明などをした後は解放され、自由にされた。
照井もアリーゼも仕事や後始末の処理があるからといなくなってしまったし、海東は何処ぞの尋問室に連れられてしまった。
プーリン、この時異世界に来て初めて感じる孤独感であった。
1人ぽつんと取り残される事になったプーリン。
辺りから様々な声が聴こえてくる。
「アンタガ、アンタガワルインダヨ!....」
「この辺にぃ、うまいラーメン屋の....」
「(首の折れる音)....」
「ーーだから売りに戻る必要があったん....」
「夜は焼き....」
飛ばされてから今さっきまで海東さんが居たし、などと考えながら待合室のような所にあった長椅子に座りながら、考え事をする。周りから不思議なものや珍しいものを見る目で見られていたが、
孤独感に苛まれるプーリンは気付かなかった。
およそ15分ほどして、彼女に掛けられる声。
「やぁ、君。どうかしたの?迷子かな?」
「あっ、すいません.....何でもないです。....大丈夫です。はい....」
実の所プーリンは何でもなくは無く、とてつもないピンチである。時刻は現代に換算しておよそ14時程。泊まる宿も予約してないし、手引きしてくれたはずであろう海東は連れて行かれてしまった。
照井やアリーゼ、桐生戦兎や万丈達は何処にいるのか分からないし、転生者じゃない人にしろ現地人に知り合いはいない。
なんなら予約できたとしても金はなく、地理的な土地勘もない。詰みであった。プランD、いわゆるピンチである。
「急に話しかけてごめんね、さっきから悩んでたみたいだから、心配になっちゃって。」
その人物はあっけらかんとした態度でプーリンに話し続けた。
「実は何の下心もなく話しかけた訳でもないんだよね、お呼ばれしちゃってさ。Fate作品系列の女の子っぽい子が転生して来たから、相手してお世話してあげてって言われたんだ。」
「俺の名前は立香。藤丸立香だよ」
おかしい....脳内プロットではそろそろイチャイチャメス堕ちラブコメ展開していた筈なのに。