初邂逅はともかく、プーリンは藤丸と出逢い、様々な話をした。死んだこと、神様のご好意で転生したこと。海東のこと。
藤丸はあまり他人と会話をすることが得意ではないプーリンのたどたどしい話し口も、嫌な顔一つせず優しく、たまに相槌を挟みながら聞いていた。
そうして自身の今までのことをまとめてみて、改めてプーリンは自身のアイデンティティについて考えた。
この身はかつての前世における自身のものではない。プロト・マーリンと呼ばれる他の世界の住人の身体を受け、転生したことは、彼女の心のどこかに引っかかっていた。
「....この世界に来て、考えてたんです、ボク。自分は何がしたいんだろうって。テンプレみたいに転生して、今ここにいますけど。....本当は死んでた方が良かったんじゃないかって。」
突如として死に、現代に生きる希望や将来の目標をもてていなかったまま死んだプーリンは、異世界でもうだつの上がらない生活をしなくてはならないのかと考えた。
「そういうネガティブなのは良くないなぁ。俺が転生してきた時なんて、生きててラッキー、くらいの感覚だったよ。転生仲間もいたしね。」
「それはちょっと軽すぎじゃぁないですか....」
「いやいや、大事だよ。宝くじに当たった、くらいの感覚でさ。目標なんて、今日明日みつかるものじゃないんだから、気楽にいこうよ。」
藤丸は、プーリンがここまで思い悩んでいるのは、単に彼女自身の性格にあるのではないか、と感じた
「それに、海東さんがおかしくなったのも自分のせいかもしれないし....海東さんが暴れた時も、動けなかったし....変わるなんておおみえきっといてやっぱりボクは....」
「うーん、ジメジメしてるなぁ。」
藤丸はあはは、と苦笑いを浮かべながら、プーリンの独白を聞き流した。
「まあ兎も角さ、海東も言ってたと思うけど。彼はそう言う人だったしね。
....僕達先輩転生者が相談に乗るから、どうしても思い悩んだら言ってよ。」
こう見えて、人生経験豊富なんだぜ?と、胸を張ってドヤ顔を浮かべる藤丸。心なしか気軽な言葉の裏には暗く重く苦い経験談があるような気がしたが、深くは聴かないようにした。
しかし、プーリンはそんな軽い調子の藤丸を見て、少しだけ笑みを浮かべた。
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そんな他愛も無い話をしている2人。そこに二つの足音が近づいてきた。
プーリン達はその音に気付き、そちらに振り返ると、見知った顔が見えた。
マゼンタの男....門矢士と、海東大樹だ。
まず海東が前に進み出でて、プーリンに向き合った。
「やぁ、久しぶりだね、マーリン君.......改めて、先程はすまなかった。」
海東が重い口調で口を開く。
「いや、そんな....ボクは大丈夫でしたし、海東さんは正気じゃありませんでしたから。気にしなくて良いんですよ。」
「そう言ってもらえると助かるよ......そうだ、その事で話が『その話は俺から説明する』....本当に僕の話を遮るのが好きだね、士。」
2人の間に柔らかい雰囲気が戻り、安堵も束の間。門矢士が口を開いた。
「まずは初めまして、とでも言っておこうか。俺の名前は門矢士。通りすがりの仮面ライダー....世界の破壊者、とも言われる、仮面ライダーディケイド。の、力を持ったただの転生者だ。覚えておけ。」
「は、はい。ボク....私はプロト・マーリン、だそうです。まだ実感は湧きませんが、そう、らしいです。」
「そっちの藤丸と、海東は昔馴染みだから紹介は必要ない。」
最後の辺りに感じる何か決め台詞のような強い語気に少し圧倒されながらも、なんとかプーリンは返事をした。しかしこの男が自身のところへ来た理由。やはり例の件だろう。
「まあ、想像はついてるだろうが。俺が今回来たのは、お前の様子を見る為だ。海東がおかしくなった理由がお前にあると見て、お前に接触したのさ。」
やっぱり、とプーリンは思った。彼も自分が怪しいと思ったのだろう。海東がおかしくなる直前まで一緒にいたのが、転生したてで転生特典の扱いもなっちゃいない、精神的にまともかどうかも分からない奴なのだから当たり前だ。
「お前は今非常に危うい。力の扱い方も分からない。どんな能力があるのかも分からない。本人すら把握出来ていないんだから、俺たちは尚更だ。」
門矢士はスマホを取り出して、こちらに黒い画面を向ける
「ネットじゃあ、危険因子は早めに刈り取っちまおうなんていう奴も一部いた。」
「ッ」
「なんだって!?」
「....」
門矢士以外の三者三様の反応が返ってくる。
プーリンは驚愕に言葉も発せず
海東はそんな話聞いちゃいないぞと声を荒げ
藤丸は知っていた様子で事態を見守った
「そう声を荒げるな。そんな過激なことを言う連中はほんの一部だ。
前回のことがあって、現地民との軋轢が起こった。多少の不利益も被った奴もいたし、そうでなくとも居心地が悪いってのは良いもんじゃ無い。転生者は目立つからな。一目で分かる。ピリピリしてるわけだ。」
門矢士は飄々とした様子で、しかし目線だけは強く、そして疑いの冷酷な目線はしっかりとプーリンを見据えていた。
プーリンはそこまで事態が深刻化しているとは思わなかった。というより、情報の伝達が早すぎた。
「ボクはどうすれば良いですか...?」
「取り敢えず、俺と来てもらうぞ。」
「もろもろの検査を受けて、原因を突き止める。お前に何の罪もないと分かったら、晴れて無罪放免だ。お前も俺も、こんな面倒なことは一度だけで良いんでな。」
そんな事を言った門矢士は、背後に銀のオーロラカーテンのようなものを出現させた。
「こんなタクシーみたいな扱いは、二度とごめんだ」
海東、藤丸を含む4人が銀のオーロラに飲み込まれ、警備本部のとある待合室は、再び静寂に包まれた。
僕が好きなクロスオーバー作品は主人公のス氏が色んな世界行きながら掲示板に愚痴書き込むやつと、偽ブラックジャックの主人公がいろんなクロスオーバー世界を渡り歩いて本物のブラックジャックと勘違いされてしまうやつです。あの人達の小説は、この小説の原典(師匠)と言っても良いです。
あの時の僕は、あの魅力的な世界を表現するのがこれほどまで難しいとは思わなかった。