銀色のカーテンに包まれたプーリン達は、すぐに視界を取り戻した。
そこを一言で表すなら荒れた研究室といったところだろうか。
怪しげな、なんのどのようなことを意味しているのかすら分からない文字列を表示しているモニター。青白い光を発光する筒状の水槽と、中に入っている謎の怪物。その他謎の管が繋がれた電子機器や実験器具、試験管が見られる。おおよそ研究室という言葉を当て嵌めるのが正しかった。
また、地面には何かしらが書かれた紙の束や、開かれたままで跡のついてしまった本などが転がっていた。
暗くて周りは良く見えないが、人がいたという痕跡だけが残された場所だった。
「全く、呼び出しておいて良いご身分だな。」
士はため息を含みながらそう呟くと、プーリンに振り返った。
「まあ良い。お前、マーリンと言ったか。しばらくはここで暮らすことになるだろう、この施設の説明をしておく。
この施設は転生者に開かれてる研究施設でな。まあ色々利権が絡んでるが、そこら辺の難しいことは後から説明する。」
暗い部屋の中、勝手知ったると言わんばかりに士は部屋の出入り口の扉を開け、外に出た。
「3階建てに、地下もある。ここは地下3階の知り合いの研究室なんだが、今は外出してるようだ。お前の部屋に案内する、ついて来い。」
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1階は受付、2階は飲食や遊戯、共同スペース、3階は住人の部屋、地下は研究施設。
「あとここは王都の中央部の東側にある。周りにはコンビニやら雑貨屋やら、アニメ○トだのなんだの、転生者が好き勝手に開いた店があるから、暇つぶしには困らないだろう。お前が外に出れるならの話だがな」
士は自室への道すがら、施設について色々と説明してくれた。あそこの店のケーキが美味いだの、ナマコを食わせてくるだの
海東達も連れ添って歩いたので、非常に目立った気がするが、事件の連続で疲労困憊だったプーリンは気付かなかった。
地下からエレベーターで上がっていけばすぐに部屋に行けるのだが、施設の説明も行っていた為に時間が掛かった。
自室に案内される頃には半ば眠っていたような状態であり、杖と藤丸に支えられながら部屋のベッドに寝かされた。
プーリンは藤丸に声とも取れない声で藤丸達に礼を述べながら意識が暗転していくのだった。
そうしてプーリンの転生初日は、波乱に包まれながら終了した。
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部屋にプーリンを寝かしつけた門矢士、海東大樹、藤丸立香の3人は2階の飲食スペースに来ていた。
「話を聞くのは明日になってからだ。奴としては一刻も早く究明したいだろうが、間が悪い。」
「随分優しいじゃないか、士?」
「馬鹿言え、お前と違って俺達は何の影響も無かった。ならそう急くこともないだろう」
そう話している3人に近付いてくる足音。何処か軽い足取りで、スキップでもしてるんじゃあないかと思うほど軽い。
その人物が話しかけてくる。
「やあやあご友人方!探したよ。
遅くなってすまない、調べ物と知人への連絡をしていたんだ。例の彼女は何処に?」
いうのであれば、モナ・リザ。イタリアの美術家、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた、世界でもっとも知られる美女の絵画。そこに描かれた彼女が、そのまま出てきたような女性だった。
「ダヴィンチちゃん!久しぶりー!」
「やあやあ、久しぶりだねぇ藤丸くん。頼光ママの騒ぎ以来かなー」
藤丸が彼女の名を呼び、喜びを全身で伝えながら彼女を受け入れる。
彼女の名前はレオナルド・ダ・ヴィンチ。この研究施設における、実質的な所長と言っても良い人物であった。