硝煙と高校受験
武偵――それは武装探偵の略である。
凶悪犯罪の増加に伴い武装した彼らは警察に準じた逮捕検を有し、武偵法の許す限り権利を行使できる犯罪捜査のスペシャリスト。
なるほど字面だけ見れば立派なものだ。
9mmの鉛弾が飛びかう現場はさぞ命の尊さを自分に教えてくれるだろう。平和な日本で生きる一般ピーポーな俺には関係の無いお話。
だから……な?
目の前のキザなお兄さんよ、落ちつこうぜ。人類には言語という素敵なコミュニケーション手段があるんだ。
争いはなにも産まない。ナイチンゲールはマジリスペクトっす。
「だから降参するって! ほらほら、拳銃落としちゃうよ! 両手でバンザイしちゃうよ!」
「油断を誘おうという作戦は通じない。隙だらけで教官を倒す手腕を見ていたからな……アンタは間違いなく、この試験で最強の相手だ」
「だーかーらーッ!」
前世のお母さんお父さん……俺、なにか悪いことしたでしょうか?
保育園のとき大好きな女の子のスカート覗きをやりまくったら保育士のお姉さんに怒られたせいですか。
小学校のとき、小鳥と無邪気に戯れそうな美幼女ちゃんのパンツをダイレクトタッチしたせいですか。
中学校のとき、修学旅行で悪ふざけで風呂場覗きやろうとして先生に朝まで正座をさせられたせいですか。
でも高校では反省して写真部でチア部やテニス部のスコートの鉄壁ガードを追いかけただけなんですけど。
そんなことを思いながら俺はいままでのことを思い出していた――
中学三年の冬。
受験シーズンだといろいろ思考にふけってしまうのは人の性だと思う。
隣を歩いていた友人たちがバスに乗り、
「じゃあな、大石。またあしたー」
「ケイ、良かったら一緒の高校来いよ! お前なら一番バッターにぴったりだからな」
「あぁ、まあ考えとくわ」
手を振って別れた。
彼らはこれから塾があるからだ。俺はある理由から成績面では余裕なもんだ。
もちろん予習復習は欠かしたことはない。天狗になれるほど頭がいいわけじゃないから。
ただ子供は暗記力、大人は理解力に優れるという。歴史とかの暗記科目さえ気を付ければ、問題はなかった。
少々ズルをしている気がして申し訳ない気持ちを抱きつつも家路へと向かっていた。
寒さに身を縮込ませて考えるのは生前のこと。
俺は前世の記憶がある。少々エッチな面は以外は至って普通の自衛隊員として生きてきた。
まあそれはいい――わけじゃないんだけど……どう足掻いても事実は変わらない。
死因はおそらく事故死。だけど次に目を覚ました途端赤ん坊だった。
意味がわからない。
「輪廻転生かあ。熱心な仏教徒じゃないけど……でも拾った命。今度こそカメラマンになってみせる! 親父と、約束したしな……」
ぱらぱらと白く冷たいボタ雪が降りしきるなか俺は拳を握る。
戦場カメラマンだった父。だが紛争地帯で反政府組織と間違われて射殺され、送られてきたのは細かい道具以外には、父の日記とヒビの入ったカメラだけ。
日記には俺と一緒に世界の歴史を残したいという旨が書かれていた。まあ、結局エロばかりでカメラマンにはなれなかったわけだが。
いやあれだ。悩むくらいなら女の子のぱん……もとい素敵な風景写真を撮ろう!
もちろん父との約束は忘れてはいないぞ。ただ俺の興味がそっち方面なだけで。芸術的な撮影はどうしてもセンスがいる。才能凡人クラスな俺じゃ厳しい。でも別の道もある。
もう一度夢を追おうではないか。カメラマンとしての夢を。戦場カメラマンじゃなくて普通のだが。この
「よし、受験シーズンで控えていたがちょっくらコンビニでカメラ雑誌でも買っていくか!」
後に思えば、これこそ運命の岐路だったのかもしれない。
観察眼は無駄にある俺は
コンビニのドアをくぐり、雑誌コーナーへと行く。そこでカメラ関係の雑誌を探している途中に気になる言葉を見つけた。
学校、受験、高校。
どうやら受験シーズンということもあって高校の特集をやっているようだ。
その表紙に踊る文字は、
『君も武偵になろう! 犯人逮捕のスペシャリスト養成所――東京武偵高校特集記事』
武偵……武偵か。って武偵ってなんだよ。武装した探偵? 平和な日本でなんでそんな危なっかしい職業あんの!?
いやいや探偵ってあれだろ。推理とか……でもないな。もっぱら浮気調査とか本当に地味な仕事で真実はいつも一つ(キリッ!)なんて空想の産物だ。
クヌルプとかシュプールとかいう山奥のペンションに孤立する羽目にでもならない限り、推理なんてするものじゃない。
同じ日本じゃなかったのか?
どうにも判らない。
「……うん、見なかったことにしよう。あれだ、俺、荒事苦手だし」
よく判らないがこれ以上見ていると危険な気がする。
カメラマン的第六感というか、これでも危機回避能力はあるつもりだ。
ただ目を離せない。ペラペラと適当にめくると銃の説明を見つけてしまったからだ。
前世は自衛隊だったんで見覚えのある銃を見るとちょっと嬉しくなってしまう。
俺もまだガキだなぁ……。
「うお、シグか!? そういや射撃検定のときに撃たせてもらったんだよな……」
「ちょっとお客さん」
「ロクヨン(64式小銃)は……さすがにねえか。アレはジャムりの常習犯だしな。突撃銃っつーより狙撃ライフルって感じだし」
「お客さん!」
「おわぁ!?」
「立ち読みするにしても一時間以上してるんだけど?」
「す、すいません!」
やば、どうもハッキリモノを言うタイプの人だった。つかヤクザじゃねえの!?
強面すぎんだろ!?
ど、どうしっかな、買おうか買うまいか……でも、これは手に取ると後に引けなくなる気が――
「……嫌な予感がするしやーめよ…………げぇ」
やんば!?
折り目が盛大についちまった! ぐちゃってしちゃった!
おそるおそる店員を見ると、
「買いますよね?(にこり)」
「……はい」
これって脅迫罪とかならないんでしょうか……ちくしょー。
……だがまあ、冬休みまでそう遠くない。それが終わればもう受験目前だ。決して損にはならないだろう。
高校生活は一生の思い出。
体育祭でハッスルしすぎた三年が閉会の言葉を言っていた校長をひきずり降ろして校歌を斉唱したり(そのあと浜辺で酒盛りして警察に補導された)、修学旅行で生八ツ橋が変な味するなと馬鹿笑いしながら食べたり(半分食べたおみやげを渡してあとで怒られた)とか面白いこと一杯だ。
そんな面白おかしい体験をもう一度できるのだ。これほど嬉しいことはない。
俺は雑誌を買って家路へと向かったのだった――
俺が家に帰ると出迎えるのは古い道場。戦後直ぐに建てたらしい。祖父が経営していて週三回、子供たちを相手に剣術を教えている。
そう剣術だ。剣道ではないらしい。流派は良く知らない。
刀とかは浪漫を感じるけど振りまわすのに興味はないからだ。
「け~い!! 帰ったようじゃな!!」
「ただいまじーさん」
「早速、突きと素振りを始めるぞ!」
「はいはいちょっと待ってくれって。着替えたいから」
白髪にちょび髭。なのに筋骨隆々の元気過ぎる老人――
内弁慶の外仏で身内にはやたら厳しい人なのだが……。
ある時から気にいられてしまった。日本男児たるもの武道に通じべきと朝夕と稽古させられている。
剣と、あと槍も。槍はともかく剣は突きを重視する変わったスタイルで実践的ではある。俺としてはカメラ片手に夕陽でも撮りたいのだが……。
(断っても無理やり連れ戻されるからな~。さっさと終えてるか。今日は子供たちもいるし、素振り&突き練習だけで終わるだろうし)
真っ白な胴着に着替えようとしたとき。
がさり。
「……ん? その袋はなんじゃ」
「これ? 高校の特集だよ。俺も中学三年だし、いろいろ考えたいんだ」
「ほうほうほう、そういってエロ本でも買ってきたのではないかぁ? そしたら儂がかつよ……じゃなくて没収するぞ」
「エロじじい、本音が垂れまくってんぞ!」
への字にしてエロそうな目つきしやがって!
普段は真面目な癖に――って。
「あれ本がねえ!?」
「……これは――」
「勝手に読むなよじーさん!」
ひったくるように取り返し、祖父の顔を見ると何故か険しい表情。
訝しみながらも、とりあえずさっさと素振りを終わらそうと自室に戻ろうとして呼びとめられた。
「啓」
「なんだよ」
「高校は……どこにするか決めたのかの?」
「まだだけど。あー大丈夫。あんま金銭面で負担にならないようにするからさ。近場で済ますつもりだから」
両親はいない。
どちらとも航空機の事故で亡くなってしまったからだ。正直、あのときは泣いた。
前世でも父を早くに亡くしていたが、今生でも同じ目にあうとは思わないだろう。
それ以来、父方の祖父の家にお世話になっている身だった。
だから、まあ、俺なりの気遣いというか……とにかく負担は少ない方がいいってやつだ!
俺の言葉をどう受け取ったのか祖父がとんでもないことを言い出した。
「……そうか。啓、今日は稽古はせんでええ。ゆっくり休みなさい」
「え、えぇぇぇ!? じーさんなんで――」
「たまにはええじゃろう。今日は子供たちの稽古も休みにする。そうじゃな……久しぶりに寿司でも行こう。知り合いにとびっきり旨いネタを仕入れる奴がおるからの」
「寿司!? いくいくっ、何時にいくの!?」
「そうじゃな――」
稽古を休むなど盆や正月、あとは両親の命日以外まずない。
だが俺は気にしていなかった。
寿司に吊られてすっかり忘れていたのだ。
祖父の発言の意図を。
回らない高級寿司店で舌鼓をうっているときも「受験する高校は任せなさい。儂の方でなんとかしよう」という祖父の言を受け入れてしまった。
元から祖父の金で通わせてもらうわけだし文句はない。
だが何処かは教えてもらえなかった。
「来るべき日に教える」
ただそれだけを繰り返して。
二月も過ぎて俺はイラついていた。
相手は当然祖父のこと。
いつまで経っても願書の申し込み先を教えない祖父にしびれを切らした俺は文句を言いに自室へと押しかけた。すると、
「じーさんいい加減にどこの高校なんだ――」
「来たか……往くぞ!」
「――え、えぇ~!?」
ぐいぐいと手を引かれ、車に放り込まれた。傍目からすれば誘拐の現場にも見えなくない。
そして運転席に座った祖父はエンジンをかけて運転し始める。
もうなにがなにやら判らない。
危ないのでシートベルトを付けつつ俺は訳を話せといわんばかりに祖父を睨む。
すると思い出話でもするかのように、いきなり語り出した。
「……お前が四年生のときじゃったな」
「は? なにが。それより何処向かって――」
「あのとき儂は天賦の才というものを見た」
きーてねー。
鈍感主人公ばりに全スルーしてやがるよ。耳鼻科でも紹介してやろうかおい!
「大体四年生っていつのことだよ。あのときは親父もお袋も生きてたし、夏休みに遊びにいったときしか……」
「お前が忘れても儂は忘れない。あのときの突きは素晴らしかった。鋼鉄の扉すら薄紙を破くがごとく……そう思わせる一撃。身も毛もよだつとはこのことじゃ。だからこそ惜しい……この才能を腐らせるのが」
「…………なにいって」
「のう啓よ。素直になって、いいんじゃぞ? たった2人しかいない家族。もっとお前はワガママになっていいんじゃ。だから儂は決めたのじゃ」
なんだろう……こう事後承諾撮影がバレで女子たちに追われているときの危機感というか、今すぐにでも逃げたい気持ちになってきたんだけど。
「儂と……そしてお主には偉大なお先祖様がおる。純な日ノ本のサムライの血筋――今一度、この乱れた世の中で振るってみい!」
「だからなんなんだって――」
「さあ着いたぞ! 東京武偵高校! お主が諦めようとした道じゃっ!」
「おい! まさか……そんな。俺はそのつもりなんてないって!」
「はっはっはっ! そう照れかくしなんぞせんでええ。雑誌に折り目までつけて行きたいという気持ちはちゃ~んと判っておる! 学費なら全額払う準備もあるからの。ほれ必要な書類は全て入っている。じゃあの……いってこい」
おい……まさかあれだけで行きたがってたと思ったのか!?
それと親指を人さし指と中指の間にさしこむのやめろっ。意味がちげぇ!
だが自分の中で盛り上がってしまったのかじーさんはまったく俺の言を聞き入れない。
無理やり孫への想いを断ち切る自分みたいな感じで車ごと帰っていきやがった!
「くっそ訳わかんねえ! 帰ったら文句いって……が!?」
いきなり頭部を襲う痛み。
背後に誰かがいる気配がする。振り向いてみると拳を握った、やたら柄の悪そうな女性がいた。
「おいそこの重役出勤したクソヤロウ。おどれ受験生やな」
「え、いや、まあそういうことになるのか……?」
「だったらさっさと来いや! 時間押してんだよ! いっぺん死ぬか?」
「は、はいぃ!?」
こっわ! 良く判らんけどめっちゃこっわ!
なんか逆らっちゃいけないオーラ出てるし。
不良って奴っすか。でもスーツ着てるし……まさか教師?
GTOとかで教師に憧れた御仁なのだろうか。
「
「わあった。オラこい受験生ぇ!
「う、うっす!」
「なんだちったぁ声だせんか。良しならさっさと銃を選べ。銃の選び方も試験の一部だからな」
「じゅ、銃!? それって銃刀法違反って奴じゃ……」
「お前ちゃんと受験内容調べたのかおい。実技試験は銃を使用するって書いてただろうが! 武偵は法律で銃器の使用が許可されてんだよ。無論、非殺傷の弾丸だし殺人はダメだがな。そこらは入ってから決めろ」
俺……一体どこの世界にいるのでしょうか……? ここアメリカかなにか? なんで周囲の人もなに当たり前のこといってんだって顔なの?
くそ、どの道この怖いやーさん風の試験官? っぽい人から逃げたら指詰めとかされそうでやだし、やるしかないのか。
でも銃って。
ズラリとならぶ銃、銃、銃の山。
全て拳銃なことから9mm弾限定なのかなと思いつつ、見ると見覚えのある拳銃があった。
「シグ……これなら大丈夫……か?」
触れたその拳銃はひやりと無機質な感触を返してきた。
『SIG SAUER P220』――日本では9mm拳銃の名称で親しまれている自衛隊の制式拳銃でもある。
片手に収まる気持ち小さめの日本人向けの作られた拳銃。自衛隊御用達とあって映画やアニメにもさりげに登場していることが多い。
スライド式で装弾数は9発、か。モノによって多少ばらつきがあるらしけど。
これなら扱えそうだ。
安全対策もちゃんとされているし。まあ、変な扱いをしてハンマー周りに衝撃を与えると暴発するらしいけど……そこは先生方がきっとなんとかしてくれるはず。
マガジンの抜かれた銃を見て扱いを予習する。
蘭豹先生はなぜか無言で見ていてやりにくいけどさ。
「ほお……(一般校のくせに随分手慣れてるやないか。マニアか? まあどーでもええか)
「あのなにか問題でも……?」
「いんや。……さあて良し全員拳銃は持ったな。一般中学出身の貴様らには動かない的を狙ってもらう。その後で適正を見て試験内容を決めるから、さっさ行けや! 武偵憲章第五条『行動に疾くあれ。先手必勝を旨とすべし』――既に試験は始まっているんやからな!」
わ、わ、わ。
全員走って行ってるし。やる気まんまんだなぁ。
「おどれ――」
「はい走ります!」
やばいやばい、睨まれてるし急がないと。でも逆に適当にやれば落ちるのかな。
東京武偵高校――どうも全体的に火薬臭い。
射撃訓練をしたときも似たような感じだ。俺はどうやって落ちればいいか考えつつ他の受験者の後についていったのだった。
「では撃て」
「っていきなりかよ!?」
「撃ち方は既に教えたやろが。それにちゃーんと教師が見張ってる」
的――人型のシルエットがぶら下げられている。刑事ドラマでよくあるあの的だ。
だが違和感を覚える。
どうも装飾が少ないというか。
「点数表示がない……?」
そうだ、的なのに何処に当てればいいか判らないんだよ。
あれ、中央を狙えばいいのだろうか。
不幸なことに俺の担当はあのふりょ、もとい蘭豹先生だった。
振り向いても、
「それも含めて試験や」
「ですよねー」
仕方ない。どうせ俺のような奴は落ちるだろうし、適当に中央を狙おう。
鼓膜を破らないために耳当てを付ける。右手は引き金を、左手は支えるように。
軽く肘を曲げて――
パンッパンッパンッ!
「…………」
他の受験者も同様に、装弾数限界まで撃ち尽くす。
同時に撃っているのでマシンガンでも乱射しているかのように炸薬の音が響きわたる。
耳当て越しでも衝撃を感じ、なにがなんだか分からなくなっていく。
気付いたときにはかちっかちっと弾もないのに引き金を引いていた。
「もう一度撃てや」
「え? はあ、判りました」
まずったのかなと思い的を見てみる。
肩と腕のギリギリの部分に穴2発。
あちゃあ……外れまくりだなぁ。いや逆に考えろ。これなら落ちるに違いない!
ポジティブポジティブ。
再度マガジンを装填し直す。
新たな的が、今度は俺を撃って見やがれ! と言わんばかりで出てきた。
人質にナイフを突き付けているじゃないか。右手にナイフを持ち、左半身は人質っぽい的で隠れている。
いや重要なのはそこじゃない。
小さい。犯人の上半身程度の身長しかない。しかもリボンを付けてる!
あれか、幼女を人質にとった凶悪犯だな。おのれ卑怯な……ッ!
「……これは当てちゃいけないな」
ちょっと気合を入れ直し撃つべし、撃つべし!
引き金を引き、腕、肩と衝撃が伝わる。
カランカランと弾丸が的に向かい、残った薬莢が地面に金属音を鳴らして落ちていく。
パン、カラン、パン、カラン……。
どうせならパン、ツー、パン、ツーならやる気10割増しなのに。…………はい、変態です、すいませんでした。
結果は、はい2発でした。
当たんねぇ……。また肩と腕に一発ずつ。
おじちゃん(助けるの)遅いよぉ、と言われてるようで……。
すまない、俺はダメだったよ……仕方ない、仕方ないんだ。落ちるためにはむしろいいんだ!
それを見ていた試験官の蘭豹先生は黙ってサラサラとファイルに書いていた。
そして全員が撃ち終わった後で筆記試験だという。
普通逆じゃないか?
まあテストなら余裕で落ちることはできる。
俺は怒られないよう皆のあとをついて行こうとしたが、それは叶わなかった。
肩を掴まれ動きを止められた。
「……え」
「おどれぁ、こっちこい」
「ちょ、ちょー!?」
まさか適当に撃っていたのがバレた!?
体育館裏でちょっとシバいたろとかそういうのですか!?
ごめんなさい不合格でいいんで痛いのとかはちょっと……。
内心戦々恐々としながら連れて行かれた先は、別の生徒たちが集う場所だった。
どうも廃ビルを想定した場所みたいだけど……。
「ここで別の試験を受けとけ」
「あの……なんでですか?」
「成績が成績だからなぁ……筆記ではお前の実力は測れん。実技だけで判断することにしたわ」
あれっすか。
余りにも悪過ぎだから頭もダメだろう、と。そんな理由だろうか。
下手に逆らっても脳みそ撃ち抜かれそうだし。
俺は黙って頷くと「ちょいと待っとけ」と言われて彼女はどっかに行ってしまった。
残りは受験生らしい人ばかり、なのだが。
「ふんふんふん! 体調は万全だな!」
「……拳銃のメンテは終わり、あとは……ぶつぶつ」
「……(ぎろ!)」
「ひっ……」
皆さん殺気だっておられませんか!?
ずっとスクワットをやっている筋肉だるまさん、片手で人の頭を潰しそう。
銃をバラしている人はその道のスペシャリストの雰囲気を醸し出している。
ピリピリしている御仁は俺を睨んでくるし。
待てよ……殺気だつ、俺、成績最低、劣等生。
そうか。そういうことか。
ここにいる人たちは受験ピンチ組なんだ!
つまりラスチャンに賭ける者の溜まり場、というわけだ。そりゃピリピリするわな。
なら俺見たいなやる気なし男はお呼びじゃない。
邪魔しないよう隅っこにいこう。
それに優男というか、うんぶっちゃけ彼女いそうなイケメンさんが御一人いる。
黙っていても息が詰まりそうだ。
ちょっとだけ、話してもいいかな?
手持ち無沙汰な俺は声をかけることにした。
「よ、ようアンタも受験者だよな」
「ああそうだよ。そっちはどこの武偵中?」
うおっ、今、歯をキラっとさせたぞ!
なにこと痛そうなイケメンさんは。でもまだとっつきやすそうなだけいいのだろうか。
「ぶ、武偵中? いや一般、かな。アキバちゅー」
「そうか、一般出身か。それは大変だな」
「ああ、ホントホント。あ、大石啓いうんだ、よろしくな」
「俺は
握手をする。
イケメンは爆発しろと言いたいが、ここまで突き抜けていると逆に清々しいな。
俺は試験官が来るまでに間、適当に話しをしていたのだった。