緋弾のアリア~裏方にいきたい男の物語~   作:蒼海空河

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ちょいオリ設定も込みです。


試験ー2

 武偵とは常に危険と隣りあわせの職業だ。

 小さくは猫探しから、大きくは国際指名手配の犯人を単身で追うことさえある。

 平和のため、日夜研鑽(けんさん)を積み、犯人逮捕に全力を尽くす。

 日本の平和もまた彼らの働きによるところが大きい。

 だからこそ評判は落としたくない。武偵は危険で学生でも命を落とすことはザラにある。でもそれは犯罪者とのやり取りならであって、安全なはずの試験で不幸な事故は極力避けたい。

 近藤教諭はその考えから大石啓という一般中学出身者の監視を申し出たのだった。

 本来なら優秀な成績を収めた、付属の武偵中出身者の能力の詳細を調べるために付くそれは安全というためについていたにすぎない。

 そして彼が見た大石という少年の評価は、

(凡庸……そして不用意だ。なぜ蘭豹先生は彼を推したかのか。理解に苦しむ)

 身長は175cmほどで中肉中背。一重の瞼は眠たそうに見える。

 室内をフラフラと歩く黒髪の少年はあまりにも隙だらけ。

 武偵という職業を目指す者として見ても才能の欠片もなかった。

 集中力に欠き、伏兵がいるかもしれない室内で隠れもしない。武器はホルスターに納めたままで挙句の果てに、手榴弾を手でいじる始末。

 ときおり響く轟音。

 武偵ならお馴染の戦いだ。しかし怯えた表情でやっと暗がりへと隠れた彼を見て、近藤は人知れず息を吐く。無論、その意味はあきれしかない。

 時間の無駄、と感じた。ビル内の各所には監視カメラが付いている。

 このような有様ならきっと蘭豹含め他の同僚たちも失格にするだろう。

 近藤はのんきに他の受験者が来ないかと思いながら監視の目を外した。それがどんな結果を生むかも知らずに。

 

 近藤は決して無能な武偵ではない。コツコツと実績を積み、経験に裏打ちされた堅実で隙の少ない戦い方。玄人好みの武偵である。

 Aランク武偵は伊達じゃない。その経験が彼を狂わせた。周囲の警戒を怠っていないはずの虚を突かれた。

 コツンと小石を蹴る音。

 振りかえるとそこに居たのは――無表情で立つ大石だった。

 

「――な、背後にいるだと!?(コイツはフロアの隅っこで隠れていたのではないのか!?)」

「あ」

 

 驚愕。狐に化かされたような、とは正にこのことだ。

 脳内で目まぐるしく情報が錯綜し、強引に解を導きだしていく。

 

 背後に男――大石啓だ。

 なぜここに。怯えていたのではないか――待て本当にそうなのか?

 大石啓はあの蘭豹が試験に捻じ込んできた――つまりなにかしら稀有な実力があった。

 しかし隙だらけだった――もしそれが釣りであったなら? 敵に目をごまかす陽動であったなら?

 つまり、

(弱者を装い、私の裏をかいたのか!? このAランク武偵である私の慢心を狙って……)

 全ては手の平の上だったのだ。

 

 

 

 だがこのまま終わるわけにはいかない。

 近藤は半ば無意識のうちに拳銃を抜き、構えようとする。

 当然、相手も反撃する。

 

「いっきなりっ! 銃向けんなや!」

「この……離せ!」

「銃口向けんなって親に教えられなかったんかよっ」

 

 お互い銃を掴みあっての乱戦模様。

 銃口に指を掛けた状態での押しあいで天井に向けて三発撃ってしまう。

 だが近藤は内心でにやりとした。

(私の油断を誘い、背後まで来たのは合格だ。しかし小石を蹴ってしまったのは不運だったな。このまま力づくで制圧させて貰うぞっ!)

 本来なら教諭を襲う受験生などいない。だがこの試験――途中から彼らの参戦も予定されていた。

 勘かそれとも別の考えからか、大石啓が教諭陣も敵であると判断したところまではいい。

 しかしこれまでだ――そう思いながら強引で抑えつけようとした近藤は第二の失策を犯す。

 不意に彼の力が弱まった。

 覆いかぶさる格好の近藤。

 彼は見た。少年の口元が孤を描くのを。目の錯覚かは判らない。

 だがこの窮地で緊張感が抜けた表情は――まるで勝利者の余裕と感じられた。

 その意図はすぐ判明する。

 ガンッッ!!

 後頭部を襲う衝撃。重たいコンクリートが床に音を立てて落ちる。

 背後にも敵がいたのか?

 踏んばろうとしたが、脳を激しく揺さぶられ意識を保てない。

 

「……ま……これ、ねら……って……――――!?」

「え、おいおいどうしたんだよ! ……石?」

 

 黒いカーテンが視界を覆っていく。

 最後に彼が見たのは自分を見下ろす少年の顔。

 敵を倒した高揚感がまったくない。

(……武偵の心構え……か。犯人にも……慈悲の念を、持つとはな…………)

 ……ただただ悲しそうな顔がとても印象的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 大石啓が近藤教諭を撃破した。

 そのときフロアには四人いた。

 一人は筋肉質な男。彼は漁夫の利を狙い、静かに啓へと足を運ぶ。結果は惨敗。

 自分の足もとに煙幕と閃光弾を使う豪快な作戦で敵を倒す。

 その様子を静かに見ていた遠山キンジは分析をしていた。

 注目すべきは敵の背後へ回った手腕。

 

「散歩道を歩くようなごく自然な動作。一般人と思って侮ると致命的だね……これは難敵だ。だが――」

 

 思考。彼の頭では人智を遥かに超えた速度で啓への対処法を導きだす。その時間、わずか0・5秒。

 

「彼我の距離約五〇m。敵を倒した直後の一撃。不用意に近づかない方がいいね」

 

 近づけば乱戦に持ちこまれる。ならば離れた距離から狙撃すればいい。

 心臓の鼓動は普段と変わらない。捕食者と化した彼に負けの未来は一切ない。

 東の風一m。湿度四〇%。五〇mの短距離なら外す道理はない。

 位置的にキンジは上の階。啓は下の階に近い場所にいた。

 薄闇の中、周囲の気配だけは気を付けつつキンジは機会(チャンス)が訪れるのを待つ。

 だが敵が来ることはないだろう。上の階の敵は全て倒したのだから。教諭も含め。

 

 キンジは天才だ。結果だけを鑑みれば。だがそこには秘密があった。

 HSS――ヒステリア・サヴァン・シンドローム。

 性的興奮をトリガーに思考力・判断力・反射神経などが通常の30倍になる奥の手ともいうべき能力。

 遠山金四郎の祖先である遠山キンジ。一族の者達は発動条件は違えどみな、HSSという稀有な才能で世の中の平和を護ってきた。

 ただキンジはこの能力が好きではない。むしろ嫌いだ。口調がキザったらしくなったり、女性のお願いは断れないという欠点で損な目にもあってきたからだ。

 今回も偶然再会した幼馴染のせいでHSSを発動してしまい、その状態で試験にのぞんだ。結果は上記の通り。

 どこかで頭を抱えたい気持ちを抱きつつ、HSSモードの彼はまったく気にしない。

 酒で気分が高揚しているときは恥ずかしいことができても、シラフになったらのたうち回ってしまうのと一緒。今はそのときではない。

 

「……動いたな」

 

 啓はやり取りを終え、階下へ向かおうとしていた。

 キンジは柱の横においてあった、穴のあいたドラム缶から静かに敵を狙う。

 彼からはまったく見えない絶好の位置。

 仕留められる!――引き金を引く正にその瞬間。

(こっちを見た!? 偶然? いや、適当に見て真っすぐこちらを見るわけない)

 確かに目があった。

 しかも拳銃を持った手をひらひらとさせて撃てるものなら撃ってみろ――そう言わんばかりの所業。

 余裕の表情。お前の企みなどお見通しなんだよ、と言わんばかり。

 啓を見たキンジは挑発とは別の意図があると考えた。

 

 ――やるなら来いよ。決着をつけようぜ?――

 

 笑う。大胆不敵な相手にキンジは心の中で盛大に笑った。

 面白い。

 

「やってやろうじゃないか」

 

 キンジは物影から出て彼のあとを追う。

 失格者の真横を過ぎる。

 助言なのか一言、

 

「強いぞ」

「上等だ」

 

 それだけのやり取り。彼も同じ中学出身か。

 そんなことを思いながら階下へと降りていく。

 

 出会いがしらの一撃だけは避けたい。

 念のため階段近くの柱で立ち止まったキンジ。

 話し声が聞こえてくる。

 遠くて詳細は判らないが女性のようだ。

(まいったね。レディーは傷付けたくないのだけど?)

 またちらりとキンジの方へ顔を向ける啓。

 何かの合図かと注視すると手をぐっぱーさせている。

 その意味のするところは、

(一般だと思っていたが、武偵用の手信号まで使えるとはな。『毒』…………なるほど。違反者か)

 一瞬、女生徒の周囲にキラキラ光る粒子を見つけた。毒粉をまいているのだろう。

 強烈なものじゃないのか啓は堪えている。

 試験は公平を期すために、道具の持ち込みは制限されている。まして毒は屋内で使うと大惨事になりかねない。

 HSSのキンジは見抜けたものの、試験官やモニター越しではまず判らないほど微細なもの。

 バレたら停学――最悪退学もあり得る違反。

 言葉に語らずとも判る。

 内密に処理しようと協力を申し出ているのだ。

(オーケー。おいたが過ぎるレディーには少々寝てもらおう)

 正確に狙いを定める。彼が偶然転びそうになったところに三発撃ちこむ。

 痣にならないよう細心の注意を払いながら。

 もう隠れる必要もない。

 キンジは姿を現す。

 

「お前は……キンジか」

「さっきぶりだな。はは……」

「なにがおかしい」

「だって敵同士なのに協力し合うってのがな。それに女生徒は基本傷つけないのが主義だから気絶だけさせるって案外難しいもんだ。毒なんて危ないものを使う子だ。助けるためなら仕方ない」

「……判らん」

 

 相変わらずの隙だらけ。

 だがキンジにはそれがポーズだと判っていた。

 

「降参だ、こーさん」

「ふ……その手は喰わないよ。兎のように振舞い、隠した獅子の牙で喰らう。一般であることを逆手にとった見事な策士だ」

「だから降参するって! ほらほら、拳銃落としちゃうよ! 両手でバンザイしちゃうよ!」

「油断を誘おうという作戦は通じない。隙だらけで教官を倒す手腕を見ていたからな……アンタは間違いなく、この試験で最強の相手だ」 

「だーかーらーッ!」

 

 どこかおかしい。なぜそこまでして降参をアピールするのか? 

 投げた拳銃が床を叩く瞬間に判った。

 バンッ!

 

「な――くぅ!? ……まさかそうくるとな」

「…………」

 

 下からすくいあげるような弾丸。

 たまたま拳銃に目をやったからこそ避けられた。

 銃口がこちらを向き、トリガーが衝撃で落ちる瞬間を見ていなけらば、いまごろ仰向けに天井を眺めていたことだろう。 

(投げた銃の暴発をここまでコントロールするなんて……やはりアンタは最高だ!)

 卑怯と罵る人もいるだろう。

 だが奇想天外な攻撃方法にキンジは賞賛を送る。

 HSSの彼でも読めない攻撃など兄の金一以外見たことなかったからだ。

 

「引き金を引かず、投げた拳銃の暴発で死角から撃つ、しかも正確に眉間を狙って、か。兄さんの不可視の銃撃(インヴィジビレ)と同系統の技術だな。さしずめ無意識の銃弾(アンコンビレ)。ますます油断ならない」

「やる気になったか。そうこなくちゃな!」

「ああ……やる気になったよ。手段は一つしかない」

 

 互いに銃を構えた。

 最終決戦。

 試験時間まで残り少ない。この一撃が全てを決める。

 

「そう、やることは一つすなわち――」

「逃げることだばっきゃろーーーー!!!!」

「たたかい……ってそう来るか!?」

「まともにやってられるかってんだ!」

 

 まさかの逃走。

 想定していなかったとはいえ、虚を突かれたのもまた事実。

 コンマ数秒の間、キンジは完全な無防備を晒す失態すら犯した。

 

「ここまで意表を突かれたのも初めてだ! だが逃がさないぞ!」

 

 即座に背後から撃つも狙いがそれる。

 階段を降りて、姿を消した彼を追うも、

 

 ガランゴロンガランゴロン!

 

「これは……終了の合図か。まさかこんな形で終わるとは……」

 

 拍子抜けだ。できれば啓とは正面から戦いたかった。

 心のどこかで失望の念があった。

 視界の先には啓と試験官である蘭豹の姿。

 彼は借りていた拳銃と装備一式を返納し、階下へと降りていく。一度も、振り返らなかった。

 冷たい奴だ……そう思いながら歩きだすキンジに蘭豹が声をかける。

 

「オイ、そこの奴、足もとに気を付けろ」

「なるほど……」

 

 階段のすぐ脇。僅かなくぼみに挟まっていいたのは二つの球体。

 

「煙幕、閃光弾……罠に嵌めようとしていたのか。だがこれで引っかかる俺じゃない」

「フン、それだけじゃない。この銃も見てみぃ」

 

 なにがおかしいのか蘭豹はくっくと笑いをこぼす。おかしくて堪らないといった風だ。

 受け取ったのはシグP-220。

 そしてキンジは気付く。

 

「安全装置が掛かったまま……しかも軽い、ということは」

「くっくっくっ面白いやろ? マガジンはカラ。アイツはこの銃をまったく使っていない。敵から奪ったリボルバーの一回だけ。これがどういう意味を示すか……判るやろ」

「武偵憲章第七条――悲観論で備え、楽観論で行動せよ。ほぼ丸腰という状態で試験に挑み己の限界を試したということですか……」

一般中学(パンチュー)出身のアイツが憲章を知っていたか知らんがなぁ。だが少ない手札で三年間武偵の訓練を積んだ相手を圧倒したのは事実。そして相手に拳銃を使わんかった。そうお前を除いてな」

「……どうやらアイツを誤解していたようだ。ストイックなまでの武偵を目指す。憧れで目指す俺とはまた別。なるほど……」

「憧れだろうが、ストイックだろうが、結果を残せなきゃ良い武偵にゃなれん。せいぜい頑張るこった」

「はい」

 

 蘭豹はそういいながら上の階へと登っていった。生徒たちの回収に向かったのだろう。

 あれほどの成績をあげれば合格は間違いない。

 キンジは東京武偵高校での生活に心躍るものを感じていたのだった――

 

 

 

 

 

 

 都内某所。

 ある一室では二人の少女が寛いでいた。

 片方はゆるい天然パーマに長い金髪をツーサイドアップ。身長は140cmを超えたばかりの幼い少女。人懐っこい笑顔に身長と反比例した巨乳は男性の視線をくぎ付けにするだろう。

 もう片方は表情に乏しい黒髪の少女。日本人形をそのまま等身大にした女の子は芸術的な美しさを放っていた。だがどこか危うい……魔性の魅力を兼ね備えた容姿はまるでバラのように美しく、鋭かった。

 金髪の少女がぶーぶーと文句を垂れていた。

 

「ちょいと夾竹桃ー。どーしてインターンの話を蹴ったの? あのままでも合格確実だったじゃん。リコがいっしょーけんめい根回ししたってのにさー」

「悪いわね。でも、高校一年だけは絶対むり。あの男がいるから」

「それにしたって納得いーかーなーい~っ! ジャンヌを含めたアタシらで一番きっついのはリコりんなんだよ? 」

 

 ある極秘作戦のため、彼女たちは密かに武偵高校への潜入を図っていた。

 元々、東京武偵高校中等部に行く予定だったが、同人誌の手伝いを餌にリコがお願いしていたのだ。

 とある難敵を相手にするリコ。夾竹桃も協力するのはやぶさかではなかったのだが……急遽やめたのだ。

 納得のいかないリコに夾竹桃が説明する。

 

「大石啓……あれはダメ、ヤバイわ。例えるならそう、彼岸花。小さく踏みつぶせそうでその実、真っ赤な血に染まった毒花よ」

「あれー? 毒使いのきょうちゃんが毒に例えるなんてめっずらし~。…………もしかしてーフラグ立っちゃった? バッキバキに立っちゃったの?」

 

 夾竹桃はありとあらゆる毒に精通する。むしろ自分の知らない毒などあってはならないというほど。

 その執念は一族を滅ぼしてでも欲すほど。

 毒に生涯を捧げるような彼女が自分を地に伏せさせた相手を毒に例えるのだ。そうそうあることではない。

 にんまりと、だがどこか笑ってない目でリコが夾竹桃に言うが、彼女の表情は朱に染まることはなかった。

 むしろ青い。

 彼女は自分の様子をリコに気付かれないように窓際へ向かう。同僚に怯えた表情を見せたくない。ちいさいプライドからだ。

 窓の側から東京の夜景を眺める。大小様々な光がついては消える。

 かがやく灯りで気付かないが大都会、東京の闇は深い。底知れない。

 無造作に黒髪を払うがまとわりつくのはあの言葉。夾竹桃は撃たれてもしばらく意識を保っていた。

 だからこそ薄めで見てしまった。大石啓の瞳を。

 

『俺に毒は効かん……二度目はない……ッ』

 

 心の奥底まで貫く視線。

 

「どーしたのー?」

「……いえ、ただ恐怖というものを初めて知った、気がするわ」

「なーにそれ?」

「さあ、自分で言ってて判らないわ。ただ全身を叩きつける殺気とは別種の、毒のように身体の芯から絡み付いて離さない恐怖は、もう味わいたくないものね」

「――へえ」

 

 ダメ、ダメ、ダメ。思い出してはいけない。

 だが逃げれば逃げるほど追いかけてくるのはあの男の目。

 嫌悪感。生理的に嫌。

 大石啓の視線は生物として許容できない。

 バケツ一杯のゴキブリを鷲掴みした方がまだマシと言えるほどであった。

 

「リコはわっかんないけどさー。なんだったら同人のネタにしちゃえば? そいつがねっちょぐっちょに犯されるやつ。少しは気が晴れるかも」

「同人……そうね。ちょっと書いてみようかしら」

 

 夾竹桃は同人誌を書くのが趣味の一つだ。内容は百合たまに薔薇。

 レズかホモという二極端な嗜好だが好きなのだから仕方が無い。

 だが直ぐに彼女は筆を置いた。

 リコが怪訝そうに見るが、

 

「思い出すのも嫌なのに書けるわけないじゃない! むしろ絶対お断り。お金積まれてもダメねっ。紙とペンが穢れる!」

「そこまでなんだ~?」

「あのねっちょりした視線が生理的に嫌。むしろなんで息してるのかしら……ぶるぶる」

「むーこれは想像以上にダメっぽいねー。同族嫌悪って奴?」

「アレと同族にしないで! ……でも、そうね、他人の力を借りて私を倒したりする手腕は同じなのかしら……?」

「くふ♪ 仕方ないねー。ここは一つ、このリコ大先生が助太刀いたすぞー!」

 

 任せろとばかりに胸を叩く。

 ポヨンと弾む豊満な胸に若干、夾竹桃は目を細める。

 見なかったことにして「何するの?」と聞くと、ケラケラと笑いながら、

 

「……春だし、交通安全を呼び掛けるくらいなんだから、不幸な事故にあっちゃうのも仕方ないと思わないかなー?」

 

 天使の笑顔で悪魔な発言。一人の少女が少年へと襲いかかることになる。

 その結末がどうなるのかは誰も知らない。

 

 

 

 




夾竹桃がこんなとこいねえよ! とかリコじゃねえのかよ、とかはご勘弁を……。
他のSS見るとリコ試験登場が割と多いかなと思ったのでして。

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