緋弾のアリア~裏方にいきたい男の物語~   作:蒼海空河

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たくさんの感想&お気に入りありがとうございます!

今回は少々勘違い成分が薄いですがどうぞです。


野郎共のお祭り

 この前のリコさん激ギレ事件から数日後。

 放課後、教室から出たところで待ちぶせされていた。

 前と変わらない様子。

 移動するわけでもなく始まったのは数日前の件について。

 

「あ、リコさん……」

「リコでいいよ、ケーくん」

「そ、そっか? じゃあリコ、はどうしたんだ。前のことなら本当悪いと――」

「この前のことは気にしないでいいよんケーくん。リコりんが大人気なかったからねー、気にし過ぎたらぷんぷんだよっ。でもみんなに言うとワルサーでハチの巣だぞ~?」

 

 そういっておどける姿は本当に気にしていないらしい。

 仲直り、できたということかな……。

 最後の一文は女の子らしいというか、きっと怒っちゃったのを自分でも気にしていたのだろう。

 年頃の子は些細なことでも感情をむき出しにしてしまうのは仕方がない。

 というか全て可愛いのでオールオッケー! えへへ、とはにかんだ笑顔が素敵だったし!

 なので俺も真剣に返した。

 

「女の子を泣かしたら男が全て悪いってもんだよ。でもあのとき言ったことは嘘偽りない本当のことだから」

「そう、なんだ~。でもお口チャックじじ~だぞケーくん」

 

 あまり触れて欲しくないようだ。

 きめ細かい手首の先を摘まむような動作で真横に引く。

 

「乙女の秘密は重要なので~っす! いっちゃったら、魔法使いのお友達と同人誌のお友達に頼んで、氷漬けで強制毒壺水泳の刑に処しちゃうゾ~♪」

 

 たぶんアニメ……いや同人サークルの仲間の方が濃厚かも。

 同人誌の子は前聞いたけど、魔法使いは売り子やコスプレイヤーかな。

 

「そりゃ怖いな。でも楽しそうなお友達だなあ。お近づきになりたいもんだ」

 

 きっとリコと同じで明るく素直な子に違いない。

 そうじゃなくても武偵高校の女の子はみんな可愛いし。

 ぜひ紹介して欲しい。

 

「そんなこと言ってるといつかホンキで殺っちゃうぞっ♪ ではでは、リコは任務があるので失礼するであります!」

「俺は大歓迎だけど……。まあ任務頑張ってなー」

「くふ♪ らじゃーだよっ。集まりもあるし、()に聞いて良かったら紹介するかもね。じゃあね~(ただしテメーの行き先は地獄だがな)」

 

 おお! まだ美少女(推定)たちがいるのか。期待して待ってるぜ!

 ビシッ! と真面目な顔だけど、何処か愛着のある敬礼をしたあと彼女は去っていった。

 彼女の姿が見えなくなったところで小さくガッツポーズ。

 

「……はぁ~~っ、よっしゃ! 紆余曲折あったけど少しは仲良くなれたんじゃないか俺。こりゃ高校生活も楽しくなってきたぜ!」

 

 単純ここに極まれりだが心の重しがなくなったんだ。少しくらいいいだろう。

 どうやって切りだすか悩んでいたところでリコさ……リコから言われた。

 情けなくはあるものの、重要なのはこれからさ! ちょっと仲が進展したんじゃないかおい! 運が俺に向いてきたぜぇっ!

 

 気分の晴れた金曜日。

 天気は夜にかけて激しい雷雨が予想されるが、そんなの吹き飛ばせそうなくらいテンション上昇中だった。

 思わずスキップでもしてやろうかと考えていたとき、後ろから声をかけられた。

 

「――大石」

「はいはーいなんでございましょう。今日は何でもできる気分だぜぇ!」

「ほう……そりゃあイイことを聞いた。大石ィ」

「え゛ッ?」

 

 女性らしからぬ低い声がする。コツコツと靴音がする。

 ポニーテールを揺らしながら、そいつは口にタバコを咥えながら、くっちゃくっちゃとガムを噛んでいた。

 背後からやってきたのは夜道で出会ったら即逃げましょうの超不良教師&スパルタの鬼にして俺の天敵、蘭豹先生だ。

 校内なのにタバコ&ガムとか何処のヤンママだよ! 893なご職業の人も裸足で逃げるぞ……。

 火を付けてないのがマシだと思える自分の感性が悲しくなってくる。

 やってきた鬼女は、俺の返事を聞かずにクイッと親指を立てながら、

 

「ちっとツラぁ貸せや。文句は、ねえよな?」

「う、うーっす……」

 

 ついてこいとばかりに言ってくる。

 断る選択肢など、ありはしなかった。

 

 教訓――――人の顔と内容を確認してから承諾しましょう。

 

 

 

 

 

 気分はドナドナされる牛さん。

 おうし座の俺にはなおのこと相応しいな。夕焼けがいい塩梅に気分を盛り下げてくれるぜ、ははは、はは……。

 火にバケツ一杯の水と消火剤をぶちまけられたようにアゲアゲなテンションが消えている中。

 案内されたのは、幾多の戦士たちが試験内容とカンニングしよう攻め入り、討ち死にしていったツワモノたちの夢のあと。

 教諭たち教務科(マスターズ)の本拠地。

 ……簡単にいえば職員室だ。

 中に入ると意外なメンツが揃っていた。

 

「キンジ、武藤に不知火(しらぬい)、……お前等も呼ばれたのか?」

 

 全員同じクラスのメンツだった。

 キンジが最初に俺に気付いて声を上げる。

 

「ケイか。やっぱり呼ばれたんだな」

「いや、なんつーか捕まったって感じなんだけどよ……」

「おうっ、我が同士ケイ! お前も呼ばれたのか」

 

 お馴染な感があるがお隣さんで強襲科Sランクのキンジ。

 その後に続くように、元気一杯の体育会系なノリの男。

 短髪に借り上げた黒髪で三枚目な車輌科(ロジ)Aランクの武藤剛気(むとう ごうき)

 エロ本の貸し借り同盟の一員だ。

 

「武藤も来たのか。車両科、諜報科一に強襲科二人か……バランスいいな。不知火もいるし」

 

 どうせ人数の頭合わせとかそんな理由だろ。

 俺の言外に込められた言葉を理解したのだろう、茶髪の男子が苦笑する。

 

「戦うメンバーに困ったらとりあえずの強襲科(アサルト)招集は武偵の定番だからね」

 

 キンジをクール系のイケメンとするなら不知火は貴公子然とした爽やかイケメンさんだ。

 どことなく女子に対して突きはなした接し方をして人を選ぶキンジに対して、こちらは真面目にモテる。モテまくる。

 礼儀正しく、優しいのだから当然なの、か? 武藤と俺に声をかける女子は二人の知り合いしかほとんどいねえけどな!

 

 コイツは射撃、格闘、判断力などバランス良く兼ねそなえた優等生で強襲科では堂々のAランク武偵として校内では有名だ。

 しかもそれを鼻に掛けないイイ奴なのが憎い。

 キンジにしろ不知火にしろ、友人を優先するタイプなので普段から仲良くやっていた。

 

「俺、諜報科なんだけど」

「そういったらオレは車両科だぞケイ。そういや聞いてくれよ。この前よお、いきつけのレンタル店いったら入荷したらしい裏モノがすでに売れてたんだぜ……全力で探してこの前見つけてきたぜ」

「ああ、それはキツイ……キツイなあ。親が部屋を掃除したあと、秘蔵本を机の上に丁寧に重ねて置いてあったくらいきついなあ」

「わかってくれるか同士!」

「判らいでか同士!」

 

 ガシッ! と力強く握手をしてお互いの友情を確かめ合う。

 キンジと不知火の恋愛富裕層には判るまい……。

 

「女なんてみんな同じようなものだろ……」

「ハハ、武藤君と大石君は気が合う見たいだねえ」

 

 イイ奴だけど、一度殴ってやろうか。特にキンジ、お前の発言……いつか武藤が発狂するぞ……。

 

「……で武藤、女優さんは?」

「黒髪ロングのヨツヨちゃんだ。巨乳っぷりが堪らないぜ」

「相変わらず黒髪ロング好きだな……」

「嫌か?」

「グッジョブ!!」

「貸すときはお前もとっておきのを持ってこいよ。じゃねえと轢きころすぜ!」

「わあってるって」

 

 武藤がなぜ黒髪スキーなのかはあえて言うまい。

 あれはそう桜の――

 ゴゴンッ!

 

「いだぁ!?」

「あぱっち!?」

「テメエら、教師の前で堂々と猥談してンじゃねえぞ。未成年だろーが。せめて時と場所を考えろや」

「す、すんませんでした……」

 

 盛りあがってすっかり忘れてた。

 でもそれ以上突っ込まないカラッとしたところが数少ない蘭豹の良いところではあるか。

 

「テメエ、失礼なこと考えてんなぁ? いっぺん死ぬか?」

「何も言ってないのに!?」

 

 

 

 

 

 少々悪ふざけが過ぎたが話を本筋へと戻す。

 

「特別依頼?」

「そうや。武偵局からの依頼でな」

 

 武偵局って学生じゃないプロからの依頼なのか!?

 

「プロの方からの直依頼ってスゲーぞおいっ!」

 

 武藤の興奮したような声にキンジも答える。

 

「確かに願ってもないことだぞ。先輩方との繋がりもできるし、プロの技を盗むチャンスだ」

 

 概ね肯定的な空気に俺は内心で恐怖していた。

 だってやばい匂いがぷんぷんするぞ。キンジたちはまだいい。

 AやSランクの実力者だし、年季が違う。

 だが俺はどうだ? とてもじゃないがその器じゃない。

 それに最近思うことだが、俺が過大評価されている感がある。

 

 先輩チームと一緒に依頼を受ける→実力ないから犯人と遭遇、必死に逃げ回る→何故か先輩に褒められる→評判を聞いた他の先輩が俺を呼び出す……の強制ループ。

 

 そろそろこの流れを断ちきりたい。

 俺は裏方でひっそりしたいんだ。銃弾が飛びかう戦場は御免だ!

 ……でも蘭豹先生って俺の泣きごとを聞きなれているせいかスルーするんだよなあ。

 ここは一つ、空気の読める男、不知火に希望を託そう!

 武偵同士で通じるというトンツー……あれだモールス信号。面白いから習ってたんだ。武偵用に多少変わっているが基本は一緒だった。

 前世でも自衛隊で習っている人がいたから興味もあったしな。

 昔とった杵柄。今役立てるときがきた!

 背後から指で合図を送る。

 『イライ アヤシイ ジタイ』

 不知火は一瞬、身体を揺らしたあと、さりげに拳を握った。

 了承の意。冷静なコイツのことだ、降ってわいたこのチャンス。

 逆に例えようのない不自然さを感じたのは同じなのだろう。

 説明を始めようとした蘭豹に「すいません質問が」と丁度いいタイミングで話しかけた。

 

「ですが僕らはまだ一年です。プロからの依頼なんておかしいですよ。任務は大石君は裏技で任務をこなしていますが、本来は訓練期間未達成……危険ではないですか?」

 

 ナイス不知火! さすがなんでもこなせる男!

 武偵高の生徒は一定期間の訓練を終えると、民間から依頼を受けることができる。

 E~A、そして特別なSランクはその受けることのできる依頼の範囲だ。

 しかしどの制度にも“抜け道”が存在する。伝統と言ってもいい。

 

 『事件に居合わせた武偵はランク、立場に関わらずその事件を解決するために行動するものとする』という法律の拡大解釈。

 先輩の仕事を“見学”してたら巻きこまれた。仕方なく(・・・・)、事件解決に乗りだしました、という文句でやっているわけだ。

 一般校出身なのになぜか俺が先輩方と一緒に依頼を達成しているのもそう。

 実力や才能のある生徒を早期に鍛えあげるためという、公然の秘密、らしい。

 

 最初はそういうのが武偵なのだと思っていたら、キンジから話を聞いてひっくりかえったからな……。

 武偵憲章第六条――自ら考え、自ら行動せよ……って笑われながら言われたけど知らんがな。

 何処をどう勘違いしたのか「イキのいい一年がいるからちょっと揉んでやろう」って誘われたのが運のツキ。

 なぜか俺が意外に使えるという変な評判が立っているらしい。

 ここいらでちょっとストップしてもらいたい。

 蘭豹先生がタバコに火を付けながら言う。

 

「なるほど、確かにヒヨッコなお前等がプロの依頼を受けるのはおかしいわな。後ろでバレバレの指会話してる奴の言う通りっちゃ言う通りや」

 

 ばれてーら。

 だが気分を害したわけではないらしい。

 煙をくゆらせながら、人さし指で机を叩く。

 

「梅雨もじきに明けるわな。そうすればもう夏場……警察は忙しいのは定番……」

「……?」

 

 なんの話をしているんだ?

 いきなりの話題転換に俺以外の奴も怪訝そうにしている。

 先生はイラつくようにタバコを噛んでいた。

 

「深夜徘徊、万引き、家出、未成年の飲酒……気の急いた早漏野郎は早々にポリ公のお世話になってやる。武偵にも依頼が来ているし、低ランクの先輩方にとっちゃ単位取得の稼ぎ時や」

 

 それくらいならまだいいじゃないか、と声が漏れそうになったが怖いので無論言わない。

 腹を立てている原因は別にありそうだ。

 しかし迂遠な言い方で肝心の本筋……内容が見えない。

 

「二倍」

「二倍……?」

「東京二十三区で発生した軽犯罪またはそれに準じる事件の発生件数がや」

「二倍!? どんだけ増えてるんだよ!?」

「確かにニュースで万引き犯とかの話題が増えている気がしましたが……おかしいですね」

「だからってことや。警察は事態を重く見て巡回の数を増やす。すると足りない分、武偵局に依頼という形で回されていく。その間隙を縫って凶悪犯罪のいくつかが東京武偵高校にも流れる。人員が圧倒的に足りんわけや。大石がやたら先輩に誘われンのも手が足りねえ証拠。使える奴は引っ張りだこや」

 

 そういう流れだったのかよ!?

 それで忙しかったのか?

 武藤やキンジも心当たりがあったのか頷いている。

 タバコを灰皿に押しつけた先生は「だから元を断つ」と言った。

 

「元を断つ……」

「優秀な諜報担当の先輩方が組織の割り出しは済ませてる。大陸で荒稼ぎしていた新興の麻薬組織があろうことか日本の首都を狙いうちしてボロ儲けを画策していた。ナメられてるってことやな。警察、武偵局は本丸狙い。そして名古屋&東京武偵高校の連合で予備のアジトや倉庫をぶっ潰す」

 

 聞いたところによると、金を得るために金を使うを信条とする組織らしく、巧みに不良学生やホームレスを騙して使っていたとか。

 しかしすげえ……そこまで判るもんなのか。

 ならこれが済めば俺もしばらく安泰なのかな。

 …………あれ、この流れやばくね?

 俺の中で警鐘が鳴った気がする。

 いつものパターンですよお兄さんって言われてる気ががが。

 流れを変えるために意見を挟む。

 

「で、でも、そこまで計画が来てるってことはもうメンバーとか決まっているんすよね?」

「ああ」

 

 ほっ、よかった。ならあんし――

 

「だが気が変わったわ」

「え」

「一年は依頼をこなせるようになってくると、内容の吟味はそこそこに受けたがるバカがでるもンや。ここに呼んだ奴のほとんどはプロの依頼と舞いあがって疑わなかった。そういう奴らにはお仕置き依頼をしといたけどな。武偵は信じるのも重要だが疑うことも大切や。それを怠ったバカ共は今頃ガチムチの教官にしごかれてるだろうなぁ」

 

 くっくっくっと邪悪な笑みを浮かべる先生。鬼だ……まじもんの鬼がいるで……。

 蘭豹先生が俺を見る。少しだけ、少しだけ優しい表情に見えなくもない。

 

「それに比べて大石の判断は対応として及第点にはある。単純なモールス信号はへたくそやけど、依頼者を前にしたと仮定すれば、相手に気付かれずに会話しつつ、疑う心を忘れない。そこら辺が多くのチームから評価される点なのかもしれんなぁ」

 

 でも今回はその表情やめてー。嫌な予感しかないんですがー。

 

「と、いうことは――」

「合格。遠山と武藤も途中から判っていたようだし、お前等四人ともな。他には狙撃科(スナイプ)Sランクのレキ、中等部三年からも二、三人くらい来る。……お祭りや、大暴れして名古屋の奴らに東京武偵生の凄さを見せつけてやりぃ!」

 

 完全裏目きた! 

 

「ちょ、俺、ぇぇ!?」

「やったなケイ! ナイス判断っ。最初はあのモールスだけじゃ判んなかったぞおいっ」

「腕が鳴るな」

「ええ、ここまでの規模の作戦に参加できる意義はあるでしょう」

「そしてチームリーダーは大石、お前がやれ。Bランク以上の凶悪犯罪十一件連続検挙中のお前が実績の上でも妥当だろうからな。サブもお前が選んでおけよ。プロやニ、三年も近くいるし、勉強させてもらえ。作戦は明後日、2000(ふたまるまるまる)を持って開始される。逝って来い!」

「なんでこうなるんだぁぁぁぁ!?」

 

 こうして即席チームが結成され、俺がなぜか指揮を執るという当初の予定から真逆の展開へとなったのだった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は主人公の仕事っぷり? を見せる回になります。
さて視点どうしようかな……解説的な三人称にするか、主人公視点入りにするか……。

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