真・恋姫†一刀無双 ~初出会は少女仙人-混沌の外史~ 作:カメル~ン
寝苦しい――という言葉があるが、それは起きれば解放されるものであります。
しかし……。
先ほどから目が覚めてるのに……眼球は動かせるのに、視界が真っ暗です。そしてなぜか体も――動かない!
『手の指先から、足の指先までが……う、動かないんですけどぉ!』と、焦り始めた一刀だった。
さらに恐ろしいのは、全身の皮膚感覚までも全く無い。周りに何も接触するものがなく、空中に浮かんでいるような感覚というべきか。
いや、それ以上に不安な感覚だった。何も感じれないのだ。感触も温度も風も何も……。
ただし、真っ暗な中でも音は聞こえていて、そして口を動かすことが出来て声は出るようだ。
「おーい! 雲華ーーー。なんかおかしいぞーーーーーーーーー!」
思わず一刀は大きな声を上げた。
「ふむ。やっと目が覚めたようね。このまま永眠するんじゃないかと思ったわよ? 北郷、おはよう」
「おはよう……雲華」
挨拶どころではないはずだが、律儀に返してしまう一刀であった。
すでに、雲華は一刀のすぐ横でこの有様を見ているようだ……というか、間違いなくこいつが仕掛け人だろう。
彼女が仙人ということを昨晩教えてもらっていたので、この状況に陥っていることを連想することが出来た。でももし知らなかったら、体のあまりの突然な異常に死を覚悟しパニックになっていたかもしれない。
なぜこうなってるのか、状況がまたしてもよくわからないが、昨日、この世界で初めて目覚めた時より、状況が相当悪いことはまず間違いないだろう。
ここは冷静にまずは、理由を聞くしかない一刀である。
「あのぉ……雲華? この状況は、何か意味があるのかな? 目は見えてないし、体も動かないんだけど。感覚も無いよ」
それを無視するように、雲華はすごく気になる事を一刀に確認してきた。
「心配になったのはそれだけ?」
「………」
一刀は、「ん?」と思った。そう、息がちょっとずつ苦しくなってきているのに……気が付いた!
「ちょ! 息が……苦しいん、ですけどぉ!!」
すでに、肺の呼吸機能が落ちてきてるのか、大きな声を出せなくなりつつあった。
「これで見えるかしら?」
雲華の声と同時に、急に一刀の目に情景が入ってきた。
雲華の右手が、指先が目前に迫り、一刀の眉間の辺りを触れて離れた後、のような状況が見えた。周りはすでに部屋の窓が開けられ、眩しい朝日が差し込んでいる。今日は良い天気のようだ。……和んでる場合じゃないが。
体は仰向けなようで、正面に見えている天井を中心に見れば、昨日寝ていた食堂の部屋の中だとわかる。雲華は一刀の左側に座っていた。
(――と、ホントどうでもいいな、そんなことは!)
とりあえず今は、『空気プリーズ!』と一刀が思い直す。
すると、雲華は一刀の感覚が無くなり脱力中の左手を取って、……なんと雲華自身の胸に?!
「どう? 苦しさだけじゃ何だし、ご褒美よ?」
彼女はウインクまでしてくれていた。
見た目、間違いなく一刀の手が、雲華の柔らかそうな胸に押し当てられているのが見えていだが……。
(恨めしいぞ、この左手め!)
……いや、思わず熱くなってしまった彼だったが、今は本当にそれどころではない。
一刀は苦悶の顔をさらに赤くしながらも雲華の顔を見て、その思いが自然に口から声が漏れた。
「感覚ないけど……う、うれしい……めちゃくちゃうれしい……けど………それ以上に…めっちゃ息苦……しいわ! ……雲華……何がしたいん…だよ、こ……れは!」
「ふーむ。違うのかな?」
雲華は一刀の左手を胸に抱えながら、呼吸難で苦渋の顔になっている一刀の状態を冷静に横で見ながら少し悩む表情をしていた。そして、「ちょっと手助けしないといけないかな」と言って、また右手を顔の方に伸ばしてきた。しかしそれは、顔ではなく、喉の上に翳される。
「この首の辺り、何か感じない? この辺りの気の流れが、塞がり気味になってるから呼吸が苦しいのよ?」
一刀は、『そんなこと言われても訳が分からないよ?』という顔を雲華へ向ける。すでに、話すのもキツイ状態になってきていた。掠れるような声でやっと意志を伝える。
「む……り……」
すでに、一刀の顔は息苦しさに赤くなり始めている。もう呼吸が……ほとんど止まっている状態である。空気を求めて口をパクパクし始めている。
雲華は、依然として、喉の上に手を翳さしたまま、静かに一刀の様子を見ているだけである。そして、追い打ちをかけるように言葉を紡ぐ。それも小首を傾げて、にっこりにながら。
「北郷……。本気で、何とか考えないと死んじゃうよ?」
それを聞いた一刀は、雲華が本気で『俺を助ける気がない?!』と慌てた。
「首のところにあるでしょ? ほら?」
雲華は、見えていて当たり前のようなことを言ってきた。しかし、『ほら? とか言われても、凡人の俺には何にも感じないんですけど! 見えないんですけどぉ!』と口パクだけで雲華に必死で抗議する。一刀はもう限界だった。
(俺の肺よ……! ……呼吸……して……くれ)
そのまま、一刀の意識は遠退いた――――。
どれくらい、時間が経っただろうか? 一刀は目を開いた。
感覚的には一瞬のような気がする。
(呼吸は戻ってい……る? ……ようで……戻ってないぞぉ!)
そしてまた、『呼吸が段々苦しいんですけど? 体も全く動かないんですけど!』と、内心で一刀は叫ぶ。
雲華は、先ほどと変わらず、喉の上に手を翳したままである。
「あら、北郷。一瞬で戻ってきたわね。早く呼吸を自分で戻した方が楽よ?」
一刀は、雲華の言葉に愕然とする。
(やっぱり、落ちてたのは一瞬かよ? えっ? これって、窒息地獄の無限ループコースか?)
冗談じゃない現状に我慢ならず、一刀は雲華へ叫ぶ。
「ちょっと、雲華! さすがに酷いだろ? 寝起きでいきなり、これはどういうことだよ!」
一刀は、さすがにかなり頭に来ていた。『朝起きたら、いきなり拷問か? 俺が何したよ?』という気持ちでいっぱいになっていた。
すると、雲華は怖いことをさらりと告げてくる。
「昨日……私は言ったわよね? 仙人と人は関わりあっちゃいけないって」
「でも! 雲華は俺が……普通じゃないって……認めてたよ……ね?」
一刀は、もう息がかなり苦しくなってきていた。すると雲華はニコリと微笑みながら一刀に告げた。
「ごめんね。それはちょっと違ってたわ。あくまで、『君に起こっていた現象』が、普通じゃなかったのよ。だ、か、ら、今君自身に普通と違う人だということを『証明』してもらわないとね。それが無理なら、仙人と関わった人として、ここで……君には死んでもらうしかないわね♪」
言葉尻で、雲華は指先を自身の首の辺りでひゅっと弧を描くように動かす。
「ええっーーー!?」
思わず、一刀から苦しいながらも声が掠れ漏れた。
「北郷。この世界は、君が思っているほど甘くない。今の君でも、なんとか生きていけるんじゃ?と考えているなら……それは大間違いよ。 この国では、戦争や疫病で数多の人が虫けらみたいに、あっさりと死んでゆくのよ。君も……ここで普通の人として生き残っても惨いだけよね」
雲華の先ほどからの一方的な仕打ちと、この傲慢な意見に、一刀は―――
切れていた!
「それは…………雲華が……勝手に……決める事じゃない! 死ねるか! こんなところで!」
完全に頭に来ていた一刀は、雲華を睨みつけて怒りを絞り出すように言葉を大声で吐いた。すると雲華は、いきなり見当外れな返事をしてきた。
「ほら~、出来てるじゃない♪」
雲華は『してやったり』の顔で嬉しそうだ。
一刀は、『あ? こいつ、なにを言ってんだ!』と、体は相変わらずピクリとも動かない為、口元と声だけで、本気で雲華に食って掛かる。
しかし、吹き出しながら雲華は言う。
「北郷、今、君は自分が普通に呼吸出来てるのに気付いてないの?」
「…………」
一刀は、怒りも忘れてまさに「はぁ?」というような顔をした。雲華は言葉を続ける。
「まあ、全身に比べれば、首の気道の縛りは弱くしてたけれど……君自身が気迫で首裏の肺動作の気道を通したということよ。呼吸が普通に出来てるでしょ? ……まあ、人でも気功の使い手にはこれぐらい、難なく出来るやつもいるけどね」
「…………」
一刀は、固まっていた。雲華はにっこり笑いながら一刀に告げる。
「よかったわね。練習してちょっとづつコツを掴めば、ここでは死なずに済みそうね?」
「お……ぅ」
一刀は、ここで初めて『雲華に騙されて本気にさせられた』ことに気が付いた。
「さてと、じゃあ北郷。もう一回やりましょうか? 昼までに五十回ぐらいしないとコツがつかめないわよ?」
雲華は、再び喉の上に手を翳して気道を弱めに閉じようとする。
「ええっーーー、五十回?! 俺、ホントに死んじゃうから!」
容赦などなく……すでに、一刀の呼吸は厳しくなってきていた……。
まさに生き地獄だった……。他に形容しようがなかった。
一刀は、今、生きていることに少し後悔しかけていた。死んでた方が楽だったかもと。
彼は昼前までに、延々の窒息落ちループ地獄を味わっていたのだ。
一度成功したからといって、次も成功するなんてことが素人にあるはずがなかった。怒りも収まっていた彼は、十七回連続で失神していた。十八回目に漸く呼吸が普通に出来た。十七回の苦しさの連続から怒りの『死んだ方がマシだー!』と言う気迫が気道を通したみたいだった。
そこからお手洗い休憩を挟んで、雲華は二度あることは三度あるでしょ?と拷問を軽く続行する。
一刀は思った。仙人じゃなくて……こいつ、絶対に『鬼』だ……と。
それからさらに、一刀は十二回連続で失神していた。これは、この状況は……キツ過ぎる。
「も、もう……、む、無理……じゃね?」
完全なまでにへとへとに疲れ切っていた一刀だったが、また息が容赦なく苦しくなってきている。しかし、悪い意味で、もう笑えるほど失神に慣れてきていた。言葉とは違い、苦しいながら結構不思議な余裕があった。
「北郷。それそろ、本気で肺動作の気道の所だけ探って気迫を込めたら? 呼吸をしたいと。肺はどうやって呼吸動作をしているのかと。そういう気持ちで、気迫を込めるのよ」
雲華に反論したいのはいっぱいあったが、現状、それを言っても状況は変わらない。もう分かっていた……この『鬼』は、状況を絶対に変えたりしない。
一刀は考えた。雲華の言う通りに、肺を動かすのは肺の周辺の筋肉、それらを動かすのは脳から自律神経が来ているはずで……と。『その辺りよ動いてくれ、動いてくれ』と強く気合いを入れる。
すると……感覚がないはずの体から、後頭部、首筋、肺周りに掛けてなにか、体に纏わりつくというか包み込んでいる雰囲気を捉えた。その捉えた雰囲気を人体型のイメージで意識すると、首筋の流れが薄くなっているように感じた。そこを強く流れろ、流れろと気合いを込めてみる。
「どうやらようやく少し、見えたようね?」
雲華は、一刀が呼吸の変化を感じるほぼその瞬間に一刀へ声を掛けた。一刀の呼吸は元に戻ったのである。
「北郷。続けるわよ?」
「……ああ」
一刀は、それから十回連続で呼吸回復に成功する。最後の一回は、肺呼吸関連器官すべての気道を完全に、雲華が絶った状態からの回復だった。
終わった後に、雲華は言った。
「北郷、肺以外の部位についても原理は同じよ。腕も動かせるんじゃない?」
一刀は、そうだ!と思いチャレンジする。だが、そうそう上手くいくほど甘くはなかった。まず腕が動くには、どういう筋肉、神経が必要か、その気道の位置を感じ取るところから、初めから慎重に進めなければならないからだ。
一刀の様子を見ていた雲華は、さすがにいきなりは無理そうだし、時間ももう少し掛りそうだと感じて一刀を止めた。
「ふむ。もうお昼だし先に食事休憩にしましょう」
そう言うとお手洗い休憩でもしたように、雲華は一刀の首の顎のすぐ下辺りに手のひらを近づけると、少し気合いを入れてからゆっくりを全身へと手のひらを翳してまわる。
すると数秒ののちに、何も感じず動かなかった一刀の全身は、元の感覚や動きに戻っていた。
二人は一刀が横になってた長椅子を脇へ避けて、机を部屋の中央へ再配置すると長椅子を並べて食堂を本来の状態に戻した。
昼食は、雲華が手早く炒飯のようなものと、汁物を調理して用意してくれた。
昼食を食べながら、一刀はふと疑問に思ったことを雲華に質問した。
「仙人って、やっぱり全員、こういう修行をするのか?というか、体得しているものなの?」
そうよ。という答えを期待していたが雲華の答えは違っていた。
「いいえ。そんなことはないわ。知識でしか知らない仙人も多いはずよ」
「それでいいのか? 仙人って」
一刀の答えに、彼なりの仙人像があることに雲華は気付き、それを分かりやすい形で否定する。
「仙人という『生き物』だから、資格とかとは違うのよ。何かを知っているから仙人になれるというわけではないのよ。極端にいうと……生まれた時からもう決まっているの。仙人か仙人じゃないかはね。素質を持って生まれた人だけが修行して仙人になれる。素質が無い人はどう頑張っても人なのよ」
一刀は、雲華の話を聞いてごはんを食べるのをしばし止めた。雲華は箸を休めて話を続けた。
「分かってるわよね? 達人クラスの『人』でも、さっきのコツをつかむだけでもたぶん十年、二十年掛るわよ?」
「………」
「北郷、人外確定おめでとう」
仲間が増えたことがうれしいのか、雲華の機嫌がよい。それとは対極な感情の一刀だった。
「なんか、嬉しくないよ……」
「さぁ、とりあえず、きちんと食べましょ~う♪」
一刀は、俯き気味に『俺、人外?』について複雑な気持ちで、いろいろそのことを考えながら無言で食事を続けた。
食事が終わると、雲華が片付けを終えた後に話があると言ってきた。
食堂の長椅子にそのまま座って待っていると、雲華が隣の小さめの調理室から出てきた。そのまま机に来るのかと思ったが、部屋の隅の箱から、新しい木簡をいくつかと筆や硯等の筆記用具を持ってきた。
雲華は、それを一刀に使いなさいと渡し、そして話の要件を伝える。
「さて……これから君はこの世界でどうするか、どう生きていくのか少し考えましょうか」
雲華の話を進める雰囲気に、是非もないという感じではある。一刀は、仕方のない感じで返事をする。
「……はい」
「君はどうやら人ではなさそうだし、私も出会ってしまった以上はこの世界で最低限、君が生きていけるぐらいの知識を身に付けるまでの手助けはしてあげるわよ。だからいきなり、君を放り出すことはしない。しばらくここにいるといいわ」
雲華は正直に考えていることを話す。
一刀はしばらく住むところが出来るので少し安心した。
「ありがとう、雲華」
素直に一刀は礼を述べた。雲華は、『まあ、ただの人だったらサクっと殺(や)ってたんで、運が良かったと思ってればいいよ♪』と怖いことをさらりと口にする。そして本題だといって雲華は話し出した。
「北郷。君は、この世界で生きていく術(すべ)を身に付けないといけないわ。それにはまず、先ほど苦行で行ったことを身に付けることよ。それと、君の知識にある文字はおそらく、この時代のものとは少し違うと思う。なので、この時代の読み書きは覚えておくべきね」
雲華の話は非常に現実的だった。この三国志時代に生き残るには術(すべ)が必要だろう。
「なるほど。読み書きはすごく助かるかも。しかし……さっきの苦行かぁ」
先ほどまでの『鬼』による地獄の悪夢がふと蘇る。思わず身震いした一刀だった。
「さっきの苦行だけど、先に説明しておくわね。あれは、仙人界の体術の一つ、『神気瞬導』というのよ。まあ、あれはまだ第一条のほんの入口だけどね」
「しんき……しゅんどう?」
一刀はもちろん初めて聞く言葉に疑問符が浮かんでいた。それに対して雲華の説明が静かに続く。
「『神の気は瞬時に伝わる』と、いうところから来ている仙体術の名前よ。天仙の一人である、真征(しんせい)という女性仙人が祖よ。まあ、この方が私の師匠なんだけど。最強仙人を五人上げれば必ず入ってくるという仙人よ。仙人を推して化け物というぐらい強い方ね」
「ふぇぇ」
思わず一刀は、変な声を漏らしてしまう。
「神気瞬導はこの方が、仙人が仙人の修行をしていても、所詮仙人程度で終わってしまう。神の域に一歩でも近づく修行を……というところから始まっている。ただ、仙人を否定する思想の体術なので、仙人たちの間では余り人気がないわ」
「………」
一刀は、人気がない……?えっ?という表情をする。雲華はそれを見てちょっとムッとした表情でさらに続けた。
「人気と実力は違うものよ。私は昔、実際に見たことがあるから知ってるけど、真征様が奥義を使えば、巨山が本当に一撃で消えてなくなるわよ。この術は極めれば本当に神の域に近いものよ。……でも、私も長いこと修行をしていて、最後の第五条へ一歩踏み込んだけれど、そこからはなかなか進めないわ。大技は使えるけれど、奥義にはまだ届かないしね」
「その神気瞬導は、第五条までで終わりなの?」
一刀の『それだけしかないの?』という感じの質問に、『その内容の一つ一つが難しいものなのよ!』という怖い顔で答える雲華。
「神気瞬導は次の五条の順で成り立っているわ。
一つ、気道を絶ち、気道の流れを再開させること。それが気を理解する者なり
一つ、気によって体は動くものなり。すなわち、より気の強いものはより強い力、より気の早いものはより早い動きが出来るものなり
一つ、気によって体は回復するものなり。回復への気の大きさ、強さは偉大なり
一つ、気に限界なし。体力とは違うものなり。限界と思ったところに限界が出来るものなり
一つ、周りの気をも取込み、気を極めたものは神に通ずるものなり」
「……うーん。師事してくれる者がいないと、一つも先に進めなさそうだなぁ」
そういいながら、一刀は木簡に不慣れな筆で書き留めていた。
「まあ、私が直々に教えてあげるし。回復まで出来れば、そう簡単には死ねなくなるから、とりあえずその辺りまでが目途ね」
第三条までか。……どれぐらい期間が掛るのかと、一刀は考えた。すると、ふとある疑問が浮かんだ。
「雲華、君は……長いこと修行って……」
すると、雲華は思いっきり不快な顔で、手の平を一刀の前にすっと突き出して言葉を遮った。
「はい! 邪推はそこまで~。あのね、君。うら若き仙人にそういう期間的ことは聞かないでよね。全く」
「ご、ごめん」
一刀は、『しまった、仙人でも女の子だった……』と後悔した。
そんな彼の様子に雲華は、それを見越して意地悪そうに、そして楽しそうに言った。
「分かってると思うけど、『第三条』が終わるまでの期間が長くなるか短くなるかは、北郷次第ということなのよ。その合間に読み書きも進めるわよ」
「……はい。わかりました」
地獄の期間は君次第と言われ、どうも追いつめられた感いっぱいにそう素直に答える一刀だった。
つづく
2014年03月22日 投稿
2014年03月27日 文言修正
2014年04月12日 文言修正
2014年04月15日 文言修正&挿絵追加
2014年04月19日 文言修正
2014年05月03日 文言修正
2014年11月02日 文言見直し
2015年03月01日 文言修正(時間表現含む)