ゼロの使い魔--ハンテプティ・ダンプティ--   作:どっとはるか

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終わらなかった
短め
インターミッション、もしくは幕間の百合パート


変異

「一回しか使えないぃ!?」

 

「そう、この破壊の杖は本当は杖じゃなくて、例えるのなら大砲だったのよ。どこをどうすれば良いのかは解るけれど、聞いたことのない部品ばっかり。」

 

「知らない単語ね……東の大陸特有の名前とか、どこかの部品なのかしら? 正直こんなの、ゲルマニアの平民貴族の家でも見たことないわ。」

 

シルフィードで学院へと戻る途中のこと、ルイズは破壊の杖……正確にはM72ロケットランチャーをフーケが使えなかった理由を、タバサとキュルケへ話していた。

 

なお、捕まえたフーケは杖を奪い、紐でぐるぐる巻きにしてシルフィードの尻尾に吊り下げている為、下手に逃げたり騒ごうものなら落ちて死ぬ。馬は御者をできる者が誰もいないので置いてきた。後で先生たちに取りに"行かせる"つもりである。それくらいは働いてかれたっていいだろうというのが、死闘を経験した三人の意見だ。

 

「それにしても……どうしてそんなことが解るのよ、アナタ。」

 

「わたしじゃないわ。使い魔が教えてくれたのよ。」

 

「使い魔って、その左腕が? 喋ってるところなんて見たこと無いけれど。」

 

「この子は喋れないわ。ただ、この手を変形させたり左手で武器を持つと、なぜだかそれの使い方が解るの。」

 

そう言って、ルイズはうねうねと左腕を幻獣(グリフォン)魔獣(ジャバウォック)へと変形させ、最後に普段の左腕に戻すと、破壊の杖を手に取った。

 

「ルーンが光ってる?」

 

普通のルイズの左腕に戻り、金属光沢のない白い素肌になったときは、くっきりとルーンが光っていることが見れたタバサがルイズの手の甲を指差した。昼間の太陽に近い空であったため、変形時の腕は見間違いかと思ったが、そうではなかったらしい。

 

「あら、ホントね。じゃあルイズが破壊の杖とかの使い方が解るのって、それのお陰なのかしら。」

 

「使い魔がルーンを刻まれると、稀に人の言葉を喋ったりするけれど……もしかして似たようなものなのかしら?」

 

「そうなんじゃない? だって、使い方を教えてくれるんでしょ。話せないのにそれでも教えようと一生懸命なんて、健気で良い子じゃない。」

 

その言葉に驚いたような顔でキュルケを見るルイズ。

 

「どうしたのよ?」

 

「いや、なんか意外だったから。あんた、いっつもいっつもわたしのことバカにするし。この子の事だってこの前は……だから、そんなこと言うなんて思わなかったのよ。」

 

その言葉に、ちょっとだけキュルケは己の発言を省みた。たしかにここ数日は、ルイズを少しバカにしすぎていたかもしれない。今はルイズが杖を持っていないがために、からかうタイミングが無かった。その反動か、キュルケはつい、普段の会話で発散するように、必要以上に小馬鹿にしてしまっていた。

 

「そうだったかしら? まあ最初のただの左腕だった頃は何それって思ったけど、今は素直にすごいと思うわよ。」

 

だからと言って、謝るようなことはしない。お互い家を継ぐ可能性がある身のため、ライバルとなるべき相手に敬意は持っても、頭は下げない姿勢をキュルケは貫くことにする。省みることがあるとすれば、ルイズへやる気を出させるための挑発が、己の日課や発散になってしまっていたことだけだ。

 

「な、何よ。嫌に素直じゃないの……ツェルプストーの癖に。でも、称賛は受け取ってあげるわ。」

 

「うわ。」

 

「ちょっと、何よ"うわ"って!!」

 

「いや、アタシに怒らないルイズって見たことなかったから、なんか、こう……ねえ?」

 

「今さっきのあんたも、わたしから見れば似たようなものだったんだけど!? っていうか! "うわ"は無いでしょ"うわ"は!!」

 

ぎゃいぎゃいと、また空でいつもの怒鳴り合いの漫才が始まる。

 

「……素直になっても喧嘩になる。」

 

「きゅいきゅい!」

 

付き合いきれないと前を向き、器用にも無表情のままに小さな口でため息をタバサがつけば、魔法学院はもうすぐだった。

 

魔法学院へと戻ると、巻かれたフーケに驚いた教師たちから三人は事情を問われた。ロングビルこそがフーケであったことを説明して教師に突きだしつつ、馬の事も忘れずに頼んでいると、コルベールにより学院長室へ来るように言われた。

 

「よくぞフーケを捕らえてくれた! わしは君たちを誇りに思うぞい。」

 

学院長室でルイズは騎士(シュヴァリエ)の称号を貰えるようオスマンが王宮に申請してくれた事と、フーケにかけられた報償金の3割を受け取れたことで、近いうちに杖が買そうなことに舞い上がった。破壊の杖を使ってしまったことと、一度しか使えないことを話したものの、それも許されたことからくる安堵が、ルイズの心をよりハイテンションにしている。

 

そのせいか、彼女は忘れていた。キュルケとの空中喧嘩の前に抱いていた疑問……どうしてフーケが自分ならば破壊の杖を使えるという、カンニングペーパーの仕組みを知っていたのかということを。そして、破壊の杖が聞いたこともない名前の何かによって作られていたことも。フーケと破壊の杖、その両方に最も学院で接しているであろうオスマンへ聞き損ねていた。

 

「さて、今宵はフリッグの舞踏会じゃ。まだ昼過ぎといったところじゃが、女である君たちは色々と準備もあろう。主役である君たちが遅れることにならんよう、年よりの話はこの辺りにしておくとしようかの。」

 

そう言ったオスマンが三人を誉めるのを止めて退室を促すと、更なる嬉しいイベントに心を踊らせたルイズは、喜びを隠せないような跳ねるような足取りで、彼女の自室へと戻っていく。

 

「あ、そうよ。ルーンのことをフーケが……まぁ、いっか。」

 

ドアノブへと手を伸ばしたとき、ルイズはようやく破壊の杖とルーンの事を思い出した。だが、もはやどうでもよくなっている。

 

誰か、もしくは何処が杖を作ったかなど、彼女はそこまで気にする必要は無いと思っているし、フーケがルーンとカンニングペーパーのことに気づいていたとしても、今頃はもう牢屋の中である。これ以上悪さもできないだろうと考え、彼女の中では破壊の杖と自分のルーンは、然したる問題ではない、思いでのひとつへシフトしてしまった。

 

「はあ……むしろ今の私に問題なのは、こっちよね。」

 

この先の部屋の中には、悲惨なことになった羽毛布団が待っているのだ。今日どうやって寝るか、部屋の掃除をどうするか。悩むとしたらまずはこちらからだった。

 

ドアを開け、活躍の出番の無かったデルフリンガーを引きずりながら部屋に入ろうとして、ルイズはふと気づいた。

 

「あれ? 今日は閉めていったはずよね……。」

 

部屋が空いている。何故だろうと恐る恐るルイズが中にはいると、その中には見知った黒髪のメイドが、丁度四散した羽毛の掃除を終えたところだった。

 

「シエスタ?」

 

「あ、ミス・ヴァリエール! お帰りなさいませ……ご無事で何よりです!!」

 

「……ただいま。」

 

そこに居た専属メイドのシエスタは、フーケの討伐に向かったことを知っているのか。自分の無事な姿を見ると、感極まった絵顔を向けてくれた。それはすごく嬉しい、嬉しいのだがまずは聞きたいことがある。

 

「わたし、鍵をかけて行ったはずよ……なんであんたは部屋の中にいるのよ?」

 

「鍵なんてかかってませんでしたよ……?」

 

ふたりしてドアを見る。するとそこには、鍵のデッドボルト(鍵をかけるとドアの側面に飛び出る突起)のないドアがあった。

 

「……は?」

 

「あら?」

 

ふたりして首をかしげた。おかしい、たしかにドアは寮塔の壁と違い、大した固定かもかかっていないし、メイジなら誰でも使える簡単な魔法のコモンマジックのひとつ、解錠でもドットメイジすら杖を一振りすれば、一発で開くような、簡素な造りだ。何より手動でも合鍵さえあれば開く。はっきり言えばちょっとお粗末な造形で泥棒だって無理ではない。

 

だからと言って、こんな風に壊れたりはしない。曲がりなりにも貴族の部屋を守る鍵なのだ。品質において、開けやすいかどうかと、壊れやすいかどうかは一致しない。

 

「変ね。」

 

「変ですねぇ。」

 

近くに落ちていたデッドボルトの破片をつまみあげて、ルイズは思わずシエスタを見た。

 

まさか、無理矢理このメイドが壊して入ったわけでもあるまい。そんなことができるのならば、モット伯なんぞ恐くなかっただろう。夜伽を命じられたところで、その真っ最中にひしゃげてしまえるはずだ、色々と。

 

「……まあいいわ。何かもう今日は朝から色々ありすぎて、考えるのも面倒くさいの。」

 

そう言った途端、ルイズは疲れが一気に出てきた。喜びのテンションすら凌駕して、まだ昼だというのに眠気に襲われる。

 

「ふわぁ……んむ。」

 

なんとか欠伸を噛み殺してみたものの、一度上ってきた急速な眠気は衰えそうにない。

 

考えてみれば、死闘を演じてきたのだ。睡魔に襲われるのも無理のないことだと、ルイズはふらつく頭で考えてベッドへ向かう。

 

「あ……。」

 

鍵はフーケのお金で再発注しようとだけ決めて、仮眠をしようとスカートを脱いで寝そべったものの、安らぎを求めたそこには掛け布団が無かった。

 

「……布団、無いんだったわ。」

 

「すみません、ミス・ヴァリエール。お布団を直ぐに元通りにするのは難しそうで……。」

 

シルクの下着を綺麗に洗える指使いのシエスタでも、何ヵ所も裂けた布団は、直ぐには縫い直せるものではなかったらしい。買い直しまでの帰還をどうしたものかとルイズは悩む。特に今すぐ布団、というか温もりがほしい。

 

「……これじゃ寝れないじゃない。」

 

舞踏会前に湯浴みはしたいが、汚れたからだよりもまずは、先に眠りたくて仕方がない。

 

ルイズはもやのかかり始めた頭で、何か無いかと辺りを見回した。

 

……少しはしたないけれど、これでいいわ。

 

「ちょっとシエスタ、エプロンと靴を脱いでこっちに来て。」

 

「へ? は、はい。」

 

そう言って、恐る恐るベッドへとやってきたシエスタを、ルイズはぎゅっと抱き締めた。

 

「み、みみみミス・ヴァリエール!?」

 

突如抱き枕にされたシエスタが慌てたが、ルイズはその手を離そうとしない。

 

抱き寄せたままに、その顔を彼女の胸によせる。ルイズの予想通り、自分が朝からフーケの討伐へと向かったことで、専属となったシエスタの仕事は留守中ほぼ無かったようだ。ルイズが朝食すら取らなかったため、彼女は今日まだ服の汚れる仕事をしていないらしく、変な臭いも体についていなかった。臭くも汚くもないシエスタの体から伝わる熱で、ルイズは暖を取りながら目を閉じていく。

 

「良い香りがするわ……。」

 

「あああ、ありがとうございます! その、最近少しだけ……。」

 

むしろ、シエスタからは主を立てる程度の、控えめにつけた気品のある香水の匂いがする。ルイズの鼻孔をくすぐるそれが、ヴァリエール家の者に仕えるシエスタの心構えに思えて、出来たメイドに思わず口許が緩んだ。

 

「ふふ。昔……家にいた頃だけど、ね? 眠れない時は、使用人にこっそりこうしてもらったの。」

 

「そ、そそそ、そうなんですか。」

 

眠そうなまま、薄く笑ったまま語るルイズの話に、シエスタは内心慌てていた。彼女はそのケのあるタイプではない。だが好きな主に突然ベッドへ抱き寄せられ、胸に顔を(うず)められれば、流石に恥ずかしい。また、そんな実家の信頼できるメイドと同じ扱いにされるなんて、冥利につきるというものである。

 

「かあさまに見つかれば怒られるけれど、ここにかあさまは、いない……から。」

 

そんな二つの感情がシエスタの体を赤く染め上げ、その暖かさに包まれたルイズはやがて寝息をたて始めた。

 

「み、ミス・ヴァリエール……?」

 

「夕方前に、おこ、して……。」

 

すうすうと完全に眠りについたルイズを、暖めるようにシエスタが軽く抱き寄せた。

 

「ふふ、可愛い……畏まりましたわ、ミス・ヴァリエール。」

 

この時、ルイズの"もしかして"は当たっていた。ドアを壊した犯人は、今優しく彼女をその腕で抱いている。

 

しかし、そのことには本人すらも、今はまだ気づいていなかった。

 

きっかけは、この前主より授かったナイフ。財布を盗られないだけで良いと言われたが、せめてもう少しだけでも力になれたらと、彼女がたまに軽くそれを振って己を鍛え始めたことで、シエスタのからだの中にある力は、ゆっくりとだが目覚め始めていた。




シエスタのチャクラが解放され始めました( ・`ω・´)

こうしたきっかけは、日本人っぽいようでそうでもない名前だけど、ひいおじいちゃんを黒髪だから彼にするか? と思ったせい。
彼の名前を漢字適当に当ててググったら、何故か軍神のタケミナカタが検索候補一番に出たのでぴったりで、もう日本人設定でやるしかないなと。

ルイズに続いて増えるゴリr

書き始めてから別の作品に子孫がいることを知って更にビックリ。

次こそ一巻までおしまい!
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