ゼロの使い魔--ハンテプティ・ダンプティ--   作:どっとはるか

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おかしい、こんなに文字数を使うつもりはないのに。

伸びる伸びる……といってもそこは二次創作、端折れるとこは端折ったおかげでもうフーケです。

アニメ見返すとシエスタって意外と敬語適当……。


巨躯

「彼女にも、わたしと同じものをお願い。」

 

「え、そ……そんな!」

 

買い出しを終えて昼食をとり終えると、ルイズは傍に仕えていたシエスタを同席させて、彼女にも同じものを寄越すようウェイターへ頼む。

 

あれから買い出しの間、シエスタがいい仕事をしてくれた為に、ルイズからのお礼として席につくことを許されたのだ。

 

ここの方が安いとか、質がいいとか、いささか貴族の買い物としてはどうかと思う故に直接誉めることは出来なかったものの、金銭事情が切実になっていたルイズには、それがベストな買い物だった。

 

そんな優秀メイドへ綺麗な短剣も買えなかったことだし、何かモノで恩賞を与えようとルイズは思ったが、結局何も考えつかなかった。シエスタはルイズを良く知っているが、自分はまだこのメイドを気にかけ始めたばかりで、趣味も解らない。気まずくなる贈りものは避けたかった。

 

そんなわけで、ルイズは仕方なく当初の予備案、ある意味では予定通りに食べ物を与えただけのつもりだが、シエスタとしては、貴族から何かをもらうこと自体が初体験だ。更に食べたこともない上質な料理である。昼食に選ばれた料亭が貴族だけではなく、富豪の平民も利用している店とはいえ、従者が相席して食べるのは、非常に気まずかった。

 

「何よ、いらないの?」

 

「いただきます!」

 

しかし、目の前で見ていた主の昼食を食べたくないかと言えば、そんなことは無い。貰えるものは貰うし、主からの贈り物を拒むなどとんでもない。シエスタは席につくと空腹も相まり、運ばれてくるコース料理を次の皿が来る前に全て平らげていく。

 

「よく食べるわね……。」

 

「も、もうしわけありません。」

 

「いいわよ別に。それだけ働いてくれたって事でしょ。ねえ、こっちも食べる?」

 

「ええと、それじゃあ……いただきます。」

 

およそ半分ずつ残してしまった自分と比べ、そこまで太い体には見えないシエスタ。思い荷物と剣を持ったままに動いてくれた彼女とは、運動量の差はあるとはいえ、いったい彼女のどこにこれほど食べ物が入るのか。ルイズは疑問に思いシエスタをまさぐるように見つめていると、やがて視線は胸に向かっていた。入るかではなく、どこにつくのかを考えたのだ。ここまで食べればわたしも、あのくらいの胸を手に入れられるのかしら? 下げ渡しとなってしまったルイズの残飯すらも、シエスタは平然と平らげている。自分も、明日からはよりたくさん食べるべきかと考え、しかし自分の姉はシエスタより大きい胸を持つが、めっきり病弱少食ということをルイズは思い出す。

 

基準はわからない。こういう悩みにこそカンニングペーパーが出てくればいいのに……とシエスタが食事を終えるまでの間、ルイズはずっと左腕とシエスタを見て悩んでいた。

 

悔しいけれど、胸は女の武器って言うじゃない……短剣やぼろ剣みたいに、この子の乳を手で握ったらそういうのって、解らないものかしらと錯乱しつつ、少々シエスタの行儀に難があったので、そこはもしも雇用を続けるなら来月に教え込む。胸も関係が続いて信頼をもっと得られれば、揉むとしよう。そうルイズは決心した。

 

「そろそろ短剣のこと、話しておくわね。」

 

食後の紅茶も頼むと、シエスタに引き続き同席させたまま、ルイズは話し始めた。なお、ぼろ剣のほうは布で縛って鞘の中だ。いくら平民もいる料理店とはいえ、喧しさには限度がある。錆びた剣を取り出してテーブルでお話なんて真似、ルイズには出来ないしやりたくもない。

 

「シエスタ、わたしは別にあなたに嫌がらせをしたくて、あの短剣を買ったわけじゃないの。あの店主は勘違いしてたみたいだけど、これはなまくらなんてシロモノじゃないわ。むしろ逆に危ないくらいよ。」

 

「え、それってどういう……?」

 

「貸してみなさい。」

 

人目のつかない、衝立のあるテーブルを選んでいたルイズは、シエスタが何に使うかわからないままに買わされた金属製の棒を取り出す。それは固定化のかかった、薬剤をかき混ぜるための棒だ。ルイズは受け取った鞘からナイフを抜くと、おもむろにそれをすぱすぱと切ってしまった。シエスタにはまるで鉄の棒が、料理の野菜の皮むき、もしくはささがきくらいの気楽さで切り落としたかに見えて、驚きの声を上げてしまう。

 

「ええっ!?」

 

ウェイターが金属音を呼び鈴と勘違いし、慌てて口を押さえたシエスタに何事かと尋ねるよりも早く、ルイズはナイフと棒をひっこめると、何でもないとウェイターを返した。

 

「ね、すごいでしょ?」

 

興奮してルイズが話すのは、それが幻獣(グリフォン)の刃と同じ原理だからだろうか。魔法のない短剣が平民の武器なのも忘れて、ルイズはシエスタと試し切りの結果にきゃいきゃいと騒ぐ。

 

「ふふん、これを武器屋のあいつ、わたしにタダでくれたのよ。ぼろ剣の言うように、あいつはもっと目を鍛えるべきだったわね。」

 

「あはは、ほんとう。ミス・ヴァリエールの言う通りですね。」

 

ルイズは武器屋の主人のことを笑いながら、シエスタに簡単な仕組みの説明をした。

 

「なんかね、ここを光に当たらないように握ると煩くなって、代わりによく切れるみたい。指でつまんだり、そこを握らなければ、これはただのナイフってとこね。」

 

現代科学の結晶である合金ナイフであるそれは、ある程度の鉄板程度は超振動なしでも力があれば切り込める。そんな業物に思われる刃をもつ武器が、ただのナイフということは無いのだが……平民が持つナイフの切れ味の目安は、魔法を用いた刃すら使えないルイズには、解らないことだった。

 

「ふむふむ……。」

 

「この柄は普段は光にあてておきなさい。光を取り込んで、震える力に変えてるみたいだから。」

 

「それって、魔法なんですか?」

 

「それはわたしにも良く分からないわ。なんか"たいようでんち"ってもので動いてるみたいだけど、そんなマジックアイテムなんて聞いたことないもの。」

 

やはり、超振動ブレードに内蔵された太陽電池が何であるかまで、ルイズは理解できない。武器の仕組みまでしか、頭のカンニングペーパーは出て来てくれなかった。

 

「気をつけなさいよシエスタ? これで指を切ったら切り傷どころじゃ済まないわ……指が飛んじゃうんだから。料理とかあれこれと気軽に使わず、気を付けて身に着けておくのよ。」

 

「は、はい……。」

 

普段使いではなく、あくまで財布の為だけに使えと脅しつつ念押しすると、シエスタは図星だったのか、顔を真っ青にしてうなずいた。

 

「あ、そうですミス・ヴァリエール。これ、それならむしろ振らないほうが良いんじゃあないでしょうか?」

 

「どういうこと? 武器なのに振らないなんて、意味解んないんだけど。」

 

シエスタの出てきた発想が理解出来ず、紅茶を飲みながらルイズが視線で先を促す。そうすると少しおびえた様子で、その胸を腕で隠しながら話り始めた。

 

「私たち平民が襲われそうになったり、路上で痴漢にあいそうな時って、悲鳴を上げたりして助けを求めるんです。ですから、このナイフを使うのなら、その音で何かできないかなーっ……て、ダメですかね?」

 

「なるほどね……確かに悪くはなさそうだけど、それならあなたが悲鳴を上げれば良いだけじゃない。」

 

「あ、それもそうですね。し、失礼しました……。」

 

照れながら、考えていませんでしたと苦笑いするシエスタに、ルイズは笑みを浮かべながらもため息をはく。いくら煩いと言っても、このナイフの音では女性の本気の悲鳴には勝てない。シエスタは優秀なので、馬鹿の考え休むに似たりとまではルイズも言わないが、結局それは本末転倒であり、楽をしても誰も助けが来なければ意味がない。

 

「さて、話をしてるうちに食休みも済んだし、そろそろ帰るわよ。」

 

「あ、はい! すいません、お会計をお願いします。」

 

財布を持って、とてとてと支払いのカウンターへとシエスタが向かう。料金の前払い制ではない料亭へと入ることも、どうやらシエスタにとっては初めてのことであり、なんだか不思議な気分だったようだ。

 

 

 

夜、ルイズたちがトリスタニアから魔法学院へと戻り、シエスタが仕事を終えて使用人たちの寮へと帰り、起きている生徒たちも少なくなった頃。

 

「簡単に言えば生きた鉱物、あるいは金属だね。」

 

ルイズは寝る前にぼろ剣、デルフリンガーを幻獣(グリフォン)の腕へと変形させたまま握り、彼の診断結果を聞いていた。昼間はいきなり自身の腕の正体を看破したこの剣に、畏怖を覚えたルイズだったが、いざ蓋を……もとい鞘を開けて話を聞けば、似たようなことは既に知っていたりで大したことは無かった。

 

「娘っ子。この腕はお前さんの中にある玉みてーなのが本体で、必要なときにその腕を変形させるのさ。普段の腕が擬態で、むしろこっちの金属の腕の時が素ってわけよ。」

 

「ふうん。じゃあやっぱり、この腕は使い魔が化けてるのね。」

 

「まあ、そういうこったな。」

 

デルフリンガーの言う玉というのは、自身が召喚したあれの事だとルイズも見当がつく。何時の間に体の中に入ったのかは知らないが、使い魔はちゃんと召喚出来ていて、コルベールが言ったように左腕を補い、自分にしっかりと尽くしてくれていたようだ。その確信が得られればもう十分だった。

 

本当に人間か、などと言われたときには戸惑ったものだが、デルフリンガーの話を聞く限り、自分は間違いなく人間だし、腕に関しては生きた義手、インテリジェンス・ハンドとでも考えれば納得もいく……喋らないけれど。

 

"あーむず"がどんな生き物であるかを知れたこと以外は、特別、ルイズにとって衝撃の真実のは無かったのだ。それを良しとすべきか、それとも200エキュー損したと考えるべきか。腕を組んで悩んでいたところに、何やら奇妙なことをもうひとつ、このボロ剣が言っていた事を思い出す。

 

「そういえばあんた、わたしのことを"使い手"って言ったけれど、それって何のことよ。」

 

「知らね、忘れた。」

 

「あぁん?」

 

思わず握ったままのデルフリンガーへ、幻獣(グリフォン)の超振動をルイズが叩き込んだ。

 

「あばばばば! 何しやがんでい、くすぐってぇだろうが!!」

 

「あんたがふざけたこと言うからよ!」

 

買わせる文句として、あれほど意味深に発言してそれないだろう。ルイズがギロリとデルフリンガーを睨むが、顔がどこかは解らない。

 

「んなこと言われたって、6000年も生きてたら物忘れだって――ひべべべべべっ!」

 

もう一度、今度は自分の思い付く限りの全力の超振動をルイズが放ったが、デルフリンガーは壊れるどころか錆びも取れないし、鍔本の留め具のネジすら緩みそうにない。

 

「だからやめろって! あ~、でもなんだか肩が軽くなった気がするな。」

 

「はー、はーっ……あんた誰が作ったのよ。これでも壊れないなんて、信じらんない。」

 

あまりの出力に、むしろルイズの方が疲れていた。就寝前の眠気も相まって、あんたの肩は何処よなどと聞く気力も起きない。

 

この寮の壁へと直接叩き込めば、この部屋くらいは数秒で砂にする勢いだったのだが、デルフリンガーにはマッサージ程度の効果しかないらしい。信じられない頑強さに、ルイズは自分の使い魔と同じ種族か、似た何かで"ちょうしんどう"の免疫があるのではないかと思えた。

 

「ま、なんにせよこれからよろしくな。俺のことはデルフで良いぜ相棒。」

 

「はあ? 誰が相棒よ、誰が。」

 

「俺様の相棒はいつの時代も、使い手だって決まってんだよ。」

 

「何で使い手が何かも解んないのに、そんなこと言えるのよ。」

 

「そういうことだけは覚えてるんだなぁ、これが。」

 

都合の言い記憶喪失に、デルフリンガーを幻獣(グリフォン)の刃で叩き切りたい衝動にかられるルイズだが、恐らくそれは出来ない。なんだかやはり、損の側面が強すぎた買い物な気がしてきた彼女は、これってまた何かを得た代償なのかしらと、世界を呪いたくなってきた。酷くもどかしいままに仕方なく、ルイズは肉弾戦ではなく心理戦で対抗してみた。

 

「嫌よ、誰があんたみたいなぼろな剣、振るうものですか。貴族らしくないわ。」

 

明確な拒絶。よくよく考えればデルフリンガーは、ルイズの使い魔であるARMSと違って、手にもなれないし動けない。こちらが使ってやらなければ何もできないのだ。ここを弄ってやれば、少しは気が晴れるかもしれない。そうルイズは内心笑いながら、そっぽを向く。

 

「そんなこと言わねえでくれよ相棒。」

 

「嫌。」

 

「硬いぜ、俺。」

 

「嫌。鋭い剣がわたしにはもう有るもの、いらない。」

 

「盾としちゃ最適だろう?」

 

「嫌――って、あんた剣じゃない! 盾の扱いで良いの!?」

 

拒絶し続け心理ダメージを与えようとしていた途中だが、思わずルイズはつっこみを入れる。

 

「良いも何も、俺様はもとから相棒の盾として作られてんだよ。」

 

「……。」

 

心理戦も忘れてルイズは絶句した。設計者の意図が何ひとつわからない。喧しく、口が悪く、錆びてるのに壊れず、盾目的に作られた、重くて振り回しにくい、150サント(センチ)はある大剣。どんな用途で欲したら、こんなものを作るというのだろうか。寂しがり屋な旅人だって、もっと見た目や性格の良いものを作ると思うし、防ぐ目的なら、初めから盾として設計するはずだ。

 

ルイズはデルフリンガーと真面目に話しているのは、無駄な時間な気がしてきた。

 

「もう疲れた……寝るわ。」

 

「ちょ、待てよ相棒。話はまだとちゅ――」

 

何よりこのぼろ剣と話してると疲れるし、これ以上の話はこいつが思い出さないと聞けそうにない。

 

ルイズはデルフリンガーに思い出してもらうのは後回しにして、精神の安寧を優先することにした。

 

剣を鞘に納め、布で鍔本をぐるぐる巻きにしてもう喋らせないようにすると、もそもそとベッドへと向かう。

 

「あら?」

 

何だか負けたような悔しさをデルフリンガーに感じたルイズは、寝る前に月でも見て心を落ち着かせようと、空を見上げる。すると彼女は、何やらおかしなことに気づいた。

 

月がひとつしかない。そんなことは、青い月と赤い月の二つが浮かぶハルケギニアでは、月蝕や日蝕などで星が交差する時しかあり得ない。

 

「今日はそんな日じゃなかったわよね?」

 

良く見ると、月が無いのではない。見えないのだ。何かとてつもなく大きいものが、空に暗い影を作っている。それがルイズの部屋からの視界を邪魔をして、窓から夜空を半分覆い隠していた。

 

「何あれ……。」

 

その影は、中央塔に届きそうな高さがある。大きさにして約30メイル。

 

「ん、30メイル?」

 

どこかで聞いたような……と今日のそこそこ楽しかった休日を、ルイズが振り返った。

 

「……っ! そうよゴーレム!」

 

それを操る盗賊の話を、武器屋の店主としたのを思い出して、ルイズは窓を開けてより真剣に影を見た。その影はずんぐりとした人の形をしており、手と足が存在している。やはり誰かの操る、とびっきり巨大なゴーレムで間違いないらしい。

 

「まさか、あれが土くれのフーケ!?」

 

そうルイズが叫んだ直後、ゴーレムが塔を殴り始めた。物凄い衝撃の振動が大地を揺らし、聖堂の鐘のような優しさを持たない、鈍い音が鳴り響く。ルイズの体がびくりと竦むと、本能的に彼女は縮こまった。

 

「ひっ……。」

 

大地へ叩き潰されそうな、心臓へと響く音にルイズは目を閉じて震えたが、同時にフーケの話を聞いた時のシエスタが、彼女の瞼の裏に写る。

 

「そうよ、言ったじゃない。こういうのは貴族の仕事よ……。」

 

貴族に二言はないわ。自分の言葉は曲げてはいけないのよ。

 

震えながらも立ち上がったルイズは、寮を出てゴーレムのもとへと向かった。

 

「中央塔……狙いは宝物庫ね!」

 

国から預かった秘宝も中にはあるという。トリステイン貴族の名誉をこれ以上、身勝手な盗人に汚されない為にも、そこに入れるわけにはいかない。

 

ルイズは駆け寄りながらARMSを解き放ち、幻獣(グリフォン)の刃へ左腕を変える。

 

「てえぇいっ!」

 

勢いのままに刃を食い込ませ、ゴーレムの足を切ろうとしたものの、土のゴーレムはすぐにその傷を塞いでしまう。なにより輪切りにするには、幻獣(グリフォン)では刃の長さが足りなかった。

 

「それなら、こっちよ!」

 

これでは駄目だと解ると、ルイズは直ぐに別の戦法をとる。無駄に主張してくるカンニングペーパーのおかげで、こういう相手はどれが効果的なのかはっきり解るのだ。

 

デルフリンガーにした時のように、ルイズはゴーレムに手のひらを当てると、超振動を叩き込んだ。

 

「もとから砂だもの、直ぐに壊れて倒れるはずよ!」

 

海で作る砂の城だって、揺らせば崩れるのは道理だ。同じことを、幻獣(グリフォン)は建物や金属相手でも出来る。

 

だが逆に、そのカンニングペーパーから彼女が思い浮かべた光景は仇となった。それは、魔法のない時にどうなるかにすぎない。ルイズの理屈が通るのならば、30メイルのゴーレムは動くだてけで自壊しただろう。

 

固定化に似た魔法が、土を繋ぎ止めてゴーレムたらしめている。この計算をルイズは入れ忘れていた。

 

結果、ルイズは自身の部屋と同じほどの太さがあるその足を、ある程度は崩すものの壊しきれなかった。土だけならば、どうにかなったかもしれない。しかし壊した箇所はまたもとの形へと戻り、いたちごっこの状態を作り出してしまう。

 

「ちっ、なんだい鬱陶しいね!!」

 

そして、それは遥か高くにあるゴーレムの肩に立つ者の怒りを買った。半端に崩れたせいでバランスが悪くなり、ゴーレムの放つ拳打の威力が塔へはっきり伝わらなくなった為だ。壊しきれないものの、ルイズの行動は妨害になっていたらしい。

 

「邪魔すんじゃないよ!」

 

大木より太いゴーレムの腕が、金魚を掬うように振るわれる。超振動を間近で出していたルイズは聴覚が鈍っており、何かが振るわれる音に気づかなかった。

 

「えっ……。」

 

横から突然、土の壁が迫ってくるのを彼女が気づいたときにはもう遅い。

 

「がふっ……!」

 

「バラバラに砕けちまいな!」

 

激しい痛みと共に、ルイズは振り子のように動くゴーレムの腕によって、空高くへと放り出されていた。

 

見えなかった二つの月が目に映ると、一瞬の滞空をした後に重力で捕らわれて、ルイズの体が急速に落ちる。

 

死ぬ。

 

落下する背中から受ける空気の感触と寒さが、それをルイズの脊髄から脳へと伝える。

 

「きゃあああぁっ!!」

 

左腕が無事でも、ここから落ちればルイズが持たない。死にたくないと願ったルイズが、必死に視界の左側に映る学院の塔へ腕を伸ばす。だが、もはや幻獣(グリフォン)の刃すら届かない距離だった。

 

このまま落ちて、トマトのように潰れるの?

 

嫌よ、わたしはまだ使い魔を得ただけ。立派なメイジになってないじゃない!

 

コントラクト・サーヴァントの成功と同時に失った杖。一度は魔法が成功したのだから、その杖さえあれば今の自分は魔法を使えるかもしれない。

 

なのに、それすら見ることなく終われるわけないでしょう!!

 

未来を掴むために諦めないルイズへ、誰かが語りかけた。

 

力が欲しいか……?

 

ギーシュと決闘の最中に聞いた声の再来に、ルイズの心臓が跳ねた。力が欲しい……この窮地を脱する力をルイズは欲する。

 

力が欲しいのなら――

 

……ご主人様が生きるために、わたしに力を貸しなさい!

 

 

くれてやる!!

 

 

神の卵は、彼女へ新たな力を授けた。

 

「……突き刺さりなさい!」

 

ルイズは、左手が何かに触れたのを感じる。それは、すがろうとしていた魔法学院の塔に他ならない。文字通り、手を伸ばしたルイズが外壁を掴んでいた。

 

「縮んでえええぇっ!!」

 

新たに頭に浮かんだカンニングペーパーが、幻獣(グリフォン)とは異なる姿をとった左腕の使い方を、ルイズへと教えていた。新たな腕はルイズの言うように縮むと、塔の壁に彼女を張り付ける。

 

壁に食い込むその腕は、幻獣(グリフォン)が刃の付け根とする肘から手までの位置に装甲を纏っていた。丸みを帯びたそれの内側から直接生えたような、塔へと爪を突き立てた指も、人間らしさの残っていた幻獣(グリフォン)とは大分形を変えている。分厚く角張ってどこか猛獣や、魔獣を連想させる恐ろしさがあった。

 

そう、魔獣(ジャバウォック)。それが、今の左腕の名前だと理解したところで、冷静さを取り戻したルイズがはたとと気づいた。

 

「ここから……どうやって戦えって言うのよ~~~っ!」

 

ただ手が伸びる"力"だけではないことは、彼女も理解している。この手の"力"なら土のゴーレムもなんとかなるかもしれない。

 

だが、だがしかし。一度地面へと降りるか、塔の頂へと昇るかしなければ、ルイズは身動きがとれないのだ。

 

「ぼろ剣……持ってくるんだった。」

 

あれなら、右手でフーケめがけて投げつる程度はしてやれたかもと、ルイズは思った。

 

この発想がおかしく、武器屋でデルフリンガーを掴んだ時といい、武器を持つ時の力が少女のものではないことに、彼女はまだ気づいていない。使い魔は既に、左腕だけに留まっていなかった。




劇中語らない独自好き勝手裏設定・ARMSに必要な適応要素。ピンク髪になる可能性を那由多の彼方にでも持つ遺伝子。そら地球人じゃ存在しないに等しくなるって。

ジャバ男さんの腕登場。

魔獣(ジャバウォック)の腕
装甲と腕力に優れたARMSの主人公が持つ、劇中のチート武器のひとつ。怪我をしても即時、無限に再生するARMSがこれで傷をつけられると、その部位を再生できなくなるARMS殺しがその爪に内蔵されている
ARMS殺しは、作中に現れたキース・シルバーという中ボスのように、あまりに深く抉られると、人の治癒のように傷痕を脂肪ですら覆えなくなり、抉られたままなのでARMSからもとに戻せず、下手な怪我よりたちが悪い(これは爪でついた傷ではないけれど)

この爪の異様さは対ARMSの性能だけではなく、テレポートしかけてる人間を裂けば、テレポートが打ち消されたりと、概念や事象を切り裂いてしまう点にある。固定化を切り裂いてしまったのはそのせい

デルフリンガー>爪>宝物庫の固定化>幻獣>寮など貴族設備にかけられた固定化>超振動ブレード>平民設備にかけられた固定化>ワルキューレ……といった感じに考えています

また、腕が伸びる
学校の三階辺りまで伸びる
この機能は飛び道具も持つせいか、すっかり後半無くなったようにみえて、ブラック戦ではがっちり健在

他にも色々有るけど、とりあえず今発現したのはここまで。
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