吸血鬼Vtuberになる直前に自分のアバターに襲われて本物の吸血鬼になった   作:稲光結音

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ASMRの双子

 灰音姉妹。リアルでの苗字を双神と言うのだが、彼女達と最寄りの駅で待ち合わせをしている。というかそのためにリアルの名前を教えてもらった。見た目が活動中そのまま私といてVの名前で呼び合ってたら正体がバレバレだ。

 

「メアリーちゃん……」

「ついたよ……」

 

 合流すると同時に頬の左右にキスをくれた二人が双神姉妹。夜子と朝子だ。しかし……どっちがどっちだ?

 

「私、夜子……」

 

 右手を上げる、黒ゴスロリの少女。とはいえ、Vtuberとしての立ち絵とは違うデザイン。

 

「ボク、朝子……」

 

 左手を上げる、白ゴスロリの少女。こちらはまさかのアルビノ。白い髪がまぶしい。

 真っ黒と真っ白、相対的な二人だというのは配信と同じだ。

 

「顔もそっくりだな。本当の双子か?」

 

 二人は同時に頷き、順番に話していく。

 

「服じゃなくて……」

「髪で覚えてね……」

 

「「じゃないと……」」

 

 ハモって見せて、私の両耳にそれぞれぴったりと張り付き。

 

「「脱がした時分からなくなるでしょ……?」」

 

 そう囁いて私を震えさせた。彼女達の得意なASMRだ。

 

「あ、ああ。そうだな。間違えるのは失礼だ」

 

 レズになりたての私には刺激が強すぎる。これが二期生の本気か。

 たまらず視線を逸らせば二人の手には大荷物。

 

「荷物が多いが、それは一体?」

「私は二人分のお泊りセット……」

「ボクはマイク……」

 

 ふむ。私よりは僅かに大きいとはいえ、世間一般では小柄な方に入る彼女達にそんな荷物をいつまでも持たせてもいいものか。人外故の怪力を持つ私が代わりに持ってやるべきじゃないかと思い、提案したのだが断られた。

 

「それよりも……」

「手を繋ぎましょう……?」

 

 そう言って差し出された二つの手を握り、私は三人で横一列になりながら自宅へと彼女達を連れ込んだのだ。ちなみに語ってなかったが眷属も常に後ろからついてきている。こいつ本当喋らんな。

 それで荷物を置いた二人と配信時間まで遊ぼうかと思ったのだが、彼女達の遊ぶとはあの事だったのである。寝室を案内させられて、二人は服を脱いでいく。

 

「蕩けさせてあげる……」

「愛してあげる……」

 

 朝から会おうって言われておかしいと思ったが、まさか配信時間までずっと弄ばれるとは思いもしなかった。両サイドから四本の腕が私を快楽に誘い、突起した部分はすっかり感度を上げられ調教済みだ。今度眷属とブラ買いに行かないといけないくらい。でも凄い良かった。腕枕した両腕の中で甲斐甲斐しく私を楽しませてくれたのは幸せ。キスもめちゃくちゃしてくれたし。

 そんな訳で、配信時間だ。

 朝子の持ってきたマネキンの頭部のようなASMR用のバイノーラルマイクを設置して今日の配信がスタートする。というか現実世界で配信するの久しぶりだな。こっちでやってる間、眷属がイラストの仕事できないんだよ。だからといってリアルの人間の双神姉妹は電脳空間に入れられない。

 

「トリックオアブラッド。トリオ・ザ・ハロウィンのブラッディ・メアリーだ。ごきげんよう家畜達。今日はゲストが二人来てくれているぞ」

「灰音クライネ……よろしく」

「灰音ナハトム……よろしく」

 

『こんヴァンパイア。お嬢の声が耳に響く~』

『片耳ずつから双子ちゃんの囁き声がする。耳が幸せ』

『これマイク双子ちゃんの持ってるやつだな』

『珍しい組み合わせだけどなんなん?』

 

 当然、そんな質問も出るだろうなとは思っていた。当たり障りのない答えを用意してある。本当の事は当たり前だが言えるわけがない。3Pしたくなって相手連れてきただけです、なんて。

 

「アズキがこの前、一期生と二期生の皆を紹介してくれてな。そこで、私のしようと思っている配信の中には無かったASMR配信をしている二人に興味を持った。それだけだよ」

 

『一期生二期生、三期生四期生の間には壁があったのに一足飛びで五期生のお嬢が紹介されたのか』

『アズキちゃんの方もお嬢気に入ってるみたいだったしなー』

『新しいタイプの配信に興味持ってえらい』

『双子ちゃんも協力的で優しい。好き』

 

「好きって言ってくれてる人がいるよ、ナハトム……」

「私達も視聴者さんの事好きだよね、クライネ……」

「「そう、私達は視聴者さんの事が好き」」

 

 ハモり、両耳の形をしたマイクの左右から囁く。その威力にコメント欄のリスナーはメロメロだ。この手管は長くやってきただけあって上手いなと感心してしまう。

 

「メアリーちゃんも好き……」

「妹みたいで好き……」

 

 こっちに矛先が向いてきた。さっきベッドの中でやられたASMR攻撃を思い出して俯いてしまう。

 

「照れてるの……?」

「かわいいね……」

「「メアリーちゃんはかわいい」」

 

 配信中だ。私に向けてやっても仕方ないとは分かっていても、リスナーに向けてその言葉を発してサービスしてみせるのはなんとなく心にもやっとしたものが残る。

 そしてそんな私のご機嫌をとるかのように、二人は会話の合間を縫って頬にキスをしてきた。小悪魔的だ。

 

「今日はメアリーちゃんがASMRに挑戦するよ……」

「喋る内容、考えてきてねって言っておいたから……」

 

 そう、昨日の夜リスナーに向けて囁く言葉を考えておいて欲しいと言われたのだ。当日一緒に考えない理由が分かったわ。その時間を使って私で遊びたかったからだ。

 

「じゃあ、始めるぞ……」

 

 息を一つ吸い、出来る限り穏やかに、右耳に囁くように言葉を紡ぎ始める。

 

「ごきげんよう、家畜……眠れないのか? 仕方のないやつだ……私が一緒にいてやろう。なあに、夜は吸血鬼の時間だ。少しくらい貴様に割いたところで、時間はたっぷりある……」

 

 沈黙。自分のマントでバイノーラルマイクを仰ぎ、環境音を出す。そして、左耳のマイクに近づいて言葉を続ける。

 

「ああ、すまないな……少し、姿勢を変えた。こっちの方が……私を身近に感じられるだろう……?」

 

 普段の配信では絶対やらない、優しい声だ。吸血鬼らしい強さは、そこには一切無かった。ただ、少し尊大なだけの少女としての一面。

 

「おやすみ、家畜……よい夢を見る事だ……」

 

 以上で終了。コメントでも見るか。

 

『Zzz……』

『幸せだ』

『バブみを感じる』

 

「いつまでも寝ているな家畜共。さっさと起きろ」

 

 ぼんやりしているリスナーに普段の調子で語りかける。いつまでも甘えられてはたまらない。

 

『なんだ夢か』

『お嬢があんな優しいわけないもんな』

『でもいい夢だったよ』

 

 好評ではあったらしい。あんなんやって好評じゃなかったら腹立たしささえあっただろう。

 

「とってもよかった……」

「環境音もやるのいい……」

 

 ASMRを得意としてる二人にも褒めてもらえるのは嬉しいものだ。

 

「他にもやってほしいものがある……」

「うちのリスナーから頼まれた……」

 

 ん? そんな話は打ち合わせにはなかったな。

 

「なんだろうか。やれるものなら構わないが」

「10からのカウントダウンボイス……」

「0は三回くらい言うの……」

 

 そう来たかー。知ってるぞ、成人してるからな。

 

「……まあ、いいだろう」

「私達もやった……」

「切り抜きもされた……」

 

 そりゃされるだろうな。まあ、私も仲間と同じ恥をかくのも悪くないか。

 

「じゃあ、いくぞ。――じゅう……きゅう……はち……なな……ろく……ご……よん……さん……に……いち……」

 

 左側のマイクから先程のような優しい声色で数字を減らしていく、そして。

 

「ぜろ……! ぜろ……! ぜろ……! ぜろ……! ぜろ……!」

 

 僅かに威圧感を込めた力強いゼロを右からお届けした。

 

『M向け!?』

『五回はきつい』

『お嬢分かっててやってるな!?』

 

 当たり前だろう。さて、オチもついたし配信もそろそろにするか。

 

「今日はここまで。良い夢を見る事だ、家畜共。今日の配信、お相手はブラッディ・メアリーと」

「灰音クライネと……」

「灰音ナハトムでした……」

「「「じゃあね(な)」」」

 

 配信を切った。パソコンは眷属に返して早速仕事の続きをやらせる。

 そして私達は寝る時間だ、と思ったのだが……

 

「メアリーちゃん、愛されるだけじゃダメ……」

「愛し方も、覚えて……?」

 

 という二人の誘惑により、私が掛け算の左側も挑戦する事になったのだ。

 やり方が下手だと身をもって触り方を教えられる。

 結局二人を満足させるまで、一晩丸ごとかかったのだった。

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