吸血鬼Vtuberになる直前に自分のアバターに襲われて本物の吸血鬼になった   作:稲光結音

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コラボビッチ(コラボだけじゃない)

 灰音姉妹との記念写真や動画はくじらサーバーにデス子に上げて共有した。もちろん肌色要素の多いやつだ。私の眼を通して脳内スマホで写真や動画を撮影できるので、ベストショット取り放題。汁噴かせた瞬間もばっちりだ。

 味も良かったし、吸血鬼的にも満足のいく食事になった。女性の汁啜って生きていくか。同じ体液だし実質吸血鬼らしいだろう。

 それはそれとして、くじらサーバーでおかず集めをしてて気付いた事がある。私ほどじゃないが皆、立ち絵とリアルがある程度似ている。一番違うのが汐井レナというロリ巨乳の3Dダンス配信者で、実際は貧乳だ。でもストリップしてる様子は色気と背徳感たっぷりだった。彼女も見た目ロリだからな。胸が無いから余計に。

 あとは倉瀬アズキか。彼女は逆に、実際はメカクレロリ巨乳なのに立ち絵が貧乳だ。この二人の胸のサイズ感だけ違うのはなんなのか。実際に聞いてみた。

 

「おっぱいを揺らすとね、お金が入るの」

「お金」

 

 くじらサーバーでレナに聞いてみると、その理由はシンプルだった。

 

「そ。ダンスするならぶるんぶるん揺れてた方が視聴者にウケるのよ。3D配信やる前から、胸がでかいってだけでちやほやされてたしね。で、一期生は妾口調の内藤ナインと貴女のお母さんの松葉チユリ、うちの諸悪の根源、倉瀬アズキのみんな胸大きかったから私まで大きくしちゃうとバランス悪かったのよね。そしたらアズキが自分の立ち絵は胸小さくていいですよって言ってくれて交換したの」

 

 あの頃はアズキがいいやつだと思っていたわぁ……などとしみじみと語っている。

 

「私はね、数字が増えるのが好きなの。動画再生数、チャンネル登録者数、同時視聴者数、ハイパーチャット……自分の努力で数字が増えるのは活力になるわ。自分が頑張った証だもの。

 数字そのものも好きだけどね。幼稚園児の頃、寝かされて暗い部屋の中、じっと待ってると実家のデジタル時計が一つ数字が進むのが嬉しくて、徹夜で見てたことがあるくらいよ」

 

 それはまた筋金入りだ。だが、他のVtuberと競い合うなら彼女くらいのハングリーさが必要なのかもしれない。特にVが流行し始めた黎明期を生き抜いてきた彼女達一期生なら猶更。

 彼女の数字への渇望が実際に形になっている確かな一面もある。レナはアズキに次いで一期生二番目の登録者数を誇っているのだから。

 

「で、どうする? 私ともヤる?」

「ぜひお願いしたい。そうすると、どっちの家に行くかだが……」

「ラブホでも良くない?」

 

 もっともな意見だ。だが、私には譲れない部分がある。

 

「配信はしたいんだ。毎日配信を心がけている」

「インターネット繋がってるラブホもあるでしょ」

 

 詳しいな……こういうところに経験値の違いが見え隠れしてくる。

 

「な、なるほど。じゃあそこにしよう」

「私がノートパソコン持ってくから、メアリーには準備しておいてもらいたいものがあるのよ」

「なんだろうか」

 

 マイクとかだろうか。

 

「百円玉。できるだけ多く」

「そんなもの何に使うんだ?」

「私がイかせるたびに百円頂戴。ラブホ代は私が持つから」

 

 守銭奴! いや違う。そうだとしたらラブホ代を払うなんて言う訳がない。

 

「それに何の意味が……」

「言ったでしょ? 私、数字が好きなの。ヤればヤるほどお金が搾り取れると思うと燃えるのよ」

 

 プレイの一環だったか。色んな性癖があるものだ。

 

「用意しよう。どのくらいあればいい」

「んー、一万くらい?」

 

 百回イかせる宣言に等しい発言に、私の心は期待と不安の荒波に飲み込まれるのだった。

 

 

 ラブホに謎の力で入れなくて不審がられたわ。そういや吸血鬼にそんな制限あったな。いつからラブホはロリを強制的に排除する仕組み出来たのかと思った。思えばいつだったかコンビニでも同じことあったし。レナに中から招いてもらってなんとかなった。

 

「トリックオアブラッド。トリオ・ザ・ハロウィンのブラッディ・メアリーだ。ごきげんよう、家畜共。今日もゲストが来ているぞ」

「はぁい、汐井レナイト達。今日もよろしくね♪ みんなのダンサー、汐井レナよ。それにしてもこんな短期間でアズキ、クライネ、ナハトム、私と連続でコラボするなんて、メアリーはコラボビッチね!」

 

『いや草』

『ストレートすぎる』

『ちょっと思ったけどもw』

 

 コラボビッチどころか、普通にやることヤってるしシンプルにビッチなんだがな……しかしそれはレナも分かっていることだろう。

 

「人聞きの悪い事を言うな。それに吸血鬼の私からすれば人間なんて家畜みたいなものだ。家畜相手に性欲が湧くか?」

 

 強がりだ。すでに私は配信で女体の良さを語っている。だが、それを聞いたレナは悪戯っぽく笑う。

 

「ふーん……一緒にラブホにいるのに?」

 

 爆弾落としてきたぞこいつ。

 

『たしかに配信中の音の反響が違う。普段とは別の部屋だ』

『あらあらうふふ』

『アズキちゃん様以外の女と……ビッチじゃないか』

 

 どう収拾をつけたものか。というかアズキはどうなんだ、あいつは普通に複数の女をモノにしてるのに許されてるのか? ファンもなんとなく知ってるんだろう?

 

『なるほどね、第二のアズキちゃん様ってわけだ』

『双子ちゃんともヤったのかな。やったよな』

『吸血鬼のお食事タイム。興味があります』

 

 あれと同類扱いだよ最悪だ。いやまあ、性欲に流されてるのは事実なんだけど、他の一期生二期生も本当は同じようなものなのにさあ。

 

「まあ、今日はダンスを教えてあげようと思って五月蠅くなってもいいところを選んだんだけど。歩き方で分かるけど、メアリーはスポーツやった事ほとんどないでしょ」

 

 話を変えてくれた。お前ほんとやめろよなと言いたくなる。

 

「あ、ああ……学生の頃、体育くらいだ」

「足の裏全体で歩いてる。爪先に体重乗せて、膝で衝撃を吸収。見ててね」

 

 そういうとレナはジャンプして……音もせずに静かに着地した。

 

「これが出来るようになると最低限、運動する時に便利よ。爪先と膝、腰を使った体重移動は基本中の基本だから」

「なるほど。しかしなんでこんな事を教えてくれるんだ?」

「夜の腰使いの方がよかった? それは配信の後でね……♪」

 

 分かった。こういう『匂わせ』が彼女のファンサービスなのだ。アズキが、いやアバターモエクス全体がやっているのと同じように、女の子同士の仲の良さをアピールする手段。それが過激なのだろう。

 ファンは常に刺激を求めている。それに答えるのは劇薬で、一度使えばもう弱い薬は使えない。常に激しくしていくしかないのだ。それをせずにいられるのは、常に一定のラインを保ち続けることの出来るバランス感覚の良い者だけ。

 

「後はこういう練習方法で……」

 

 地面を斜め横になぞって進み、角度を変えてまた進む彼女を見て、私も真似をする。

 すこしやっただけじゃ効果は無いかもしれないが、こういう普段やらない事を体験しているというコンテンツになる。私はどこまで行っても配信者なのだ。電脳吸血鬼ブラッディ・メアリーはそういう設定で作られた。

 

「ま、この練習ダンスじゃなくてバスケだけどね」

「おい」

 

 オチもきっちり用意してくれてた。

 

「と、いう事で今日はこの辺りでお開きだ。家畜諸君、良い夢を。お相手はブラッディ・メアリーと」

「汐井レナでした。この後、メアリーとベッドの中で遊びまーす」

 

 それは本当の事だろう。意外と百合営業と見られて本気だとは思われないのか?

 配信を切った。するとレナはベッドの上で立ち上がる。

 

「それじゃあ次に教えるのは……えっちな服の脱ぎ方」

 

 そう言って、レナは観客が私だけのストリップショーを見せてくれた。私はそれを目に焼き付け、脳内スマホにも録画した。あとでくじらサーバーにもアップしなければ。

 ベッドの中で抱き合った私達はぴったりと寄り添った。ああ、貧乳同士で抱き合うと、こんなにも顔が近い――双子姉妹のせいで敏感になった先っぽ同士でキスをしながら、そんな事を想う。

 

 

 

 翌日、解散して帰宅後にくじらサーバーに互いの痴態をアップしていると、アズキから通話に入って欲しいと連絡が入ったので今回の成果である画像と動画をアップロードし終えてから通話する。

 

「いやあ、お盛んですね」

「嫌味が目的なら切るぞ」

「そういうわけじゃないですよ。ただ、この調子なら一期生と二期生全員とコラボも夢じゃないなと思いまして」

 

 ヤれる奴とヤってるからそういう事になる。

 

「ですのでいっそ、メアリーさんは三期生や四期生にも手を出してみたらどうですか?」

「……それは、まだ純情な少女達を毒牙にかけろということか」

「どうでしょう。ただ……全員とコラボを目指しているともなれば、貴方を好いていない方も近寄らざるを得ないんじゃないですか?」

 

 一体誰の事を言っているのか。はっきり言って欲しい。

 

「松葉チユリさん。お母さんとコラボしてみたいと思いませんか。そこに、性的な理由があるにしろないにしろ」

 

 それは、魅力的だ。もしかしたらコラボをしてみたら私の印象が変わって、どちらかといえば嫌いという扱いを脱却して、私を好いてくれるかもしれない。

 

「まあ、男の方々とコラボするかは任せますけどね。個人的にはそこまでする必要は感じません。どうするかはメアリーさん次第と言うことで」

 

 ダー・バーテンは一度会ったことがあるが悪い奴ではなかった。しかし、そうするとサイバともコラボしないといけない空気はある。

 別にサイバが嫌というわけでもないが……気まずさは感じる。なんせトリオ・ザ・ハロウィンを結成して露骨に余所者扱いした相手だ。

 男とコラボする事を視聴者が望まないというのもあるだろうが、どうしたものか。

 お母様を説得するなら、全員とコラボ目指してますと言えるようにコラボするべきなのだろうが……お母様次第と言ったところか。

 

「悩んでいるようですね。では、男を入れるかどうかは別として目標アバターモエクスの全員とコラボ、狙ってみますか?」

「ああ、やってみる。性的な関係になるかどうかは別だぞ」

「そこはメアリーさんの性欲の赴くままに……」

 

 それヤれって言ってるだろ。

 

「ただ、くじらサーバーには誘わんぞ」

「そうですね。それはやめてください。ここはあくまで私の前で鯨の真似をしてくれた面々を集めてるだけですから」

 

 部屋に出来た染みを思い出し、私は赤面した。

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