吸血鬼Vtuberになる直前に自分のアバターに襲われて本物の吸血鬼になった   作:稲光結音

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番外「ミス・パンプキンのある日の配信」

「トリックオアトリック。トリオ・ザ・ハロウィンのミス・パンプキンだよー。この前ねー、見ちゃった。他のモエクスの人の配信で『お前頭パンプキンか?』って言ってる人。お前なー、あれよ。頭にカボチャつけてるようなやつと同じだって言ってるんだぞ? 侮辱にもほどがあるだろ」

 

『いや草』

『自虐していくぅ』

『お前はそれでいいのか』

 

「だからね、私は考えたい。人に使って許されるレベルの罵倒を」

 

 配信画面の下枠いっぱいに、人に使って許されるレベルの罵倒を考えると表示される。

 

『自然な導入』

『今回のトークテーマか』

 

「関西とかではね、アホは結構手軽に使われてるって聞くんだよね。でも関東の方ではそうじゃないじゃん? だからね、どこでも使って許されるものが欲しい」

 

『この配信見たリスナーがそこかしこで使う未来が見える』

『そんなのがあったら広まるだろうな』

 

「あー、待って。言い方が悪かった。私の持ちネタが欲しいくらいの意味で捉えて」

 

 画面下の文字に追記で(私の持ちネタ)と追記される。

 

『りょ』

『しかたないにゃあ……』

『なんかこう丁寧に言えばいいんじゃね? 頭くるくるパーさんみたいな』

 

「それ多分くるくるが無駄に強いんだよな。頭パーさんかよ、くらいなら優しいかも」

 

『パーさんis誰ってなるぞ言われた方』

『なんか人名見たいんだんだよなー』

『頭ダーさんかよ』

 

「待て待て先輩を持ち出すな。あ、触れない方がよかったか」

 

『ダーさんだからなあ』

『実はまともって人だったのも今は昔』

『サイバとくだらねー配信するようになっちゃってまあ』

 

「あーあー、いいよもう私じゃなくて他の男がいいのね! 嫉妬しちゃう!」

 

『そんな喋り方じゃないだろお前』

『ヴォエ!』

『しなを作るな気持ち悪い』

 

「だったら他の人じゃなくて私を見ろよなー。この美しいカボチャ、旨そうだろ?」

 

『いつみても馬鹿みてえ』

『お姉さんハロウィンはもう終わってますよ』

『正直身体の方が美味しそ(ry』

 

「旨そうって言えばさ、この前タコ焼き食べたんだよ。つまようじでぷすっと刺して。それでまあ、つまようじってのはバランスが悪い! なにせ一本しか支えがないもんだからさ。そしたらたこ焼きの皮だけがべろっと剥がれて熱々の中身がぼろっと落ちて足元にべちゃっと……悲鳴をあげたね」

 

『ひえっ』

『地獄じゃん』

『生地だからべとついてるのが性質悪い』

 

「バランスが悪いと言ったらあれだな、バランスポール。知ってる? 円柱状の固めのスポンジみたいなやつで、背中に押し当てて使うんだけど、それやってると腰とかにいいらしくてさ。配信してるとどうしても座りっぱなしじゃない。買ってみたの。背中に押し当ててゴロゴロしてたんだけど、油断してたらすってんころりん。むしろ腰痛めたわ」

 

『今日びすってんころりんとか聞かんが』

『お前はおむすびか』

『カボチャだけどな』

 

「配信と言えばさ」

 

『始まったぞパンプキン名物』

『マジカルストロベリー方式トーク』

『○○と言ったら××、××と言ったら……で無限にトークするやつ』

 

「いいだろ好きに話させろよう。で、配信と言えばフネちゃんね。毎日ビーペックスやってるじゃん? 負けず嫌いだよね。たぶんアズキさんに負けたのがそうとう悔しかったんだろうね。私は相手が凄すぎてまた勝負しようって気にもなれないや。やっぱりそういう向上心ってやつが強くなる秘訣なんだろうなあ。もう私はそういうのしばらくいいかな。あ、コラボ自体はしたいね。メアリーちゃんとも一緒にね」

 

『たしかにまた見たい』

『メアリーちゃん上手くなってるといいね』

『お嬢は今コラボで忙しいからな……』

 

「で、向上心と言えばさ」

 

『この流れで話題メアリーちゃんじゃないんかい』

『話題変幻自在すぎて草』

『そこは同期を優先してもろて』

 

「ああ、そっか。そうだよね! いや話に夢中になると何も考えてないからさあ」

 

『雑談で無我の境地に達するな』

『雑なトークするなし』

『頭パンプキンかよ』

 

「私の頭はどう見たってパンプキンだろうが!」

 

『草』

『残念ながら当然』

『形のいいカボチャですよね』

 

「で、なんだっけ。そうそうメアリーちゃんね。最近コラボめっちゃしてるね。そういうのあんまり興味ない娘だと思ってたから意外」

 

『面子が面子だから邪推するわ』

『双子とかレナちゃんとかだからヤってるってやつね。夢がある話だ』

『アズキちゃん様とは明らかにヤっただろうけど、他のメンバーともってのはありよりのあり』

 

「あー、やめやめ。そういう話は無し。って言いたいところだけど、メアリーちゃんといちゃいちゃしたくはあるよね、私も。私ロリコンだから。同期二人がロリで歓喜した」

 

『やはりお前もアバターモエクスの一員だった』

『二人とも逃げて』

『同期二人って露骨にハブったのがいるな……』

 

「言ってもキスくらい、キスくらいだから! ガチでヤり合うのは犯罪臭いというか……」

 

『その頭でキスするの?』

『初めてのキスはカボチャ味』

『頭のそれ外してもろて』

 

「あー……これは外せないからなー。膝に乗せるくらいにしとくか。幼女って体温高いから乗せてるだけでも幸せになるよね」

 

『ヘイ、ポリスメン?』

『なんでそんなこと知ってるの』

『やべーやつだわ』

 

「ち、違うよ親戚の娘だよ! さすがにね、その辺は。ちゃんと」

 

『焦るとガチっぽくなるからやめろ』

『そういやお嬢は体温低いってか冷たいらしいよね』

『その頭って結局外さないの? 外せないの? 呪いの南瓜なの?』

 

「この頭に関しては秘密でーす。謎が多い女、ミス・パンプキンである」

 

『謎が多い(雑談で私生活ポロポロ話す)』

『謎が多い(飲酒配信で昔の職場について愚痴る)』

『謎が多い(カボチャ頭のくせにトーク内容は料理の話が多い。どっから食ってんだ)』

 

「やめろよーぅ、ロジックで追い詰めてくるのはやめろよーぅ。まあ、そんな話は置いといて」

 

『でた、伝家の宝刀』

『そのまま置いておかれた話は数知れず』

『置きっぱなしの話多すぎて部屋汚そう』

 

「私の部屋、私がどう使おうが勝手じゃろがい! それはそうと、部屋片づけるときのコツはとにかく手を動かすことだよね。効率とか考えてるより、むしろその時間で手を動かしてた方がいい」

 

『なるほど』

『一理ある』

『突然まともな事言わないでもろて』

 

「片づけに関しては一過言あるからね私は。なんせ部屋汚くする事多いからさ」

 

『結局汚いのか』

『解釈一致』

『それでこそパンプキン』

 

「私のイメージはどうなってるんだ……できるお姉さんじゃないのか……」

 

『は?』

『調子に乗るな』

『ことある毎に失敗エピソード語ってよく言える。その引き出しの量やばいぞ』

 

「ちくしょう……悔しい……結婚したい……。バブみを感じれるロリっ子と結婚して養ってもらいたい……」

 

『駄目なロリコン』

『性癖駄々洩れお姉さん』

『でもその気持ち分かる……』

 

「ちくしょう! というかもう時間だよ! 今回もまたトークテーマ無駄になった! これ考えるの苦労してんのに!」

 

『二回目からもうネタ切れでリスナーからテーマ募集した女とは思えん浪費』

『マジカルストロベリー方式やるための最初のお題に過ぎない』

『そのスタイルで会話途切れんのはすげえと素直に思うよ』

 

「それじゃあみんな、よかったら次はメアリーちゃんの配信見てね! よろしく、バイバイ!」

 

 そうしてミス・パンプキンの配信は終わりを告げた。

 アバターモエクス五期生ミス・パンプキン。その所属しているユニット、トリオ・ザ・ハロウィンにおいてリレー配信二番目という繋ぎのポジションを預かる彼女は今日もこうして雑談で場を繋ぐのだ。

 視聴者にいじられつつも彼女はいつも喜怒哀楽をはっきりと表現し、その明るさで視聴者を引き付けている。

 たまに昔の職場についてなんとなく話す彼女が平凡とは違う人生を歩んできた事は視聴者もなんとなく分かっている。それでも構わない。視聴者が見ているのはカボチャ頭の変人、ミス・パンプキン。過去の彼女ではないのだから。

 ただ、彼女の素顔を知る者がいないのは事実だ……カボチャ頭だけに。

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