吸血鬼Vtuberになる直前に自分のアバターに襲われて本物の吸血鬼になった 作:稲光結音
「チャンネル登録者……」
「五万人……」
「「おめでとう」」
次に凸してきてくれたのは灰音クライネ、ナハトム姉妹だ。相変わらず耳にぞわぞわする感触を味合わせてくる囁き声で話してくる。
「ああ、ありがとう」
「メアリーちゃん、昼は活動しないの……?」
「銀髪のメアリーちゃん、かわいい……」
むむ。難しい話題を出してきた。彼女達とは朝から夜まで愛し合っていたから私が昼間活動しても問題が無いの知ってるんだよな。そしてナハトム、そりゃ銀髪状態の私はかわいいだろうよ。あれだけ好き放題できる女は他にいなかっただろうからな。
「普段は太陽が出てる間は電脳空間で寝ているよ。必要な事があれば眷属に任せる」
「電脳空間……」
「見せてもらえばよかった……」
いや、二人は入れないしな。それともあれか、私がパソコンの中に入る姿を見たかったってところか。
「それならまた来るといいさ。また直接会っちゃいけない訳じゃない。またオフコラボしよう」
好き放題こそされたが、それでも彼女達が嫌いな訳じゃない。むしろ一種の好ましささえ感じている。
「とても、いい考え……」
「また、遊びましょう……でも、それまでに」
「「しっかり練習しといてね」」
何を、とは言わなかったが当然分かる。私の夜のテクニックだ。彼女達にしてみれば夜のテクニックどころか一日中のテクニックかもしれないが。
「ああ。分かった。しかし二人は上手かったな。たくさん練習してたのか?」
「ナハトムといっつもしてる」
「クライネと暇があればしてる」
「「二人は仲良し」」
双子同士でヤってるのか。二人の事だから毎日やってるんだろうな。そりゃ上手いわけだわ。思い出すだけで胸の先が疼く。
『何の話だと思う?』
『大乱闘スマッシュプラス』
『そういや双子もスウィッチ持ってたな』
『夜の大乱闘』
『そっちであって欲しい』
感想欄も盛り上がってきた。実際、くじらサーバーの存在こそ知られてる筈は無いが、我々が行為に及んでると本気で思ってる層はどのくらいいるのだろうな。バレたら炎上か、それとも全力で喜ぶのか。二つに一つだ。
「それじゃあ私達は……」
「ボクたちは……」
「「この辺でお別れ。またね」」
二人は最後に改めておめでとうと言い残して去っていた。輸血パックの血液の入ったワイングラスを一度傾けながら、次の凸者を待つ。すると、ポコポンポコポンという通話の繋がる情けない効果音が流れてきた。
「はぁい♪ メアリー。五万人おめでとうね」
次に現れたのは汐井レナ。奇しくも双子、レナとオフコラボした順番だ。
「ああ、ありがとう。そっちの調子はどうだろうか」
「悪くないわ。今MMDなんか見ながら新しいダンスを練習中。来週くらいには新しい動画を公開出来ると思う。プレミアム公開で投げ銭なんかもしやすくしちゃおうってワケ」
「レナは正直だな……」
呆れ半分に私は言ったが、これだけ正直だと見てる方も信じられるのかもしれない。
「隠してる事もあるわよ。メアリーとのあの夜の事は秘密でしょ?」
お前本当何言ってるんだ。
「そこまで言って隠してると言えるのか……?」
「何の事かは言ってないもの。二人でラブホお泊りデート。楽しかったわよね」
「ああ。レナの秘密のダンスは凄かった」
チキンレースだ。具体的な事は、言わない。けれど出来る限り過激な話を提供する。このギリギリのラインは非常に難しい。少なくともリアルタイムで配信してる今みたいな状態ではやりたくない。
「まあね♪ そうそう、7800円も貰って悪かったわね。ラブホ代一人分にちょっと届かないくらい貰えたから助かったわ。事実上の折半ね」
一回イかされる度に100円を支払う契約は結局、連続絶頂で無理矢理搾り取られた。眼を合わせられるタイミングで魔眼使ってなかったら多分一万円全部搾り取られていた。もしくはそれ以上。
その話を出されたらもう、私の負けだ。最近負けてばっかりな気がする。強く気高く美しい吸血鬼でありたいものだ。
『7800円?』
『円光?』
『ロリが金払うのか……どっちもロリだった』
視聴者からも疑問の声が上がっている。この辺がラインの限界だろう。それを向こうもしっかり感じ取っていて、話を切り上げてきた。
「じゃ、私はこのくらいで。改めて五万人おめでとうね♪」
通話終了。次に連絡をくれたのは……ほぼ知らない相手だ。事前連絡は貰っているので、立ち絵だけはしっかり用意してあるが、何を話していいかは分からない。
「吾輩こそ、アバターモエクスの四期生、ハム☆スターである! メアリーと言ったか。この度は五万人おめでとう!」
名前とは裏腹にリスの獣人とかいうネタキャラ。それが彼女だ。立ち絵で自分自身より高い位置にある尻尾が激しく自己主張している。
「ああ、ありがとう先輩。わざわざ来てくれるとはありがたい話だよ」
「うむ。吾輩、楽しいところには参加したいタイプ故な。よって、顔を突っ込んでみた。……ん? 突っ込むのは首だったか?」
『ハム助はこれだから』
『リス公には参るね。ごめんなお嬢』
『先輩とか呼ばなくていいんだぞ』
『これはもっと雑に扱っていい奴』
いや、普通にどう呼んでいいか分からんだけだ。ハムで呼び捨てか、スターと呼ぶべきか。それともまとめて呼ぶべきなのかまったくどうしていいやら。
「吸血鬼という夜の存在と、吾輩のようなスターが合わさればそれは星空輝く夜空である。……星空と夜空で被った? まあいい、ニュアンスを掴んでくれたまへ」
やばいなこいつ。どう扱っていいか本気で分からん。
『あ、お嬢が頭押さえた』
『お嬢、真剣に考えるな。もっと雑でいいから!』
『脊髄反射で喋ってるパンプキンタイプだから』
パンプキンの方がよっぽど話通じるわ。え? というか全員コラボ企画、これとまた一対一で会話するのか? 辛くないかそれ。
「つぎの目標は十万人と言ったところか。それだけ行けば吾輩のような一流どころと言って良いだろう。吾輩、まだ到達しておらぬが」
『じゃあなんで吾輩みたいとか言うんだよ……』
『ていうかお前どう考えても一流にはなれねえよ……』
『五月蠅い雛壇芸人みたいなもんだろ……』
コメント欄も疲れ果てていた。そして私が喋ってないのに無限に喋ってくる。流石にトーク慣れ……してると言っていいのか? 会話のキャッチボールというよりはピッチャーとキャッチャーじゃないか。
「もういい。分かった。ありがとう道化。また連絡するから今日はこの辺でな」
強制的に通話終了。やばいタイプのやつだった……アバターモエクスの幅広さを甘く見てたかもしれない。
この疲労感を抱えたまま、あいつと対峙しなければならない。そう、それは。
「こんばんは、メアリーさん。チャンネル登録者数五万人おめでとうございます」
「ありがとう。お前と出会ってからの私は人生が変わったようだよ」
「それはよかったです。なにかあったら私に相談してくださいね。なんとかしますから」
倉瀬アズキ。私という吸血鬼を倒したことのある、それでいてレズに堕としてくれた。まごうことなきラスボスだ。
「それは頼もしい事だ。さっそく一つ相談したいことがある」
「なんでしょうか」
「お前を倒したい。そしてそのまま吸血して眷属にしてやる」
宣戦布告を仕掛ける。これはまごうことなき私の本心だ。負けっぱなしではいられない。吸血鬼は確かに人間に滅ぼされる事もあるかもしれない。だが、基本的に吸血鬼と言うのは人間に勝って当然の存在なのだ。
彼女は一つ、軽く唸ってみせて。
「じゃあ、私の要望としては100%の貴女を倒せたらなと思っています。ゲームの中で、ですが」
とてもじゃないですが現実では勝てないです。そう言って彼女は笑う。私の100%、それはつまり。
「……人間から直接、吸血しなければならないな」
「そういうことですね。どうです? 吸血鬼としても悪い話ではないのでは?」
「そうだな。そうなると、誰から吸うか。吸血鬼らしくはないのかもしれないが、あまり暴れて配信が出来なくなるのは困る。私は電脳吸血鬼の配信者として設定された存在だ」
どうしようもないなら、確かに吸う。だが、それは最終手段。そのために代用品アナザーブラッドを考え出したりもしたし、女の汁や描いた輸血パックを味わって多少なりとも力を蓄えてきた。
「じゃあ、アバターモエクスの皆さんから吸うのはどうです?」
「なんだと?」
「あの企画があるじゃないですか。その時に、オフで会うんですよ。それで、吸血OKの許可を貰えばいいんです」
まさか、そのために全員コラボを行うように私を扇動したのか……?
「メアリーさん。デス子を確認してください。あの企画に参加する事に全員が良いと言っています。最後の一人もついに許可をくれました」
私は言われたとおりにデス子を見てみると、そこには連絡のつかなかった黒井ネココが今回の全員コラボ企画に参加したいと言っていた。都合の合う日さえあれば是非、と。
「さあ、今こそリスナーの皆さんに報告してください。アバターモエクスの全員を巻き込んだ大型企画を!」
促されるままに、私は宣言した。
「この私、メアリーが他のアバターモエクス十九人と誰一人の抜けも無くそれぞれ行うコラボ、ブラッディ・パーティーの開催をここに発表する! 先日行った灰音クライネ、ナハトム、汐井レナとのコラボはその一環だ!」
爆速になったコメントが、サプライズで用意されたこの企画に興奮しているリスナー達の様子を端的に表していた。