目が覚めたら難易度ナイトメアの世界です   作:寝る練る錬るね

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愉悦成分をみなさんが欲していると聞いて。



先輩は優しくても厳しくてもどっちでもおいしい。※ただし美少女に限る。

 

 

 

 愉悦ゥゥっっ!!

 

 ああ!!超イイです下姉様!!その顔!!現実から目を逸らしたくて、でも罪悪感で前を向かなくちゃいけなくて!瞳孔かっぴらいてるの!!そうですよね!自分の罪の象徴が目の前で健気に元気ぶろうとしてたらそりゃそうなります!!ほんとに元気出てきちゃう!!

 

 上姉様も!下姉様ほどじゃないけど角を見る表情!!憐憫と後悔の混じった表情!!いいです!!無限に写メが撮れる!あ〜!スバルくーん!!携帯貸して携帯っ!!この顔待ち受けにしてから印刷して永遠に額縁に飾る……いや!写真に収めることすらもったいないなこの顔!!好きぃぃ!!

 

 そうだよね!守りたいと思ってた弟守れなかったもんね!しかも下姉様に至っては逆に守られる始末!絶対に一緒になりたくなかったところだけ一緒になって、そのほかの共通点全部消えたもんね!!一番大切な時に手を取れなかったし、見た目と匂いもあって信じきれなかったもん!!姉としての存在意義すら危うくなってるかな!?

 

 あああああああああ!!最ッッ高!!神様産んでくれてありがとう!!リルは幸せになりますっ!!つーか幸せですっ!!リルの人生の絶頂はここだぁぁぁっ!!

 

 

 …………ふぅ。

 

 

 どうも。現在テンションマックス。僕です。顔面崩壊を避けられず、思わず破顔してしまったのを無理やり儚い笑顔に変えました。

 

 僕だ。

 

 いやぁ、先日のことは大変でしたねぇ。思わず怒りのままに鏡をかち割りかけましたが、何とか立ち直りました。なんか思った以上に姉様方が衝撃を受けたらしい。悦。悦。

 

 というわけで、にやけ顔が止まらずに顔をずっとニコニコにさせていながらやってきました、お馴染みロズワール邸!別邸だけどね!

 

 あ、姉様方はやっぱりロズワールと一緒に行くことを選んだようだ。上姉様の角がなくなってるから選択肢もないわけだけど。

 

 で、ロズワール邸を見た感想だけど………凄く………大きいです………敷地の時点で村に住んでた時の家が30軒は入るわ。

 

 それより大きな建物が物置として配置されてましたorz。

 

 さすが金持ち。やることが違う。これでおいくら万円かかってるんだろう。多分聖金貨うん万枚くらい使ってるんだろうな。

 

「今日からきみたぁーちは、来るべき日が来るまでぇ、ここでメイドをしてもらうよん」

 

 来るべき日、とは、おそらくロズワールの叡智の書に記載されているエミリア様による王戦参加のことだろう。確か……今のルグニカ王国の王様が病でポシャって、ついでに血族もバッタバッタと死んでいくんだったな。

 

 それを知ってるロズワールなら止めることもできるんだろうが。まぁ、そんな気は毛頭ありませんよねぇ。自分の悲願がやっと叶うのに、その機会をたかが王の命と昇進目的で捨てるほどこの男は清くない。

 

「あぁ、ラムにはちょぉっと用事があるから、今夜ワタシの部屋に来てくれるかなーぁ?一番上の部屋だからわかりやすいハズ」

 

「……はい。わかりました、ロズワール様」

 

「んじゃ、そういうことで。世話にはフレデリカをつけておくから、明日からやることはその子に聞いてちょーだい」

 

 めちゃくちゃ軽いノリでウインクをして去っていくロズっち。うーん、この胡散臭さ。

 

 とりあえず今日はやることがないということで、使用人用らしい西塔から適当に部屋を見繕って休んでくれ、と言われてしまった。どの部屋でもいいんだろうか。

 

「探検したい!」

 

「いいわね。ラムも行くわ」

 

「……レムも行く……ます」

 

 ぎこちない丁寧口調で下姉様が言う。僕がある程度スッキリして快活になった様に見える代わりに、下姉様は意識して敬語を使うようになっていた。

 

 ……彼女なりに変わろうとしている証なんだろうが、上姉様が露骨に顔を陰らせるの凄くいいです。ごちそうさまです。

 

 というわけで、今日ばかりは無邪気に部屋を探しまわっても許されるだろう。だってこんな広い家なんだから。

 

 姉様からの視線を感じつつも、いろんな部屋をガチャガチャと開けていく。特にこれといって内装が違う部屋はないが、ここまで沢山扉が並んでいると面白いものが………

 

 ん?扉?……あ、ヤベッ。

 

 

 

「……ガチャガチャと、いちいち煩い子供なのよ。開けるんじゃないかしら」

 

 目の前に広がっていたのは、扉の質量からは考えられないほど広い、図書館の様な部屋だった。その中心に、ちょこんと金髪ロールの少女が座っている。

 

 ぶっちゃけ禁書庫です。本当にありがとうございました。

 

 なんでやめとこうと思った瞬間エンカウントするかなぁ……

 

「えっと……」

 

「大変申し訳ありません。弟が失礼を。あなたがお聞きしていた、大精霊ベアトリス様でよろしいので?」

 

 何か言葉を発しようとしたところ、庇う様にして上姉様が僕とベアトリスの間に割り込む。敬語の切り替えができているあたり、流石と言わざるを得ない。凄く……男前です……

 

「なんだ、ロズワールのやつから聞いていたのかしら。その通りなのよ、姉妹の姉。ベティーはこの禁書庫の司書、大精霊ベアトリスかしら。わかったらさっさと閉めるのよ」

 

 シッシッと手を振ると、開いていた筈の扉がひとりでに閉まる。なんというか、かなりの塩対応だ。

 

 ──初登場それでいいんですかね、ベアトリスもといベア子さん。

 

 まぁ、今はにーちゃもといパックとも会えていないから、仕方のない部分もあるんだろうけど。

 

「………話は聞いていたけれど、あまり部屋の扉を開けるのはいいことじゃなさそうね」

 

 先ほどまでの冒険ムードが壊され、少し微妙な感じの空気となって流れる。

 

「フレデリカさんに、案内してもらおっか」

 

「賛成……です」

 

 下姉様のぎこちない敬語を合図に、一同でフレデリカを頼ることになった。

 

 ……ともあれ、これでエミリア様以外のロズワール邸の人物とは、こうして面識を持ったわけである。ベア子だけ登場が一瞬だったが。

 

 ちなみに歯が怖いでお馴染みフレデリカさんは、現在進行形でロリから進化中です。若干大人びてはいるが、高校生か中学生くらいの風貌だ。しっかりしている感じは保ちつつも、まだまだ発展途上、といったところか。

 

 一同で頼りにいくと、歳下に頼られるという経験がなかったのかそれはまぁ嬉々とした表情で案内を申し出てくれた。

 

「ええ!勿論ですの!……それはそうと。わたくしのことは姉様と呼んでくださいな。ロズワール家の使用人(かん)では伝統なのです」

 

「わかったわ、フレデリカ」

「しょうち……します?フレデリカ」

「わかった、フレデリカさん」

 

「誰一人として呼んでくださらないのですか……」

 

 相手が悪かったな。ぶっちゃけ僕は上姉様下姉様でレパートリーを使い尽くしてる。別に呼んでもいいが、最悪二人に殺されるぞ。

 

 下姉様はこれ以上姉を増やすなんて論外だろうし、上姉様は誰かの下に付くのを嫌がる(タチ)だ。勝負あったな。

 

「冗談です。……リルの姉様は二人だけですから、フレデリカ先輩、でもいいですか?」

 

 リルの姉様は二人だけ、の部分で、上姉様の機嫌が明らかに良くなる。わかりやすい。逆に、下姉様はこの間の件をまだ引きずっているのかかなり暗い表情になる。ありがとうございます!

 

「………えぇ!ええ!大変嬉しいです!リル!その歳で偉いですわね!わたくし、後輩ができましたわ!」

 

 嬉しさのあまりか、左手を握られてブンブン上下に振られる。うわ、力強っ!

 

「リルの手を離しなさい、この怪力女」

 

 全力でフレデリカの手がはたき落とされた。恐ろしく早い手刀。僕じゃなきゃ見逃してるね。

 

「………あら、姉君は随分と過保護なのですね。聡明なリルと違って歳上に対する態度がなっていないのではなくて?」

 

「勝手にリルの名前を呼ばないで。そんなことより早くラムたちを案内なさい。それがあなたの仕事でしょう?」

 

「……ふふ、いいでしょう。その気概、いつ折れるか楽しみですわね」

 

 二人の間に火花が散ってるのが見える。やっぱりこうなるのか。確実に違うのは、パイセンは張り合う相手ができたと思っているのに対して、上姉様はわりとガチめにキレていることか。怒んないで怒んないで。悪気はないんだよ悪気は。

 

 フン!と二人で息ぴったりに顔を逸らしながら、フレデリカが屋敷の案内を始める。ここに来たことは何度かあるのか、案内自体は手慣れている。にしても、上姉様ちゃんと聞いてる?

 

 後ろから下姉様とついていきながら、ちょっとばかし見慣れた光景を眺めていく。………うん。やっぱ広い分、移動に時間がかかるな。

 

 それにしても、やっぱり歩く下姉様の顔が優れない。もっと気にして(無慈悲)

 

「下姉様」

 

「なに……ですか、リル」

 

「手、繋ご?」

 

 わざわざ回って正面へ向かい、左手を差し出す。長い右手の袖をプラプラと揺らすのも忘れずに。

 

 面食らった下姉様は、しばらく呆然とした後……その顔を悲しみに歪めて、乾いた声を出した。

 

「……ぅ……ぁ……う、ん……うん……うん!」

 

 涙ぐみながら、乾いた口で何度もそう返す下姉様。僕の左手をそっと掴んで、壊れ物でも扱うかの様にやんわりと握る。あっ、その顔ヤバい……脳に直接クるわ。

 

 にぎにぎと左手の感触を確かめてから、にへへと歯を出して笑ってあげる。そうして思い出すのは、一体いつの光景だろう。…あは、泣いちゃった。

 

「……下姉様……泣いちゃった。大丈夫?」

 

「ごめん……なさい……大丈夫……大丈夫、だから……ごめんね……」

 

 しきりに謝る下姉様。その手にゆっくりと顔を近づけて、少しだけ顔に当てる。そして──

 

「……姉様、平気だよ。姉様の手、あったかいね?」

 

「───ぁ……」

 

 あぁ……思いっきり泣き始めてしまった。歩きながら、握っていない方の手で涙を拭おうとして、それでもボロボロ泣いている。ふえぇ……どうしよう(恍惚)

 

「大丈夫……?」

 

「……レム!?大丈夫!?」

 

「まぁ、大変!」

 

 上姉様とフレデリカが、慌てたように駆け寄ってくる。安心してください。既にトドメはさしておきました。

 

「大丈夫……です……ごめんなさい……心配しなくても、平気、ですから……」

 

 泣いている間も、僕はしっかりと手を繋いでいる。無い方の腕の袖で姉様の涙を拭おうとすると、堪えられないというように大粒の涙が溢れ出した。

 

 ……全身に電撃のような痺れと快楽が回る。依存性の高い麻薬でもに打たれたように、体が悦びに打ち震える。

 

「レム、本当に何かあったの?」

 

「姉様───泣かなくても、いいんだよ?」

 

 延々と溢れる姉の涙を、僕は涙で濡れた袖で拭う。それは、誰からみても献身的な行為のはずだ。

 

 僕は、それを。

 

 一体、どんな表情で行なっていたのだろう。

 

 ──その表情の観測者は、僕を含めて、誰一人としていなかった。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 翌日。下姉様騒動を終えて、僕、上姉様、下姉様、そしてフレデリカの四人は、ロズワール邸の広い敷地に集められていた。まだ仕事服をもらっていないので、ロズワールに貸してもらった客人用の服で。そして呼び出したのは他でも無い、ロズワールその人だ。

 

「おはよぉぅ、諸君。なにやら昨日は騒がしかったようだぁけど、何事もなかったようでなによりだーね」

 

「………」

 

 何事もない……わけがなかった。

 

 あの後、部屋選びをすることになったのだが、両姉様は僕と同じ部屋がいいといって譲らなかった。元々三人部屋だったからといって、これだけ部屋があるのに一緒にならなくてもいいんじゃないのか、と言うと、二人はかなり考えに考えた末に、せめて隣の部屋で、と妥協してくれた。とりあえずのところ、昨日僕らは三人で連続した部屋を使うことになった。

 

 そこから各自で食事をすることになったのだが、それもまぁ大変で。今まではクリンドさん作の病人食だったため、スプーンを使えば左手でも容易に食べられたのだが、普通の食事ともなればそうはいかず。二人の姉様による篤い介護が始まった。美少女に食べさせてもらうことは嬉しいけど、両隣から挟まれながら、いちいち左右を向いて食べるのは割と大変だ。しかもその間姉様達は一口も食べないし。

 

 そして風呂。これも姉様達の乱入があった。これに関しては介護されても特に問題もなかったのだが、一番の問題は次だ。

 

 ──下姉様の、夜泣き。

 

 どうも、姉様にとっては先日のことがとんでもないほどのトラウマになってしまったらしく、昨日の件もあって一人だと全くといっていいほど寝れなくなってしまったようなのだ。結果、僕が枕を持ってあやしに行くことになった。三人部屋にしなかった意味よ。

 

 お陰で下姉様はすぅすぅと寝ていたが、僕は若干寝不足である。……寝起きに姉様の死ぬほど申し訳なさそうな顔を見て疲れは吹っ飛んだけどなぁ!!まさか寝起きドッキリをされることになるとは思わなかった。

 

「ロズワール様。今朝はどのようなご用件でしょうか。昨晩は上姉様と何か話していらっしゃったようですが、それと関係が?」

 

「あぁ、それ。実は全く関係ないよん。今日はちょぉっと、寝起きの運動をしてもらおうと思ってねーぇ。フレデリカは補助を頼むよぉ」

 

「承知いたしましたわ、旦那様」

 

 フレデリカが恭しく礼をし、僕らの横からロズワールの側へと移動する。

 

「……それで。ええと、ロズワール……様。レム達は、一体なにをすればいい……です?」

 

「あぁ、なに。これをみてもらえればすぅぐにわかるよぉ」

 

 下姉様の問いかけに、ロズワールは、後ろ手に隠し持っていたそれ(・・)を見せる。……あぁ、なるほど。

 

「つまり、これは……」

 

「とりあぇず、今日から君たちには……自衛手段を身につけてもらおうかぁな」

 

 その手が、軽々と持ち上げていたものは。ぶっちゃけ軽々と持ち上げられる理屈がわからんが。

 

 ───少し小さめの、モーニングスター(凶器)であった。

 

 

 

 




出愉悦

武器はどうする?

  • 筋肉は全てを解決する 素手
  • ドーマン!セーマン! お祓い棒
  • 上姉様下姉様と聞いて 鎖付き短剣
  • こんにち死ね ワイヤー

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