目が覚めたら難易度ナイトメアの世界です   作:寝る練る錬るね

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 こっからどんどん時系列が飛びます。原作開始までめちゃくちゃ時間があるから、しょうがないよね!!あと2話で原作に入ります。

あ、今回はマジで愉悦がないです。


Twitterをやってる分小説を書くのに時間を割きたいよね。でもやめられないんだって話。フォローしてくだちい。

 

 

 

 それは、とある昼下がりのことだった。

 

「リルを弟子にしてください!師匠!」

 

「お前も何度も飽きないやつかしら。お断りなのよ。べティーは弟子を取らない主義かしら」

 

 僕は何年も通してやってきた土下座を、二代目師匠へと繰り返していた。家事中に扉を開けた時、彼女にエンカウント次第土下座をするのはもはや日常である。

 

 それもこれも、陰魔法の使い手として最高峰である彼女から魔法を習うためだ。いいからとっとと教えてや。こちとらシャマク使いたいんじゃシャマクを。

 

 しかしまぁ、今日もどうせ成果は出ないんだろうなぁ、と若干諦めムードで土下座していた。時間がいるのだ、時間が。土下座に反応してくれる分前よりマシだと思おう。

 

「……と、言っても。なんにせよ。これで期日は満ちた。……成ってしまったものは成ってしまったのよ」

 

「………はい?」

 

 しかし。意外にも師匠はいつものように僕を追い出すことはなく、長く僕の前で上げなかった腰を上げていた。

 

「お前の勝ちだと言っているのよ。やっぱり安易に契約なんて結ぶもんじゃないかしら」

 

「………と、いうことは……?」

 

「弟子、とは違うのよ。あくまで指導をしてやるだけかしら。………ロズワールと結んだ契約なのよ。『三年分リルが土下座したら魔法を教えてやってくれないか』………まさかここまでしつこいとは思わずに、安易に頷いてしまったかしら」

 

 ええ〜ほんとにござるかぁ?実は照れ隠しで、ずっと接してきた使用人に情が湧いたりしたんじゃないのぉ〜?

 

 我ながらこのノリウゼェな。口にしたら三秒で禁書庫放り出されるわ。

 

「誇りの無さも想定外だったのよ。まさか性懲りもなく土下座を続けるとは思わなかったかしら」

 

「………強くなるために恥が余分というのは、この何年かでわかりましたから」

 

 シャマクを使うためなら何回だって土下座してやんよ!!靴でも舐めてやろうかァァン!?

 

「あと、今後土下座はやめるのよ。……お前が土下座をした後、姉妹の妹が露骨にベティーのご飯にピーマルを入れるようになったかしら」

 

 えっ、そんな。僕のアイデンティティーが。この何年かの僕の日課なんだぞ。でもやったぜ下姉様。ありがとう。

 

「なるほど、師匠」

 

「………もうその呼び方で構わないのよ。それじゃとりあえず、こっちゃこいこいなのよ」

 

 こっちゃこいこいって今日日聞かねぇな。

 

 違うこれ僕の台詞じゃない。

 

 言われた通り師匠へと近づくと、師匠は目を瞑ったまま僕の胸に手を押し当てる。そのままバルスって言ってみて。

 

「みょんみょんみょんみょん」

 

「おお!?」

 

 リゼロ初みょんみょん!!聞き逃していたあれをついに!しかも師匠の口から聞けるなんて!!

 

「………確かに、カスほどではあるけど陰魔法の適性はあるのよ。火が8に土が2、陰が1……の半分の半分といったところかしら。これなら使えてエルミーニャあたりが限界。火属性なら、もっとまともに使いこなせると思うのよ」

 

「構いません!むしろそれがいい!」

 

「興奮具合が気持ち悪いったらありゃしないかしら……にしても、ゲートがちょっとおかしなことになってるのよ。ズレかけ……?お前、かなり前に無茶をしたみたいなのよ」

 

 げ。そういえばそうだった。あの時から魔法一回しか使ってないから忘れてたけど、僕のゲートはガタガタだったんだ。『虚飾』で無くしておけばよかった。

 

 もしかしてフェリスを頼ることになるのか……と陰魔法習得への道のりが遠のいていくのを感じていると、またも意外な言葉を師匠が口にする。

 

「…しょうがないのよ。このままじゃ魔法なんていつまで経っても教えられないから、ベティーが治してやるかしら」

 

「できるんですか師匠!?」

 

「舐めるんじゃないかしら。ま、お前に陰属性の適性がなかったら無理な話だったかもしれないのよ。しかも、ズレていると言ってもたかが知れているかしら。これぐらいなら、ベティーでも治せるのよ」

 

 そりゃそうか。そうじゃなかったらわざわざスバル君をフェリスに預ける必要ないもんな。どうやら、自覚症状の割にかなり軽症で済んだらしい。

 

「じゃあ、早速やるかしら。不快かもしれないけど、精々我慢するのよ」

 

 再び手を胸に当てられ、師匠が目を閉じる。不快と言われると若干身構えてしまい、思い切り目を閉じてその時を待つ。

 

 ……だが、一向に不快感が来る気配がない。恐る恐る目を開けてみると、そこには驚きに目を大きく見開いた師匠がいた。

 

「…………お前……!その、魔女因子(・・・・)は……」

 

 あ、ヤッベ。

 

「師匠。『あなたは魔女因子に気がつくことなく、リルのゲートを完璧に治しました』……いいですね?」

 

 ついでに『僕のゲートが損傷していたなんて何かの見間違え』として、ゲートを自分で治療する。流石に辻褄くらいは合わせないと……

 

「………ぅ……ぇ………?」

 

 ドキドキ。

 

 ドキドキ。

 

 効くよな?効くよなパンドラ?まさか精霊には効きませんでしたとかいうアレはなしだよね??

 

「………終わったかしら。なんだか、随分時間がかかった気がするのよ」

 

「………そ、そうですか……!」

 

 ひえぇ……前のエキドナの件といい、ガバが多すぎませんかねぇ……

 

 てか、結局名前つけ忘れてるし。……しょうがない。ちゃんと考えてやろう。明日ね。明日。できたらつけるわ。

 

「………じゃあ、早速………?」

 

「………しょうがない、庭に行くのよ。お前の陰魔法を見せてみるかしら」

 

 しゃあぁぁぁっ!!何はともあれこれでシャマク真っ当に使えるぞ!!

 

 これで何回パンドラが来ても殺せるね!いや、もうあんな危険な橋を渡るのはごめんだけれども!!

 

 そんなこんなで、僕は魔法の稽古をつけてもらうために庭へ赴いたのだった。

 

 ………そういえば、今仕事中だったけど平気かな。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 数分後。

 

「ほんっとうに申し訳ございませんでした」

 

 僕は、師匠に本日二度目の土下座を繰り出していた。

 

 事情を説明しよう。

 

 まず、師匠が僕に陰魔法の腕を見せてみろ、と魔法を使うよう指示した。一番基本のシャマクだ。

 

 もちろん、エルシャマクを使った身としてはシャマクは簡単に使える部類の魔法だった。適当にマナをゲートから排出し、イメージを具現化すれば良かったのだから。

 

 …………だが。

 

 思い返せば、僕のイメージの中のシャマクってスバル君が使ったやつしかないんだよね。しかも、ロズワール邸でのものとなるとあのイメージしかないわけでして。

 

 つまり暴発しました。それも盛大に。下手にマナを注ぎ込んだ分、アーラム村の一歩手前くらいまで黒煙が充満することになった。いや、噴火かと。

 

 そして、その後始末をしてくれたのが師匠である。必死こいて宙に漂うシャマクを陰魔法で圧縮し、消滅させてくれた。

 

「…………あれかしら。お前に陰魔法を教えたやつは、相当頭のおかしいバカなド素人だったみたいなのよ」

 

「返す言葉もございません」

 

 本当にその通りなんだよなぁ………なお、教わったわけじゃないのは内緒である。

 

「そもそも、あんなシャマクは見たことがないのよ……もともとシャマクは、そんなに煙を出すものじゃないかしら」

 

「そうなんですか!?」

 

 でもアニメ版では煙出して………いや。パックが使ったときは確かに出してなかった!衝撃の新事実!

 

「ま、範囲を広げたい場合はアリではあるのよ。まともな成功は期待していなかったけど、ここまでとは想定の範囲を超えているかしら」

 

 呆れたようにあからさまなため息をつくロリ。これよりもっとひどい人が後から来ますからね。

 

「とりあえず、今日はマナ切れで教えるなんてとんでもないからやめにするかしら。またベティーにあった時に教えてやらないでもないのよ」

 

「よろしくお願いします……師匠……」

 

 ぶっちゃけ空っ欠で土下座するのも辛かったので、正直助かる。……『虚飾』でなかったことにしてもいいけど、流石にアレの後に平気そうにしてたら怪しまれるわ。

 

 師匠が不満そうに鼻を鳴らし、屋敷へと戻っていく。………ヤバイ、しんどいっす。ぶっちゃけ土下座で全体力使い切った。一歩たりとも動ける気がしない。ちょっとくらいなら『虚飾』使ってもよかったりしないかなぁ……

 

「あらあら、どうしたんですの、リル。そんな状態で固まってしまって」

 

 土下座の体勢から動くことすらできず、どうやって助けを求めようかと考えていた僕の上から、何か変なものを見つけたかのような声が降ってくる。口調と声からしてパイセンだ。

 

「………魔法を暴発させてマナ切れです………暫くは動けないので屋敷まで運んでいただいても?」

 

「なるほど、先の暗闇はそういう……てっきり天気雨が来たのかと思ってお洗濯物を取り込み掛けましたわ」

 

 余裕だな。割と洒落になってない暗闇だったと思ったんだけど。もしかして範囲広がった分効果は薄かったりするのか?

 

 とりあえず全力を絞り出して土下座の姿勢を止め、芝生の上で横にゴロンと転がる。それだけで目眩がしそうなくらいダルいが、土下座の姿勢を保ったまま喋るよりはマシだと思う。さっきまでの会話も土下座しながらとかいうなかなかシュールな光景だったしね。

 

「………とりあえず、レムとラムのところまで運びますわね。あの二人は今掃除中のはずですし」

 

 軽々と僕を持ち上げた先輩。そしてあろうことか、僕をお姫様抱っこして屋敷への道のりを歩み始める。

 

「なんでこの抱き方なんです!?」

 

「安心してください、軽いですわよ」

 

 やだイケメン……キュン………ではなく。

 

 この体勢はなかなかキツいものがある。肉体的にじゃなく、精神的に。具体的には超恥ずかしい。離してもらおうにも本当に体がピクリとも動かない。マナ切れ本当にヤベェな!!

 

「ちょっ!このまま屋敷まで!?」

 

「あら、何か問題でして?体が動かないのですから、無理をして落としてしまうといけませんもの」

 

 おほほ、と笑ってみせる先輩。

 

 ………多分だけど面白がってるよこの人。

 

 流石に辛いので『虚飾』でマナ切れを治そうとしたちょうどその時。目の前を長身の変態ピエロが通りかかった。……そして今の僕を見つけて、かなり醜悪にその表情を歪めた。なんでこのタイミングで都合よく廊下を!?そして絶対に悪いことを企んでる表情だ!!

 

「おんやぁ!随分面白い状況になってぇるじゃなぁいの?」

 

「旦那様。ちょうど、マナ切れを起こしたリルを運んでいたところですのよ」

 

「ほう………あぁ、本当だ。こりゃあ五時間はまともに動けなさそうだぁね」

 

 明言すんなぁぁ!!お前に太鼓判押されると『虚飾』が使えなくなるんだよ!!

 

「だぁけぇど。リルの場合、角からマナを吸い上げれば解決なんじゃぁないの?」

 

「……あら、そんな手が」

 

 お!そうじゃん!!そうと決まれば鬼化してとっととこの状況を………

 

「ぺいっ☆」

 

「は?」

 

 なんだ今の嫌な予感しかしない軽快な効果音は。しかもなんで今角に触れた?ついでにウインクした?

 

「リルの角に膜を貼っといたよーお。これで五時間は鬼化しても角からマナは吸えなぁいから。そこんとこ、ヨロシク?」

 

「………はいいぃぃ!?」

 

 は!?そんな器用な魔法……そういえばこいつ変態だけど魔法に関してはガチ天才だったわ。にしても無詠唱でそんな無駄なことする!?もっとまともなところにマナ使っとけや!!

 

 あれか!?前にお前の師匠ドナキャンしたのに気付いて根に持ってるのか!?ごめんて!!悪かったとは欠片も思ってないけどしょうがなかったんだ!あれは事故!!

 

「あら。旦那様、珍しく空気が読めておりますのね」

 

「従者にねぎらいの機会を与えるのは当然のことだぁーとも。それじゃ、リル。達者でねーぇ?」

 

 くたばれ外道ピエロ。中指を立てようとしても動かんが。

 

 にしても、ねぎらいの機会?いやいや。僕、寧ろ動けないことでしんどいくらいなんだけど。パイセンもニヤニヤしてないで、何か説明して………

 

 ん?

 

「あら、気付きまして?」

 

 動けない僕→姉様。

 

 ………核反応では。

 

「先輩、唐突な心からのお願いなんですがここから下ろしていただいても」

 

「お断りですわ〜!!」

 

「おくたばりあそばせっ!!」

 

 先輩が全力ダッシュし始める。振動が伝わってこない!やだ紳士……この流れもうやったよ!!

 

 精一杯の罵りの言葉をあげるが、先輩の全力ダッシュは止まらない。

 

 激ヤバだ。比喩抜きで激ヤバである。

 

 だって、下半身不随とかじゃなく全身の身動きが全く取れない僕だぞ。そんなもの世話好きの姉様方の前に放り投げてみろ。

 

「えっ!?リルの体がマナ切れで暫く動かなくなった……ですか!?」

「しかもロズワール様の計らいで鬼化してもマナ切れが治らない……ですって!?」

 

「終わった。シーユーグッドバイリルの尊厳」

 

 そんな嬉しそうな顔をしてこっちを見ないでください。ハイライトの消えた目で床を見るしかないんです。

 

 はい。

 

 予想通り、一日中介護されました。屈辱と情けなさの極みである。

 

 一部始終をご覧いただこう。せめてネタにしてないとやってられないので、卒業式形式で。

 

 涙目になっても離してくれなかった、着替え大会!!

 

「はーい、リル。脱ぎ脱ぎしましょうね〜」

 

「なんで上姉様にはがいじめされてるんだろう……」

 

「黙ってなさい、舌を噛むわよ」

 

「どんなアクロバティックな着替えを!?」

 

「次は下着ですね。折角ですし、女の子っぽい下着を用意してみました!」

 

「拷問んんんんんん!!!」

 

 男としてのプライドが、砕け散りました!!

 

 食べるたびに褒められた、晩ご飯!!

 

「はい、リル。あーん」

 

「………あーん」

 

「よしよし。ちゃんと食べられたわね。偉いわ」

 

「褒められたはずなのに涙が出ちゃう。なんで?」

 

 普通に泣きました。

 

 体の隅々まで洗われた、お風呂!!

 

「1日くらい入らなくても平気ですから構わないでくださいっ!!」

 

「安心なさい。流石のラムとレムも服を着てやってあげるわ」

 

「介護感増したぁ!?」

 

 ぶっちゃけ、一番辛かったです。

 

 抱き枕にされる寸前に体が動いた、深夜!

 

「さぁ、寝巻きに着替えましょう!」

 

「さすがに体が動くので勘弁してください。というかなんでお風呂から上がって別の服に変えたんですか」

 

「レパートリーが増えるのを見たかったのよ」

 

「あけすけだ!?」

 

 以上。忘れられない、僕の屈辱の記憶たちである。

 

 

 くっ!殺せ!!




肉体が一切動かない状態で介護されて無力感を感じるシチュが好きだよって話。

ぶっちゃけ間話です。次からやっと話が進む……
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