目が覚めたら難易度ナイトメアの世界です   作:寝る練る錬るね

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リル君の強さですが。

初期(三本角のみ)だとスバル以上ラインハルト未満、現時点での屋敷の状態(マジカル☆八極拳+陰魔法+ワイヤー)だとスバル以上ラインハルト未満です!!虚飾込みのフルパワーだとスバル以上ラインハルト未満になりますね!!

はい。

実際のところは知識を含め
初期
エルザ以上ライ未満
屋敷の状態
エミリア(四章後)以上ロズワール未満
『虚飾』込み
ラム以上ラインハルト未満
となります。
絶対に超えられない公式チートさんほんと……





第一章 終わりの始まりな王都編
人魚沼ばりにホラーにしたかったけどそうならなかった話


 ピゥ、と。男にとっては今日何度目かになる恐怖の音を聴いた。

 

「ひぃっ!!」

 

 身を屈めて、子供のように怯えてガタガタと震える。

 

 前触れはなかった。ただ突然、この音と共に護衛の男三人の首が飛んだ。

 

 護衛は、選りすぐりの傭兵だった。戦場では負けなしと言われ、あの亜人戦争にも参戦して戦果をあげたという一団。大枚叩いて雇ったせいか威張り散らしていたリーダーの首は、ほんの数秒で呆気なく落ちたのだ。

 

「ほんと、ビックリするくらい拍子抜けですよね」

 

「だ、誰だぁ!?」

 

 尻餅をつきながら、声が聞こえた方向に情け無く叫び散らす。

 

 辺りにはもう、生きている肉体はない。あるのは、十数近い首のない男たちの死体。

 

「な、何が目的だっ!?金か……?金ならいくらでも……!」

 

「いえ、そういうことじゃないんですけど。まぁ、最終的にはお金も貰いますけどね。突然の夜逃げって設定にしなきゃですし」

 

 我ながら無理あるよなぁ。でもお金はあって困らないもんなぁ。てか、それ死亡フラグ……と呟く声が、血の匂いが充満した部屋に響く。

 

「それじゃあ、首を跳ねますね。恨むなら……まぁ、あなたを教育したご両親をお恨みください」

 

「ひゅ、ヒューマッ!!」

 

 闇雲に放った魔法の氷塊が、天井に当たってピキピキと凍る。それを当然のように躱した襲撃者は、再び恐怖でしかない音を立てて……

 

「それでは、良い旅を」

 

 深い慈愛の込められた陶酔せんばかりの愛の言葉が、心を一瞬停止させる。

 

 その瞬間、賢人会候補として最も名を挙げていた男は、その命を首と共に跳ねあげられた。

 

 その首が最後に見たのは。

 

 その顔が見られるのならば死んでもいいと思えるほどの、美しい貌を持った子供の姿だった。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 ふぅ、一仕事終えた後のシャバは気持ちいいですね〜!

 

 というわけで、王都に来ました。ドッキドッキが止まりません。僕です。

 

「普通にはぐれた……」

 

 今、素でエミリア様と逸れました。………いろんな意味でドッキドキが止まりません。

 

 僕だ。

 

 いやね。元々上姉様から逸れてたって、上姉様が怠慢だったからって思うじゃないですか。目を離さなかったら大丈夫って思うじゃないですか。

 

 違いました。

 

「ねぇリル!あそこの食べ物、すごく美味しそう!」

 

「そうですね」

 

「あれはなんていうんだろう……あ、あっちは!?」

 

「そうですね(脳死)」

 

 うん。もう子供みたいにはしゃぐ。そしてあっちへこっちへぷらんぷらん。初めて王都に来たからなんだろうけど、四方八方に目を光らせて興味のあるものがあると行ってしまうのだ。

 

 疲れました。肉体的にじゃなく、精神的に。

 

 そうして一瞬目を離したら、エミリア様はいなくなっていましたとさ。何をいっているかわからねーと思うが。

 

 あれか?扉渡りか何かの使い手なのか彼女。いっそのことそっちのがまだ納得できるぞ。ほんの0.5秒別の方向に視線を逸らしたら消えたんだが?認識阻害やめてもろて。

 

 とりあえず、合流は諦めた。もともと何処かで離れるつもりだったし、結果オーライとしておこう。………不測の事態が起きないと信じて。起きないよね?スバル君と会わないとか、無いよね?

 

 さて、現在の目的地というと。

 

「すみません、この辺りに『カドモン』という果物屋さんはありませんか?」

 

「あぁ、そりゃこの通りを真っ直ぐ行ってから右手だが……お嬢ちゃん、悪いこと言わねえからあの店はやめとけ。最悪店先で泣くぞ」

 

 とんでもない言われようだ。あれでも優しいんだぞあの強面のおっちゃん!!神龍ボルカニカが残したうつしみ?なんだぞ!!嘘だけども!!ただ、顔にヤクザばりの刀傷があってガタイがえげつなくいいだけで!!

 

「ありがとうございます、リルはこれでも強いので、大丈夫です」

 

「そうかい。それで、もし良かったらこの後お茶でも……」

 

「リルは男ですけど、それでもよければ」

 

 死んでください。出会い頭にナンパしてんじゃねぇよ。こちとらこの世界でも未成年の子供だぞ。しかも男。

 

 目の前のリザードマンのお兄さんの顔が、ヤベェ感じに歪んだのを見て、笑顔と共に通り過ぎる。今のところ、1/5の確率でナンパされてるな。虚飾ェ………

 

「さて、カドモン、カドモンやーい……」

 

 並ぶイ文字を辿って、目的の場所を探す。おっ、これですねェ!店主は……うん。やっぱり世界観を若干間違えた感じのカタギじゃなさそうな人間だ。

 

 ものの見事に寂れている果物屋。質は見ているだけでいいのがわかるが、客がいねぇ。間違いないですね。ここが目的地だ。

 

 ──多分僕が接客したら売り上げが五倍近くに跳ね上がるんだろうなぁ。

 

 下姉様で日間分だし、多分そんなもんだろう。取り扱う商品の質は良いもんね。質は。

 

「お、らっしゃい!なんにする?」

 

 うげっ、見つかってしまった。くそぅ。このまま手篭めにされて辱められるんだ!薄い本みたいに!薄い本みたいに!!

 

 うん。おふざけは大概にして。笑顔が怖い。これで営業スマイルのつもりなら、この店確実に潰れるだろうな。いや潰れないんだけど。

 

「そうですね……なかなか良いものなので、少し見ていても良いですか?」

 

「あいよ。どうせ客なんて来ねぇんだ。寧ろ別嬪さんがいてくれた方が客寄せになるっつーもんよ」

 

 客なんて来ないって……商売人のセリフじゃないな。

 

 感慨深い気持ちと呆れの気持ちがごちゃ混ぜになりながら、リンガとレモムの実を適当に眺める。

 

 一陣の風が、吹いたような気がした。

 

 その瞬間。

 

 その声音を、僕は一生忘れないだろう。

 

「あの、おっちゃん。ええと……言葉って通じてたりする?」

 

 無遠慮な、いっそ失礼ともとれる低い声音。聞き覚えのある声に、否が応でも吸い寄せられる。

 

「あん?何言ってんだ兄ちゃん。ボケてんのか?」

 

「ふむ、言語はまずオッケー。次は……今日って、何月の何日?」

 

「タンムズの月の十四日だろ。もう今年も半分切ったとこじゃねぇか」

 

「タンムズ……ね。このリンゴに、ギザ十って使えたり……」

 

「ギザ十?悪りぃが、ルグニカ以外の貨幣はお断りだぞ?」

 

 前の世界なら、視界に入ったとしても一瞬で忘れそうな没個性。ただ、この世界では異様なまでに目立つジャージ姿。黒目、黒髪。少し筋肉質な、三白眼が目立つ童顔で目つきの悪い少年。

 

 自動販売機で使えない、珍しいだけの銅銭を持って、リンガを買おうとするその男の名は。

 

 

 ──あぁ。やっと、会えた。

 

 

 

 スバル君。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 よし。逃げよう。

 

 僕はスバル君の行いを見て、ひっそりと『カドモン』を後にした。店主のオッチャンとスバル君が言葉を交わしているのを見て、目的が『今回』ではないことを知ったからだ。

 

 

 ───最推し、キタァァァッ!!

 

 

 感動だ。感動である。ヤバイやっぱりスバル君。生スバル君である。

 

 一片の価値も感じない、ちっぽけで弱くて生意気で人一倍プライドだけは高い魔女の残り香がする初期スバル君である。

 

 無知無能!無力無謀!よっ!ついでに無一文!天魔不滅の一文無しっ!!

 

 ふぅ、感動したなぁ(棒)

 

 何はともあれ、まぁ。紆余曲折あって、僕はしっかりとスバル君の存在を目撃できた。確認できなければもうこのまま姉様方を一生虐めて終わるしかなかったので、本当にありがたい。それはそれでありですね。

 

 ──さぁ、これでもう一回と言わず、もう何回でも遊べるドン。

 

「ムラク」

 

 顔が歪に緩んでいくのを自覚しながら、重力を軽減する陰魔法を使って近場の屋根へと登る。目下では、ちょうどカドモンさんにスバル君が叩き出されたところだ。

 

 ほうほう。やはりそのまま路地裏へ。さて……うん。案の定トンチンカンの三人組に絡まれている。実際、ガストン、ラチンス、カンバリーで名前もあっているから凄い。流石スバル君のネーミングセンスだ。

 

 ん、と思ったら少し後からフェルトと、さらにその後からエミリア様が。

 

 フェルト速っ。風の加護持ちなんだっけ。上姉様が追いつけるか、と言ったくらいだ。僕でも易々とは追いつけないだろう。当然エミリア様が追いつけるわけがなく、どんどん突き放されていく。

 

「ごめんにーちゃん!強く生きてくれ!!」

 

 お、スバル君が路地に入ってきたフェルトに見放されてる。なっ……スバル君を踏み台にしたぁ!?そして屋根へと跳躍。そのまま逃げていく。うわ、スバル君が心配だから追いかけられないわ。ごめんねエミリア様。

 

「──そこまでよ、悪党」

 

「この子に何かしたら末代まで祟るよ? その場合、君が末代なんだけど」

 

 集団リンチされかけのスバル君をエミリア様が救出っと。うんうん、安心した。ここまでは既知の流れが続いている。なんかスバル君が余計な怪我を負った気がしたけど誤差よ誤差。

 

 パックの語彙センスもやっぱり好き。猫科がそんなこと言うのは性癖に刺さります。

 

 そしてしばらく気絶していたスバル君が、巨大化したパックの膝枕で目を覚ました。うん、改めて見ると凄い光景だ。

 

 ……あ、エミリア様と目を見合わせて照れていらっしゃる。うん、ちゃんと男の子やってるなぁ。…………それに比べて。うん。メイド服……ヘアピン……リボン………低身長………ナンパされる………男………

 

 

「大切なもんなんだろ?俺にも手伝わせてくれ!」

 

 む。スバル君がエミリア様呼び止めて、徽章探しの手伝いを申し出始めた。

 

 やーい、黙ってろ役立たず〜。君がいなきゃもうちょっと早くエミリア様盗品蔵行けるんだからっ!!勘違いしないでよね!!

 

「……本当に、なんのお礼もできないんだからね」

 

 はい。でも受け入れるのがエミリア様だもんね。知ってた。

 

 どうやら、もうしばらくは僕の知っているままに続きそうだ。ヨシ!

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 ────と、思っていた時期が僕にもありました。

 

 いや。正確に言えば、あちら(・・・)は僕が知っている通りに進んでいたのだ。ただ、異変があったとすれば僕の方で。

 

 

「すまない。そこの君、少し話をいいかな」

 

「なん……………で、しょうか」

 

 隣から声をかけられ、壊れた人形のようにギギギ、と首を動かして、そちらを見る。

 

 うん。まぁ、声をかけられることは仕方ないと思う。今の僕は側から見るといっとう不審者だ。騎士団が見つけたら、まぁ話を訊かないわけがないだろう。

 

 だが、今こいつ。屋根を登るでもなく、伝うでもなく、魔法を使うでもなく。

 

 上空から降り立ってきたんだが?

 

「自己紹介をしようか」

 

 いやいやいやいや。

 

 この国でお前を知らない奴がいるとでも?

 

 燃えるような赤い髪に透き通るような空色の瞳……あと、もはや文句をつけようにも整いすぎて気持ち悪い以外の文句が出てこない美麗な容姿。あと、蕩けるようなイケメンボイス。

 

「ルグニカ王国、近衛騎士団所属。『剣聖』の家系、ラインハルト・ヴァン・アストレア」

 

 絵に描いたような、最強。暴力的な絶対。騎士の中の騎士。

 

 ああ、どうして僕、ヨシ!って言ったんですかね……

 

「人を無闇に疑うのはどうかと思うし、今日は非番なんだけど。君の言動が流石に怪しすぎるので、ご同行をお願いしてもいいだろうか」

 

 異世界最強の男が、少し困り顔でこちらを見つめていた。

 

 ───どうして。

 

 

 




『匿名』さんからいただいた挿絵になります。

【挿絵表示】


 災厄その2
ストーカーして推しの言動を監視してたらラスボスですら敵わない存在からの職質(殺ることを殺った後で)

 虚飾ゲットしたから大丈夫。そう思っていませんか。もしそうなら、今度も俺(運命)が勝ちますよ。
 最初以外ヌルゲー?違うんだなーこれが。
 難易度ナイトメアの世界ですからね。当然ですね。

 人魚沼を知らない方は、ぜひ一度でもプレイしていただきたいですね!
 女性主人公が山中のペンションで異性二人同性一人の四人で閉じ込められてしまい、同性の子の体が疼いて……もう1人の男の子は野獣に!知的だった最後の1人も私に抱きついてきて?もう、どうなっちゃうの~!?って感じのゲームです

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