はい。不肖リル、特に何事もなく日々が過ぎて、2歳になりました。
いやまぁ、しょうがないよね。子供の頃なんてやることないし。
よく転生ファンタジーで赤ん坊から勉強してるのを見るけど、こちとら文字すら読めない赤子様だぞ。通るかっ……!そんなもん……!
とはいえ。
僕も、何もしてこなかったわけじゃない。とりあえず周囲………特に両姉をだが……を観察することだけは怠らなかった。というかロリとはいえ美少女ですからね。目の保養。観察で得られた情報?あんまりないよ。
まぁ幸いにも、両姉共僕のことを大変可愛がってくれて………
「リル、あまりジロジロと見るものではないわ、ラムはともかく、レムが何事かと疑ってしまうでしょう」
「……はい!ラムおねえちゃん!」
「お姉ちゃん!……レムは、大丈夫だよ」
くぅ………その妹を第一に優先するところ!痺れるっす!姉御!
と、場面を現実に戻すと。現在は姉様方が滝壺で修行を行っているところである。
アニメであったあのシーンだ。周囲には神童とよばれる
「ふっ」
この世界ならではの技術。魔法である。外界に干渉するものなので、これは風魔法だろうか。ぶっちゃけ至近距離で見ると迫力凄すぎる。
かなり盛り上がっているギャラリーの反応を見るに、流石にこれが標準レベルというわけでは無いらしい。良かった。これと同レベルは人間辞めてるわ。人間じゃないけど。
「すごいね、お姉ちゃん!」
「すごい!!すごいすごい!!」
「ふっ……」
わ〜、本心とはいえど流石リゼロ幼女チョロい。わかってたけどやっぱ面白い人だわ上姉様。かわいい。
ちなみに、若干屈辱を感じないでもないこの呼び方は、ある程度歳を取ったら改めるつもりである。咄嗟の愉悦要素は取っておくに限る。秘められた感情があらわになった途端、昔の名前で呼ぶあれは堪らん愉悦を生むのだ。フフ。
「素晴らしい……!まさに神童じゃ……!」
村の族長が、自慢の髭をゆさゆささせながらそんな言葉を漏らす。いや、あんたこの子ら殺そうとしてたんだけどね。
そして老人のその声を聞いて、
………見ていればわかるが、やっぱり劣等感は凄そうだ。
実は、鬼族では双子というのは忌み子とされている。マナを取り入れる器官であるツノが二本ではなく双子で一本ずつに別れてしまい、思うように力が出せないからだ。時代遅れな実力至上主義の鬼族では、ツノが一本少ないというのは十分な排斥の理由になる。
しかしそれでも、
「レムお姉ちゃん、すごいね!!」
「う、うん。お姉ちゃんは、すっごいんだよ」
まぁ、だからと言って慰めはしないが。ここは無邪気に傷を抉っておくとしよう。僕は二本だし、気休めを言っても逆効果かもしれない。最終的にその傷を埋めるのは
………あれ。もしかして僕、アヤマツスバル君みたいなことしてないか?もしかして隠れヤンデレ属性持ちだったりする?
「………レムも、頑張らなくちゃ……」
……まぁ、今はまだ燃えてるみたいだし、いいか。
そのうちポッキリ折れそうになれば、こっそり支えてあげるくらいがちょうどいい。支えが永遠にあるとは思わない方がいいですけどねうへへうへへ。
そんな物思いに耽っていると。
「さぁ、リル。あなたもやってみなさい」
「…………え?」
上姉様が杖らしきものを渡しながら、とんでもないことを言い出した。
いやいやいやいやいや。ここは深夜までスキップして
「……リル、ぞくせいわかんないよ?」
「安心なさい。リルが寝ている間に調べておいたわ。属性は火よ。他にもまばらに適正はあるけれど、一番は火」
とんでもないことおっしゃるな。
というか、リゼロ初みょんみょんが!!聞きたかったのに!!ショック!!
「どうすればいい?わかんない」
「呪文を教えてあげる。『ゴーア』と、力の限り叫びなさい。最初はそれで魔法が出れば御の字よ」
ゴーア。火属性の炎出すやつか。同じ火属性のヒューマとはまた別のやつだ。
というか、いいのか。得意なのが氷と炎という違いはあっても、火属性であることに変わりはない。やることが
「やる!!」
好奇心には勝てなかったよ。
というわけで。初魔法のお時間だ。厨二の妄想が文字通り火を吹く。
全身から力を集めるイメージ。体の中のマナを、胸の中にあるゲートから外に吐き出すのを脳内で想像する。
うーん。魔法、魔法ねぇ………魔法、魔法のイメージ。
──滲み出す混濁の紋章……!不遜なる狂気の器……!
あっ、これは違う。
と、炎とは全く関係ない詠唱を頭に集中していると。ぐぐっと、自分の頭から伸びてくるものがある。これが恐らくはツノなのだろう。鬼族としては当たり前の白い二本の角が、周囲からマナを吸い上げるために伸びて───
「う、そ………」
「あ、……そんな……バカな………」
「………へ?」
目を閉じて集中していたところに、
…………まさか、鬼族として恥ずかしいくらい小さかったのだろうか。もしかして形が歪とか?やめろやめろ、性格をそんなところに反映するんじゃない。
「リル、あなた………角が……」
「え………?………ん?」
その手触りは間違いなく、生まれ変わってからずっとついていた角。左に一つ、額の真ん中に一つ、右に一つ。
……………ん?
左に一つ、額の真ん中に一つ、右に一つ?
「なんで………角が、三本も!?」
「んんんん!?」
何度も触れて確認する。摘んで、揉んで、その存在を確かめる。
ある。確かにある。両方のこめかみ近くのちょうど中間に、額に、もう一本、小さいながらも、確かな角が。
「………ダメみたいですね(絶望)」
「さ、さ、さ……三本目じゃとぉぉっ!?」
【悲報】ワイ、第三の目ならぬ、第三の角を覚醒させてしまう
大人たちが駆け寄ってくるのを横目に、驚きのあまり意識が遠のいていく。
どうして。
数日後。
何度も詰問を繰り返された僕は、結局原因不明ということでなんとか解放されることになりました。……… 二歳児相手に何やってんだあんたら。わかるわけねぇだろ。そもそも成長の早い鬼じゃなきゃ言葉すら話せん年齢ぞ?
一時は僕までも忌み子ということで処分されそうになったらしいが、姉様方とは違って角が多かったことからなんとか赦免されたわけです。弱くなるわけじゃないからね。
ですが。三本角があるだなんて面白おかしい情報は、あっという間に村の間で広まるわけで。しかも姉様方というイレギュラーと家族なわけで。
まぁ、排斥されますわな。
というか、両親からも遠巻きにされた。ぴえん。
唯一普通にしてくれるのは同じく異常な姉様方だけで、族長やら村民からは普通に距離を置かれる。近づいただけで悲鳴と共に後ずさられる始末だ。〜菌とか言われてた小学校の同級生を思い出しますね!!
どちらかというと迫害というよりは、困惑と恐怖の方が強いらしい。
魔法?あぁ、はい。
でも、落ち込んでばかりもいられない。いや、ぶっちゃけ村民はともかく、両親から距離を置かれるのは辛いものがあるが。三本角ということで、身体能力も飛躍的に高いことがわかった。少なくとも、その分野においては現時点の姉様も超えている。
つまり、魔女教襲来への対策は多少なり整ったということである。
………どう足掻いたところで村全員を救うことはできないから、姉様方以外は残念ながら見捨てることになる。下手に原作から逸れてわけのわからん展開になるほうがマイナスだ。成仏してクレメンス。
それよりも、この状況を活用するのだ。周囲から孤立して、姉には少しだけ心を通わせていたが孤独な毎日を送っていた。………なかなか重いが、これは使える。
というわけで、脳死実行。徐々に言葉から元気をなくしていって、一日で若干改める。……まぁ、心を閉ざしていく
愉悦〜の種を〜撒きましょね〜〜♪
あー
………てかこれワンチャン、魔女教襲来で姉様方にも愉悦できるんじゃないかな。