思えば全裸になるのはそもそも部長の趣味でしたね。悪しき風習を受け継ぐな戯け。
全裸待機勢がこんなに多くなく、新しく感想を下さる方に影響が及ばないなら作者もここまで言いませんでしたが、流石に七割を超えると口を挟みたくなる作者の気持ちをどうかわかってください。
ちなみに、全話の前書きは、魔女教大罪司教『強欲』レグルス・コルニアスのコピペなので実際作者はそこまでキレてないよ。あとやってもいいけど、報告しないで。
そしてメイド服と女装待機してたやつ。後で自撮りを作者のTwitterに送ってくること。
メイド姿が、いやに月光に映えるものだと。スバルはそう思う。白のブリムやエプロンは光をはね返し、逆に黒の部分は闇に溶け込んでわからない。
その境界があまりにも美しく、可憐で。戦場に驚くほど似合っていた。
「ダンスに入り込むなんて無粋……なんて、言えるほど素人ではないようね」
「まぁ、そんなあっさりはいかねぇよな」
ガラクタの山へ体を突っ込ませていたエルザが、なんでもないように身体を起こす。リルのあの回し蹴りだけで昏倒して半日は動かない自信のあるスバルとしては文句を言いたいが、そもそも心臓を破壊しても動くような女だ。期待は元からしていない。
「よし!じゃあ後は頼んだぞリル!」
「スバル、今までありがとう。君と過ごした日々はそこそこ楽しかったよ」
「ねぇ、なんで今そのセリフ吐いたの?基本それって別れる時に使うやつだと思うんだけど」
もしかしてこの流れでとんずらするつもりなのかこのメイド。どこまでも自分に正直すぎる。
敵と対峙しているとは思えない茶番を展開していると、後ろからおずおずと偽サテラが口を出す。
「ええっと……リル、助けてくれてありがとう。それで……」
「お話は後で。どうかここはリルに任せてお下がりください。邪魔者はこちらで始末しておきますので」
「おっかしいな俺と全然対応が違う!?」
まさかの待遇の違いに不平を漏らす。いや、流石に誰にでもスバルと同程度の扱いをしていたらメイドとしては致命的だろうけども。銀髪の少女は視線をスバルとリルで何度か行き来させ『後でちゃんとお話聞くからね』と言い残して下がる。
不本意ながら死体を増やすわけにもいかないスバルもそれに倣い、エルザに対してリルを挟む形で別れた。
戦況が転々と。二対一から三対一へと変貌し、そして一対一へと変化する。
「お話、終わったかしら?待ちきれなくていつ襲おうか迷ってしまったわ」
「お客様程度でしたら、いつ襲っていただいても構いませんでしたよ?」
浮かぶ、嘲笑。見え見えの挑発だが、エルザには少しばかり効いたらしい。その額にピキリとシワがよる。
「改めて自己紹介を。今回はこの御方の護衛を任されている、リルと申します」
先ほど軽口を叩いていた相手とは同一人物とは思えないほど、リルはスカートの裾を掴み、優雅に一礼する。その姿からは気品と、隙のない覇気が発せられていた。
「この度の事は領外の問題です。これ以上戦う気がないというのであれば、これまでのことは不問に処します。尻尾を巻いてへっぴり腰でお帰りください」
「ふふ、生憎と、目の前に極上の獲物があって逃す肉食獣はいなくてよ」
「これは意外と言わざるを得ません。まさか食物連鎖の最下層が肉食獣を自称することがあろうとは。世の中には、珍妙なこともあるものですね」
「あら、お世辞が下手なのね」
「植物に使う世辞は用意がないものでして」
談笑するように上品に話していた二人は、お互いが合図もなしににこりと皮肉と挑発の兼ね合いを止め、その顔に獰猛な笑みを刻む。
「『腸狩り』と呼ばれているの。エルザ・グランヒルテ。よろしくね」
「お客様程度のお名前など三秒で忘れてしまいますから、名乗りは不要ですよ」
「連れないのね!」
沈むような歩法で、エルザがリルへと急接近する。その独特の動きから、目で追うことすら難しい。
リルがエルザを圧倒するほどの攻撃力と速度を持っているのは分かっている。だが、果たして防御面ではそうは言えるのだろうか。スバルを庇った時、リルはなんの手立てもないように見えた。強いが攻撃一辺倒、という可能性がある。
その狙いは分かっている。腹を狙ってくるぞ、と。大声で忠告しようとした矢先。
「あら?」
突然、ピゥ、という風を切るような音ともにエルザの右腕が切断されて宙へと舞った。まるで魔法のようだったが、エルザの反応を見るにそうではない。
明らかに異常事態だというのに、吹き出す血を氷柱を使って冷静に止血する姿は流石というべきか。
リルには動いている気配はなかった。ただ、手の中に何かを握っているような動作があるだけ。
「意外ですか。糸に絡めとられる側になるというのは」
「……素敵ね。不可視の刃。これで魔法でないだなんて、とても面白いわ」
「リルは面白くありませんが。こんな殺すためだけの技より、殴ったほうがよっぽど早い」
「そんな野蛮な戦い方も、嫌いではなくってよ?」
切断された腕に痛がる素振りすら見せず、エルザは再び闇の中へと消える。まるでそれを追うように、一歩も動かずリルは手だけを動かす。ただ蟻を潰そうとするような淡々とした姿に焦りはなく、いっそ悠然とした余裕すらも感じさせてくれる。
「嘘だろ……やっぱクッソつええじゃねぇかリルのやつ!」
「当然でしょ。私もパックがいなきゃ勝てないもの。ロズワールの懐刀、あれで口が悪くなかったら言うことなしなんだから」
「それに関しちゃ完全同意見!てか、薄々勘付いてたけどもしかして知り合い!?」
「知り合いも何も私のお世話係で護衛!迷子になって、すごーく心配してたんだから」
「迷子になったの君の方だったりしねぇ!?」
ルグニカの地理について全く無知だった少女と、多少なり歩き慣れていた感じのあったリル。疑うべくがどちらなのかは明白だ。
実際うぐっ、と弱そうに悲鳴を上げた少女は、誤魔化しを含めてか急ぎ足で倒れるロム爺へと向かう。
「……うん、この人、まだ大丈夫みたい。リルが頑張ってくれてる間に、治療しましょう」
「いいのかよ。この爺さん、これでも君の徽章を盗んだ一味の一人なんだぜ?」
「だからこそよ。命の恩人相手なら、嘘をつくことはしないでしょう?これも全部、私のための行為なんだから」
スバルの声に耳すら貸さず、ロム爺を水のマナで癒していく。どうしてそう、自分本位な生き方を偽装しようとするのだろう。そうでもしないと、自分の行為を正当化できないのだろうか。
「くっそ、今んとこ俺にできることは、こっちに攻撃が来た時盾になるくらいしかねぇか!」
「そんな無茶しなくていいから、攻撃が来たら教えて!一回くらいなら防いでみる!」
何度目かになる自らの無力を実感し、背後へと振り向く。そこには、驚きの光景が広がっていた。
「………おいおいマジかよ」
その声は、リルに向けられたものではなく。その相手。
片腕と三つ編みにしていた長い髪を失い、さらに身体中が斬られた痕だらけになったエルザに向けてだった。刀傷にしてはやけに多く、浅い。だが、息ひとつ切らしていないリルに比べればどちらが優勢かは目に見えていた。
「やっぱ、俺さえいなきゃ圧倒できんのかよ……」
時空を超えて証明された自分のお荷物さ加減に頭を抱えている間にも、エルザはリルへと向かっていく……が、しかし。直前でバックステップを踏むエルザ。その胸には、新たに一本縦の生傷が増えている。
「………ありゃ、ワイヤーか?」
遠目から月光に反射する極細の何か。アニメ知識に優れたスバルは、それが所謂ワイヤーと呼ばれる武器の中ではロマンでメジャーなものであると推測した。
あれを蔵中に蜘蛛の糸のように張り巡らせ、自在に操っているらしい。切れ味は見た通り。かなりの練度だが……
「ツンデレ目隠しメッシュ怪力ワイヤー使いメイドとか、どんだけだよ……」
些か盛りすぎな属性に呆れと感嘆の吐息を吐く。ここまで来たら猫耳が生えてきても驚かない自信がある。是非生えてほしい。
妄想の止まらない独り言を繰り返しているうちに、戦闘はどんどんリルの優勢へと傾いていく。どれだけ早く動こうと、エルザの行先に張り巡らされている無数の糸。どうやら切れる硬度というわけでもないらしく、何度かククリナイフで弾いて歯噛みをするエルザ。
どんどんと行く手を塞がれ。そしてリルが最後の一閃。四方八方を糸に囲まれて、エルザは一歩も身動きが取れなくなる。
「……詰んでしまったわね」
「賽の目状に刻んであげる」
「サイコロステーキ先輩っ!?」
ボトボト、という音と共に、エルザは生首一つを残して文字通りサイコロ状の肉塊へと姿を変える。血が大量に飛び出るスプラッタな光景に、少しばかり目を逸らすスバル。
本来ならこれで決着………なの、だろうが。
「やったか……?」
「なんで死に体で余計なフラグを立てやがったこのハゲっ!!」
「こら!ケガ人に乱暴なこと言っちゃダメでしょ!」
「腑に落ちねぇ!」
だが、その台詞が鍵になった訳でもあるまいが。ボロボロになったはずのエルザが、一瞬目を離した瞬間。そこに万全の状態で元どおりに立っていた。
「……嘘、だろ……?」
「ごめんなさいね。少しばかり、人より頑丈なの、私」
「
「そんなにギャーギャー喚かなくても、また刻めばいい。再生だって無限じゃない。次は刻んで、魔法で灰になるまで燃やしたげる」
「それは困るわね。……でも。貴方の武器、もう通用しないわよ?もう私の血がついて、その匂いを覚えてしまったもの」
何を、と吐き捨てたいところだが。どうも表情から見るにハッタリではなさそうだ。これで、不可視の武器という利点は消えた。
まさかまさかの、ここからバッドエンド4という展開が。
という、心配を打ち破ったのは。
「そこまでだ。『腸狩り』のエルザ」
「お前、は……」
なんとなんと。不思議な縁の三連続。
紅の髪をかき上げ、『正義感』を空色の瞳に映しながら微笑する、完璧な美青年だった。
はい、皆さんご一緒に。
うへぇ………
どうも。エルザ相手に舐めプしてたらなんか撤退するのが遅くてイラついていた僕です。
そして今、
僕だ。
結局お前来るのかよ。いや、来なかったら来なかったでバチクソに叩くけどさぁ。ちょぉっとくるの遅いんじゃない?ここはほらさ、もう僕に任せて大人しくフェルト回収して帰れってば、な?
「さあ、美味しいところだけもらっていくようで悪いけど、舞台の幕を引くとしよう──!」
あ、こりゃやる気ですわ。
はー、そりゃ剣聖サマですもんね。ふーん、そんなことするんだ。へー。僕の活躍する場所奪うのか。へー!!!
「ラインハルト──そう、騎士の中の騎士。今代の『剣聖』ね。いいわ、いいわね。次から次へと、私を楽しませてくれる子が来てくれる」
「少し家系が特殊なだけの坊主ですよ。それに、その二つ名は今の僕には重すぎる」
エルザさんも乗り気だし。エミリア様の治療も終わってるから全力出したい放題だ。
もういい。もういいもん。なんか一番かっこいいとこ取られちゃった。はいはい知ってます知ってますよ。『虚飾』無しを仮定したら僕には分が悪いですもんね。再生する相手への決定打とか持ってないし。エルザに効くレベルの魔法は今んとこ制御不能だし。そもそもラインハルトがいたら使えないし。倒す方法も知ってるけどここでエルザを倒すつもりもないから。
はぁ、とため息をひとつ。この蔵の中身だけでエルザ相手どころかルグニカ王国全土滅ぼせる戦力が集まってるんだけど。とりあえず、当方もう撤退していいよね?
「それでは、お覚悟を。投降をお勧めしたいところですが……」
「生憎と。次から次へとくるステーキに、飢えた肉食獣としてはかぶりつかざるを得ないの」
「それでは、アストレア家の剣戟をご覧に入れましょう───」
ん?あれ、ちょっと?なんか、体が重いんすけど?なんで?力が抜けてく感じが……
あ。
ラインハルトが全力出したら、マナが使えなくなるから。で、鬼族はマナを力に変えてるから、実質角なしと同じ倦怠感が………
「『腸狩り』エルザ・グランヒルテ」
「『剣聖』の家系、ラインハルト・ヴァン・アストレア」
おいこら!何勝手に名乗ってんの!?この状態で回避とか、マジで一般人と同レベルの速度しか出せんぞ!
いや、ヤバイヤバイ!普通にこの距離なら巻き込まれる!!おま、ちょっ!逆恨み!?逆恨みか!?死に戻りの記憶あるんかお前!?
本当にふざけ……
「ちょっ、ラインハルト!まだリルが……」
あっ、スバル君心配してくれるあたりなんだかんだ天使───
ジュッ、という。何かを蒸発させるような音が響き。
凄まじい剣圧が、大気ごと世界を叩き切った。
次に目を開けた時。盗品蔵は、その壁を全て倒壊させ、本当の意味で足場だけの家になっていた。
この惨状がただの剣の一振りなど、いったい誰が信じられよう。
「ぬぁぁぁんじゃこりゃぁぁ!?」
思わず目の前の惨状に声を上げるスバル。背後にいるサテラとロム爺は無事だが、逆に言えば背後で原型を留めているのはそれだけだ。
目の前のエルザは肉片ひとつすらも残らず、後には軽く汗をかいたラインハルト。そして……
「死ぬかと……死ぬかと思った……!死ぬかと思った……!ホンットに死ぬかと思った……!もうダメかと思った……!あいつが川の向こうで手ぇ振ってた………!」
辛うじて剣戟から難を逃れたらしい、両手で自らの身体を抱いて無事を確かめ、生まれたての小鹿のように弱々しく震える果てしなく哀れなメイドの姿だった。
「めっちゃトラウマ抱えてる風になっとる!?ラインハルト!おま、もうちょっと配慮してやれよ!」
「すまない、ここで彼女を逃すわけにはいかないから、早めに処理をしたかったんだ。
「あばばばばばばばば」
「そんなわけないと思うなぁ!?割と今も自分の生存の実感に必死だよこの子!!」
未だ自らの生死を確認するリルは、先ほどまでの余裕を見ていると哀れを通り越してむしろ嘆かわしい。何かしら逃げられない事情があったのだろうが、その真偽は定かではない。少なくとも今の言葉を聞けば、ラインハルトに殴りかかるであろうことは確かだ。
「まぁ、なんにせよ。これで全員無事。四肢はついてるし、腹の中身は出てないし、ナイフが突き刺さったりもしてねぇ。ラインハルト、まだ礼を言ってなかった。マジ助かった。さっきの路地のことといい、俺の心の叫びが聞こえたのかよ、友よ」
「それができたなら僕も胸を張るんだけどね、友達くん」
いいながら、視線を向ける先。そこには、形骸化した柱の影に隠れる金髪の少女。フェルトの姿があった。
言葉から察するに、どうやら彼女が助けを呼んでくれたらしい。申し訳なさそうにしているのが、少しだけ微笑ましくて……
「────スバルッ!!」
ラインハルトのその声を契機に。スバルは、自分の窮地が終わっていなかったことを知る。
廃材が跳ね上げられ、その下から黒い影が出現する。影は短い黒髪を闇に隠し、血を滴らせながらも力強く足を踏み出して加速。ひしゃげたククリナイフを握りしめ、無言で疾走するのは流血するエルザだ。
「てめぇッ!」
その目には、未だ衰えない漆黒の殺意が詰まっている。その目が捉えるのは、未だ状況が把握できていない銀髪を揺らす少女。
ラインハルトは間に合わない。リルも、未だ現実から意識を切り離したままだ。
一発。一発さえ守れば、あとはラインハルトがなんとかしてくれる。守る。守らなくては。守るのだ。三回、三回を思い出せ。
そう、いつだってエルザの。
「狙いは、腹ぁぁぁっ!!」
突き飛ばすように少女を庇い、腕の中に残っていた棍棒を引き上げ、とっさに腹の上をガード。直後、衝撃。
「この子は、また邪魔を──!!」
グルグルと回転し、腹への衝撃が治らぬ中。廃材に激突し、腹と背中を痛めながらもエルザのその悔しそうな声を聞いた。
吹っ飛んだスバルを見て舌打ちをしたエルザは、そのまま少女の方へ向き……
「させないよ!」
「そこまでだ」
ほとんど同時に差し出された拳と手刀に、全力の跳躍を見せた。
ククリナイフを投擲。当然実力者二人には効果はないものの、スバルを狙いに放たれたそれは十分時間を稼ぐ。
「いずれ、この場にいる全員の腹を切り開いてあげる。それまではせいぜい、腸を可愛がっておいて」
蜘蛛のように壁を這い、跳躍。一瞬でそれらの動作を成した女は、最悪の捨て台詞を残して目にもとまらぬ速さで逃走した。
追うことはできそうではあったが、流石に骨が折れる。それよりも今は、やるべきことがある。
「ご無事ですか、エ──」
「私のことはいいでしょう!?それより……無茶しすぎよ、馬鹿っ!!」
「スバル、大丈夫!?頭とか平気!?その顔は変に歪んだわけじゃないよね!?」
「心配にトゲがありすぎるよ……目の前のがイケメンに見えてなきゃ間違いなく俺だ」
自分の惨状に心配してくれる少女に感動やら、ついでにメイドへのツッコミやらで頭がごちゃごちゃだ。それでも、メイドは言葉とは裏腹に本気の焦りと心配の表情が浮かんでいる。
自分の腹を見てみると、グロテスクにも紫色に変色してしまっていた。見た目がずいぶん悪くなったものだ。
「今度は、完璧にいなくなったよな?」
「すまない、スバル。さっきのは僕の油断だった。君がいなければ、僕は……」
「タンマタンマタンマタンマ! そっから先は言及無用だ。こんだけ色々ともったいぶったんだから、そこの部分を他人に委ねちゃ俺が報われん。リルも口は出すなよ!?」
先んじて手を打ったスバルに、今回ばかりはコクリと無言でうなずくリル。いい子だ、と頭を撫で。……やってしまってから、それを拒否されなかったことに少しだけ安堵を覚えた。
「俺の名前はナツキ・スバル!俺ってば、今まさに君を凶刃から守り抜いた命の恩人! ここまでオーケー!?」
「おーけー?」
「よろしいですかの意。ってなわけで、オーケー!?」
スバルの若干強引な声に、銀髪の少女はたじろぎつつも、おーけー、とカタコトで返す。
「命の恩人、レスキュー俺。そしてそれに助けられたヒロイン君!なら相応の礼があってもいいんじゃないか?ないか!?」
「……わかってるわよ。私にできることなら、って条件付きだけど」
「なら!俺の願いはオンリーワン、ただ一個だけだ」
指を一本だけ立てて突きつけ、くどいくらいにそれを強調。そのあとに指をわきわきと動かすアクションを付け加えて少女の不安を誘い、喉を鳴らして悲愴な顔で頷く彼女にスバルは好色な笑みを向ける。
「そう、俺の願いは──」
「うん」
歯を光らせて、指を鳴らして、親指を立てて決め顔を作る。
ずっと決めていた、ずっと思っていた。ずっと訊きたかった、その言葉を。
「君の名前を、教えてほしい」
スバルは四度目の生で、ようやく口にすることができたのだった。
呆気にとられる少女。それに対して、答えを待ち続けるスバル。
「───エミリア」
鈴のような笑みと。その響きが、スバルに少しの吐息を漏れさせた。
「私は、エミリア。ただのエミリアよ。ありがとう、スバル」
「私を、助けてくれて」と。思わずこちらも綻んでしまうような天使の笑みで、スバルへ手を差し出す。
その笑顔。ずっと見たかったその顔を、まぶたと瞳に焼き付ける。
これが、この苦難だらけの異世界召喚に対する報酬だというのなら。
「───あぁ、全く。割に合わねぇ」
言いながら、スバルも笑い。エミリアの差し出した手を、握り返したのだった。
はい。その後の展開。
斬られたことに気がつかなかったのか的展開になったスバル君は、全てが終わってから腹にしっかり傷口が刻まれ卒倒。エミリア様がいるから死にはしないが、この場凌ぎの応急処置でしかないため、ロズワール邸に連れ帰り、改めて看病することを決意したのだった。
スバル君との関係を根掘り葉掘り聞かれたので、果物屋でレモム汁をぶっかけた仲であることを教えた。その時のエミリア様の超絶複雑そうな顔は非常に傑作でした。
そしてフェルトが徽章を返し、それを見たラインハルトがフェルトを気絶させ、誘拐。うん、まんまの流れとなった。
それはそうと。
「ねぇ、ラインハルト」
「うん、なんだい、メイド
こいつ、気付いてやがる。まぁそれはいい。大したことじゃない。とりあえずうん。やりたいことをやろう。
ズバリ、私怨を込めた正当な私怨。
「その爽やかフェイス、一発ぶん殴ってよかったりする?」
「ちょっと、リル!?」
「……仕方ない、当然の罰として受け入れよう」
エミリア様の制止も聞かず、ラインハルトはフェルトを横たわらせると、あきらめるように首を竦めた。
そして、どれをとってもイケメンでしかない、ついでに高身長なその横顔を。
「死に晒せやぁっ!!」
僕は切り札の鬼化を使って、鬼ごっこの分の復讐を含めぶん殴り倒した。
全治三秒。ちくせう。
災厄その3
『剣聖』の剣戟に巻き込まれかける。
とりあえずこれにて、王都編、終了です。
アヤマツ√if、欲しかったりします?
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書いてラインハルト殺せやオラァン!
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とっとと続き書いて姉様と絡めオラァン!